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メル・アンド・ティムの逆襲

 既視感という言葉があります。
 はじめての出来ごとにもかかわらず、以前に体験した記憶があるという感覚です。
 デジャヴと言われるものですね。
 私は、このMel And Timの同名アルバムを聴いて、まさにその感覚にとらわれたのでした。


Mel And Tim

1. Keep The Faith
2. Same Folk
3. Oh How I Love You
4. Yes We Can-Can
5. I Would Still Be There
6. Making Love Is My Thing
7. It's Those Little Thigs That Count
8. Aint No Love In My Life
9. That's The Way I Want To Live My Life
10. Forever And A Day


 このアルバムは、72年にバリー・ベケットとロジャー・ホーキンスの制作により、マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで吹き込まれ、73年ないしは74年頃にリリースされたようです。

 ほとんどの曲をPhillip Mitchellが書いており、ミッチェル・ワールド全開の、ムーディーかつジェントル、そして適度にサッドな雰囲気の曲が、これでもかと続きます。

 このアルバムを聴いた私は、2度めを聴く前、早くも、どうも聴いたことが有るような気がすると思い始めていました。

 多分、このミッチェル独特の曲調が、そう感じさせるのだろうと思いましたが、とりあえず気になることを確認してみました。

 まず、フィリップ・ミッチェルの2枚の未発表曲集、Just The BeginningPick Hit Of The Weekの収録曲をチェックします。

 この2枚は、優良リイシュー・レーベル、グレイプヴァインから04年と06年に出されたもので、サザン・ソウル・ファンにとっては、同社から出されたGeorge Jacksonの同趣旨の作品集とともに、宝もののようなアイテムです。
 いずれも、ソング・ライターである彼らが、シンガー向けに作成した、本人歌唱によるデモ集でした。

 2枚を確認しましたが、ここには今回のMel And Tim収録曲の本人盤はありませんでした。

 そこで、今度は、ミッチェルがプリンス・フィリップ・ミッチェル名義で出したアルバムを引っ張りだしてきました。
 78年のMake It Goodと、79年のTop Of The Lineです。
 しかし、うすうす予想し始めていたいたとおり、こちらも該当なしでした。

 では、なぜ「聴いたことがある」と感じたのでしょう?
 やはり、ミッチェルの作風そのものが、共通の匂いのようなものを発していて、それを感じただけなのかも知れません。

 私は、あきらめて再度聴き通すことにしました。
 素晴らしい音楽だと思います。

 南部録音ではありますが、フィリー・ソウルのグループものを思わせる、スムースで胸に迫るような感じがたまりません。
 ストリングスが甘すぎないのが、南部の音なんでしょうか。

 しかし、逆にいうと、あまりデュオである必要性が感じられない楽曲であり、編曲です。
 サム・アンド・デイヴのような、ガッツ溢れる掛け合いなどとは全く別のタイプの曲になっています。
 リード・シンガーと分厚いムーディーなコーラスがあれば充分という感じで、ソロ・シンガーか、ソウル・グループに、より適した曲のように思えてきました。

 そこで、同じくフィリップ・ミッチェルが書いてヒットした、Starting All Over Againを収録した同名アルバムを、久しぶりにおさらいしてみることにしました。

 そして、私は気が付いたのでした。
 私が所有しているアルバムは、92年にリイシューされたもので、4曲のボーナス・トラックが追加されています。

 その4曲こそ、今回のアルバムに収録されている、Same FolkYes We Can-CanIt's Those Little Thins That CountForever And A Dayなのでした。

 ライナーによれば、この4曲は、Starting All Over Again収録曲と同時期の72年4月に録音されたと記されています。
 この4曲が、2枚の先行シングルの両面なのかと思いましたが、確かに3曲はシングル曲ですが、Yes We Can-Canは違うようです。

 これからいくと、今回のアルバム収録曲も、全て同時期に収録された可能性も考えられます。
 アルバムStarting All Over Againに参加しているドナルド・ダック・ダンの名前が、今回のアルバムには見当たりませんが、眼につく違いはその程度です。

 もちろん、プロデューサーも同じですので、もしかすると、アルバムMel And Timは、Starting All Over Againのヒットで、急きょ組まれたアウトテイク集だったのかも知れません。

 Starting All Over Againが、サム・アンド・デイヴや、ジェイムズ・アンド・ボビー・ピューリファイのカバー曲や、ダグ・サーム盤で大好きになった、ドン・アンド・ファンのWhat's Your Nameなど、他人のヒット曲を入れた、会社の売らんかなという姿勢が見えるのに対して、今作はあっさりと地味なラインナップになっていることからも、そんな想像をたくましくしてしまうのでした。

 真相は、英文ライナーの中にあるのかも知れませんが、それを読み下す気力も能力もない私としては、ただひたすら、魅惑のミッチェル・ワールドに浸るのみなのでした。






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 メル・アンド・ティムのおさらい


クリスマスはテキサスで陽気に

 一神教では、神は唯一絶対の造物主として、世界の全ての事象を創造しました。
 人間を含め、被創造物をクリーチャーといいますが、これはクリエイターに対峙する言葉です。

 創作活動をする人をクリエイターといいますが、通常、神をあらわすときは、定冠詞のTheを付けます。

 悪魔は、神に敵対する存在ではありますが、悪魔もまたクリーチャーですから、神の創造物です。 


Merry Texas Christmas, Y'all
Asleep At The Wheel

1. Feliz Navidad : featurling Tish Hinojosa
2. Xmas In Jail
3. Swingin' Drummer Boy
4. Merry Texas Christmas Y'all
5. Pretty Paper : featurling Willie Nelson
6. T'was The Night Before
7. Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow
8. Jingle Bell Boogie
9. A Christmas Wish
10. Silver Bells
11. Here Comes Santa Claus
12. Silent Night : featurling Don Walser, Willie Nelson
13. Swingin' Silent Night


