将棋駒生産量の大半は天童といわれています。城巡りが目的で訪問しましたが、将棋も多少はたしなむので、以前から「天童の将棋」は意識していました。そもそもいつから始まったのでしょうか。
[天童公園(天童城跡)]
■始まりは天童織田藩■
天童で将棋駒づくりが始まったのは江戸後期。藩主が織田信学(のぶみち)の時と言われています。当時の財政は厳しく、藩士たちも生活に困っていました。そこで、米沢の職人から将棋の駒を作る技術を学び、藩士たちの手内職として奨励。これが天童の駒作りの始まりです。ということは、お隣の米沢でも駒作りをしていたのですね。そこから学び、そして浸透させました。天童織田藩家老・吉田大八の働きかけと伝わります(戊辰戦争での働きもあり、公園内に銅像もあります)。
やがて明治になり、天童では本格的な産業として駒作りが発展します。昭和になると、天童駒は全国的に知られるようになりました。平成の今でも、天童の駒は全国生産高の約9割以上(95%以上?)。将棋の駒と言えば天童。将棋に多少でも興味がある人にとっては、これはもう当たり前ですかね。
将棋は奈良時代に日本へ伝わりました。たくさん駒の種類がありますが、どうしていたのでしょうか?貴族あるいは武家の館の発掘調査から、昔の人たちは自分で作った駒で将棋を指していたとがわかっています。そうですね。まぁ体裁を気にしなければ我々でも作れます。
日本独自の進化をとげながら広まっていった将棋。江戸時代には庶民の間にも広がっていきました。将棋の駒を生産して商売が成り立つ。そこには、本当に長い時間をかけて熟成された将棋という文化、そして今も愛されているが故の需要がある訳ですね。
■天童の人間将棋■
[天童公園(天童城跡)]
毎年4月、この公園(城の曲輪跡)において「人間将棋」が行われています。この人間将棋、天童藩主が人間を将棋の駒に見立てて対局したという話を再現したもの。毎年ニュースでも取り上げられるので、このイベントは将棋に興味がない人でも知っているのではないでしょうか。殿様の優雅な遊びにも映りますが、経緯がわかると、内職で駒作りを始めた武士たちの想いが受け継がれた姿にも見えますね。
日本の合戦と将棋
最近また将棋ブームですね。起源は海外ですが、われわれが思っている将棋、つまり日本将棋は世界的に見ても独特のものです。その国の文化が、将棋という世界にも表れているような気がします。
決定的に違うのは、やはり相手の駒を使える点ではないでしょうか。「持ち駒」という考え方ですね。これはチェスにも中国の将棋にもありません。倒すことより、降伏させることを目指す。個人的にはそんな風に受け止めています。それが戦国時代を含む日本的な合戦のあり方。現実として悲惨な戦がたくさんあったとしても、同じ民族同士の争いで形成されていった戦のあり方は、やはり外国のそれとは背景が異なるのではないでしょうか。
■駒の個性■
実際に将棋をしていると、本来なら活躍できるはずの駒を活かせないといったケースが多々ありますね。かといって相手には渡したくない。敵方につかれてはたまらない程、その駒が優秀ということです。逆に相手はそういう優秀な駒を欲しがっています。潰そうとしているのではなく、こちらの味方になって欲しいと思っているのです。何となく日本の戦国史と重なりませんかね?
また、駒の優劣と関係なく、今どうしてもあの駒が欲しいという局面があります。例えば、潜在能力の高い「角」を手放して、相手の「銀」を取りにいくようなケース。これは一般的な評価による優劣より、その駒の個性の方が価値が高いという状況ですね。私はいわゆる「へぼ将棋」のレベルですが、その程度のことは理解しています。これは個性の異なる駒には、適材適所で働きの場があるということ。戦国時代でも、名声や身分よりその場で役に立つ者が徴用されたりしますね。そしてそれが出来る集団こそが強い集団。なんとなく似ている気がします。
更に、駒の立場で考えると、捨て駒で使われるくらいなら、主を変えて存分に働いた方が気分がいいですね。戦国時代でも、主君を鞍替えするケースは多々ありました。似てますね。
日本将棋独特の「持ち駒」というシステム。これはこういった日本的な戦のあり方の影響を受けて生まれてきた。きっとそうですね。ただ兵と兵を激突させて潰し合うのではなく、優勢な状態を作り出し、敵将に「参りました」と言わせれば終わる。とても魅力的なルールですね。
最後に
駒が敵方につくのは「裏切り」でしょうか?まぁ感覚の問題ですが、ちゃんと手続きを経たうえですので、私にはそうは思えません。手続きもないまま、急に駒の向きが変わったら「裏切り」ですね。これは現実の戦では多々ありますが、将棋の世界ではないことです。駒はいつでも王将と、そして味方の駒と同じ方向を向いています。
お城巡りランキング
2017年08月26日
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