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2015年07月03日
さようなら、ギャングたち
おはようございます。
本日はこちらです
高橋源一郎著『さようなら、ギャングたち』
何というか「すごい」作品
好みが真っ二つに分かれる
タイプなのだろうな、とも思います
あらすじ……を書けない笑
文庫の後ろには
「人々は昔、親によってつけられた
名前をもっていた。
それから人々は、自分の名前を
つけるようになった。
だが、恋人たちは違ったやり方で……」
と書かれているのですが
ここ辺りも、十分
魅力的な部分とはいえ
まだまだ序章でしかありません
序章、でもないかもしれない
そもそも、このお話自体が
そんな単純な話ではなく……
異世界へ突然吹っ飛ばされて
そのなかで、真剣に何かを
考える、ことしかできない。
起承転結などというものを
軽々と越えて読者を
嘲笑っているような
作品です
次に何が起こるのかわからない
どころか、今何が起きているのかも
分からないような
でも、その分からない物事へ、
巧みな言葉遣いで
読者を惹き付けてしまう
訳がわからない、うん。
訳がわからないんですけれども。
「ギャング」という言葉
ひとつとったって
結局ギャングとは
何なのか
この世界でしれっと起こること
起こること、一体どういう意味なのか
分からなくて
そのうち分かるのかなぁ、と
読み進めていくうちに
また別の「わからない」が
現れて……
ても真面目
壊れているのか、
おかしくなってしまったのか
そう思いそうになる
絶妙なバランスで、真面目。
時に泣きたくなるほど幸せで
笑いたくなるほど悲しい
主人公や、
その他のキャラクターに
感情移入できるほど
彼らのことが分かるはず
ないというのに、
胸に迫る幸福
ガンと殴られたような虚無感
やるせないほどの切なさ
心臓を投げるような怒り、悲しみ
おかしい、こんな生々しい
はずはないのに。
キャラクターよりもさらに
この大きな感情に
溺れそうになってしまいます。
でも、物語は待ってくれない
とことん、読者に優しくない
作品のようです笑
ついてくるなら、ついてこい!
そう言われて
思わずついていってしまう
そんな感じがあります。
ある意味で
詩のようでもありますが
しかし終わりまで読んでみれば
これはまごうことなく、小説です
確かにあっちこっち飛び回りながら
一つのお話だった訳で、
題名は確かに
『さようなら、ギャングたち』
でないといけないと分かる
とにもかくにも、「たまげたなぁ」
という作品。
魅力に捕まれば、読みきるのは
あっという間です
これほど訳がわからないのに
読者を離さない、ということが
可能なのか、と感心します
なにがはじまるんだろう?
そんな不可思議な気持ちで
是非とも、読みはじめて
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2015年07月02日
Story of My Life
本日は、久しぶりに
意訳シリーズをば
CMできっと聞いたことが
あると思います。
内容が難解ということでも
有名なような……
PVを参考にしながら、
かなり個人的に解釈をしながら、
訳してみました
様々なサイト様が訳して
おられますが、
それぞれのサイト様によって
結構訳した内容が
異なってるような曲です
ので(←)
思いっきり、振り切って
意訳していきました
よって注釈も盛りだくさん!苦笑
PVを参考にしているので
PVと共にお楽しみ下さいませ
Written in these walls are the stories that I can't explain
I leave my heart open but it stays right here empty for days※1
壁のなかに描かれているのは、
説明なんてできないような物語
心を閉ざしているつもりなんてないんだけれども、
ここ数日何も感じられず呆然自失の状態だよ
She told me in the morning she don't feel
the same about us in her bones※2
It seems to me that when I die these words
will be written on my stone
その朝過去が語りかけてきた、
過去に戻ったつもりになって考えを巡らしたって
実際の過去とあなたが思い描く思い出は
本質において
全く同じものじゃないのよ、と。
その言葉は僕が死んだ時に
墓石に刻むであろうほど
大きな意味を持つ言葉のようだね
And I'll be gone gone tonight
The ground beneath my feet is open wide
