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2016年02月10日
さがしもの
さてさて、
本日はこちらです
角田光代著『さがしもの』
本をテーマにしたお話ばかりが
集められている短篇集です
おさめられているのは、
旅する本/だれか/手紙
彼と私の本棚/不幸の種
引き出しの奥/ミツザワ書店
さがしもの/初バレンタイン/
となっております。
なんだか不思議な本
生々しく自分の人生に跡を残した本
本をきっかけに、少し何かが変った話
とにかく、ただの本、なのに、
忘れられない、特別で世界で一冊だけの本
そんな本を沢山見ることができます
そして、そんな本のおかげで
悲しんだり、
不思議に思ったり、
どこか期待したり、
懐かしんだり、
切なかったり
なんて豊かな感情を
人は持つのだろう、
と思わされる、
そんなお話ばかり
穏やかながらも
目の前がゆっくりと
晴れ渡っていく
そんなお話もあれば、
かなり切なくて、
号泣、する訳では
ないんだけれども
心の奥から、くう、と
締め付けられるような
お話もあります
けれども、どれもが
何となく、あたたかくて
自分には全く関係ない
はずなのに、
何となく、身近です。
本がこの世界にあってよかった
全部読んだ後はきっと、
そんな気分になれる
じわじわと心を
満たしてくれる良作です
本のことが好き
書店が好き
古本屋が好き
図書館が好き
そして、本の持つ力を
信じている
そんな方の必読書
ではないでしょうか!?
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2015年06月29日
紙の月
はやくも月曜日。
眠たいですが
頑張りませう
さてさて、本日はこちらです
角田光代著『紙の月』
――わかば銀行の支店から一億円が横領された。
容疑者は、梅澤梨花四十一歳――
ごくごく普通の、
いや、普通ではなく
人一倍正義感を持った、
元クラスメイトをして
正義の人、
と言わしめる
梅澤梨花。
美しく、昔から一目
置かれる存在だったのですが
当人はあまり
そのことには
気づいていなかったよう
元クラスメイト達視点の
描写も入り混じって
なぜ?
なぜ彼女が?
どうして、ねえ、
どうして
そんなことをしたの、梨花?
そう十分に読者に
思わせたところで
少しずつ、その背景が
見えてくる、
平凡な結婚生活
しかし、その
平凡な結婚生活を
営む中で
夫正文とのやりとり
何となく、違和感が
あると思うんですね
正直に言ってしまうと
女性目線からすると
正文が、いや〜な奴、に
見えてくるんです。笑
ただ、本人は
全く悪気がない
むしろ、彼自身の言動は
しごく当然のものだと
思って疑いもしていない
そして、梨花も
何も言えない……
何か違う、と
思いながら
でも、正文が正しいのだと
頭では、そう
理解することしか
出来ない
彼女は、根本的に
不器用だったのでしょうか
自分の心が発する
警告音が、一体
何を指しているのか分からず
結局呑み込んでしまう
でも、そうする中で
彼女の中で少しずつ少しずつ
自分を認める気持ちのような
ものがすり減っていく
そうして、気付けばもう
中年と呼ばれる年齢に
さしかかっているんです
子どもも出来ぬまま、
よく分からない
焦りが梨花を締め付けていく
養ってもらっているという
当たり前の事実に
愕然として、パートを
はじめざるをえなくなる
彼女の精神的に、です
彼女は、自分を認められる
何かが欲しかったような
そんな感じがします
そして、その気持ちは
丁寧に描写されているがゆえに
とてつもなく響きながら
伝わってくる
もう、こんな年になってしまった
夫とは何となくすれ違って
子どもも諦めて
自分は駄目だと
言われているような、
そんな焦燥感。
そして、心の奥底で
追い詰められていた彼女は
偶然、自分に価値が
あるのだと思わせてくれる
ものに出会ってしまう
それは、幻想でしか
ないのに。
その幻想を、強引に
彼女にしては珍しく
強引に強引に
手中に収めようとする
しかし、その幻想には
お金が必要になってくる
だから、だから……
普通の常識人のようだった
梨花が、どんどんと、おかしく
なっていってしまうのが
恐ろしくって恐ろしくって
何度息をつめたことか…。
元々、普通なようで
どこか普通じゃなかった
梨花に様々な要因が
重なって起きてしまった
そんな事件
破滅へと、どんどん
突き進んでいく
展開は、はやいような
遅いような、もう
分からない
ただただ心臓が鳴って鳴って
仕方がありません
思わず一度離脱して
呼吸を整えたくなります
この本を読んだ後
しばらくは
ちょっと気分が落ち込んだり
苛々としたからといって
コンビニで甘いものを
買った瞬間などに
ちらっと、最初は少し、
からどんどん
エスカレートしていった
この物語がよぎって
ぶるぶると身震い
してしまいました笑
まぁ・・・
百円単位のお菓子では
いくらなんでも
おかしなことには
ならないでしょうが笑
(という油断が
恐ろしいのでしょうか)
ありえない、ように思えつつ
とてつもなく、ありえる
ようにも思える……
梨花というキャラクターも
この物語の展開も。
ありえない、と
鼻で笑いながらも
不覚にも
現実の中でふと
思い出して、ぞわ、と
鳥肌が立つような、
そんな現実味が
あるように思うのです
自分はそんなこと
なるわけないし
現実にそんなこと
起こるわけない
正直、そう思うのです
しかし一方で
そう思うことが
恐ろしく感じてしまうような
そんな何かがこの
小説にはあります
ちなみに、
私は蚤の心臓なので
一気読みは
できませんでした笑
しかし、最後まで、
どうやったって
読まずにはいられない
作品だと思います
是非是非。
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タグ:小説
2014年10月30日
空中庭園
本日ご紹介するのは、こちら
角田光代著『空中庭園』
何と言いますか、最初は、ちょっと、何だか変わっているけれども
羨ましいな、なんて個人的に思ってしまったほど
一見とっても仲が良い家族。
その、家族それぞれ一人一人の視点が切り替わりながら、
章が変わっていく形式の小説です。
セントーバッターは娘のマナちゃん。
お母さんの決めたルール
隠し事は絶対にしないこと!
