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2015年06月16日
あべこべ人間
昨日はすみません……
本日は何とか
滑り込みで書いて
家を出ます笑
さてさて、本日はこちらです
遠藤周作著『あべこべ人間』
遠藤周作さんの著作ですが
コミカルで軽い
物語展開も
あまり重いとは
言えません
痛快、という
感じでしょうか
と、いう訳ですので
ずっしり重い
ぐう、と考えさせられる
遠藤周作さんらしい(?)
作品が好きな人には
むしろ、物足りないのかも
しれませんが……
お話としてはとても
興味深いと思います
何しろ、これが
昭和に書かれた、というのが
驚嘆でした
そうか、あの時代からもう
こういう概念ってあったのか…
「ナウい」とか使っている
そんな時代背景で
東京はともかく
田舎なんて本当に
古い、とっても古い笑
東京だって、
何だか今よりずっと
時代を感じます
そんな東京で
ミックスセックス
について、論じる
人々が中心になって
展開するお話です
男が男らしく
女が女らしい
そんなのは、古い!
ファッションでも、
もっと、男女間の差が
なくなっていくだろう
男の中の女らしさ
女の中の男らしさ
そんなものを
出して、どうして悪い!!!
そんな人々が
ミックスセックスについて
あれこれ論じるのですが、
当時としては
これは、衝撃的だったのでは…
さて、そんな
活動家たちに
巻き込まれることに
なるのが
平戸で育った
平々凡々
田舎で穏やかに
変わり映えのない
日々を過ごし
芋っぽさが
溢れ出るような笑
そんな、若い男女
茂と、春江
茂の方は、
平戸でかなり
モテモテだったのですが
彼には元々
女装願望があり、
予備校のために
東京へ出て
そこで先程の
ミックスセックス!
を訴える人に捕まり
(最もこれは
茂が密かに期待していた
ことなのかもしれませんが)
女装ライフを
楽しんでいる……
春江の方は
そんな男が
忘れられずに、
東京まで会いに
行ってしまう
この、春江が
本当に、何と言いますか
少し、鬱陶しい程
一途で、独りよがりで
東京のような
世界を全く信じられず
ものを疑わず
ものを疑えず
自分の願は叶うと
信じてやまない、
そんな少女なんです
果たしてこれが
田舎の女の子らしいと
言ってよいのか
どうか、分かりませんが
しかし、勿論
茂はそんな故郷の女に
興味なんてなし。
何しろ彼には
恋人(男)がいますし……
そんな折、ミックスセックスを
売り出そう、と鼻息荒い
実業家に見出され
新発明の薬を
打ってみないか、と
打診される
なんと、その薬は
性別を転換できる
薬なのだとか。
おいおいおい、大丈夫なのか
と読者は思わずにはいられないような
話なのですが、
恋人に実業家に
散々美しさをたたえられ
女から男に変わる
薬もあるからと
宥められ、
煽てられついに、
その注射を打ってしまう
女性としてのしばしの生活を
茂は堪能するのですが……
そして、そんなこととは
露知らず、一度
平戸へ戻っていた
春江は再び東京へ
しかし、まぁ、
当然のごとく、
新発明の薬、には
欠陥があって……
春江サイドは少し
テンポが落ちるように
感じもしましたが
しかし、後半は
なかなかに痛快で
読んでいて
気持ちが良い
ミックスセックス
という最先端の概念を
描いているように見えて
その実、
遠藤さんは
やっぱり、人の身勝手さを
えぐりとるように
描き出しています
そして、そんな
身勝手さを
全く知らなかった
平戸の若い純朴な茂と春江は
そんな「東京」に
振り回されながら
「東京」の恐ろしさを知る
しかし、春江はそんな
恐ろしさを知ってなお
身勝手な人とは
全くことなるキャラクターとして
異彩を放ちながら
奮闘し続けており、
なかなか、どうなることやら、と
思いながら
読み進めてしまいます
ちょっと、軽く
読みたいわ、という時に
お勧めの、コメディな小説
ちなみに、解説がまた、
楽しい。
作品に触れず、
遠藤周作さんについての
エピソードばかりを
書かれているんです笑
そして、その解説を見て
成程、こんな小説が
出来上がる訳だ、と納得する
どうでしょうか、
楽しい人としての
遠藤周作さんを
堪能したい時に。
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本日は何とか
滑り込みで書いて
家を出ます笑
さてさて、本日はこちらです
遠藤周作著『あべこべ人間』
遠藤周作さんの著作ですが
コミカルで軽い
物語展開も
あまり重いとは
言えません
痛快、という
感じでしょうか
と、いう訳ですので
ずっしり重い
ぐう、と考えさせられる
遠藤周作さんらしい(?)
