2015年06月30日
星に降る雪
さてさて、本日はこちらです
池澤夏樹著『星に降る雪』
ひいやあぁ。
毎度のことながら
このタイトルです。
これだけで私は
きゅうんとなるのですが
表題「星に降る雪」と
「修道院」の2作
がおさめられています
どちらも、テーマとして
あるのは、親しい者の死。
「星に降る雪」では
雪山で友を失った田村
田村は奥山の
ニュートリノ望遠鏡を有する
観測所にこもり、
その友の死を
星と交信する中で
消化してゆく
ニュートリノの話は
「スティル・ライフ」の中でも
出てきましたが
ちら、ちら、と光る
チェレンコフの光に
思いを馳せる場面は
場面が変われど
何度読んでも
その雰囲気、情景
ふっと引き込まれます
言葉の使い方が
相変わらず素晴らしい
詩的な美しさで
はっとさせてくれる。
そして、そんな田村の元へ
亡くなった友の彼女が
訪ねてくるんですね。
彼女も、恋人の死によって
少なからぬ衝撃を受けていて
心の中に出来てしまった
闇や、自分の周りにできてしまった
殻を持て余している
同じように、同じ人の
死に衝撃を受けた田村ならば、
田村と話したならば、
何か変わるかもしれない。
多分、彼女はそう
期待をよせていた
二人で、あの日、
何があったのか、
田村は、彼女に
分からないだろうと
思いながらも
星からのメッセージに
ついて、語り始める
なぜ、彼は観測所に
いているのか……
こちらは、話の内容以上に
その雰囲気を楽しむ
作品では?と思います。
池澤さんらしい、
う・つ・く・し・い
言葉が次々綴られて
その言葉で描写される
映像が目に浮かぶようです
内容を楽しむならば
次の「修道院」
個人的には、
「修道院」の方が
より好きですね。
こちらも、親しい者の死を
扱っているのですが
ある男の話です。
こちらは、
その死そのものも、
その死に対して
どう接していくのかも
もっと複雑で、
謎が多くて、
そして、その男の話を
「私」が、宿の女性から
聞いている、という形式が
また、良い。
話を聞くきっかけになった
出来事から、良い。
こちらは、特に
内容を知らぬまま
読んだ方が絶対に
楽しめるので
これ以上は記しませんが
静かなのに、ぐいぐいと、
目が離せなくなる作品です
どちらも贅沢な読了感
是非是非、どっぷりと
文学に浸って下さい
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