日本に古くからある「道切り(みちきり)」という習慣をご存じでしょうか?はやり病や悪霊などが入ってこないように、村の出入り口に縄を張ったり、札を掲げたりする習慣です。「辻切り」などとも呼ばれます。適切な解釈かどうかわかりませんが、いわば『結界をはる』のと同じと思われます。
数年前の話になりますが、この『道切り』の習慣をいまに受け継いでいるところがあると聞き、埼玉県蓮田市に足を運んだことがあります。以下はその時に撮影した画像です。
<蓮田の道切り>みちきり
ここは蓮田市黒浜。道切りにもいろんな方法がありますが、黒浜では藁細工の大蛇が設けられています。この地点が内と外の堺ということですね。
<伊豆島の大蛇>いずしまのだいじゃ
蓮田市のホームページの説明をそのまま使用させて頂きますと『民俗行事の一つで、春祈祷(はるきとう)に関連する厄除け行事』です。市の指定無形民俗文化財となっています。設置の方法ですが『注連縄と同じ「左巻き」に撚って作られています。藁で全長約2メートルに作り上げられた大蛇は、「破竹(はちく)」と呼ばれる竹に刺し、現在は3ヶ所に立てられています』とのこと。受け継がれた作法があるわけですね。
<別な場所>
別の場で撮影。出入りできるところは一つではありませんからね。
この付近で写真を撮っていたら、地元の男性に声を掛けて頂きました。お話を伺うと、毎年5月初旬に新しいものに付け代わるとのこと。私の訪問はその直前でした。1年間で最も疲れた状態の大蛇を撮影したことになります。
<付近の様子>
ここは元荒川沿い(左岸)
<久伊豆神社>ひさいずじじゃ
こちらは黒浜の久伊豆神社です。元荒川流域を中心に分布している神社です。奥の本殿は蓮田市指定文化財に指定されています。
<村社>
鳥居隣の石碑には『村社』の文字。 かつての黒浜村の村社ということですね。
<説明板>
こちらの説明板によれば『室町時代の享禄年間(1528年〜1532年)に騎西町の玉敷神社より』勧請したことが起源とのこと。つまり、ここ黒浜はそんな古くから人が暮らしていた場所ということ。その営みのなかで、いつしか『道切り』の習慣が定着したのですね。
医学がいまほど発達していなかった頃、疫病の蔓延は地震や火事以上に怖れられていたかもしれません。病そのものは目に見えませんからね。薬は勿論、感染への対策もいまほど確立されていません。一人の発症から始まり、村が全滅することだってあり得ます。
そんな災いが、自分たちの暮らしの場に入り込みませんように
道切りの習慣には、はやり病に日本人がどう向き合ってきたがかえまみえる気がします。災いが入り込むことを防ぐため、皆が力を合わせて村の堺に道切りを設け、願いを込めた。蓮田市黒沢への訪問で、古くから今日まで繋いできたそんな思いをちょっとだけ感じることができまた。
2020年は新型コロナウイルスに翻弄される一年でした。むかしの人たちが道切りに込めた願い。そして行動。我々が今まさに大切にしなくてはいけないことなのかもしれません。
2020年12年31日
■訪問:蓮田市の道切り
(伊豆島の大蛇)
[埼玉県蓮田市大字黒浜]
■参考及び出典元
・蓮田市ホームページ
・久伊豆神社説明板(蓮田市)
2020年12月31日
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