 というわけで(?)、今回は、Asleep At The Wheelの楽しいクリスマス・アルバムを聴きます。
 アスリープとしては、初のクリスマス・アルバムで、97年にHigh Street Recordという会社からリリースされました。

 このときのメンツは、ギター、ピアノ、スチール・ギター、サックス、ベース、フィドル、ドラムスからなる7人編成で、スチール・ギターは、紅一点のシンディ・キャッシュダラー、ドラムスは、デイヴ・サンガー、そして、フィドルは、ジェイソン・ロバーツです。

 現在では、アスリープの要のひとりして、レイ・ベンスンに代わってリード・ボーカルを取ることもしばしばあるジェイソンですが、この時点ではまだ発言力が弱かったようです。
 基本的に、伴奏に徹しています。

 ゲストとして、元メンバーでピアニストのフロイド・ドミノや、元テキサス・プレイボーイズのフィドラー、ジョニー・ギンブル、これまたゲストの常連、ウイリー・ネルソンが参加しています。
 そして、このアルバムで特に嬉しいのは、ティッシュ・イノホサが参加していることです。

 冒頭のFeliz Navidadは、トラッドをレイがアレンジしたと記されていますが、曲が始まると、テックス・メックス・コンフントを思わせる、印象的なアコーディオンが鳴り響き、思わずトレイに誤ったディスクを載せたのかと思ってしまいす。 

 しかし、ティッシュ・イノホサとレイのデュエットが始まると、想像力を掻き立てられずにはいられない、素晴らしいボーダー・ソングの魅力で、一気にアルバムの世界観に取り込まれていきます。
 ケイジャン・ツー・ステップ調の、ウキウキするようなパーティ・チューンになっています。
 ここで、達者なアコを弾いているのは、ブラッドリー・ウイリアムスという人です。

 続く、Xmas In Jailは、監獄でのクリスマスということでしょうか、歌詞の内容がよくわかりませんが、ユーモラスな曲調と歌い方で、これまた楽しくさせてくれる曲です。
 サックスの軽いブロウも、愉快な雰囲気を盛りたてています。 

 ウイリーの作品、Pretty Paperでは、ウイリーが和みのボーカルを聴かせますが、この曲は、後に07年のSanta Loves Boogieでも再び取り上げられ、やはりウイリーがゲスト参加して歌っています。

 T'was The Night Beforeは、レイが書いた曲で、歌詞が知りたくなる曲です。
 なぜなら、この曲には、恐らくはテキサスの偉大な音楽家の名前が、何人も盛り込まれているようだからです。

 私が分かった範囲では、ボブ・ウィルズ、テックス・リッター、バディ・ホリー、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジャニス・ジョプリン、Z.Z.トップ、T-ボーン・ウォーカーなどなどの名前がモノローグで語られています。 

 スタンダードのLet It Snow, Let It Snow, Let It Snowや、Silver BellsSilent Nightなどでは、フェイクなしで、カントリー版クリスマス・ソングを楽しく聴かせてくれます。

 まさに、このアルバムは、「楽しく演奏する」ということがテーマになっているようです。
 全体的に、ノリよりもアット・ホームな楽しい雰囲気づくりに気を配った仕上がりになっています。

 タイトルにブギとつく曲も、ジャンプ風のものはなく、楽しいカントリー・アレンジで仕上げています。

 ジョニー・ギンブル作のA Christmas Wishは、繊細なフィドルとスチール・ギター、そしてピアノのアンサンブルが、心を浄化してくれるような、静かな美しい曲です。

 クリスマス・アルバムではありますが、普通に楽しめるアルバムです。
 あえて言うなら、ブラック・フィールな味付けを控えめに押さえた、あくまで幸せなムードの中、1枚を聴き通すことが出来る、お勧めのアルバムになっています。







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 スウィンギン・クリスマス
 アスリープ、大きくホップする
 うたたね運転の旅立ち
 シェイキーのロッキン・クリスマス
 懐かしのソウル・クリスマス


モダン、ケント、RPM…、ビハリ兄弟物語

 コンピレーションが好きです。
 最近は、アイデア勝負のニッチなコンセプトものが出たりしていますが、話のタネとしては面白いですが、長く楽しめるものはまれです。

 逆に、ごく普通のコンセプトながら、一定の制約の中で自由度を高めたものが、結果的に満足度が高かったりします。
 
 レーベルのストーリー・コンピには、しばしば新鮮な驚きを感じることがあります。
 年代別コンピでも感じることですが、普段から聴きなれた曲が、まったく違った印象を与えてくれることがあるからです。

 ここでは、シカゴ・ブルースとか、ウエストコースト・ブルースとか、あるいはドゥワップとか、ロックンロールとかいったカテゴリーは、意味がありません。

 サブ・ジャンルではなく、別の視点で聴いたとき、「なぜ、この魅力に今まで気付かなかったのか」と眼を開かされることがあるものです。


Modern Records Story
the Very Best of the Modern Labels

1. I Can't Believe What You Say - Ike & Tina Turner
2. Tramp - Lowell Fulson
3. Dust My Blues - Elmore James
4. Three Hours Past Midnight - Johnny 'Guitar' Watson
5. Goodnight My Love (Pleasant Dreams) - Jesse Belvin
6. Mary Lou - Young Jessie
7. Cubano Jump - Ike Turner
8. Stranded In The Jungle - The Cadets
9. Why Don't You Write Me - The Jacks
10. My Baby Stole Off - Howling Wolf
11. Cherry Pie - Marvin & Johnny
12. No More Doggin' - Rosco Gordon
13. Oop Shoop - Shirley Gunter
14. Jake Head Boogie - Lightning Hopkins
15. Mama's Little Baby - Junior Thompson
16. Eddie My Love - The Teen Queens
17. Blues Before Sunrise - Elmore James
18. Three O'Clock blues - B B King
19. Go Devil Go - Ira Mae Littlejohn
20. In The Mood - John Lee Hooker
21. Texas Hop - Pee Wee Crayton
22. Peaches 'N' Cream - The Ikettes
23. Good Rockin' Daddy - Etta James
24. The Girl In My Dreams - The Cliques
25. The Big Break - Richard Berry
26. Gonna Tell Your Mother - Jimmy McCracklin
27. I Need Someone (To Love Me) - Z.Z. Hill
28. All Night Long - Joe Houston
 

