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2016年03月13日
狐笛のかなた
さてさて、本日はこちら
上橋菜穂子著『狐笛のかなた』
いやはや、楽しい
ファンタジーを、という
時にはやはり
この方でしょうか。
児童文学に入るようですが
解説でも宮部みゆきさんが
大人のためのファンタジーです
と言っていましたし
関係ない関係ない笑
12歳の少女、小夜
育った村は
生まれた村という
訳ではなく
少し村人と
距離を置いて
過ごしてきた
女の子
そんな小夜は
ある日、
猟犬に追われる
子狐に出会い
その子狐を
かばって逃げるうちに
とある少年と
出会うことになります
彼の名前は小春丸
ずっと、屋敷に
閉じ込められているのだと
寂しそうに笑う彼と
友達になった
小夜でしたが……
小夜はなぜ、
祖母と生まれ故郷では
ない村で暮らさなければ
ならなかったのか?
なぜ、お母さんは
亡くなったのか?
そして、小春丸は
なぜ、閉じ込められているのか?
そんな謎を小夜が
知る時、彼女は
一体何を望むのか
恨みあってきった
国と国との間で
消えない憎しみの連鎖
人を殺す程の呪いを
なぜ、人はかけることが
できるのか
決して人よりも
心が強いわけでもない
ただただ清らかなだけの、
しかしだからこそ尊い
主人公
そして、小夜が
助けたあの子狐も
実はただの狐ではなく……
優しい狐はこれまた
邪気の無い、純粋過ぎる
キャラクターなのですが
そんな狐は残酷な
運命にしばられていて
2人と1匹が
時に悲しく
絡み合っていく
もう、ベッタベタに
ファンタジーなんです
能力だとか、術者であるとか
本当に、ファンタジー
なのに、人と人との
交流や、
細やかな心情描写が
リアルで
ファンタジーなのに
生々しい
そんな物語に
うっかり(?)
引き込まれてしまって
ドキドキハラハラしながらも
少年少女の成長に、
狐のけなげさに
胸をうたれつつ、
どんどん読んで
そうしながらなんだか
心の奥が暖かく
なってきます
ほのぼの感動
できるような
素敵なお話です
是非是非
大人も。
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2016年03月09日
カラスの親指
さてさて、本日はこちら
道尾秀介著『カラスの親指』
主人公の武沢竹夫は
詐欺を生業と
していますが、
かつてはまっとうな
サラリーマンで、
家族がいて、
幸せな生活を送っていました
彼から全てを奪った
ある男を憎みながらも
逃げ回る生活を
送っている武沢竹夫
そんな彼の元へ
同じく悪党である
入川鉄巳が
転がり込んできて
二人はタッグをくんで
詐欺をはじめた
そうして、さらに
スリの少女と出会って……
どんどん、武沢竹夫の
家には奇妙な同居人が
増えていく
そんな同居人たちには
言えない秘密を持つ
武沢竹夫は
どこか胸にちくりと
棘を持っていて、
けれども、
ちょっと楽しく
そんな生活を
送ったりもする
しかし
再び武沢竹夫を
襲う魔の手
再びちらつく
武沢竹夫が
恐れ続けた
男の影
また、逃げるのか?
武沢竹夫と
その同居人にとって
共通の敵を相手に
彼らは逃げるか、
それとも……!?
残酷な過去を背負って
人を恨み、
人を信じられなくなり、
人を騙してしか
生きることのできなくなった
人々が、そんな
過去と決別すべく
考えた作戦とは……!?