作品が好きな人には
むしろ、物足りないのかも
しれませんが……
お話としてはとても
興味深いと思います
何しろ、これが
昭和に書かれた、というのが
驚嘆でした
そうか、あの時代からもう
こういう概念ってあったのか…
「ナウい」とか使っている
そんな時代背景で
東京はともかく
田舎なんて本当に
古い、とっても古い笑
東京だって、
何だか今よりずっと
時代を感じます
そんな東京で
ミックスセックス
について、論じる
人々が中心になって
展開するお話です
男が男らしく
女が女らしい
そんなのは、古い!
ファッションでも、
もっと、男女間の差が
なくなっていくだろう
男の中の女らしさ
女の中の男らしさ
そんなものを
出して、どうして悪い!!!
そんな人々が
ミックスセックスについて
あれこれ論じるのですが、
当時としては
これは、衝撃的だったのでは…
さて、そんな
活動家たちに
巻き込まれることに
なるのが
平戸で育った
平々凡々
田舎で穏やかに
変わり映えのない
日々を過ごし
芋っぽさが
溢れ出るような笑
そんな、若い男女
茂と、春江
茂の方は、
平戸でかなり
モテモテだったのですが
彼には元々
女装願望があり、
予備校のために
東京へ出て
そこで先程の
ミックスセックス!
を訴える人に捕まり
(最もこれは
茂が密かに期待していた
ことなのかもしれませんが)
女装ライフを
楽しんでいる……
春江の方は
そんな男が
忘れられずに、
東京まで会いに
行ってしまう
この、春江が
本当に、何と言いますか
少し、鬱陶しい程
一途で、独りよがりで
東京のような
世界を全く信じられず
ものを疑わず
ものを疑えず
自分の願は叶うと
信じてやまない、
そんな少女なんです
果たしてこれが
田舎の女の子らしいと
言ってよいのか
どうか、分かりませんが
しかし、勿論
茂はそんな故郷の女に
興味なんてなし。
何しろ彼には
恋人(男)がいますし……
そんな折、ミックスセックスを
売り出そう、と鼻息荒い
実業家に見出され
新発明の薬を
打ってみないか、と
打診される
なんと、その薬は
性別を転換できる
薬なのだとか。
おいおいおい、大丈夫なのか
と読者は思わずにはいられないような
話なのですが、
恋人に実業家に
散々美しさをたたえられ
女から男に変わる
薬もあるからと
宥められ、
煽てられついに、
その注射を打ってしまう
女性としてのしばしの生活を
茂は堪能するのですが……
そして、そんなこととは
露知らず、一度
平戸へ戻っていた
春江は再び東京へ
しかし、まぁ、
当然のごとく、
新発明の薬、には
欠陥があって……
春江サイドは少し
テンポが落ちるように
感じもしましたが
しかし、後半は
なかなかに痛快で
読んでいて
気持ちが良い
ミックスセックス
という最先端の概念を
描いているように見えて
その実、
遠藤さんは
やっぱり、人の身勝手さを
えぐりとるように
描き出しています
そして、そんな
身勝手さを
全く知らなかった
平戸の若い純朴な茂と春江は
そんな「東京」に
振り回されながら
「東京」の恐ろしさを知る
しかし、春江はそんな
恐ろしさを知ってなお
身勝手な人とは
全くことなるキャラクターとして
異彩を放ちながら
奮闘し続けており、
なかなか、どうなることやら、と
思いながら
読み進めてしまいます
ちょっと、軽く
読みたいわ、という時に
お勧めの、コメディな小説
ちなみに、解説がまた、
楽しい。
作品に触れず、
遠藤周作さんについての
エピソードばかりを
書かれているんです笑
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成程、こんな小説が
出来上がる訳だ、と納得する
どうでしょうか、
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2015年06月14日
各書名言集(小説pert23)
おはようございます、
本日は、名言集、
行ってみたいと思います〜!