The way that I been holdin' on too tight
With nothing in between ※3
さて、僕はもう行くよ。
過去と決別して未來に向かうんだ。
足元が大きく開いてなくなってしまう。
でもこの道は、僕があまりに今まで
固執し過ぎた生き方だから。
それによって何も得られもしないのに。
The story of my life I take her home
I drive all night to keep her warm and time
Is frozen ※4
The story of my life I give her hope
I spend her love until she's broke inside ※5
The story of my life
僕の人生の物語。
僕はそれのためと言って一晩中
過去の中をさまようよ。
本当は僕が思い出を
暖かく美しいものとして
はっきり覚えていられるように
なんだけどね。
そうしていたら時間が
止まるんだ。
思い出には希望が満ちていたと思い込んで。
過去の持つ優しさの中にどっぷり浸かって過ごす。
そのうち過去が僕によって歪められてしまうまで。
そんな僕の人生の物語。
Written on these walls are the colours that I can't change
Leave my heart open but it stays right here in its cage
これらの壁の上の色を
変えることは出来ない。
殻に閉じ籠ってるつもりはなかったけれど
やっぱり心が殻を破れないみたいだ
I know that in morning I'll see us in the light upon the hill ※6
Although I am broken my heart is untamed still
分かってる、今こそはじめるその時だと。
夜は終わりだ、丘の上に日が昇るのを
見ながら今を生きていかなくちゃ。
そう頭では分かってるんだけれども、
心がまだ受け入れられないんだ。
And I'll be gone gone tonight
The fire beneath my feet is burning bright ※7
The way that I been holdin' on so tight
With nothing in between
さあ、僕は行かなくちゃ。
ふつふつとだけれども意欲は燃え盛っているし
明るい希望も感じているんだよ。
今までは過去に固執し過ぎたから、
何も残らなかったんじゃないか。
The story of my life I take her home
I drive all night to keep her warm and time
Is frozen
The story of my life I give her hope
I spend her love until she's broke inside
The story of my life
And I been waiting for this time to come around※8
But baby running after you is like chasing the clouds
僕はずっと、僕にとって最も
素敵な時がもう一度巡ってくるのを待っている。
でもねぇ、やっぱり過去の後ろを追うようなことは
雲を追っているのと同じようなことだね
The story of my life I take her home
I drive all night to keep her warm and time
Is frozen
The story of my life I give her hope
I spend her love until she's broke inside
The story of my life
The story of my life
The story of my life
The story of my life
※繰り返し部分は
和訳をのせていなかったりします
*..注釈...*
2015年07月01日
薬指の標本
小川洋子著『薬指の標本』
表題の「薬指の標本」と
「六角形の小部屋」
2作品が収められています
とりあえずは表題
「薬指の標本」について。
ふと、何気なく、偶然……?
わたしは、標本室で
受付をすることになる
その前はサイダーの工場で
働いていた、彼女
しかし、事故で薬指の先を
失ってしまう
この描写がまた印象的です
私はグロイものが苦手なのですが
くううう、と足元が
すーすーする一方
その描き方の美しさに