前半はヘビーな
過去の話があったりして
暗いのですが
どんどん笑っちゃう位
登場人物が増えて行って
それも皆なんだか
しっちゃかめっちゃかで
コメディな感じになって
きたと思ったところで
再び緊迫する展開へ
飽きずにぱっぱと
読んでしまいます
そうして最後まで読むと
気持ちのいい
騙された〜っという気分
重いようで
軽いようで
結構深い
エンターテイメントとして
楽しむ気持ちで
読んで欲しいけれども
あー、楽しかった
だけで終わる程
単純な話という訳でもなく
満足感のある一冊です
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2016年03月06日
光の指で触れよ
さてさて本日はこちら。
池澤夏樹著『光の指で触れよ』
以前、ご紹介した
『すばらしい新世界』の
数年後のお話。
この物語自体は、
『すばらしい新世界』を
読んでいなくても、
楽しめるとは思いますが、
やはり、『すばらしい新世界』を
読んでおいた方が
分かりやすいネタが
織り込まれているので、
先にそちらを読むことを
お勧め致します。
また、今回の紹介記事は、
『すばらしい新世界』を
読んだ前提で書くため、
『すばらしい新世界』の
ネタバレを含んでしまいます……
あらかじめご了承願うとともに、
『すばらしい新世界』を
読んでいない方は、
読まない方を、お勧め致します……
ではでは、参りましょう。
まずですね、
大大大大大ショックでした!
だって、あの
『すばらしい新世界』の
天野家族ないしは夫婦
特に、夫婦の方は、
私にはとっても憧れ
だったんですよ……!
こんな関係、いいなぁ……と。
ちょっと哲学的で、
ほんの気付いたことを
ヒマラヤからメールで送れる、
そんな夫婦。
あのお話は、林太郎が風車を
ヒマラヤへ建てに行く物語で
あったでしょうし、その後で、
息子の森介が精霊に好かれて
帰れなくなった
父親を迎えに行く話でした。
それでも、やはり、
林太郎と妻アユミの
メールのやり取りって、
その内容を詳しく
覚えていなくても、
とても心に残っていました
あの物語の中で
なんだかんだ言っても
ものすごく大事な
ものだったと思うんです
林太郎とアユミの
強い心の結びつきが
窺われるような、
あんなメールのやり取りに
憧れる!
と思っていたというのに……
何と本書は、
その天野家が、バラバラに
なってしまっているところから
はじまるんです。
しかも、読んで行けば
理由は林太郎の恋。
もう、嘘でしょう…と
ずーん。
アユミはまだ小さな
娘を連れて
出て行ってしまうし……
けれども、
このお話はただただ
恋人をつくった
林太郎がどうこうだとか、
思わず小さな娘を
連れて出て行った
アユミが可哀そうだとか
そんな話にとどまりません。
『すばらしい新世界』では、
林太郎が、ヒマラヤの地で、
日本で当たり前の
既成概念や感覚から
解放されて、
現地の素朴な宗教を、
信仰する訳では
ないのだけれども、
感銘を受けて、
どこかで受け入れる……
そんな体験を
していました。
今度は、アユミなんです。
ヨーロッパのコミュニティから
スピリチュアル色の強い、
イギリスのコミュニティへ移りつつ、
林太郎なしで暮らすことが
どういうことなのか考え
経済基盤はどうするのか、
など悩んでいる一方で
お金にまったく縛られず、
農業や、
パーマカルチャーをしながら
生きる暮らし方に触れ、
ふと、胸をつかれる
当たり前のように、
林太郎の妻として、
家という
城を守る存在であることを
疑いもしなかった。
けれども、どうして、
私が家を守る
存在なのだろう?
『すばらしい新世界』の時も、
森介が林太郎を
迎えに行っている間、
私は、家を守っていた…
本当にそれでいいのかしら?