『殺意』
―正常な状態のままで、殺人を犯すことの方が、よほど異常だという
パラドックスに、あの男は気付いていないのだろうか。
日常の感覚を備えたままで、他人を殺せるというのか―
ドキッとした言葉です。当たり前なのですが……
しかし、責任能力の有無や精神状態の異常が
減刑の理由になりうる、という今の状態を
顧みると、本当に、ぞわ、とします
紹介記事はコチラ
『鹿の王』
―病はなぜ、あの子と妻を
選んだのか……―
悪人のみが病にかかる、
善行を行えば病にかからない、
そのように単純なことだったら良かったのに、
そうはならなかった
だからこそ、病を治す術を探したい
紹介記事はコチラ
『よるのふくらみ』
―一生のうち、ほんとに好きになれるやつなんて、
そう何人もいないもんだぜ。
出会えないやつもいる。
出会えただけで幸運だ。
女のわがままなんて、かわいいもんだって。
私を大事にしてくれ、って
あいつらの言いたいことは
それだけなんだから―
すごいなぁ。これを言っている人の
置かれている状況的にも
すごいなぁ。という一言でしたが
これ、奥さん幸せだろうなぁ…
紹介記事はコチラ
今回はこれまで。
またじめじめとした日々が
続くようですが
部屋で本でも読みましょう…
ではでは
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2015年06月13日
天国旅行
おはようございます
さてさて、本日はこちらです
三浦しをん著『天国旅行』
表紙が素敵ですよね。
思わず手に取ってしまった
短篇集です。
「心中」をモチーフにしている
小説ばかりが
おさめられています
しかし、この小説に出て来る人々が
必ず心中をしているかというと、
そういう訳でもありません
まず、心中しようと、自ら死を選びとろうと
する人々は、死というものを
一体どう捉えているのか
死を迎えれば、今、この現実から
逃れられる、という
死を救済と考えている人もあれば
腹いせに、抗議の意を示して
死を選ぶ人もいる
死というものは、激烈だから……
何か、不可侵ななにものか
神聖な力があるような
そんな気もする
だから、愛の究極の形は
死ぬことである、心中である
と叫ぶ人もいれば、
それに対して、いや、
死は死でしかない
と生きて暮らす日々を
慈しむ人もいる
しかしながら、まぁ、
死を選んだ人の
その瞬間の壮絶さ
思いの激しさ。
そのようなものを感じる
作品が多いものです
しかし、一方で
普段私達が考える「心中」と全く異なる
スケールで語られる心中
見解で語られる心中もあります
共に死ぬ、というようよりも
死を共有する、といった、そのような……
死をして結びつく人々
恋人のみならず、複雑な関係であっても
死を共に共有しよう、というその時
人と人の間には、恐ろしく激烈な
結びつきが生まれてしまうものなのだ、
と震えが走ります
しかし、だからといって読者は
死を望むようにはならないと思うのです
むしろ……
生きる事について、
まざまざと考えさせられる
生きる事が、手放しで素晴らしいとは
言えないかもしれない
現実というものは、あまりに
辛いものなのかもしれない
それでも、生きることについて
考えさせられます
死を扱っているからといって、暗く暗く
という話ばかりではない
むしろ暖かさを感じる話さえ、一つではありません
最後におさめられた「SINK」というお話は
最後の最後に命の光を見せて
この短篇集を終えてくれるようで
個人的には一番のお気に入り。
全て読み終わり、
目次をもう一度見返すと、
構成も素敵だったなぁ、と
しみじみ思う良短編集です
是非是非
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さてさて、本日はこちらです
三浦しをん著『天国旅行』
表紙が素敵ですよね。
思わず手に取ってしまった
短篇集です。
「心中」をモチーフにしている
小説ばかりが
おさめられています
しかし、この小説に出て来る人々が
必ず心中をしているかというと、
そういう訳でもありません
まず、心中しようと、自ら死を選びとろうと
する人々は、死というものを
一体どう捉えているのか
死を迎えれば、今、この現実から
逃れられる、という
死を救済と考えている人もあれば
腹いせに、抗議の意を示して
死を選ぶ人もいる
死というものは、激烈だから……
何か、不可侵ななにものか
神聖な力があるような
そんな気もする
だから、愛の究極の形は
死ぬことである、心中である
と叫ぶ人もいれば、
それに対して、いや、
死は死でしかない
と生きて暮らす日々を
慈しむ人もいる
しかしながら、まぁ、
死を選んだ人の
その瞬間の壮絶さ
思いの激しさ。
そのようなものを感じる
作品が多いものです
しかし、一方で
普段私達が考える「心中」と全く異なる
スケールで語られる心中
見解で語られる心中もあります