心を打たれました。
矛盾していると思われるかも
しれませんが、本当に
極限まで繊細な表現を
すれば、こんな場面も
これほど美しくなるのか、と
驚きました。
ここからもう、この作品の
雰囲気に入っています
抜けられない、読者も。
現実味が全く無い話の
はずなのに、
とてつもなくリアル
なのが、このお話の
特徴で、この奇妙なリアルさが
このお話の怖さを助長
しています
さて、わたしの
仕事場にいるのは
謎に包まれた標本技師一人。
ほとんど、
地下の標本作業室に
こもっていて
誰も、その部屋には
入れない
標本って、何なのか。
この物語の一つの核は
そこでしょう
標本と聞いて
思いつけないような
ものも、依頼人たちは
持ってくる。
標本にしたものは
自由に依頼人が
見ることが出来るのに
それを見に来る依頼人は
どうやらいないようです
喪失してしまったものを
そのシンボルとなるものを
標本にして、
封じ込めてしまう
これが大切なのか。
標本技師は、
どんなに些細なものでも
慈しむことが
必要なんです、
とまず始めに言う。
読者も主人公も
はじめは、
標本が何なのかさえ
分からない。
でも、少しずつ
分かってくる、気がする
この、少しずつ、というのが
また、良いのだと
思います
はっきり、する訳ではなく。
でも、このお話は
ただ単に不思議な標本室での
標本についてのみ
書かれたものでは
なかったようです
わたしは仕事を
しているうちに、
標本技師に
秘密の休憩所へ
誘われます
そこは、かつての
共同浴場
かつて、その下宿に
住んでいた若い女性達が
自身の体を洗っていた場所
そんなことに技師が
言及しはじめたあたりから
危険な香りがしてくるんですね
舞台が、
ただ謎が多いだけの
標本室ではなくなってくる
何やら、標本室という
響きそのものに
妖しさが見え隠れ
しはじめる。
本能に働きかけてくるような
警戒信号が鳴る
(少なくとも私の中では
鳴りました笑)
けれども、肝心のわたしは。
鳴っていないのか、
鳴っているけれども
無視しているのか……
標本技師は、まず、
わたしに靴をプレゼントする
その靴は彼女の足に
ぴったりなものであって
その時に彼の発する
言葉が、やっと、彼という
人物を少し浮彫にする
作品を包む怖い雰囲気が
ぐっと濃くなる。
不気味なのに
わたしは、逃れられない
いや、逃れようと
思わないのか
彼から贈られた靴は
彼女の足にあまりに
ぴったりで
これが、また不気味
靴が彼女の足を
浸食しはじめる
薬指のみならず
足まで彼女は
失うことになる
(でも、この失う、という
ことも難しいんですが)
未来が
見え始める
それでも、彼女は
その靴を脱ぎはしない。
そうして、わたしと
標本技師の関係が
次第次第に固定されていき
標本技師の不気味さ、怖さが
どんどん際立っていく……
そして、そんな標本技師から
逃れようとしないばかりか
むしろ、標本のように
封じ込められようとさえ
しているわたしも、
奇妙に不気味な人物へと
印象が変化していく
ひたひたひた、と
確かに、何か怖ろしい
ものが迫ってくる
ゆっくり、静かに。
終わり方が、これまた
ひんやりとしたもので
余韻が悍ましい
小川洋子さんといえば
温かな作品、という
イメージをお持ちの方は
少し覚悟をして下さい
かなり、怖いです。
でも、その怖さは
激烈ではなく
心の中に
染み込んでくるような怖さ。
決してホラー、では
ないと思うのです
大人の小説、という
感じでしょうか。
大人の小説、では
あまりに「大人」という言葉に
様々なものを
負わせすぎかも
しれませんが。
でも、これほどの作品
なかなかお目にかかれません
是非是非、少し
覚悟を決めてから
読んでみて下さい
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2015年06月30日
星に降る雪
さてさて、本日はこちらです
池澤夏樹著『星に降る雪』
ひいやあぁ。
毎度のことながら
このタイトルです。
これだけで私は
きゅうんとなるのですが
表題「星に降る雪」と
「修道院」の2作
がおさめられています
どちらも、テーマとして
あるのは、親しい者の死。
「星に降る雪」では
雪山で友を失った田村
田村は奥山の
ニュートリノ望遠鏡を有する
観測所にこもり、
その友の死を
星と交信する中で
消化してゆく
ニュートリノの話は
「スティル・ライフ」の中でも
出てきましたが
ちら、ちら、と光る
チェレンコフの光に
思いを馳せる場面は
場面が変われど
何度読んでも
その雰囲気、情景
ふっと引き込まれます
言葉の使い方が
相変わらず素晴らしい
詩的な美しさで
はっとさせてくれる。
そして、そんな田村の元へ
亡くなった友の彼女が
訪ねてくるんですね。
彼女も、恋人の死によって