とにかく、アユミは
コミュニティの中で
様々な考え方に
出会いながら、
ゆっくりゆっくり
自分の中を
整理していきます
自分の、封印していた
過去なんかに触れながら
少しずつ、少しずつ、
時間をかけて……
そんな折、林太郎も、
偶然農業をはじめた人と
懇意になり、
「風車」から「農業」へ
興味を移し始める。
離れていても、
微妙に興味の対象が
同じという、この夫婦。
ゆっくり、ゆっくりと、
別の道を歩みながら
アユミも、林太郎も、
経済が全ての中心となっている
今の世界のありようを、
もう一度真っ白な状態
から、見つめ直していく
そうして、最終的に、
林太郎は、アユミは
どういう決断をし、
どういう行動に出るのか。
キャラクタが、
考え続け考え続け、
そして悩んでいるのですから、
本当に、分からない。
それでも、どうか、
自分にとって
一番良いと思える
選択をしてほしいと
願いながら、
読者は読み進めていく
ところで、この小説、
サブプライム問題や、
リーマンショック、
世界金融危機の
前に書かれていたんですね……
何というかそこも
含めてすごい作品です…
少し、ぞっとしたりして。
『すばらしき新世界』ファンには、
かなり冒頭から
ショッキングではありますが、
それでも、相変わらず
とてつもなく豊かな物語です
是非、読んでみて下さい
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2016年02月29日
長い長い殺人
さて、本日はこちら
宮部みゆき著『長い長い殺人』
状況証拠ならば
そろっているのに
決定的な物理的証拠が
ない殺人事件
捜査が進む程に
複雑さを増していく
事件の真相は……!?
というのを、
何と、様々な
登場人物たちの
「財布」目線で
語られるのです
このユニークな
手法にまずはびっくり
最初は何かと
思いました笑
だから、描かれるのは
財布から見た
人間社会や
主人であったり
その周りの人々
主人を尊敬する財布
心配する財布
大好きな財布
少し見下している財布
財布によって
主人への心象は
様々で
また、事件に対する
見方も、
その事件との
関わり方も様々
ある財布から
犯人が分かったと
思わせるような
状況証拠が
語られたかと思えば
ある財布の主人が
犯人のアリバイを
証明してしまう……
またある財布の主人は
一見この事件とは
全く関係ない事件に
巻き込まれていたり……
複雑過ぎて、むしろ
事件が見えにくくなって
くるわよ!と
言いたくなる程
伏線が張られていく……
そんな、堂々巡りの
長い長い殺人
結局、真相は?
とんでもない
どんでん返し感が
ある、という訳では
ないように
感じますね
びっくり仰天させられる、
というよりも
じりじりじりじり。
焦らされて焦らされて
うあっとやっと
真実が見えたか!
みたいなすっきり感
財布目線の
「ちょっと足りない」
情報が見事に絡み合って
いくところが圧巻で
もう、読むのを止められなく
なってしまいます
また一方で
財布は人間社会を
結構、冷静に
見ていたりして
皮肉もきいている
殺人事件に対する
マスコミの様子や
大衆の様子、
主人に起きる
ちょっとした事件
人間の単純なようで
少し歪んでいて
思い込みの激しい
陰の部分が
浮かび上がって
いたりして、
何だかちょっとだけ
ぞぞっとしたり。
その、ぞぞっとが
案外この殺人事件へ
繋がっていったり
しちゃって!
面白いものが
読みたいなぁという方は
とりあえず読んでみてください
とにかく面白い
それに尽きるような
作品です
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タグ:宮部みゆき
2016年02月22日
アイの物語
さーて、本日はこちら
山本弘著『アイの物語』
語り部といって
人々にお話しをして
聞かせる生業をしている
「ぼく」
その世界は、
人間が戦争で
ロボットに負けて以来、
ロボットに支配され、
人間の栄華はもう
跡形もない、そんな世界
「ぼく」はロボットが憎い
悔しい、やるせない。
そんな「ぼく」を捕らえて
かつてヒトがつくった
フィクションを
語って聞かせる
アンドロイド
バーチャルな繋がりや
人工知能のお話が
6つ。
かつて、ヒトが
夢見た技術と
ロボットとの共存
「ぼく」にその
意図は分からない
分からないながら
はじまった、
機械とヒトの
千夜一夜物語
語られるのは、
真実よりも正しい
フィクション
それは一体どういう
意味かと「ぼく」は
突っかかりますが……
それぞれのお話が
面白いことは勿論ですが
一つ、お話が終わるごとに
「ぼく」とアンドロイドとの
やり取りが挟まって
この世界に対する
謎や、アンドロイドの意図が
気になってくる
アンドロイドが語るのは
ただのフィクションだと
分かっていても
人の夢に満ち溢れる
機械とヒトとの
話を読んでいくうちに、
段々と、こう
思わずには
いられなくなってくる
なぜ、地球は
ロボットによって
支配されてしまうように
なったのだろう?