共に死ぬ、というようよりも
死を共有する、といった、そのような……
死をして結びつく人々
恋人のみならず、複雑な関係であっても
死を共に共有しよう、というその時
人と人の間には、恐ろしく激烈な
結びつきが生まれてしまうものなのだ、
と震えが走ります
しかし、だからといって読者は
死を望むようにはならないと思うのです
むしろ……
生きる事について、
まざまざと考えさせられる
生きる事が、手放しで素晴らしいとは
言えないかもしれない
現実というものは、あまりに
辛いものなのかもしれない
それでも、生きることについて
考えさせられます
死を扱っているからといって、暗く暗く
という話ばかりではない
むしろ暖かさを感じる話さえ、一つではありません
最後におさめられた「SINK」というお話は
最後の最後に命の光を見せて
この短篇集を終えてくれるようで
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2015年06月11日
卍
さてさて、本日は少し
激しい作品です。
谷崎潤一郎著『卍』
「先生」に、園子が語りかけている形で綴られている小説です
彼女の口調は関西弁でして、これがまた、味を出しています
に、しても園子さん、
あなたのお話は随分と凄まじいですわね。
まず、園子と夫の関係から、何やら複雑です
園子の話によると、夫は園子に
嫌気がさしているようでありながら
しかし、確かに園子の事を愛しているのではないかな、
と思われるような言動もしている
園子も夫の事が好きなのか
どうなのかが何だか難しい
複雑な夫婦関係だと思われますね
そんな折、園子はある美術学校へ通うことにする
これによって、朝園子は夫と一緒に家を出て
しばらく一緒に通勤・通学することになるのですね
少し、夫婦関係が温かくなる……
(この時、夫さん、かなり喜んでいるんですよね……
園子はちょっと微妙なのですが……)
しかし問題が、その美術学校で起きます
ひょんなことから、園子はその学校の校長による
嫌がらせの対象になってしまったのです
その発端は、光子という女性。
とてつもない器量を持った女性で、
芸術大学でのモデルなんかよりまだ、
比較にならぬ程美しい。
お嬢様らしく無邪気なところもあったりもする、
美しさ可愛らしさ全てを兼ね備えているのでは、
という魅力に溢れる女性
可笑しいことですが、校長の嫌がらせが実を結び(?)
園子がその光子に同性愛を捧げている、
という噂が立ってしまう事態にまで
発展してしまい、内心一笑に付す園子でしたが、
なぜ、そんなことになったのか、
後程光子本人から理由を聞くと
光子も自身のその類稀なる器量によっていろいろと
面倒事に巻き込まれているのだということが分かり、
二人で校長先生等の悪口で盛り上がった挙句、
悪戯心も手伝って
わざと、噂のように振舞ってみよう、
ということに……
ところが……
二人は「気が合う」どころの
騒ぎではなくなって、
ついに、本当に愛し合うようになってしまう……!
ここから、女性同士の激しい激しい
恋愛が展開されます
まず、あまりの熱烈さ。
これは、男女、ではなしえない
恋愛ではないでしょうか。
二人の間で取り交わされた文が登場しますが
お互いが、お互いに、競い合うように相手を求めている
文通に用いられた便箋さえ「さすが大阪の女」と評して
丁寧に描写する、谷崎さんの
関西弁へのこだわりっぷりも垣間見えます
とにかく、熱い。二人とも、女らしい熱さで、ねちっこさで
しつこさで、すがりつくようにして求め合う
友人だから、と夫をごまかしごまかしするものの
さすがに鈍感な夫も、あまりの異様な
「友達付き合い」に疑問を感じはじめる……
しかし、園子はそれをつっぱね
二人して、夫を気にすることなく、どんどん
情熱をエスカレートさせていく
園子はもう、夫とどうなってもいいや、と
それくらい、のめり込む。
とまあ、ここまででも、十分過ぎるくらい濃いのですが
さらに、この物語は
2転3転4転修羅場を何度もむかえます
出て来る登場人物同士の人間関係が、
まさに卍のように、繰り返し、入り乱れ……
複雑に絡み合って、ずるずるずる、
転がりながら話が進んでいく
愛し合い、騙し合い、求め合い、
出し抜き合い、疑い、しかし愛する……
これは、単純に、女性同士の愛を描いたものではなく
(その描写も十分すぎるくらい濃厚なのですが)
強いて言うならば「愛」そのものについて
それも、少し歪んだ、あまりに熱烈な、複雑で奇妙な、
こんな愛の形もあるのか、と驚かされる、そんな「愛」について
これでもか、これでもか、と描写してきます
読んでいると、もう、何が普通で何が普通でないのか
分からなくなってくる本作品
しかし、素晴らしいですね、目が離せなくなります
次はどうなる、次は? 次は?
全く予想が出来ないんです、どんどん、登場人物達が
予想できない人々へと変貌していく
どうなる? どうなる?