少なからぬ衝撃を受けていて
心の中に出来てしまった
闇や、自分の周りにできてしまった
殻を持て余している
同じように、同じ人の
死に衝撃を受けた田村ならば、
田村と話したならば、
何か変わるかもしれない。
多分、彼女はそう
期待をよせていた
二人で、あの日、
何があったのか、
田村は、彼女に
分からないだろうと
思いながらも
星からのメッセージに
ついて、語り始める
なぜ、彼は観測所に
いているのか……
こちらは、話の内容以上に
その雰囲気を楽しむ
作品では?と思います。
池澤さんらしい、
う・つ・く・し・い
言葉が次々綴られて
その言葉で描写される
映像が目に浮かぶようです
内容を楽しむならば
次の「修道院」
個人的には、
「修道院」の方が
より好きですね。
こちらも、親しい者の死を
扱っているのですが
ある男の話です。
こちらは、
その死そのものも、
その死に対して
どう接していくのかも
もっと複雑で、
謎が多くて、
そして、その男の話を
「私」が、宿の女性から
聞いている、という形式が
また、良い。
話を聞くきっかけになった
出来事から、良い。
こちらは、特に
内容を知らぬまま
読んだ方が絶対に
楽しめるので
これ以上は記しませんが
静かなのに、ぐいぐいと、
目が離せなくなる作品です
どちらも贅沢な読了感
是非是非、どっぷりと
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2015年06月29日
紙の月
はやくも月曜日。
眠たいですが
頑張りませう
さてさて、本日はこちらです
角田光代著『紙の月』
――わかば銀行の支店から一億円が横領された。
容疑者は、梅澤梨花四十一歳――
ごくごく普通の、
いや、普通ではなく
人一倍正義感を持った、
元クラスメイトをして
正義の人、
と言わしめる
梅澤梨花。
美しく、昔から一目
置かれる存在だったのですが
当人はあまり
そのことには
気づいていなかったよう
元クラスメイト達視点の
描写も入り混じって
なぜ?
なぜ彼女が?
どうして、ねえ、
どうして
そんなことをしたの、梨花?
そう十分に読者に
思わせたところで
少しずつ、その背景が
見えてくる、
平凡な結婚生活
しかし、その
平凡な結婚生活を
営む中で
夫正文とのやりとり
何となく、違和感が
あると思うんですね
正直に言ってしまうと
女性目線からすると
正文が、いや〜な奴、に
見えてくるんです。笑
ただ、本人は
全く悪気がない
むしろ、彼自身の言動は
しごく当然のものだと
思って疑いもしていない
そして、梨花も
何も言えない……
何か違う、と
思いながら
でも、正文が正しいのだと
頭では、そう
理解することしか
出来ない
彼女は、根本的に
不器用だったのでしょうか
自分の心が発する
警告音が、一体
何を指しているのか分からず
結局呑み込んでしまう
でも、そうする中で
彼女の中で少しずつ少しずつ
自分を認める気持ちのような
ものがすり減っていく
そうして、気付けばもう
中年と呼ばれる年齢に
さしかかっているんです
子どもも出来ぬまま、
よく分からない
焦りが梨花を締め付けていく
養ってもらっているという
当たり前の事実に
愕然として、パートを
はじめざるをえなくなる
彼女の精神的に、です
彼女は、自分を認められる
何かが欲しかったような
そんな感じがします
そして、その気持ちは
丁寧に描写されているがゆえに
とてつもなく響きながら
伝わってくる
もう、こんな年になってしまった
夫とは何となくすれ違って
子どもも諦めて
自分は駄目だと
言われているような、
そんな焦燥感。
そして、心の奥底で
追い詰められていた彼女は
偶然、自分に価値が
あるのだと思わせてくれる
ものに出会ってしまう
それは、幻想でしか
ないのに。
その幻想を、強引に
彼女にしては珍しく
強引に強引に
手中に収めようとする
しかし、その幻想には
お金が必要になってくる
だから、だから……
普通の常識人のようだった
梨花が、どんどんと、おかしく
なっていってしまうのが
恐ろしくって恐ろしくって
何度息をつめたことか…。
元々、普通なようで
どこか普通じゃなかった
梨花に様々な要因が
重なって起きてしまった
そんな事件
破滅へと、どんどん
突き進んでいく
展開は、はやいような
遅いような、もう
分からない
ただただ心臓が鳴って鳴って
仕方がありません
思わず一度離脱して
呼吸を整えたくなります
この本を読んだ後
しばらくは
ちょっと気分が落ち込んだり
苛々としたからといって
コンビニで甘いものを
買った瞬間などに
ちらっと、最初は少し、
からどんどん
エスカレートしていった
この物語がよぎって
ぶるぶると身震い
してしまいました笑
まぁ・・・
百円単位のお菓子では
いくらなんでも
おかしなことには