最後の話が
表題、
「アイの物語」
最後に相応しく
これが抜群に面白い
壮大で面白いだけでなく、
鋭く人間の
本質を突いていて
大きく心を
揺さぶられます
人間が先の
6つのような
素晴らしい物語を
紡ぐ一方で
過ちを繰り返し、
憎しみ合い、
殺し合ってしまうのは
一体どうしてなのか
そして、最初の疑問に
戻る。
どうして、アンドロイドは
この話を「ぼく」に
聞かせるのか?
なぜ、この世界は
ロボットに支配されて
しまったのか?
6つの物語も
全て最後になって
もう一度きらっと生きる
かなり長さがあるのに
全くそう感じさせない
一気読み必至な作品です
そして、フィクションが
好きな全ての方が
感銘を受けること
間違いなし
「真実よりも正しい
フィクション」の
意味が実感できて
じわじわ鳥肌が
たってくるような感動
面白いだけでなく
素晴らしい作品だと
思います、本当に。
是非是非
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2016年02月16日
秋の牢獄
今日はすう、と
冷たい作品です。
恒川 光太郎著『秋の牢獄』
短篇集です
収録されているのは
秋の牢獄
神家没落
幻は夜に成長する
の3篇。
どのお話しも、
少しこわい。
何気ない日々が、ふっと、
何か不思議な世界へ
変ってしまう
おそらく偶然なのだけれども、
不思議な世界
(これは様々な意味で)
の側へうつってしまって
自分が特別な
存在になってしまって
どうすればいいのか
分からなく、
如何ともしがたい。
3作品とも
そんなお話ではないか
と思います
雰囲気を味わい楽しむ
作品で、内容があるかと
言われたら、ほとんど
そこに意味はないのでは
ないかと。
けれども
この、ちょっとひんやりする
雰囲気がたまらん
個人的には、
表題以上に
最後の
「幻は夜に成長する」
が好きです
一番禍々しいのは、
このお話。
けれども、好きですね、
このあり得ない感じがいい。
なのに登場する人間がやたらと
現実くさいのが、またいい。
多分、実際こういう人って
いるんだろうなぁ、
と思ってしまったり
そうすると背筋がすこうし
ぞくり、としたりして。
ネタバレにならないために
禍々しい、とだけ
言っておきたい。笑
表題の「秋の牢獄」は
最初に載せられていますが
うん、とても自然に
この本の世界へと
入っていける作品です
突然、いつも通りの日々が、
繰り返しを始めてしまう。
原因は不明。
突然、訳の分からない
世界の人間になってしまって
それだけでも恐怖であろうに
さらに輪をかけての恐怖が……
誰にも真相が
分からないまま
主人公は、ただ
待つことしかできない
澄み渡る過ごしやすい、
良い秋の日のはずなのに、
その冷ややかなすずしさだけが
こちらに伝わってくるような。
どれも、何となく、
こわい童話、みたいな印象
童話、というのは
おかしな話なのですが
受けるイメージといいますか
読んでいる時の感触が
ホラーというほど
怖ろしい訳ではなく、
むしろ、この少しこわい
という雰囲気を楽しむ
余裕が残されています。
読みやすくて
どなたにも、
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2016年02月10日
さがしもの
さてさて、
本日はこちらです
角田光代著『さがしもの』
本をテーマにしたお話ばかりが
集められている短篇集です
おさめられているのは、
旅する本/だれか/手紙
彼と私の本棚/不幸の種
引き出しの奥/ミツザワ書店
さがしもの/初バレンタイン/
となっております。
なんだか不思議な本
生々しく自分の人生に跡を残した本
本をきっかけに、少し何かが変った話
とにかく、ただの本、なのに、
忘れられない、特別で世界で一冊だけの本
そんな本を沢山見ることができます
そして、そんな本のおかげで
悲しんだり、
不思議に思ったり、
どこか期待したり、
懐かしんだり、
切なかったり
なんて豊かな感情を
人は持つのだろう、
と思わされる、
そんなお話ばかり
穏やかながらも
目の前がゆっくりと
晴れ渡っていく
そんなお話もあれば、
かなり切なくて、
号泣、する訳では
ないんだけれども
心の奥から、くう、と
締め付けられるような
お話もあります
けれども、どれもが
何となく、あたたかくて
自分には全く関係ない
はずなのに、
何となく、身近です。
本がこの世界にあってよかった
全部読んだ後はきっと、
そんな気分になれる
じわじわと心を
満たしてくれる良作です
本のことが好き
書店が好き
古本屋が好き
図書館が好き
そして、本の持つ力を
信じている
そんな方の必読書
ではないでしょうか!?