そして、最後。
園子自身は涙しながらも、
あっさりと話を終えているのに
何この衝撃……。茫然としてしまいました。
最後の方は、正直に言いまして
状況そのものが「狂っている」という言葉が
当てはまるような、そんな状態になっているのですが
訳の分からない異様なスピード感で、ずぶずぶずぶと
奥の奥まで沈んでいくと思ったその時、突然ふっと
体が軽くなった、そんな印象です。
この感覚、読まなければ分かりません。
読めば、思わず読了後表紙を閉じて
しばらく気が抜けたようになる
あの感覚を味わえるはずです
どうでしょう、少し危険な香りもいたしますか?
しかし、さすがの傑作です。
是非是非、読んでみて下さい
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谷崎潤一郎著『卍』
「先生」に、園子が語りかけている形で綴られている小説です
彼女の口調は関西弁でして、これがまた、味を出しています
に、しても園子さん、
あなたのお話は随分と凄まじいですわね。
まず、園子と夫の関係から、何やら複雑です
園子の話によると、夫は園子に
嫌気がさしているようでありながら
しかし、確かに園子の事を愛しているのではないかな、
と思われるような言動もしている
園子も夫の事が好きなのか
どうなのかが何だか難しい
複雑な夫婦関係だと思われますね
そんな折、園子はある美術学校へ通うことにする
これによって、朝園子は夫と一緒に家を出て
しばらく一緒に通勤・通学することになるのですね
少し、夫婦関係が温かくなる……
(この時、夫さん、かなり喜んでいるんですよね……
園子はちょっと微妙なのですが……)
しかし問題が、その美術学校で起きます
ひょんなことから、園子はその学校の校長による
嫌がらせの対象になってしまったのです
その発端は、光子という女性。
とてつもない器量を持った女性で、
芸術大学でのモデルなんかよりまだ、
比較にならぬ程美しい。
お嬢様らしく無邪気なところもあったりもする、
美しさ可愛らしさ全てを兼ね備えているのでは、
という魅力に溢れる女性
可笑しいことですが、校長の嫌がらせが実を結び(?)
園子がその光子に同性愛を捧げている、
という噂が立ってしまう事態にまで
発展してしまい、内心一笑に付す園子でしたが、
なぜ、そんなことになったのか、
後程光子本人から理由を聞くと
光子も自身のその類稀なる器量によっていろいろと
面倒事に巻き込まれているのだということが分かり、
二人で校長先生等の悪口で盛り上がった挙句、
悪戯心も手伝って
わざと、噂のように振舞ってみよう、
ということに……
ところが……
二人は「気が合う」どころの
騒ぎではなくなって、
ついに、本当に愛し合うようになってしまう……!
ここから、女性同士の激しい激しい
恋愛が展開されます
まず、あまりの熱烈さ。
これは、男女、ではなしえない
恋愛ではないでしょうか。
二人の間で取り交わされた文が登場しますが
お互いが、お互いに、競い合うように相手を求めている
文通に用いられた便箋さえ「さすが大阪の女」と評して
丁寧に描写する、谷崎さんの
関西弁へのこだわりっぷりも垣間見えます
とにかく、熱い。二人とも、女らしい熱さで、ねちっこさで
しつこさで、すがりつくようにして求め合う
友人だから、と夫をごまかしごまかしするものの
さすがに鈍感な夫も、あまりの異様な
「友達付き合い」に疑問を感じはじめる……
しかし、園子はそれをつっぱね
二人して、夫を気にすることなく、どんどん
情熱をエスカレートさせていく
園子はもう、夫とどうなってもいいや、と
それくらい、のめり込む。
とまあ、ここまででも、十分過ぎるくらい濃いのですが
さらに、この物語は
2転3転4転修羅場を何度もむかえます
出て来る登場人物同士の人間関係が、
まさに卍のように、繰り返し、入り乱れ……
複雑に絡み合って、ずるずるずる、
転がりながら話が進んでいく
愛し合い、騙し合い、求め合い、
出し抜き合い、疑い、しかし愛する……
これは、単純に、女性同士の愛を描いたものではなく
(その描写も十分すぎるくらい濃厚なのですが)
強いて言うならば「愛」そのものについて
それも、少し歪んだ、あまりに熱烈な、複雑で奇妙な、
こんな愛の形もあるのか、と驚かされる、そんな「愛」について
これでもか、これでもか、と描写してきます
読んでいると、もう、何が普通で何が普通でないのか
分からなくなってくる本作品
しかし、素晴らしいですね、目が離せなくなります
次はどうなる、次は? 次は?
全く予想が出来ないんです、どんどん、登場人物達が
予想できない人々へと変貌していく
どうなる? どうなる?
