今回は上尾市の道切りのお話です。
道切りとは、疫病や悪霊が村に侵入するのを防ぐために、いわば結界をはるようなものですね。かつては日本各地で行われていた習慣のようですが、最近ではあまり見聞きすることがありません。以下は上尾市に道切りの習慣が伝承されている場所があると聞き及び、訪ねた時の記録です。
<道切り>
かなり重厚な縄が張られています。こちらではフセギと呼ばれているようです。
<草鞋>
馬のわらじと呼ばれる大きな草鞋がつるされています。いろんな解釈があろうかと思いますが、私は「この村にはこんな草鞋を履く大男がいるんだぞ!」という威嚇のようなものと受け止めています。
上尾市教育委員会のホームページによれば『県東部に分布する蛇縄を掛ける行事と、県西部で行われる村境に草履を掛ける行事が知られていますが、川の大じめ行事は、形式的にも位置的にも中間に位置し、フセギ行事全体を考える上でも重要なものです。』とのこと。道切りの方法は地域によって異なりますが、ここ上尾市の道切りは、県内の東西それぞれの特徴が取り入れられたいわばハイブリットな形式ということですね。
<川の大じめ>かわのおおじめ
大注連を張るこの地の道切り行事(フセギ行事)は『川の大じめ』と呼ばれ、上尾市の無形民俗文化財に指定されています。
<川>
ここでいう『川』は地名です。
<村境>
ここはかつての川村の入口ということになります。
<庚申塔>こうしんとう
傍らの庚申塔です。字がよく読めませんでしたが、道しるべも兼ねているようです。ここは古くから人の通り道だったのですね。
<神明神社>しんめいじんじゃ
こちらはすぐ近くの神明神社です。旧川村の鎮守です。毎年こちらの神社で注連縄が作られ、かつての村の出入り口に取り付けられるそうです。
<説明板>
地元の歴史までよく分かる説明です。もともとあった複数の村が、江戸初期にはひとつに統合されていたようです。神社の説明ですが、すみません、今回は省略させて頂くとして、最後の方にフセギ行事に関する記載がありますので、そのまま転記させて頂きます。
『当地には「川の大じめ」と呼ばれる魔除け行事がある。毎年五月十五日に大きな注連縄を作り、西方の今泉との村境まで運び常設の柱に下げ、村の悪霊災難除けとして祀る行事で、上尾市指定民俗文化となっている』とのこと。
昔はいま以上に疫病の類が怖れられていたはずです。それらにどう向き合ってきたのか?道切りの習慣を受け継ぐということは、そこに込められた思いも受け継ぐということですね。
姿形も立派ですが、それ以上に貴重なことに思えました。
■訪問
川の大じめ
[埼玉県上尾市大字川]134
神明神社
[埼玉県上尾市川2丁目]3-2
■参考及び出典
・神明神社説明板
・上尾市教育委員会ホームページ
『川の大じめ』
https://www.city.ageo.lg.jp/site/iinkai/064110110908.html
2021年04月04日
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10642034
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック
こんにちは!ちょっと「結界」という言葉が適切であったかは自信ありませんが、暮らしの場の清浄を強く願い、不浄なるものの侵入を食い止める印として縄を張ると受け止めております。とても珍しい光景ですが、かつては日本各地で行われていたと知り、貴重なことだと思うようになりました。
コメントありがとうございます。
道切りって結界ですか?
ホント珍しいですね。
地名も珍しく感じますけど
中々行けない所を紹介して頂くには
とても興味深いです。
ありがとうございます!