ならないでしょうが笑
(という油断が
恐ろしいのでしょうか)
ありえない、ように思えつつ
とてつもなく、ありえる
ようにも思える……
梨花というキャラクターも
この物語の展開も。
ありえない、と
鼻で笑いながらも
不覚にも
現実の中でふと
思い出して、ぞわ、と
鳥肌が立つような、
そんな現実味が
あるように思うのです
自分はそんなこと
なるわけないし
現実にそんなこと
起こるわけない
正直、そう思うのです
しかし一方で
そう思うことが
恐ろしく感じてしまうような
そんな何かがこの
小説にはあります
ちなみに、
私は蚤の心臓なので
一気読みは
できませんでした笑
しかし、最後まで、
どうやったって
読まずにはいられない
作品だと思います
是非是非。
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2015年06月28日
遮光
すみません…
今月はさぼりっぱなしに
なってしまいましたね…
わざわざお越しいただいたのに
更新してなかったー、
となってしまった方も
いらっしゃるかと思います、
申し訳ありませんm(__)m
本日は、こちらです
中村文則著『遮光』
先に断っておくべきは、
この物語は、暗いということです
この、暗さに惹かれる人は
とてつもなく惹かれると
思うのです
じっとりと、離れられなく
なるような。
淡々と、感情が無いのではないか、
少なくとも、何かが抜け落ちているのではないか、と
思うような、そんな主人公が大切に持っている瓶
一見、激高して相手に向かって
棒を振りおろしている、そんな瞬間
そうして「怒っているふり」を観察し
喜びを覚えている自分がいる……
どんな時も、彼は心から
その言動に到っているのではなく
きっと、こういう場合、こうするだろう、
そう思った人間を演じることに、喜びを覚える
一体この人は何なのだろう……
そう思うのだけれども、どこかに、
訴えかけるものがあるんです
何かを、この人は
抱えている
それも、かなり切実で悲痛な
叫びがずっと、彼の語りの根底には
流れているような…。
彼は、大切に大切に持っている、その瓶の
中身が他人に露見することを
非常におそれています
一体、ではその、遮光布に包まれた
瓶の中身は一体何なのか?
演技なのか、演技でないのか……
読みながら彼に翻弄される
ひたひた心が締め付けられる
けれども、目が離せない
彼は脆い、脆いように感じる
その脆さはどこからきているのか
その瓶は何なのか
何が彼をそこまで無感動にしているのか。
人と繋がるかと思えば、
それをぷつんと切ってしまうような
破壊的衝動へ駆り立てているのか
彼は時にひどく他人を傷つけているのに
どうして、駄目だよ、と思いつつ
何とはなしに憐れに見えるのか
彼のその特異な人格は、
おそらく元々そういうものだったのでしょう
しかし、その人格に僅かばかり変化が現れる
出来事というか存在が
出来たのではないかな、と思います
物語を読んでいくうちに、そんな風に思う
残酷なことは、彼自身がその変化に
気づいていなかったこと
全く理解できない
彼の中に、少しずつ分かった
ような気分になるものを
見つけていく
彼が、全く理解できない
ただの気味悪い人では
なくなっていき、
ついには……
思わず彼の為に
落涙してしまうほどの
共感を見つける瞬間
私だって、彼に
なりうるかもしれない……
そう思う瞬間
癖のある作品といえば癖があります
まずもって主人公の人格が
ひと癖どころではないですし…
でも、残酷ながら、
切々と訴えてくる作品です
切々と訴えてくる?
少し言葉が優しすぎるかも
しれないですね
いいではないですか
暗い作品も。
傑作でしょう
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中村文則著『遮光』
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一見、激高して相手に向かって
棒を振りおろしている、そんな瞬間
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喜びを覚えている自分がいる……
どんな時も、彼は心から
その言動に到っているのではなく
きっと、こういう場合、こうするだろう、
そう思った人間を演じることに、喜びを覚える
一体この人は何なのだろう……
そう思うのだけれども、どこかに、
訴えかけるものがあるんです
何かを、この人は
抱えている
それも、かなり切実で悲痛な
叫びがずっと、彼の語りの根底には
流れているような…。
彼は、大切に大切に持っている、その瓶の
中身が他人に露見することを
非常におそれています
一体、ではその、遮光布に包まれた
瓶の中身は一体何なのか?