そして、最後。
園子自身は涙しながらも、
あっさりと話を終えているのに
何この衝撃……。茫然としてしまいました。
最後の方は、正直に言いまして
状況そのものが「狂っている」という言葉が
当てはまるような、そんな状態になっているのですが
訳の分からない異様なスピード感で、ずぶずぶずぶと
奥の奥まで沈んでいくと思ったその時、突然ふっと
体が軽くなった、そんな印象です。
この感覚、読まなければ分かりません。
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タグ:小説
2015年06月10日
ほんとうの花を見せにきた
おお、久しぶりの
晴れ間ですね!
本日ご紹介するのは、こちら
桜庭一樹著『ほんとうの花を見せにきた』
竹から生まれた吸血種族バンブー
そんな、バンブーを中心としたお話が
3篇、おさめられています
小さな焦げた顔
ほんとうの花を見せにきた
あなたが未来の国に行く
分量としては、最初の
「小さな焦げた顔」が最も
多いのですが、
これは、バンブーと、
孤児となってしまった男の子のお話
唯一、人間目線のお話で
バンブーについての設定が
細やかに語られつつ
優しいバンブーに見守られながら
時に葛藤し
道を踏み外して
しまったりしつつも
成長していく男の子の物語です
このお話で、バンブーについての
設定はおそらく全て
語られ、この前提条件のもと
次の2篇へうつるのですが…
その後の「ほんとうの花を見せにきた」
「あなたが未来の国に行く」
が素晴らしく心に響きました
1篇で語られたバンブーについての
様々な設定が見事に生かされつつ
話自体が実に上手く
つくられていて、
引き込まれてしまいます
表題「ほんとうの花を見せにきた」は
1篇でのキャラクターが再登場
1篇での出来事を知っているからこそ
胸を打たれます
寿命が約百二十年のバンブーは
年をとる、ということを
しません。ずっとずっと
その見た目は変わらない
対して、成長し、年をとり
やがて一緒に過ごした
妖怪のことなんて、忘れてしまう
人間、、、
この、妖怪と人間の
違いをついた描写は
なかなかに、
切なくて、でも、
現実味があって……
1篇でも、同じような描写は
あったのですが、
こちらは、1篇以上に
妖怪と人間が
いつまでも共には
暮らせない、ということが
つきつけられて
本当に、切ない。
バンブーの過去も語られ
さらに、切ない
それでも、最後は
心が温まるような
終わり方です
個人的に一番好きなのは
「あなたが未来の国に行く」
です。
突然、時代がどこへいったのか
分からなくなり、
バンブーの国のお話へ
一体、このバンブー
誰なんだろう、
と思いながら
読み進めるうちに
平和なバンブーの国に
危機が訪れて……
希望という未来へ
進みたくて
自分の運命に
抗おうと必死な
主人公のバンブーに
思わず涙
してしまいそうに
なります
頑張れ、本当に
頑張れ、と、もう
このバンブーが
誰でもいいから
とにかく
応援したくなる
そんな真っ直ぐさを
持ったバンブーが
主人公
そして、最後の最後で
あぁぁ、このバンブーだったのか
と、種明かしがされ
1篇を思い出し、
唸らされます
いろいろと言いたい
気もしますが
少しでも喋ると
ネタバレになってしまいそう
なので、自重しますね…
うーん、
唸らされます。笑
素晴らしい
ハートフルストーリー
ファンタジーな世界に
浸りつつ、暖かい気分に
なりたい方、
是非是非どうぞ。
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タグ:小説
2015年06月09日
夜のふくらみ
おはようございます
雨が降ったり止んだり……
折り畳み傘が必須な
お天気ですね…
さてさて、本日はこちらです
窪 美澄著『よるのふくらみ』
商店街で育った
みひろ、圭祐、裕太
三人の間の
微妙な、少しどろっとした
恋愛模様が
描かれます
それぞれの章ごとに
視点が切り替わっていくので、
三者三様の不満や、悩み
といったものが
生々しく語られていく
かつて、みひろをいじめた
男の子たちを
殴った圭裕
とても「優しい」彼は
商店街の中でも
評判は良いようですが
みひろは彼に対して
決定的な不満を
持ち始めてしまいます
両者の間にある
すれちがい感が
全く払拭されることもなく
過ごすうちに
みひろの心に
入り込んできたのは
圭祐の弟、裕太……
と、第一章から
修羅場を感じさせる
物語展開なのですが
一方で、ありがち、といえば
ありがち、のはずなのに
『晴天の迷いクジラ』同様、
テンポは遅いのですね
読んでいて、
うっうっ、と読み進めていくのが
辛いくらい
登場人物の、鬱屈した
儘ならない気持ちが
どろどろどろ、と
語られていく
にも関わらず
こうまで読者を引き込むのは…
お見事としか
言いようがありませんね
章が進むにつれて
三人の過去が
少しずつ見えてき、
三人の本当の
商店街での立ち位置
のようなものも
見えてくる
例えば、先程の
圭祐が、みひろを
いじめた男の子を
殴ったのは
単純にみひろが
好きだったから、
だけではなかったのか……
と衝撃を受けたりする訳です笑
視点が切り替わる度に
圭祐何気に自己中心的なだー
祐太、デリカシーないなー
みひろ、うじうじしてばっかだなー
と、順番に主人公達の
嫌な所が目についてくるのですが
特に圭祐と祐太の
対比は見事で
お互い、見事に
長所と短所が
反対といいますか…