 このモダン録音集は、CD1枚に有名アーチストから1発ヒットまで、過不足なく配置していて大変聴きでがあります。

 英エイスが取り組んできた、モダン、ケント、フレア、ミーティア、RPM、クラウンなど、モダン・グループのリイシューのサンプラーでもありますが、その分、中身の充実度は半端じゃありません。
 この種のコンピレーションの教科書的1枚だと思います。

 改めて聴いてみて、やはりかっこよくて、うれしくなってしまいました。
 ジェシ・ベルヴィンのGoodnight My Love (Pleasant Dreams)のような、ドゥ・ワップに通じるドリーミーな曲があるかと思えば、ごりごりに弾きまくるエルモアのDust My Blues/Blues Before Sunriseや、メロウなBBキングのThree O'Clock Blues、そして、この時代に最も輝いていたロッキンR&Bのロスコー・ゴードンのNo More Doggin'や、エタ・ジェイムズのGood Rockin' Daddyなど、次々に登場するカラフルな曲調の変化が新鮮です。 
 カオスの勝利といいたいです。

 とりわけ、この流れの中で、はっと驚かされるのは、BBキングのThree O'Clock Bluesです。
 その後、当たり前になる効果的なスクイーズやビブラートの多用など、ひとりで数年後を進んでいるかのような、革新的な音に聞こえます。

 アイケッツのPeaches 'N' Creamも、昔からあるスタイルですが、最高にかっこよく決めていて印象に残ります。
 改めてモダン・レコード・グループの芳醇さに酔ってしまいます。

 私が、このアルバムを手に入れたのがいつごろか、覚えていませんが、これをきっかけに、個別のアーチストに関心を持った例が少なくありません。

 B.Bに本格的に目覚めたのも、アイク・ターナー(とその周辺)に興味を持ったのも、このコンピが契機だったような気がします。

 B.B.では、英エイスのクラウン原盤をベースにしたシリーズ10枚が、ヴィテージ期では最高でしょう。
 アイク関連では、やはり英エイスが出したアイクのインスト集や、アイケッツの単独アルバムは愛聴盤です。
 
 ところで、モダンといえば美女のジャケットですので、新たにリイシューを組むときは,ぜひ美女ジャケ仕様で出してほしいものです。





オール・ユー・ニード・イズ・グッバイ

 記憶の彼方にあった音楽は美しいです。
 かつて、親しい友人には、ブルースやソウルのファンと広言し、日本の曲は聴かないよって言っていた手前、アイドル・バンドが好きだなんてとても言えませんでした。

 でも今なら言えます。
 当時からThe Good-Byeが好きで、テレビに出演したときは、いそいそとブラウン管の前に陣取っていました。


READY! STEADY!! THE GOOD-BYE!!!
The Good-bye

ディスク1
1. TAKE OFF
2. 涙のティーンエイジ・ブルース
3. グローイングアップ・デイズ
4. モダンボーイ狂想曲
5. Midnight Train
6. 浮気なロンリーガール
7. YOU惑−MAY惑
8. LOVE AGAIN
9. にくめないのがニクイのサ
10. 摩訶 WHO SEE 議
11. P.S. LOVE ME DO
12. 素顔のままで
13. とLOVEるジェネレーション
14. 気分モヤモヤ サラサラ チクチク
15. Summer 1963
16. TWO NIGHTS (トゥナイト)
17. GOOD,NIGHT(Hark,the Angels'come)
18. YES!YES!!YES!!!
19. OUT OF THE TIME
20. 僕色に染めて
21. 白夜のREVOLUTION
22. ANOTHER WORLD (SHORT VERSION)
23. Presentにはハムスター

ディスク2
1. 浪漫幻夢 (Romantic Game)
2. のぞいてFeel Me,Touch Me
3. Lonely Night
4. Dear Winston
5. マージービートで抱きしめたい
6. DO YOU LOVE ME
7. 祭り気分で TAKE A CHANCE
8. TAKE MY HEART
9. Good Lovin'
10. Don't Stop Kiss
11. Somewhere in Time
12. 僕らの祈り
13. Faraway
14. 25ans
15. Hong Kong Blues
16. Hey, Girl
17. TRUE LOVE
18. Windy People ~パレード (TAKE OFF)
19. WILD LIFE
20. Forever Friends
21. 気まぐれOne Way Boy


 洋楽ファンなら、くすぐられる仕掛けが一杯入ってて、いつも心をときめかせて聴いていたのでした。

 おおっぴらに好きと言えなかったために、歌番組でシングル曲を聴くことぐらいしかありませんでしたが、いつのまにかテレビから疎遠になっていったのは、内心さびしく思っていました。

 あれからウン年、04年に、この素晴らしいベスト盤CDが作られたとき、私はためらわず購入したのでした。

 グッバイの曲は、1stシングルの83年「気まぐれOne Way Boy」こそ職業作家によるものですが、2ndの「涙のティーンエイジ・ブルース」では、早くもGood-Bye作・編曲となり、3rdの「モダンボーイ狂想曲」以降は、作詞:野村義男、作曲:曽我泰久、編曲The Good-Byeという、ギターの二人が作り、バンド全員で仕上げるという美しい体制が完成し、代表曲のほとんどがこの編成で作られることになります。

