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2015年07月16日
春の雪
さてさて、台風が近づいて
風が強いですね……
私はレポートの嵐に
直撃されております
(言い訳)
本日はこちら
三島由紀夫著『春の雪』
よくよく考えたら
春か冬かに紹介した方が
いろいろと良かったのでは
とか思われそうですが
この際良いでしょう…←
美青年の松枝清顕と
圧倒的な美貌を持つ綾倉聡子
松枝清顕は、男らしさを失い
女々しくしかしそれが
雅に映るような形で
成長していった青年
その、美しさ
しかしその裏にある危うさ
歪んだ自負の念を持ち
そして、その歪みは
聡子にも向けられる
聡子からの、好意に
気づきつつ
彼は、彼女を傷つける
ことに躍起になり
つまらなくなり
しかし、彼は確かに
彼女に恋をしていた、
はずなのに、本当に
聡子のことが
嫌いなのだろうかと
思えてしまうほど
乙女心……ではなく
美青年心は難しいですね笑
しかし、そんな歪んでいて
進展などしそうになくて
案外、進展しそう、
それぞれが幸せな形で
結ばれるのかしら、と
思ったところで
再び、松枝清顕は
その心の歪みを出してしまう
疑心暗鬼になり
聡子が自分を子ども
扱いをしていると憤り
誇りを傷つけられたと
恨み、そうして……
聡子との関係が
描かれる前から
破滅の色を濃く
滲み出させている
美青年
彼は、こわれるしか
ないのではないか、と
そう思わせる
彼が聡子への
愛情をはっきりと自覚し
燃え上がるのは
その恋が互いの
破滅を導くものに
なってから、
狂おしい程
聡子を求め、
むしろ、破滅を
望むかのような二人
さて、その恋愛模様のすえ
二人はどのような
結論を出していくのか……
歪んだ人間が好きな方は
是非是非読んでください
存分に歪みっぷりを
堪能できる美しい一品
そう、美しいというのが
やはりポイント高いと
思うのです
題名は春の雪ですが
本当に雪の降っている
描写はいくつかありますが
どれもこれも美しい。
二人の初めての逢瀬の
描写も、美しく
歪んで恐ろしい雰囲気の
内面と対照的に
描かれる情景の
美しさに麻痺を起して
本当に、彼らの歪みが
美しく思えてくる
しかし、美しいものは
何と儚いことか……
しかし儚いこともまた
美しいの要因でありまして……
是非是非、読んで頂きたい
傑作でございます
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【このカテゴリーの最新記事】
2015年07月14日
下町ロケット
暑い、とてつもなく
暑いですね……
すみません、一昨日は
友人達と一日遊んで
夜は飲み…
お酒の弱い私は見事
二日酔いでした笑
友人はお酒の強い方々で
私の飲んでいたのは
ジュースなのだそうですが……。笑
(勿論飲んだ量も最も少ない)
いやはや。
本日は、こちらです
池井戸潤著『下町ロケット』
フィクションとは
かくあるべきかな……
そう思わせる作品
ただ、小説に、現実性が
一定程度無いと
面白くない、と感じる方には
ちょっと合わないかな、とも
思います……
フィクションはフィクションと
割り切って読んでいる方にこそ
読んで欲しい
フィクションに夢を見る人
(私なんぞ完全にそれですが)
こそ、是非是非であってほしい
そんな物語です。
主人公佃は、元々は
研究員でしたが
携わっていたロケットの
打ち上げに失敗し
研究員を止めざるを
えなくなってしまいます
そして、父親の会社を
継ぐ決心をする
大企業からみれば
吹けば飛ぶような中小企業で
しかし、技術に自信と
誇りをもっている佃
しかし、そんな佃製作所に
危機が一気にいくつも
訪れることになります
完全に見下し、競合会社を
法の下でひねりつぶそうとする
一流大企業
大企業を敵に回した
佃会社に対して
冷たさをつきつける銀
中小企業が自分達の
いう事を聞かないはずがないと
たかをくくる大企業
前半は、なかなかに
どろどろと社会の
汚いところが……笑
そして、その一方で
主人公佃が、あまりにも
無鉄砲で、世間知らず(?)で
夢見がちといいますか
相手は、正義は我にありと
いわんばかり、
倫理もへったくれも
ないわと割り切る狡猾な
社会人ばかり
とにかく、勝ち目がない、と
思わせるに十分な程
佃は夢見るおじさんなのでありまして
読者はハラハラ(苛々?)
最初、本当にどうなるんだ
これは、と思わせます
佃よ、もう少し世間を知ってくれ
無理だ、相手が悪すぎる
もう少し狡猾になってくれ
と縋るような気持ちにさえ。
(うーん、自分も
良くない意味で大人になったものだ)
しかし、フィクションは
かくあるべき。
本当に、ギリッギリのところで
佃達はその危機を
乗り切っていく
そして、それは、まさに痛快
悪が罰せられ
正義が称えられる
そんな瞬間になっていく
相手を無条件に見下し
自分の為に潰しても
何の良心の呵責もない
人々相手に、なかなか
派手にやってくれる
そして、そうこうしているうちに
佃は、会社とはなにか
自分はなぜ会社を
引っ張っているのか
じっくりと考え始める
そして、夢を追うことに
意味を見出す
「ものをつくる」とは
そういうものだ、と
最後の最後まで
佃は妥協ということをせず
ひたすら、自分のところの
技術に自信を持ち、
そして、自分の夢を諦めない
その為に、資金繰りという
現実的な問題に直面する
会社員から反感を
買ったりもして
でも、彼の熱意に
必死でこたえようとする
人がいるのもまた一方
そんな中、大企業さえも
凌ぐ高い技術力を
持っている佃製作所の
社長として、佃は……
最後の最後まで
試練は尽きず
ハラハラしっぱなしですが
夢が見れる、
夢が見たい、と思わせる
物語になっています
読みやすさは抜群です。
宇宙にロマンを感じる方は
間違いなく必読書
そうでない方も
是非是非、読んでみて下さい
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2015年07月11日
夜光虫
昨日は暑かったですねー…
といって今日も蒸し蒸しですが。
何だかしばらく重たいめが
続いた気がするので、
からっとしたものを。
織田作之助著『夜光虫』
大阪の織田作之助ですよ〜
とにかく、テンポ感がよくて
全体的に楽しい小説です
復員兵の小沢は、
復員したものの
家族もいなくなり
帰る場所もなくなり
困ったなぁ、という所で
友人の伊部の元へ
行こう、としていた所で
突然、裸の娘が
助けて下さい!