演技なのか、演技でないのか……
読みながら彼に翻弄される
ひたひた心が締め付けられる
けれども、目が離せない
彼は脆い、脆いように感じる
その脆さはどこからきているのか
その瓶は何なのか
何が彼をそこまで無感動にしているのか。
人と繋がるかと思えば、
それをぷつんと切ってしまうような
破壊的衝動へ駆り立てているのか
彼は時にひどく他人を傷つけているのに
どうして、駄目だよ、と思いつつ
何とはなしに憐れに見えるのか
彼のその特異な人格は、
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しかし、その人格に僅かばかり変化が現れる
出来事というか存在が
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残酷なことは、彼自身がその変化に
気づいていなかったこと
全く理解できない
彼の中に、少しずつ分かった
ような気分になるものを
見つけていく
彼が、全く理解できない
ただの気味悪い人では
なくなっていき、
ついには……
思わず彼の為に
落涙してしまうほどの
共感を見つける瞬間
私だって、彼に
なりうるかもしれない……
そう思う瞬間
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2015年06月23日
キッチン
おはようございます
本日は、こちら
吉本ばなな著『キッチン』
台所を愛する主人公みかげ
祖母と二人暮らし
そして、その祖母が
亡くなり天涯孤独に
なってしまった時
彼女が眠れるのは
台所でした
冷蔵庫のぶーんという
音に守られて
はじめて、孤独な思想から
逃れ、安らかに眠れる
しかし、祖母が亡くなった後の
事後処理が彼女にはある
部屋だって、うつらないと
いけない
けれども、彼女は
動き出せない
ごろごろ、してしまう
そして、そんな折に
田辺雄一が訪れる
そして、結局
田辺雄一の家に
居候することが決まる
彼は、母と二人で暮らす
このお母さんが
結構強烈で、驚くような
秘密(?)を持っているのですが
それは、読んでから。
とにかく、田辺家に
居候して、みかげは
少し孤独から解放される
田辺も、そのお母さんも
本当に良いキャラクターです
祖母が亡くなってすぐは
心が追いつかなくて
泣くこともできたのか
できなかったのか、
そんな状態だったみかげは
少しずつ、自分が
生きることを見つめはじめる
そうやって、みかげが
自分の人生をもう一度
見つけられることを
踏み込み過ぎもせず
かといって突き放すでもなく
田辺親子はそっと
寄り添って、見守る
助けている
生きなくては、と思う
そして、いつかは
田辺家を出ていかないと
いけない、とも思う
そう思いながら
自分の台所を夢想する
ゆっくり、ゆっくり
一人の女の子が
死に向き合っていく
この「キッチン」も
本当に、この雰囲気から
みかげの心の中から
素晴らしいのですが
その続編の「満月」
これが、たまらない
あらすじを
ご紹介したいのだけれど
全くネタバレをしないまま
読んで欲しいと思う。
だから、言わない
でも、本当に、たまらない
「キッチン」の雰囲気を
受け継いで、いや、それ以上の
切なさと透明感で
満たされて、また、
女の子は成長していく
そして、もう一つ
収録されている
「ムーンライト・シャドウ」
これもですね、いいんです
大切な人を亡くした
女の子がまた、主人公
恋人を亡くしたのだと
すぐ分かる
その理由は後々分かる
本当に本当に
愛していた人が
いない朝、現実
そんな孤独が辛くて辛くて
ジョギングをはじめる
そして、橋の上。
不思議な女性に
出会う。
彼女は、100年に一度
見られる不思議なもの、が
見られるかも、と言う
橋の上に来るように、と言う。
この不思議な女性が
導く方向は、何となく
途中から分かってしまうのですが
いざ、その時になると
変にご都合主義でもなく
川の音が、ごうごうと
聞こえてきそうな
切なくも、確かに
一つのきっかけになってくれる
最後の彼女の言葉が
澄みきっていて、切なさもあるけれど
とっても爽やかで、
こんな言葉を紡げる著者に
憧れを抱いてしまいますね
と、いう訳で
どれも良いのです
読み終わった直後は
この著者の
他の作品は読みたくないなぁ
と思う程良かったですね笑
普通は良い作品を読めば
その著者の他のも
読もう、と思うわけで、
こんな風に思うことは
少ないのですが、
何となく、そう思わせるような
良さなんですね
非常に有名な傑作ですが
まだ、読んでいないという方は
是非是非。
また、読んだことが
ある方も……
久しぶりに再読など
いかがでしょうか?