 そして、約6年の活動の末、89年の15thラスト・シングル「WILD LIFE」は、作詞、作曲、編曲ともThe Good-Bye名義で締めくくられていました。

 グッバイは、ビートルズやビーチ・ボーイズ、ELO、スベクター・サウンドなどの影響が言われていますが、もちろんメイン・インフルエンスはビートルズです。
 (さらっと書いてしまいましたが、私はELOは電車男で初めて聴きましたし、ジェフ・リンには、デイヴ・エドマンズのプロデュースの件で良い印象を持っていません。それでも、くやしいことにトラヴェリング・ウィルベリーズは買ってしまいましたが…。)

 デイスク2Dに、「マージービートで抱きしめたい」というそそられる題名の曲が入っていますが、この曲に限らず60年代のポップなブリティッシュ・ビートのエッセンスこそバンドの核です。

 ディスク1F「YOU惑−MAY惑」,H「にくめないのがニクイのサ」、M「気分モヤモヤ サラサラ チクチク」など、タイトなメロディとポップな言葉遊びも楽しさ満点です。

 今冷静に聴き返すと、歌謡曲チックなところも確かにあり、無意識に記憶を美化していた部分もあったのかな、と思いましたが、懐かしさだけの存在でないことも確かなのでした。



マージービートで抱きしめたい



YOU惑−MAY惑



にくめないのがニクイのサ



ネオロカが流行っていたことを思わせる、モダンボーイ狂想曲です。




若草音楽で聴くカーター・ファミリー

 1曲が短くて、アルバムもストレート・リイシューなので、コンパクトに12曲入りでスカッと聴けます。
 たまには、こんなのもいいんじゃないでしょうか? 


Songs of the Famous Carter Family
Lester Flatt & Earl Scruggs

1. Keep on the Sunny Side
2. Foggy Mountain Top
3. False Hearted Lover
4. Jimmie Brown, the Newsboy
5. You Are My Flower
6. On the Rock Where Moses Stood
7. Forsaken Love
8. Homestead on the Farm
9. Pickin' in the Wildwood
10. Worried Man Blues
11. Storms Are on the Ocean
12. Gathering Flowers from the Hillside


 CDは、20曲以上入ってないと損した気がする。
 いつからそんな風に思うようになったんでしょう。
 まあ、いつもじゃないけど、今日の気分はこのアルバムがぴったりです。

 ブルーグラスのハイ・ロンサム・ヴォーカルが生理的に合わない人も、このフラット・アンド・スクラッグスはOKでしょう。

 それでも、初期のソリッドなマーキュリー録音はちょっとヘビーに感じる、かといって後期のポップ・カントリー路線は全然だめ、そんな人にお勧めしたいのが、このカーター・ファミリー集です。

 マザー・メイベルもオートハープで参加しているこのアルバム、Keep on the Sunny Sideも、Jimmie Brown, the Newsboyも、You Are My Flowerも、トラデイショナルなこの感じがたまりません。

 名曲ぞろいなので、カーター・ファミリーの入門用としても優れています。
 これから、カーター・ファミリーを聴こうと思っている人なら、このアルバムに収録曲されている曲を目安にアルバム選びをするといいと思います。

 Pickin' in the Wildwoodは、有名なWildWood Flowerのインスト・ヴァージョンです。
 このアルバムを聴いて気に入ったら、次はマール・トラビスにチャレンジするのはどうでしょうか?




新聞売りのジミー少年を演奏するフラット&スクラッグスです。




Keep On The Sunny Side by Mother Maybelle and Carter Sisters




特別な何かを求めて

 今回聴いたのは、Roy Lee Johnsonがスタックスから73年にリリースしたアルバムのリイシュー盤です。

 かなり期待して聴いたせいもあるのでしょう。
 こんな風なファンク・アルバムだとは思わなかったので、少し戸惑っています。


Roy Lee Johnson And The Villagers 

1. Patch It Up
2. I'll Be Your Doctor Man
3. Something Special
4. I Can't Stand This Loneliness
5. The Dryer Part 2
6. Don't Tell Me Nothing About My Woman
7. Razorback Circus
8. Robot
9. Midnight At Riley's
10. The Dryer Part 1


 マッスル・ショールズ録音ですが、60年代録音のベア・ファミリー盤で聴けたリック・ホール制作ではなく、ジミー・ジョンソン制作で、バリー・ベケットとか、ロジャー・ホーキンスなどが参加しています。

 ベア・ファミリー盤のライナーでは、フェイム録音でのリズム・セクションは、アンノウンと記載されていてメンツが特定できませんが、スタジオも違いますし、今作とは別のメンバーでしょう。

 それでも充分以上に魅力的なメンツですが、アルバム・タイトルにあるように、ロイ・リーは、ヴィレッジャーズという自身のバンドを引き連れてスタジオに乗り込んでおり、ドラムもキーボードも持ち込みメンツに担当させています。

 ロジャー・ホーキンスはパーカッション、バリー・ベケットはクラヴィネットとクレジツトされています。
 ジミー・ジョンソンも、制作だけで、ギターでのクレジットは有りません。 
 どうも、複雑な気持ちです。 
 スタジオのハウス・バンドをあえて使わず、バンドとして録音したということでしょう。
 
 さて、肝心の中身ですが、私が試聴して購入の決めてとなった、Something Specialというサザン・ソウル・バラードがあるのですが、なんとこの手のバラードはこれ1曲だけでした。

 この曲自体は、イントロのギターからして魅力的で、期待通りの素晴らしいバラードでした。
 ただ、これ以外の曲が、すべてファンクなので、もしかしたら無意識に点数を甘くしているかも知れません。

 早い曲ばかりの中に、バラードが挿入されていると、ほっとして単独で聴くより魅力的に聴こえたりします。
 まあ、この曲は、そんな要素を差し引いても良い曲だとは思います。