圭祐の短所の部分は
祐太の長所によって際立つし
祐太の短所は
圭祐の長所によってより目立つ
これがまた、兄弟、
というのが、
子どもの頃から、お互いに
兄弟で、仲も悪くはないのだけれども
すれ違いを起こしている
ここらへんの描写が
リアル、本当にリアル
個人的に圭祐は
好きになれないのですが
圭祐目線で語られる
家族との関係や
弟祐太の能天気さへのいら立ちは
長女として、うわ、分かる……
と、とてつもない感情移入を
してしまいました
これといって、何か
特徴がある訳でもない
普通の、どこにでも
いそうな人々の
気持ちや人生を
ここまでリアルに描く、
というのも、
なかなか出来そうで
出来ないことだと
感じます……
心情描写が丁寧な
物語が好き、という方
大人でダークな
恋愛小説が好き、という方は
必見です
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2015年06月08日
散ると見てあるべきものを梅の花うたてにほひの袖にとまれる
すみません、昨日に引き続き
更新する時間が
なさそうなので一つ
和歌を置き逃げします・・・
散ると見てあるべきものを梅の花
うたてにほひの袖にとまれる
散るものであると
眺めているべきものであるのに
梅の花
その匂いが袖に
留まっているのは
惜しく思われて
よくないことだ
梅なんて、どうせ散るものなんだから、
と思って眺めるしかないものなのに
散ってしまったなぁ、と思った時に
ふっとその香りが袖から
漂ってきて、寂しくなってしまう
「うたて」は
ますますひどい、いっそうひとい
という意味なので
ただでさえ、梅が散って寂しいのに
香りなんて残っていたら
余計に惜しく思われて
気持ち的に辛い、ということでしょうか…
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なさそうなので一つ
和歌を置き逃げします・・・
散ると見てあるべきものを梅の花
うたてにほひの袖にとまれる
散るものであると
眺めているべきものであるのに
梅の花
その匂いが袖に
留まっているのは
惜しく思われて
よくないことだ
梅なんて、どうせ散るものなんだから、
と思って眺めるしかないものなのに
散ってしまったなぁ、と思った時に
ふっとその香りが袖から
漂ってきて、寂しくなってしまう
「うたて」は
ますますひどい、いっそうひとい
という意味なので
ただでさえ、梅が散って寂しいのに
香りなんて残っていたら
余計に惜しく思われて
気持ち的に辛い、ということでしょうか…
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2015年06月06日
各書名言集(小説pert22)
おはようございます、
やっと…やっと来ました!
土曜日です!
私はもうすぐ開く
図書館へ行って参る
ところなのですが
その前に。
『ホテルカクタス』
―お二人がいなかったら、
僕はお二人の訪問について、
ずっと一人で悩むことになっていた
ところですよ―
この、何とも言えないちぐはぐ感が、
この作品の魅力です
紹介記事はコチラ
『有限と微小のパン』
―「この事件全体が、博士が作ったゲームなのですか?
ゲームのキャラクタだなんて、そんなのおかしいわ。私は自分で考えて行動しています」
「人の行動パターンなんて、乱数で処理できる範囲内だ」―
そんな考え方、してみたこともなかった、
という読者の意表をとにかく
ついてくる作品です
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『友情』
―みんな自分のうちに、夢中になる性質を持っているのだ。
相手はその幻影をぶち壊さないだけの資格を持っていればいいのだ。
恋は画家で、相手は画布だ。恋するものの天才の如何が画布の上に現れるのだ。
ダンテにとってビアトリチェはただの女ではなかったろう、神のようなもの―
その気持ちは分からなくもないけれども
そこまで恋をしている女性を
神格化するのは、、、どうなのかなぁ
と思ったのですが
紹介記事はコチラ
さてさて、今回はここまで。
それでは、図書館
行ってきまーす
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2015年06月05日
神童
やはり朝は肌寒い……
さてさて、本日は
漫画でございます
さそうあきら著『神童』
コミック全4巻、
文庫本で全3巻
と、読みやすく
購入しやすい分量です
表紙は文庫本版のものですが
表紙の少女が、
主人公、神童のうた。
彼女は、類まれなる
ピアノの才に恵まれ
そして、素晴らしい耳を
持ちます
しかし、そんなピアノ少女は
「はねっかえり少女」
でもありました
何と、うたは野球にはまり、
ピアノ英才教育ママとも
いえる母親に反発して
ピアノから興味を失って
いたのです
そんな時、名門音楽大学
を目指して浪人中の
和音と出会います
和音は、ピアノをはじめた
時期が遅く、まだ
ピアノそのものは下手なのですが
彼もまた、とてつもなく
いい耳を持っていて
ひょんなことから、うたの
ピアノを一聞きした
彼は、その魅力におののき
うたと和音の交流が
はじまります
とにかく、うたが
とっても個性的
ピアノ少女なのに
野球少女
文庫本版の1巻は
後半半分が全て
野球の試合、という
ピアノ漫画として
異例の事態が
起きています笑
ばっきゃろ!