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2016年02月07日
各書名言集(小説pert32)
久々に名言集をば
『利休にたずねよ』
―美しさは、けっして誤魔化しがききませぬ。
道具にせよ、点前にせよ、茶人は、
つねに命がけで絶妙の境地を
もとめております。
茶杓の節の位置が一分ちがえば
気に染まず、点前のときに置いた
蓋置きの場所が、畳ひと目ちがえば
内心身悶えいたします。
それこそ、茶の湯の底なし沼、
美しさの蟻地獄。
ひとたび捕らわれれば、
命をも縮めてしまいます。―
美しさをただ求める利休の
生きざまとは……?
紹介記事はコチラ
辻村深月著『ツナグ』
―プロポーズももちろん、
嬉しかったけど、
大橋さんや久美子さんに
紹介してくれた時も、
すごくすごく、嬉しかった。
こんな私のこと、
本当に好きで、
友達に彼女だって
言ってくれるんだって思ったら、
何度も何度も思い出し笑いして、
私、我ながらキモかった―
様々な人の心の声が描かれる
当作品ですが、このセリフもう
泣けちゃいます
紹介記事はコチラ
『花まんま』
―妖精生物は幸せを運んできた。
ただし、母にだけだ。
そして母のその幸せは、
私を含めて、家族の不幸せであった。
そんなものかもしれない。
すべての人間が
幸せになれることなど、この世には、
きっとありはしないのだ。
誰かの幸せの陰には、
必ず誰かの不幸せがある。
幸せというものの多くは、
たいていどこか歪んでいる―
紹介記事はコチラ
さてさて、まだ読んでいない作品、
是非是非読んでみてくださいね
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2016年01月18日
タイタンの妖女
さてさて、本日はこちら
たまにね、こういう
ドキツイものを読みたくなるんです
カート・ヴォネガット著
『タイタンの妖女』
うーん、凄まじいのに
出会ったなぁ!
(もちろん良い意味で)
という作品です
個人的な話なのですが
以前ご紹介した
『さようなら、ギャングたち』
みたいな話が読みたい
という時に見つけて
非常に満足した覚えがあります
最初は、何が起こっているのか
全く分かりません
何の話がはじまるのか……
あらすじを書いて
読みたいと思う作品もあれば
そこが問題では
ない作品もあると
思いますが
こちらは後者ですね
あらすじ、とか
そこじゃない。
問題にしたいのは
惹かれるのは
そこじゃない
読み始めてまず、一体
今から何がはじまるのか
全く分からない
そういう意味では……
うーん、、、
好みは分かれそうな
作品ではありますが……
読み始めてしばらく
しんどくても
少し辛抱して
読んでみてほしい
かと言って、後半になれば
ページを繰る手が
はやまるか、というと
そういう訳ではなく
読者を混乱させるような
時系列と出来事と
しかし、段々全体が
見渡せてきて
読みながらかなり
思考することになると
思います
こうなってくると、
この作品は最後まで
きっちり自分の中へ
落とし込んでいける
いや、一度では
難しいから
いつか再読しよう、という
そんな気分になる
とにかく、
魅力を持った作品で
あることは確かです。
SF?なのか、いや
SFではないのか
テーマは人間?運命?