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2015年06月22日
すてきな三にんぐみ
さてさて、本日はこちらです
とてつもなく恐ろしい三にんぐみ
彼らは、らっぱ銃、こしょうふきつけ
そして表紙にも描かれている
赤いまさかりを使って
人々を襲い、財宝を
奪い取るわるーい、こわーい
三人組です。
そんな三人の隠れ家には
金銀財宝が
ざっくざく……
さて、今日も今日とて
仕事と言わんばかり、
三人が襲った馬車には
ティファニーちゃんという
小さな女の子しか
乗っていませんでした
意地悪なおばさんのところへ
引き取られて、一緒に暮らす
予定だったティファニーちゃんは
ただひとこと
おじさん達の方が
面白そう。
さて、結局三人は
ティファニーちゃんを
大事に大事に
連れて帰るのです
そして、
ティファニーちゃんに
こんなに沢山の
財宝どうするの?
と無邪気に聞か……
三人はそんなこと
考えたことも
なかった、と気づき
思いついた結論は
テファニーちゃんのような
可哀そうな子どもを
集めに集め、
お城を買って
皆で住むことに
子ども達には
おそろいの赤い帽子と
赤いマントを着せて
やがて、子ども達は
大きくなって……
3人が、かなり
急激に変身するのが
面白く、おかしい一方
この三人組みの買った
お城の様子は
なかなか夢があって
どきどきとしてしまいます
この、青色と黒ばかりの
中に、まさかりや
子ども達の赤が
とても映えている…
恐怖の象徴だった
まさかりの赤が、
子ども達の制服
の赤に変わって
こわーい三人組は
すてきな三人組になる
ロングセラーの
大人気傑作絵本ですが
読み聞かせには勿論
(おそらく低学年から
中学年でしょうか)
まだ読んでいなかった
という方は是非是非
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2015年06月19日
各書名言集(小説pert24)
すみません、少しばたばたと
しておりました…
ふあふあ睡眠不足です笑
寒気がやってくるそうで
温かくしなければ、、、
こんな時間になってしまいましたので
名言集に参ります
『ほんとうの花を見せにきた』
―ぼくはその場に膝をついて両手のひらで
顔を覆った。過ぎ去った時間を思って。
愛しかったものを悼んで―
こちらは一つ目「ちいさな焦げた顔」より
バンブーと人間の一番の違いは、きっと
変わってしまうこと、なのでしょう
「変わってしまうこと」は、このお話の中で
そして表題「ほんとうの花を見せにきた」の中で
一つのテーマになっていると思います
紹介記事はコチラ
『卍』
―うちの心にちょっとの隙も出来んように、
いッつも、いッつも、可愛がりつづけに
可愛がってくれなイヤやわ―
園子の性格がよくよく分かる
一言だと思うのです。
ちょっとドキッとしますよね
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『天国旅行』
―焼いたらきっと、あの日
私が目にしたままの姿で恋の矢が出てくる
だろうから、お骨のあいだを探してごらん―
なんだかんだ、この一言に
一番やられたなぁ…と。
キザ過ぎるんだけれども
この小説のタイトルを合わせて
考えると、なかなか、やられる……
紹介記事はコチラ
さてさて、なかなか今回は
ドキッとする名言が多いですね〜
個人的には『卍』のどきどき加減は
素晴らしいと思いますね
結構どこから引用するか
迷いました笑
ではでは
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しておりました…
ふあふあ睡眠不足です笑
寒気がやってくるそうで
温かくしなければ、、、
こんな時間になってしまいましたので
名言集に参ります
『ほんとうの花を見せにきた』
―ぼくはその場に膝をついて両手のひらで
顔を覆った。過ぎ去った時間を思って。
愛しかったものを悼んで―
こちらは一つ目「ちいさな焦げた顔」より
バンブーと人間の一番の違いは、きっと
変わってしまうこと、なのでしょう
「変わってしまうこと」は、このお話の中で
そして表題「ほんとうの花を見せにきた」の中で