 私は、ファンクとか、ファンキー・ソウルとかの魅力がよく分かりません。
 JBは、代表曲はほとんど聴いていると思いますが、それほど夢中になれませんでした。
 むしろ、ダグ・サームの影響で、アイル・ゴー・クレイジーとか、プリーズ、プリーズ、プリーズとか、シンクの初期録音の方とかが好きだったりします。 

 ルーファス・トーマスも、中期以降のファンキーものより、初期のソウル・ダンスものが好きです。

 というわけで、ロイ・リーのファンクは、スクリームがピケットを連想させて嬉しかったりもしますが、さほど熱くはなれず、「ピケットよりアイラ・タッカーの影響かなあ」とか冷めた頭で思ってたりします。

 特記すべきことがあまりないですが、Robotという曲が、マック・ライス作で、ほかは全て、共作もありますが、ロイ・リーの作品です。
 そして、Don't Tell Me Nothing About My Womanは、70年代にジョニー・テイラーが吹き込んでいるとのことですが、私が所有しているアルバムでは確認できませんでした。

 この人は、多分今でも現役だと思いますので、本人のギターを生かしたブルーズン・ソウルの新録アルバム(それこそ、ロバート・ウォードのブラック・トップ盤のような)を、しっかりしたプロデュースで作ってほしいと願います。






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 ギターがブルースを奏でるとき


罪人と聖者のはざ間で

 このアルバムは、キューバン・トランペットの高らかなロング・トーンで始まり、本人によるオルガンと、リヴァーブのかかったサーフ調のエレキ・ギターがトワングし続けるなか、インストなのかと思い始めたころになって、ようやくボーカルが聴こえてきます。

 ロイ・オービスンのような声を持ち、多数の楽器を操るマルチ・プレイヤーかつ、多重録音好きの機材オタク、Raul Maloの10年リリースの最新ソロ・アルバムです。


Sinners & Saints
Raul Malo

1. Sinners & Saints
2. Living For Today
3. San Antonio Baby
4. `Til I Gain Control Again
5. Staying Here  
6. Superstar
7. Sombras
8. Matter Much To You
9. Saint Behind The Glass

 
 このアルバムは、私にとって、初のラウール・マロ体験になります。
 Mavericksのボーカリストとしては、いくつかのトリビュート盤などへの曲提供で知ってはいましたが、アルバム1枚を購入するのは初めてです。

 今回、購入の動機付けとなったのは、このアルバムが持つ、いくつかの付加価値によるところが大きいです。

 まず、このアルバムは、Asleep At The Wheelのリーダー、Ray Bensonのスタジオで録音されています。
 そして、何と言っても、Augie Meyersが3曲でオルガンを弾いているのです。
 これは、私が食指を動かすには充分すぎる理由です。

 オーギーが参加しているのは、 Living For TodaySan Antonio BabySuperstarの3曲です。
 いずれも、Vox Continental Organとクレジットされています。

 私は、ラウール・マロにさほど興味がありませんでしたが、このアルバムを聴いて、いくつかの特徴に気付きました。
 ドラム、ベース、ギター、メロトロンなど複数の楽器を演奏し、多重録音して好みのサウンドを作り上げていく、オタ系のなかなか親近感がわく人なのでした。

 ただ、ひとつ気になったのは、オーギーをゲストで呼んでおきながら、アコーディオンにマイケル・グェルラという腕利きを別に用意して、全面的にまかせていることです。

 どうせなら、オーギーに楽器を持ちかえさせて、もっと多くの曲に参加させて欲しかったと思います。

 さて、オーギー参加曲ですが、Living For Todayは、サザン・フレイバーを感じさせる曲で、祈りのような本人の歌声と、トリーシャズという4人の女声コーラスが、教会音楽のような荘厳な雰囲気をかもしだしています。

 このあたりは、ディレイニー&ボニーを連想させたりもします。
 そんな中、本人が弾く緊張感のあるギターの背後から、オーギーのいつも変わらぬオルガンのリフが聴こえてきて、ほっとします。
 ただ、控えめなフィーチャーであまり目立ってはいません。

 San Antonio Babyは、80年代のSir Douglas Quintetかと思うような曲に仕上がっていて、こちらは活躍の場も多く、ごきげんです。
 この曲は、タイトルからして期待を裏切らない鉄板の曲ですね。

 そして、オーギーのプレイが最も冴えているのが、Superstarです。
 この曲は、誰のことを歌っているのか、じっくり歌詞を読んでみたい気にさせるタイトルですが、ななめ読みした限りでは、固有名詞などのそそるワードはないようです。

 それよりも、クレジットを見て驚いたのですが、この曲のみ、Shawn Sahmがギターで、Ernie Durawaがドラムスでゲスト参加しています。
 デュラワは、元クインテットのメンバーで、ダグ・サームの初期のころからの盟友のひとりです。これは、嬉しいサプライズでした。
 メキシカン・フレイバーのトランペットが耳に残る曲です。

 オリジナル曲中心の組み立てですが、3曲のみカバーがあります。
 `Til I Gain Control Againは、元ロザンヌ・キャッシュのだんなで、エミルー・ハリスのホット・バンド出身のカントリー・シンガー、ロドニー・クロウェルの曲です。
 静かな雰囲気のフォーキーな曲です。

 対して、Sombrasは、巻き舌多用のスペイン語で歌われる曲ですが、マカロニ・ウエスタンのような出だしがエキゾチックな曲です。
 知らないだけで、有名な曲なのかも知れません。
 ソンブラスとは、ソンブレロの親戚でしょうか?
 そう思って聴くと、メキシコの砂丘に群生するサボテンが見えてきそうです。

 そして、Saint Behind The Glassは、ロス・ロボスのカバーのようです。
 私は、ロボスが、ザ・バンドのような雰囲気になっていきそうだと思った頃から離れていき、もう15年くらい聴いていないと思います。
 ザ・バンドが嫌いなわけではなく、初期のロボスが好きなだけですが…。
 というわけで、この曲の初出年も収録アルバムも知りません。