家族のだれかの誕生日には必ず誕生パーティ
勿論、娘の彼氏が誰かは家族皆が知っているし
なんとお母さん、娘に私はどこで生まれたの?と聞かれて
躊躇無く、ラブホテル野猿ってとこ、なんて答えてしまうくらい
徹底して「隠しごとはなし」(いや、本当に変わってるなとは思いました苦笑
お父さんと、お母さんは元ヤンで、結婚してヤンキーやめて
今の生活があるんだよねーなんて、娘が言って
あー、なるほど…この異様なテンションはそれで…???
と、微妙に納得したりしなかったりするのですが
しかし…
視点が父親に切り替わって、読者はぞっとします。
あるわあるわ、隠しごと。父親もあるし、母親もあるある……
父親もどうしようもないダメ男だけれども、
しかし母親のことを思うと同情したりしなかったり
いや、阿呆であることに変わりはないんだけれども…
そして、章は表題「空中庭園」お母さん視点です
確かに、この小説、一番の中心はなんだかんだ、
お母さんな気がするんですね
彼女が抱えている秘密と闇と……
非常に複雑で、深刻で、どうしようもない
それを押し隠して、幸せな主婦をヒステリックに演じる彼女は
見ていて気の毒なような、苛々するような、でも、やはり気の毒
そんな過去があったのか、と読者が思ったところで
視点がまたまた切り替わり、
今度は先程お母さんがボロクソにけなしていた
人物の視点に移り、またまたそれまで
知らされていなかったことが明るみに出て…
この小説のすごいところは
視点が切り替わる、章が変わるたび
それぞれの人物像ががらっと
変わっていくところだと思います
そしてもう何が真実なのか、何が秘密なのか
自分であいつは知らないけれども…と語っていても
実はその秘密はばればれだったりだとか
人間関係と、それぞれの持つ事情が闇でかつ複雑
最初は、少しここの登場人物と世界が違い過ぎてどうも共感もできず
飽きちゃうんじゃないかな、なんて思っていたのですが
気づけばすっかり引き込まれてしまいました笑
なんだか少しぞわぞわと怖いお話ではありますが
如何でしょうか?
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角田光代著『空中庭園』
何と言いますか、最初は、ちょっと、何だか変わっているけれども
羨ましいな、なんて個人的に思ってしまったほど
一見とっても仲が良い家族。
その、家族それぞれ一人一人の視点が切り替わりながら、
章が変わっていく形式の小説です。
セントーバッターは娘のマナちゃん。
お母さんの決めたルール
隠し事は絶対にしないこと!
家族のだれかの誕生日には必ず誕生パーティ
勿論、娘の彼氏が誰かは家族皆が知っているし
なんとお母さん、娘に私はどこで生まれたの?と聞かれて
躊躇無く、ラブホテル野猿ってとこ、なんて答えてしまうくらい
徹底して「隠しごとはなし」(いや、本当に変わってるなとは思いました苦笑
お父さんと、お母さんは元ヤンで、結婚してヤンキーやめて
今の生活があるんだよねーなんて、娘が言って
あー、なるほど…この異様なテンションはそれで…???
と、微妙に納得したりしなかったりするのですが
しかし…
視点が父親に切り替わって、読者はぞっとします。
あるわあるわ、隠しごと。父親もあるし、母親もあるある……
父親もどうしようもないダメ男だけれども、
しかし母親のことを思うと同情したりしなかったり
いや、阿呆であることに変わりはないんだけれども…
そして、章は表題「空中庭園」お母さん視点です
確かに、この小説、一番の中心はなんだかんだ、
お母さんな気がするんですね
彼女が抱えている秘密と闇と……
非常に複雑で、深刻で、どうしようもない
それを押し隠して、幸せな主婦をヒステリックに演じる彼女は
見ていて気の毒なような、苛々するような、でも、やはり気の毒
そんな過去があったのか、と読者が思ったところで
視点がまたまた切り替わり、
今度は先程お母さんがボロクソにけなしていた
人物の視点に移り、またまたそれまで
知らされていなかったことが明るみに出て…
この小説のすごいところは
視点が切り替わる、章が変わるたび
それぞれの人物像ががらっと
変わっていくところだと思います
そしてもう何が真実なのか、何が秘密なのか
自分であいつは知らないけれども…と語っていても
実はその秘密はばればれだったりだとか
人間関係と、それぞれの持つ事情が闇でかつ複雑
最初は、少しここの登場人物と世界が違い過ぎてどうも共感もできず
飽きちゃうんじゃないかな、なんて思っていたのですが
気づけばすっかり引き込まれてしまいました笑
なんだか少しぞわぞわと怖いお話ではありますが
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