等々、おおよそ
ピアノ少女…というより
女の子が普段
用いる言葉とは
かなりかけ離れた
言葉で、ばんばん、
言いたいことを
言ううたは、
時に読者をひやひやさせ、
また、すかっとさせる存在
そんなうたに振り回されながらも
うたとともに、
ピアノの音を磨くことに
精を出す和音
そうこうしているうちに、
物語は、うたが「神童」で
あるがために
予定調和的な展開を
見せるのですが……
この物語は、その
予定調和、では終わりません
そこからは、長くは
ないのですが、
この物語の最大の醍醐味です
音楽とは何か?
こんな問いが
かけられているような。
もっと言うと、
自分の音楽とは、何か?
という問いでしょうか。
神童うたの集大成が
全てつまった
クライマックスは、
名シーンです
何と言いますか
うたは、「真の」神童
なんです、きっと。
どんな時も、その
気の強さで
弱音を吐かずに
前だけを見て
突き進む
苦難多き神童うたには
何だか勇気づけられる
ような、そんな
気が致します。
是非是非、
読んでみて下さい
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2015年06月04日
鹿の王
おはようございます
今日は、少し肌寒いですね……
お昼からは暑くなるのかしら
さて、本日はこちらです
上橋菜穂子著『鹿の王』
上橋さんのファンタジーの壮大さは、やっぱりすごい。
主人公のヴァンが、奴隷として働いているところから
はじまる、というなかなかのシリアスっぷりですが
少しずつ、ヴァンの素性、奴隷として墜ちるまでの過程が
分かってきたところで、ヴァンが捕らわれる塩鉱に
黒い狼が襲撃してくる、という事件が起きます
鎖に繋がれた奴隷たちは、なすすべもなく、次々と
襲い掛かる牙にかかってしまう
ヴァンも、攻防を繰り広げるも傷を負います。
しかし、他の奴隷含めて、致命傷になるような傷を負った
者はおらず、また、いつも通りの地獄が戻って・・・
くるかと思いきや、嫌な風邪が蔓延しはじめ、気付くと
ヴァンの周りは、奴隷の死体で埋め尽くされ、生きている者が
いなくなってしまう……
ヴァンは、なぜ生き残ったのか。
そして、その一方で、その奴隷での惨状が、その場を支配していた者達
の耳に届き、原因究明に凄腕医師のホッサルが奔走しはじめます
そうする中で見えてくる、黒い狼の正体。何者かの意思。
政治的な思惑。民族同士の対立。宗教的な狂気。
様々な民族が、様々な苦しみと思いを抱えた結果として、
黒い狼は生み出されてしまったのか
黒い狼を生み出した人がいたとするならば、一体目的は何か
何をしようというのか、
病を用いた攻撃にホッサルは憤怒を露わにしつつ
その病の治療法を必死に探ります
そして、また一方ヴァンは、己の体に現れた変化に気づくのですが……
まずは、このホッサルとヴァンの物語が
複雑に関係しあいながら、しかし全く別の場所で
展開していく、という物語としては王道の面白さ
そして、世界観もさることながら、政治的に対立する王同士や
迫害された民族の憎しみ、家族を失った虚無など
本当に様々な人の切実な心の内が描き出され
その感情に少し恐怖を覚えつつも、
一方で、命とは何なのか。病とは何なのか。
身内とは、家族とは、目に見えない繋がりとは何なのか……
という物語全体を覆う主題に関する展開も
非常に面白く、またはっと考えさせられて
そうしているうちに、ひきこまれて一気に読んでしまいます
いやはや、さすが。
お勧めです
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タグ:小説