2016年09月01日
廃市・飛ぶ男
9月です。読書の秋へと
入ってまいりました
こんな季節に
読みたい作品です
福永武彦著『廃市・飛ぶ男』
収録されているのは
「夜の寂しい顔」「影の部分」
「未来都市」「廃市」
「飛ぶ男」「樹」
「風花」「退屈な少年」
の8編
哀しいものは美しい
それ故
哀しいものが
好きなのですけれども
だからと言って
哀しいものが
全て美しい、と
いう訳でもなく
はぁ、と気だるげに
だけれども
十分その世界へ
入り込んで
美しさを堪能できるような
そんな数少ない
作品ではないか、
と思います
表題作の「廃市」
滅んでいく、死んだ町
水の町、田舎
目の前に風景が
浮かぶよう
それも自分の記憶として
浮かび上がるような
そんな、不思議な町が
舞台となって
人間の哀しさ
愛することって
何なのだろうか
擦れ違いというのか、
心の複雑さと言うのか
やりきれないながらも
愛おしいような
登場人物たちの
動きが秀逸です
最後の方では
衝撃的な真相が
明かされたはずで
あるのに、
衝撃が伝わって
こないほど
この作品を読んでいると
心が、すう、と
内省的になって
しまいます
哀しく美しい作品
「飛ぶ男」はうって
変わるようで
鬱々とした雰囲気は
やはり同じ
こちらは、独り
ぐっと、孤独が
語られる
やはり、魅せたいと
思うところで
読者に見事に
魅せているなぁ、と
いう印象です
最後、すこうし、
後ずさりたく
なるような、
そんな迫力があります
個人的には、
「未来都市」と「樹」が
大好きですね
どちらも愛と孤独とが
ぐにゃぐにゃと
世界を歪めそうな
それら二つが
鮮やかに描かれていて
複雑でわからない
登場主人公たちの、
その「分からない」
ところが、魅力とでも
いいましょうか
でも、分かる気も
するんです
哀しいかな。
切実な思いが
迫ってくるようにも
思うんです。
「未来都市」は
読み返してみると
かなりドラマチックな
話の展開になっている
のですけれども
やっぱり、読んでいる間は
ずーっと、静か
本当に、秋風を
感じながら
ゆったりゆったり
読みたい作品なんです
この本に収められている
作品は、それぞれ
似ているようで
似ていないようで
一貫した雰囲気が
あるように思います
静かに夢中に
なれてしまう、と
いうのも魅力です
登場人物たちは、
ぐつぐつと心の中で
孤独に苛まれて
いたり、
不幸な愛を貫こうと
したり、
逆に、そんな自分に
気がついて
はっと目覚めてしまったり。
激しいけれども、
静かな静かな
心の動きが
そのまま哀しく美しい
是非、冬にならない
うちに、じっくり
考えながら
読んでみてください
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