 オリジナルでは、少し不思議な曲が2曲あります。
 まず、Staying Hereですが、エルヴィスのサスピシャス・マインドを連想させる雰囲気を持った曲です。
 嫌いになりようがないですが、どうも不思議なとまどいを感じます。
 オマージュかも知れませんが、カバーしても面白かったかもと思います。

 一聴して一番気になった曲が、Matter Much To Youです。
 完全にロイ・オービスンを連想させる歌声ですが、それより曲そのもののメロが何かのパクリじゃないのと、頭の中でささやく声がするのですが、元歌が出てきません。

 20分ほど考えた私が、やおらCD棚から引き出してきたのは、エヴァリー・ブラザーズのワーナー音源集でした。
 お目当ての曲は、ソニー・カーティス作の名作、Walk Right Backです。
 聴き比べると、違う曲であるのは明らかですが、全体のメロの雰囲気がかなり似ています。
 サビの前の、胸キュン系のAメロのあたりが特にそうです。
 これも、オマージュでしょうか?



こちらが、Matter Much To Youを歌うラウールです。




眠れる巨人が眠る前

 ジーン・テイラーの新譜を聴いてから、カバー曲のアーティストが気になりだしました。
 中でも、Johnny Guitar Watsonと、Lowell Fulsonが気になったため、手持ちのCDを引っ張り出してきました。

 今回は、フルスンの古い音源を集めたアルバムで、04年に英国のProperから出されたものです。

Juke Box Shuffle
Lowell Fulson

1. Three O'Clock Blues
2. River Blues, Pt. 1
3. River Blues, Pt. 2
4. Crying Blues
5. Crying Won't Make Me Stay
6. Trouble Blues
7. I Want to See My Baby
8. Black Widow Spider Blues
9. Don't Be So Evil
10. Night and Day
11. Double Trouble Blues
12. Ain't Nobody's Business
13. Everyday I Have the Blues
14. Cold Hearted Woman
15. Mama Bring Your Clothes Back Home
16. Back Home Blues Listen
17. Baby Won't You Jump With Me
18. Blue Shadows
19. Rainy Day
20. Sinner's Prayer
21. Let's Live Right
22. Guitar Shuffle
23. Upstairs
24. Juke Box Shuffle
25. Blues Never Fail
26. You've Gotta Reap


 ジーン・テイラーがやったLet Me Ride In Your Automobileは、こちらの収録曲よりあとの録音で、ここに入っている曲は、40年代後半から50年代始めあたりの吹き込みになります。

 Let Me Ride In Your Automobileは、古いリズム・アンド・ブルースという感じを受けましたが、言い換えれば黎明期のリズム・アンド・ブルースともいうべきものでした。

 こちらの収録曲は、さらに古いですが、フルスンの都会的な感覚が、モダンな印象を与える、味のある録音群になっています。

 ほとんどが、LAやサンフランシスコ録音で、最後の2曲のみニューオリンズ録音です。
 ウエスト・コーストのイメージが強いフルスンですが、この時期に南部録音もあったのでした。
 のちに、シカゴで録音したりもしています。

 まず、曲目リストを見て思うのは、ビッグ・ブルースをやっているなあ、という感想だと思います。
 例えば、Three O'Clock BluesTrouble BluesAin't Nobody's BusinessEveryday I Have the Bluesなどがそうです。

 特に、Three O'Clock BluesEveryday I Have the Bluesは、B.B.Kingを代表する有名ブルースです。

 Three O'Clock Bluesは、B.B.の初のNo.1ヒットで、代名詞的な曲です。
 そして、Everyday I Have the Bluesは、しばしばB.B.のコンサートのオープニングで使われていた、これまた代表曲です。

 しかし、実はこの2曲とも、フルスン盤が先で、おそらくはB.B.のお手本になったものだと思われます。

 Everyday I Have the Bluesは、49年にメンフィス・スリム盤があり、それを受けて同年にフルスンが録音したものだと思われますが、スリムがピアニストであることから、ギター・ブルースとしては、やはりこちらの影響力が大きいのではないかと思われます。

 B.B.は、フルスンをしばしば「眠れる巨人」を呼び、先輩への敬意を表していました。

 音を聴いて驚くのは、そのモダンさです。
 46年録音のThree O'Clock Bluesを含む冒頭の3曲は、ギター・デュオによるシンプルな編成の吹き込みですが、ダウンホームさよりも、都会的なセンスを感じます。

 その後のピアノをフィーチャーした曲になると、モダンさは当然増幅され、チャールズ・ブラウンを連想させたりもします。

 この時期のフルスンのギターは、B.B.のようなチョーキング・ビブラートを期待すると、肩すかしをくわされます。

 小粋ではありますが、泣いても、むせいでもいません。
 まだまだ、ジャジーで、T-ボーンの影響大のフレーズと、ナチュラルなトーンで迫ってきます。

 ブルースをメロウにし、現在のパブリック・イメージを作ったのは、やはりB.B.Kingなのでした。
 
 Ain't Nobody's Businessのみ、ジェイ・マクシャンの楽団と吹き込んでおり、興味深いです。
 
 Everyday I Have the Blues以下の曲になると、Lloyd Glennがピアノで参加して、さらにサウンドが都会的になります。
 49年のことですが、これはグレンがどうこうより、時代の流れかも知れません。

 このころは、フルスン楽団なのか、グレン楽団なのか判然としなくなりますが、コロコロと気持ちよく転がるピアノに乗せて歌われる、Cold Hearted Womanでは、フルスンのギターが、まんまT-ボーンと言ったフレーズを弾きまくり、彼のメイン・インフルエンスが何なのか教えてくれます。

 フルスンは、ほとんど自作の人ですが、初期の代表曲のひとつで、No.1ヒットのBlue Shadowsは、グレンの作品です。
 ロイド・グレンがフルスンに与えた影響は少なくないと思われます。

