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2015年06月09日

夜のふくらみ


おはようございます
雨が降ったり止んだり……
折り畳み傘が必須な
お天気ですね…

さてさて、本日はこちらです

窪 美澄著『よるのふくらみ
夜のふくらみ.png


商店街で育った
みひろ、圭祐、裕太
三人の間の
微妙な、少しどろっとした
恋愛模様が
描かれます

それぞれの章ごとに
視点が切り替わっていくので、

三者三様の不満や、悩み
といったものが
生々しく語られていく

かつて、みひろをいじめた
男の子たちを
殴った圭裕

とても「優しい」彼は
商店街の中でも
評判は良いようですが

みひろは彼に対して
決定的な不満を
持ち始めてしまいます

両者の間にある
すれちがい感が
全く払拭されることもなく
過ごすうちに

みひろの心に
入り込んできたのは
圭祐の弟、裕太……


と、第一章から
修羅場を感じさせる
物語展開なのですが

一方で、ありがち、といえば
ありがち、のはずなのに

『晴天の迷いクジラ』同様、
テンポは遅いのですね
読んでいて、
うっうっ、と読み進めていくのが
辛いくらい

登場人物の、鬱屈した
儘ならない気持ちが
どろどろどろ、と
語られていく

にも関わらず
こうまで読者を引き込むのは…
お見事としか
言いようがありませんね

章が進むにつれて
三人の過去が
少しずつ見えてき、

三人の本当の
商店街での立ち位置
のようなものも
見えてくる

例えば、先程の
圭祐が、みひろを
いじめた男の子を
殴ったのは
単純にみひろが
好きだったから、
だけではなかったのか……
と衝撃を受けたりする訳です笑


視点が切り替わる度に
圭祐何気に自己中心的なだー
祐太、デリカシーないなー
みひろ、うじうじしてばっかだなー

と、順番に主人公達の
嫌な所が目についてくるのですが

特に圭祐と祐太の
対比は見事で

お互い、見事に
長所と短所が
反対といいますか…

圭祐の短所の部分は
祐太の長所によって際立つし

祐太の短所は
圭祐の長所によってより目立つ

これがまた、兄弟、
というのが、
子どもの頃から、お互いに
兄弟で、仲も悪くはないのだけれども
すれ違いを起こしている

ここらへんの描写が
リアル、本当にリアル

個人的に圭祐は
好きになれないのですが
圭祐目線で語られる
家族との関係や
弟祐太の能天気さへのいら立ちは

長女として、うわ、分かる……
と、とてつもない感情移入を
してしまいました


これといって、何か
特徴がある訳でもない
普通の、どこにでも
いそうな人々の
気持ちや人生を

ここまでリアルに描く、
というのも、
なかなか出来そうで
出来ないことだと
感じます……


心情描写が丁寧な
物語が好き、という方

大人でダークな
恋愛小説が好き、という方は

必見です





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posted by at 09:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 窪美澄

2014年10月20日

晴天の迷いクジラ


さてさて、本日ご紹介するのは、こちら

窪​美​澄著『晴天の迷いクジラ
晴天.png


こちらの作品、かなりブルーなお話です

何せ、3人いる主人公は皆
自ら命を絶とう、とう思っている人々

偶然がいくつか重なって
死ぬ前に、
湾に迷い込んだと話題になっている
クジラを見に行こうと

元々は見ず知らずの3人は
共に行動をはじめます

まず、前半、その3人の過去が
順番に語られていきます

本当に、自分とは全くもって
関係の無い話なのに
どうしてこうも感情が移入してしまうのか
不思議なくらい
当時の状況と共に、
彼らの心が絶妙に描き出されています

生きる希望なんて無い、そう
言っている彼ら彼女達を
もう、何だかどのように止めたらいいのかも
分からないくらい

思い詰めているのが伝わってきて
胸が苦しくなってしまう

それくらい思い詰めているというのに
三人は三人とも、
自分でない誰かが
自分の目の前で自殺することに
嫌悪感を覚えずにはいられない

いやー、もう、死んじゃおうっかな
どーせ、私が死んだって、忘れるでしょ、皆

そう思う一方で

私の目の前で、あんたに死なれるのは嫌

な訳ですね。

そんな3人が、クジラのいる湾に到着し
仕方が無いから親子のふりをしながら
そこの人々と触れ合い

そして、またここでも
様々な痛みを抱える人に出会う

そんな中で、三人に、読者に
このお話は語りかける

自殺って一体どういう死に方なのか?

残された者の後悔とはどのようなものなのか?

ずきずきと伝わってきて、
そして、そんな人間達と並行して
「死」が見えているクジラの描写

これほど暗くありながら、
これほど人に希望というか
生きる勇気を与える作品というのが
素晴らしいと思います

是非、読んでみて下さい









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posted by at 20:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 窪美澄
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紹介記事は こちら


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とうとう旅に出てしまった。 離陸した飛行機から、 群青の成層圏の空が見えたとき、 ぼくはこの星が好きだと思った。 どうしてなのか考えて、気がついた。 この星には、きみが住んでいる。 きみが住む星をぼくは旅する
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