地球?宇宙?幸福?
宗教???
全体として、
ドタバタ劇であることは
ドタバタ劇ではあります
しかし、ドタバタしているのに
それは予定調和的で
示された通りに
ドタバタしながら進んでいく
読者には最初に
ほとんど、その予定調和が
示されて
しかし、ドタバタしている
張本人たちは
そのことを知らない
(忘れている)
未来が分かるという
まるで「神」のような
ウィンストン・ナイルズ・ラムファード
彼によって様々な
人々は「完全に」操られ……
他人の血を流すことに対して
にこやかな熱心さを
持つラムファード氏により
利用されていく人々
その犠牲になった
人々によって
世界はどう変わっていく?
誰が幸せになる?
幸せとは何か?
人間とは?
ものすごく、刺激的な
ブラックユーモアで
描かれる群衆
そしてまた、最後に
唖然とするような
真実のようなものが
提示され
で、結局この話が
落ち着いた先は……?
意味が分からないようで
時に胸が苦しくなるほど
切なくて
生きていることを
放り出したくなる一方で
生きたいと思いたくなる、
そんな、濃い濃い作品です
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2016年01月15日
オーダーメイド殺人クラブ
一段と冷え込む
本日はこの一冊です
辻本深月著『オーダーメイド殺人クラブ』
主人公の名前は
小林アン
中学二年生
彼女は、スクールカーストの
上位に属する
「リア充」女性
派手でイケてる
「いい子」たちと
つるんで
運動部のイケてる
男の子と
付き合って
気が強くて
気に入らないことを
した子を「外す」ことは
しょっちゅうな芹香
そんな芹香に逆らわず
しかし他へも媚びを
売る倖
ほんの些細な事が
アンの世界では
命取りになってしまう
うんざりして、
げんなりして
そんなアンのママは
美人だけれども、
それだけ
全くイケてない
「赤毛のアン」が
大好きで、
ふわーっと
何も考えていない
アンのセンスを
分からない、
分かろうとしない
そんなママが
嫌いなアン
そんなママがつけた
アンという名前が
嫌いな、少女
そんな少女が
昆虫系とバカに
していた男子徳川
関わり合うはずのない
二人が、関わるのは
どんな時……?
中学生特有の
気まぐれで、それだけに
残酷な人間関係
それを余計に
ぐちゃぐちゃと
かき混ぜてしまう
大人たち
皆が注目している
皆が陰口を言っている
皆が、無視をしている
そんな皆は
つまらない、バカ
私はもう
疲れた、げんなり
うんざりと
アンは、皆の世界から
降りることを決意する
徳川に
私を殺して、と
頼むところからはじまる
アンの『悲劇の記憶』
何というか、生々しい
女子たちのやり取りは
相変わらずさすが、の
一言ですが
それにもまして、
アンの中二病さが
すごい。
全然分からないところも
あるというのに
何だか、分かる気がする
というところもある
中学生の時に感じていた
不満や鬱憤、が
濃く濃く描写されていて
なにこれ、ただの
中学生の日常じゃん、
なんて思っていたはずが
いつの間にか目が
離せなくなってしまう
頑張れ、も違うし
だからと言って
イケてる死に方を
してね、とも声を
かけられないし
だからと言って
間違っても
彼女に対して
命の重さ、だなんて
説けない
彼女の『悲劇の記憶』は
もう、はじまってしまって
いて、もう後戻りできない
少女らしい思い切りの
よさで、ポン、と
取り返しのつかないことを
勢いでしてしまえる
その恐ろしさよ
そんな彼女の決意を
助長するかのように
起こり続ける事件
そして、徳川という
何とも奇妙な存在
一体どうするのか
胸が苦しくなりながらも
心のどこかで
アンに綺麗に死んでほしい
なんて思い始めている
自分もいたりして……
女子同士のドロドロを
書かせると本当に
辻村さんはすごい
死気迫るものが
あります
是非是非
圧倒されてください
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