一つのテーマになっていると思います
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『卍』
―うちの心にちょっとの隙も出来んように、
いッつも、いッつも、可愛がりつづけに
可愛がってくれなイヤやわ―
園子の性格がよくよく分かる
一言だと思うのです。
ちょっとドキッとしますよね
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『天国旅行』
―焼いたらきっと、あの日
私が目にしたままの姿で恋の矢が出てくる
だろうから、お骨のあいだを探してごらん―
なんだかんだ、この一言に
一番やられたなぁ…と。
キザ過ぎるんだけれども
この小説のタイトルを合わせて
考えると、なかなか、やられる……
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さてさて、なかなか今回は
ドキッとする名言が多いですね〜
個人的には『卍』のどきどき加減は
素晴らしいと思いますね
結構どこから引用するか
迷いました笑
ではでは
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2015年06月17日
ガソリン生活
さてさて、本日は、こちらです
伊坂幸太郎著『ガソリン生活』
望月家の車は
緑色のデミオ
この物語は、この、
緑のデミオ
通称緑デミ目線で
語られながら
進んでいきます
……そう、
車が、ものを考え
そして車同士でお喋りを
しているんです
車たちは、走ることが大好きで
自分の持ち主を贔屓目で
見ながら、車同士で
人間も知らない情報を
交換しあいます
家に駐車している時、
赤信号で止まっている時、
そしてどこか駐車場で
主人を待っている間……
結構彼らが喋る機会は
あるようです
さて、そんな緑デミは、
偶然出会った
女優の翠を乗せる
という経験をします
突然の有名女優の出現に
驚きながらも嬉しい望月良夫
冷静な、その弟亭
しかし、その翠が、翌日に
事故で亡くなります
そして、二人は事故の
前日に翠を乗せていた
ということで、記者の取材を
受けることになり……
次第次第に、この事故に
首を突っ込んでいく
ことになります
少し間抜けだけれども
良い人である、良夫
10歳ながら、望月家で
最も精神年齢が高いと
緑デミに称される
可愛げのない小学生、亭
特に、この亭のキャラクターが
際だって面白く、
事件の真相を解き明かしていく
のも、ほとんど亭だったり
するのですが……
一方で車たちは、車たちで
実は、真相を知っていたり……
人間と車との間での
すれ違いというか、
ずれも、面白いものです
そして、そんなゴシップ的な
事故に巻き込まれる、という
非日常的な体験をしながらも
望月家の長女、
家族に愛想のないことが
特徴のまどかが
厄介事に巻き込まれていたり
亭が学校でいじめを
うけていたり……
良夫がどうやら
恋をしたり……
ごくごく善良な家族である
望月家の生活も
ちゃあんと営まれている
しかし、そんな
普通の生活の端々が
実は先の事故に
繋がっていて……
まずは、車目線で
語られることの
面白さです
うーん、確かに、
車はそう思っていそう!
と一寸くすりと
してしまうような
絶妙なツボを
抑えながら
伊坂幸太郎さんは
車達を喋らせています
車達の会話だけでも
十分、十分楽しい
しかし、良夫と亭が中心に行う
謎解きも、面白くって
これも目が離せません
この事故そのものも
お見事!という感じで
読み終わった後は
こんなに伏線があったのか、と
驚かされます
楽しい。
そして、エピローグ
このエピローグ、
好き、という方
多いのではないでしょうか
ある意味、この
エピローグも
緑デミが何度も何度も
言っていた
あること、に関する
伏線の回収なのだと
思います
そして、ここを
回収してくれると、
読者は嬉しい
素晴らしいサービス
だと思いました
に、しても
伊坂幸太郎さんは
人間でないものに
喋らせるのが
上手いなぁ
是非是非
ご一読あれ
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