 50年吹き込みのSinner's Prayerは自作ですが、のちにレイ・チャールズが、アトランティックでカバーしています。
 Lord, Have Marcy On Meのリフレンが耳に残ります。

 51年録音のGuitar Shuffleでは、再びT-ボーン・スタイルで、軽快に跳ねるフルスンのギターがかっこいいです。
 
 全体を聴き通してみて、その芳醇な魅力に酔わされます。
 出来れば、録音データを横目に見ながら、音の変化を楽しみながら聴くのが良いと思います。

 フルスンには、ブルースの巨人として、シリアスなイメージがありますが、ディープ・ブルースではなく、充分にリズム・アンド・ブルース的な人だと改めて認識しました。

 最後の53年のニューオリンズ録音は、マクシャン楽団以来のビッグ・バンド仕様での録音ですが、基本はロイド・グレン楽団なので、さほどの音の違いは感じられません。
 それよりも、フルスンのギターが、B.B.を連想させるような音になってきているような気がします。

 B.B.がThree O'Clock Bluesで初のNo.1ヒットを出したのは、51年のことでした。
 その影響力は、先輩も無視できなくなっていたのだと思います。

 フルスンが、ダグ・サームもカバーした名曲、Reconsider Babyをチェッカーからリリースしたのは、54年のことでした。
 録音は。このアルバム収録曲のすぐあとくらいかも知れません。 






別れたいなんて嘘だ にまつわるお話

 今回は、何がきっかけで、長年の疑問が氷解するか分からない、というお話をしたいと思います。

 私には、かなり以前から気になっていて、答えを見つけ出せずにいたことがあります。
 ときどき思い出しては、調べたりしたのですが、解決しないままでした。

 それは、Doug Sahmの10代のときの吹き込み、Satin録音の1曲、Can't Believe You Wanna Leaveに関することです。

 この曲は、ニューオリンズR&Bスタイルの曲で、ダグのLPには、作者はPriceと記載されていました。
 ダグの10代の録音の中では、サニー・オスナのJust A Mormentとともに、特に好きな曲でしたので、ぜひとも原曲が聴きたいと思いました。



 Priceという名前で、私が連想するのは、Lloyd Priceです。
 曲調がニューオリンズR&Bならなおさらです。

 「この曲は、どこかできいたことがある」と思い、所有するロイド・プライスのアルバムを調べたところ、残念ながら未収録でした。

 しかし、「聴いた記憶がある」のです。
 私は、やみくもにレコード棚を探ったところ、リトル・リチャードの名盤中の名盤、Here's Little Richardsに収録されていたことに気が付きました。
 パズルの最初のピースを見つけたと思いました。
 
 ロイド・プライスは、リトル・リチャードの発掘者のひとりと言っていい人です。
 リチャードが、プライスの曲をカバーすることには、何の不思議な点もありません。

 リチャード盤は、まさに私が聴きたかったような、素晴らしいエナジーを感じるバージョンです。
 あるいは、これがお手本かもしれない、と思いましたが、一方で、原曲に対する興味はさらに増したのでした。

 その後、折に触れて、ロイド・プライスの未入手のCDを検索して、収録曲を調べましたが、当該曲が入っているものは見つけられませんでした。
 そして、次第にあきらめに近い心理になりつつあったのです。

 ところが、あるきっかけで、私をミス・リードしていた思いこみの可能性に、初めて気付いたのです。

 それが、前回のジーン・テイラーの記事での私の文章です。
 ご覧になっていない方のために、最掲します。
 
 『…Shirley Jeanは、プライス作となっており、曲調が完全にニューオリンズR&Bなので、ロイド・プライスとみていいんでしょう。
 いなたい感じが良く出ていて好感がもてます。
 間奏で切り込んでくるギターもねちっこくて良いです。

 追記
 上記のように書きましたが、「あまりにも不用意に書いたなあ」と思い、調べたところ、案の定、間違いでした。
 正解は、Big Walter Priceでした。
 BIg Walter Priceって、どうもBIg Walter Hortonと混同しちゃうんです。
 ハーピストのイメージです。
 でも、これを契機に間違えなくなると思います。
 BIg Walter Priceは、J,Geils Bandもカバーした、Pack Fair & Squareのオリジネイターで、Crazy Cajun録音もある人です。 (15:10/12/12/2010) 



 さて、追記し終えた私は、ここで久しぶりに、未解決のままの問題を思い出しました。
 もちろん、考えたのは、次のようなことです。

 「Can't Believe You Wanna Leaveの作者、Priceとは、ロイド・プライスではなく、ビッグ・ウォルター・プライスではないか。
 彼もまた、ニューオリンズR&Bスタイルの曲を書く人だ。」

 興奮状態となった私は、今までとは違うベクトルで、ネット検索をし、ついに答えに到達しました。
 もったいぶる必要はないですので、あっさりと正解を披露します。

 Can't Believe You Wanna Leaveの作者は、ロイド・プライスではありませんでした。
 そして、驚くべきことに、ビッグ・ウォルター・プライスでもなかったのです。
 

何と、正解は、リトル・リチャードだったのです !!

