2015年05月13日
すばらしい新世界
さてさて、本日はこちらです
池澤夏樹著『すばらしい新世界』
どんっ、とボリュームのある一品。
風力発電を専門とする一技術系サラリーマンである主人公林太郎が
ひょんなことから、ネパールの山奥に灌漑農業用の風車をたてるプロジェクトを
立ち上げ、ヒマラヤ奥地に赴くことに……
林太郎が、「すばらしい新世界」を知ることになる
物語が幕をあけます
ただ、ぽん、とお金を置いて行くわけでもない
ただ、どん、と施設をつくるだけつくって放置するでもない
林太郎は、自分の作った「小さな風車」が
しっかりと持ち込んだその地に根を張り、
地元の人々が自分でメンテナンスを行える、
そこまでを目標にして、開発に取り組んでいく
機械というものに触ったことの無い人々に、
機械というものを教えていく
何と言いますか、林太郎の思い描く
風車像が、とにかく素敵なんです
大型化することで、効率化。これが今や当たり前の世界で
あえて、あえて山奥で動く小さな風車を
一家に一台、それが当たり前になることを夢想している林太郎
しかし、実際には、その小さな風車は、そこに生きる人にとって
万が一の事があれば、直接食糧難へつながることになる
代物でもある訳で……簡単ではないようなのですが
そうして林太郎が、ネパールの地で過ごしながら
風車だけでなくって、そこへ住む人々の生き方に「新世界」を見出す
チベットの宗教にも、林太郎は無宗教派ですが、何かを感じる
先進国のこれから、文化のこれから、宗教のこれから……
林太郎の目から見る、新世界の素敵さもさることながら
個人的には、林太郎と、その妻あゆみのメールのやり取りが、好き。
こういう関係、憧れるなぁ、と思ったりしましたね
しかし、林太郎は思わぬハプニングに見舞われ……
このハプニングをきっかけに
読者は、現代的現実的な世界と
非現実的な世界に、ごくごく当たり前の
ように同時に入っていけるのですが・・・
人の生き方を見つける物語でありながら
どこか冒険めいてもいながら
暖かい家族の物語でもある
自分の知らない世界の話をたっくさん、たっくさん見れる
そして、その上で、今、自分の住んでいる世界を思い返す
分量だけでなく、内容もボリューミー
がっつりと本が好きな人ならば
きっと、満足して頂けるのでは? と思う一品です
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