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2017年05月16日
女王はかえらない
ご無沙汰でしたが
まあ、ぼちぼち。
降田天著『女王はかえらない』
第三十回
『このミステリーがすごい!』
大賞を射止めた作品です
大きく3部構成になっており
特に2部からミステリーの
色が出てきますが……
個人的にミステリー関係なく
非常に濃くて
つくりこまれた作品だと
思います
勿論ミステリーとしても
非常に秀逸な作品で
読了後もう一度
目をかっぴらいて
読み直したくなるほど
衝撃的な
ラストではありますが
それまでの伏線と
なっている
針山小学校の
子ども達が
描かれた
第一部も中々に
心を抉ってくる
出来栄え
一部だけでも十分、
満足できる位……
それだけに
2部、3部の満足感は
半端ではありませんが!
各学年2クラスしかない
針山小学校の
三年一組
そんなクラスの
「女王様」がマキ
圧倒的な権力を持って
何かを決める時には
必ず彼女の声が
鶴の一声となる
彼女の
トレードマークは
いつも髪に着けている
ハートのパッチンピン
ハートのパッチンピンを
つけていいのは
マキだけ。
「階級」の高い
女子は星柄の
パッチンピンを
着けることを
許され
それより下は
ストライプや
チェック
さらに下は
無地……
女の子たちは
少しでも
マキに気に入られようと
そうすることで
スクールカーストで
少しでも上位へ
食い込もうと
必死です
そんな三年一組は
そのまま持ち上がりで
四年一組になり、
今までと同じように
マキによって
クラスが支配
されていくのだと
「オッサン」こと
語り手となる「ぼく」
は思っていたのですが……
始業式にやってきた
転校生エリカ
東京からやってきた
彼女は、
田舎のぼく達には
遠い世界
英会話とピアノと
バレエを習い
パッチンピンではなく、
バレッタを髪につけ
ふんわり微笑む
挨拶に来ない転校生に
しびれを切らした
マキが
「なんでパッチンどめ
着けないの?」
と苛々と詰め寄ると
「へぇ、今、
流行ってるんだ。
前の学校では、
三年生の夏頃に
流行ってたよ」
何気ないような
一言であっさりと
マキを言い負かした
エリカの登場に
クラス内の体制が
徐々に変っていき……
基本的にはマキにも
エリカにも
我関せず、
「変わり者」という
キャラクターと
なることで
スクールカーストから
外れて
クラスの中での
激しい権力闘争を
眺める「ぼく」
そんな「ぼく」視点は
冷めているのですが
それゆえに
彼女達の残酷さを
非常に克明に
映し出します
権力闘争の中心に
なっている
エリカとマキや
その取り巻きだけではなく、
一見関係なく
遊んでいるだけの男子や
「ぼく」のような
はずれ者も確かに
関わっていく中で
目まぐるしい毎日が
過ぎていくクラス
元々はマキに
最も気に入られていた
一人「ミッキー」
どこか不気味な
いじめられっ子「モック」
クラス内での問題
いじめ全てを
見ない振りで
通す担任の先生
そんな担任の先生に
やたらと懐いている
「コージー」
そして、「ぼく」の
幼馴染で
誰にでも優しく
正義感の強い「メグ」
様々な思惑を含んだ
クラス全体を巻き込んで
エリカとマキは
闘争を繰り広げ……
とある決定的な事件に
より、その闘争は
終わりを迎えたかに
見えましたが……
相手をどこまでも
どこまでも
傷つけようと
躍起になる……
そうすることが出来る
小学生
無邪気で単純で
感情的で自分が一番
であると絶対の
自信を持っているからこそ
相手に対して
ぶつけることの出来る
直接的な言葉の暴力
嫌がらせ……
子どもならではの
目を覆いたくなるような
残酷さ。
まさに惨状と化した
クラスはどうなってしまうのか……
スクールカーストを
モチーフとした
話というのは
珍しい訳では
ないのかもしれませんが
語り手が完全なる
傍観者である「ぼく」
であるという点
そして、女子同士による
激しいいがみ合いの
傍ら、どうやら
他のクラスメイトによって
引き起こされたらしい
小さい(しかし「ぼく」達に
とっては大きい)事件
エリカとマキとの対立も
見応えはあるのですが
圧倒的な力を持って
互いに傷つけ合う彼女達は
実は、物語の中心にはいない
物語の中心は
あくまで四年一組。
おそらく、ここが
読者に読ませるのでは
ないか、と思います
そうしてがっくりと
気力を吸い取られた
第一部に続く
第二部、第三部は
まさにミステリー
一部で明かされなかった
伏線も回収され
心の奥におぞましさを
存分に刻んで
物語は幕を閉じます
とにかく、満足感が
すごい作品です
本当に、一部だけでも
十分すぎるくらい
お腹一杯なんですもの
それに被せてくる
第二部、第三部の
破壊力がまたすさまじい
是非とも
読んでみてください
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