 正しい作者は、Reo Price, R.Pennimanの二人でした。
 後ろの名前が略されていたことが、私を悩ませた全ての原因だったのです。
 ペニマンが、リトル・リチャードの本名であることは、よく知られています。
 Richard Wayne Pennimanです。(このさい、Reo Priceさんが誰なのかはもういいです。)

 最初に見つけたピースが、唯一の正しいピースだったのです。
 ほかのピースは必要なく、それで完成していたのでした。
 
 私は、初動調査の誤りを確認するため、リトル・リチャードのアルバムを再確認しました。
 所有している日本盤には、作者名が記載されていませんでした。
 ライナーに記載があったかも知れませんが、紛失したので確認できません。
 とはいえ、ダグの盤で、作者がPriceだと分かっていましたので、さほど問題としていなかったのです。

 こうして、私の長年の疑問のひとつは、無事解決したのでした。
 他人には全く関心がないことでしょうが、私には大きな出来ごとです。
 素直にうれしいです。

 追伸
 先ほど、00年リリースのSan Antonio RockというCDのブックレットをパラパラと見たところ、ヒントになる記述がありました。
 改めて、このライナーは貴重な内容が含まれていそうだな、もっと早くこれを読んでいれば、と思いましたが、やはり長い英文は苦手意識が先にたってしまう私なのでした。


Can't Believe You Wanna Leave by Doug Sahm





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ブギ・ウギ・ジーン・テイラーさん

 継続して活動してきた人のようですが、私は消息を知りませんでした。
 あまり関心がなかったというのが、正直なところです。
 でも、イラストのジャケが気になったので、購入してみました。


Let Me Ride In Your Automobile
Gene Taylor with C.C.Jerome's Jet Setters

1. Evangeline Stomp
2. Rockin' Little Honey
3. Just A Midnight Girl
4. The Golden Rule
5. Seven Nights To Rock : Clover, Innes, Killette
6. Never Took The Time
7. The Blues To Me
8. The Walkout
9. Shirley Jean : Price
10. Motorhead Baby : De Lagarde
11. Let Me Ride In Your Automobile : Fulson
12. Flying With Whitey
 

 ギャレット、サーム、テイラー・バンドの来日公演を見たのは、いつのことでしょう。
 もう懐かしさしかありませんが、郷愁の彼方にくっきりと刻印されているのは、エイモスがスリープウォークを弾く姿と、ダグ・サームが変則的な構えで、スライドをプレイする勇姿です。
 
 他では、サポート・メンツのロッキー・モラレスや、ジャック・バーバーは、印象に残っていて、以前にも書いたことですが、ベースのジャック・バーバーが、公演後、チャリンコにまたがって、颯爽とライヴ会場を去って行った後姿を見送ったことを、鮮やかに覚えています。
 対して、残念ながら、ジーン・テイラーの記憶は、ぼんやりと霧の彼方にあるだけです。
 
 さて、このアルバムは、ジーン・テイラーが、オランダを基点に活動する、C.C.Jerome's Jet Settersと吹き込んだ10年リリースの最新作です。

 エル・トロというスペインのレーベルから出されたものですが、私は、この会社はてっきりリイシュー専門レーベルだと思い込んでいました。
 ブルースや古いリズム・アンド・ブルースなどの発掘に力を入れている会社で、こういう新録を出す会社だと知って驚いています。

 バックのC.C.ジェロームのジェット・セッターズは、クレジットによれば、ギター、ベース、ドラムス、サックス、ハーモニカ、コーラス担当(?)からなる6人編成のバンドです。
 これに、ギターが一人ゲスト参加して、2曲でリードを弾いています。

 大人数のわりに、あまり音が厚いとは言えません。
 ハーモニカとコーラスがそれぞれ専任というのは、解せない気もしますが、ゲストと特記されているのは、ギターの人だけです。

 Jeroen Van Gasterenというギターの人が、リーダーのジェロームのようです。
 サックスこそ1名入っていますが、ジャンプ系ではなく、ロカビリー系のバンドだと思います。 
 
 フロント・マンのジーン・テイラーは、基本的にピアノとオルガンを弾き分けて、ブギウギしています。

 全12曲のうち、4曲のカバーを除く8曲がジーンのオリジナルですが、正直に言って、印象に残るのは、カバー曲の方です。

 ムーン・マリカンのSeven Nights To Rockは、ブギ・ビアニストの定番のひとつですので、あまり新鮮味は感じられません。
 対して、ブルース、リズム・アンド・ブルースの3曲は、味のある解釈で、それなりに聴きごたえがあります。

 Shirley Jeanは、プライス作となっており、曲調が完全にニューオリンズR&Bなので、ロイド・プライスとみていいんでしょう。
 いなたい感じが良く出ていて好感がもてます。
 間奏で切り込んでくるギターもねちっこくて良いです。

 追記
 上記のように書きましたが、「あまりにも不用意に書いたなあ」と思い、調べたところ、案の定、間違いでした。
 正解は、Big Walter Priceでした。
 BIg Walter Priceって、どうもBIg Walter Hortonと混同しちゃうんです。
 ハーピストのイメージです。
 でも、これを契機に間違えなくなると思います。
 BIg Walter Priceは、J,Geils Bandもカバーした、Pack Fair & Squareのオリジネイターで、Crazy Cajun録音もある人です。 (15:10/12/12/2010)
 

 ジョニー・ギター・ワトソンのMotorhead Babyは、ファスト・リズムのブギウギで、まるでピアノ曲のようです。
 これは良いです。
 間奏の短いギターのオブリと、サックスの控えめなブロウは、「もっとやれー」という感じですが、ピアノ・メインなのでこれでいいのでしょう。

 ローウェル・フルスンのLet Me Ride In Your Automobileは、ワトソンより一世代古い感じの曲です。
 こちらは、逆にギター曲というより、スローなピアノ・ブルースとなっています。
 フルスンは、レコード・デビュー前のレイ・チャールズをバックに使っていた人ですから、こんな感じの音だったのかも知れません。
 チャールズ・ブラウンみたいにも聴こえます。

 ラストのFlying With Whiteyは、サックスのリフをメインに、ギターがオブリを入れる、ヒューストン・ジャンプ系の曲です。
 ジーンのピアノは、ひたすらブギのリズムを叩き続けています。

 オリジナル曲では、皮肉にも、サックス中心のこのインストが一番気に入りました。
 ボーカル曲では、もっとニューオリンズR&B系で攻めてくれればなあ、というのが私の感想です。



この映像では、ギター、ベース、ドラムス、ハープの4人編成です。
これが、ライヴでのベーシックなスタイルなのかもしれません。




 
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