と現れるところから
はじまります
ぎょっとする小沢。
とりあえずコートを
渡してやり
二人して、結局
宿で一泊
女の名前は雪子と
言いました。
と、一方でスリ集団の
リーダー豹吉の
話へとうつり
彼は、人をあっと
驚かすことが
好きで好きでたまらない
という少し変わった
男で、それが高じて
ついにとんでもない
ことをやらかしてしまいます
さて、実は豹吉は
雪子に惚れていて……?
そして、小沢は
伊部の元へ
雪子のための着物を
借りに行くのですが
その道中で、また
不穏な人物を見つけ……
作者は、
偶然というものは
続けばきりがないのだ。
と開き直って
最初はてんでばらばらだった
人物達を結局偶然により
ひとつにまとめあげ
全く天晴と思うほど
綺麗に話が収束していきます
どちらかと言えばご都合主義なのに
何だか、それが鼻につかない
全体を流れる剽軽な
雰囲気のせいでしょうか
それまた、偶然が来たぞ、
とほくそ笑みながら
読むことが、何となく出来る
しかし、一方で
戦後の日本の暗い一面も
きっちりと描きだしてもおり、
ここらへんも
きっちり織田作。
でも、そんな戦後の日本を
憂慮する小沢が、
最後には、「ほんまかいな」
というような活躍の仕方で
話が急展開していきます
とっても気軽に読める作品です
じめじめした気分を
転換するつもりで
いかがでしょう?
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2015年07月10日
各書名言集(小説pert26)
さてさて、本日は名言集に
いってみたいと思います
『遮光』
―嘘をつけばつくほど私はそれに陶酔し、それは時に
自己を支配するほどに大きく、私は自分を見失った。
私はさっきも実際に、酷い快楽を感じていた。
やめたいという拒否の感情と共に、
やはり酷い快楽をも同時に感じていた。
だが、それは果たして、私の望んだことなのだろうか―
自分を見失いながら
自分を冷静に見つめる主人公
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『紙の月』
―何か違う、という気分と、正文の言っていることは正しい、
という気分が、両方わき上がる。少し考え、梨花は後者を
採用する。(中略)頭では納得しているのに、
げっぷをのみこんだような軽い気持ちの悪さが
喉のあたりに残っている―
読者も読んでいて、おかしい、
と思うのに。梨花は結局
それを無理やり呑み込んでしまい……
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『星に降る雪』
―かつて人は夢を見ることができたし、
夢を交換することもできた。
星からのメッセージを間違いなく聞き取ることができた。
だからそのメッセージを土台にして作られた
昔の宗教は本当に人を救う力をもっていたし、
人はどんな暴力の中にあっても救いを
信じることができた。今はそうじゃない。
今はなにもかも駄目だ。―
ある種極限的な体験をして、
それから思うこととは
紹介記事はコチラ
と、いう訳で
名言集pert26はこれにて。
むしむしと暑いですが
今日も一日、がんばりましょう〜
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2015年07月09日
すいかの匂い
さて、だんだんと暑くなって
きましたね……
少し真夏を先取りして…
江國香織著『すいかの匂い』
11人の少女の
夏の思い出
忘れられない、秘密の
少女だけの、思い出
収録されているのは
『すいかの匂い』『蕗子さん』
『水の輪』『海辺の町』『弟』
『あげは蝶』『焼却炉』『ジャミパン』
『薔薇のアーチ』『はるかちゃん』『影』
と、それぞれ全く異なる
少女のお話なのですが
何というのか……まずは、
不思議と、自分もこんな
思い出があるように
錯覚させるのが、上手い。
そう感じました。
親戚に預けられてホームシックに
なったりだとか、
近所の不思議なお姉さんだとか、
遠くからきたほんの僅かの間
友達だった子だとか……
ありそうで、ないような。
そのくせ、自分もいかにも
そんな体験をしたことが
あるような気がする
どれも夏が舞台で
そのうだるような暑さや、
蝉の鳴き声や
個人的に感心したのは、
アイスクリームを食べるシーン
木べらですくって
ジュっと吸うと、
アイスに木の味が混ざる
うん、分かる分かる。
いや、最近だって同じような
体験はしたのだろうけれども
いかにも、
少女だったあの夏の時の体験
として、生々しく蘇ってくる
たむろして、大声を
あげている男の子たちが
なんだか怖い、だとか
そんな頃も、確かにあった
どうして忘れていたんだろう?
と思ったりする
でも、やっぱり、実際には
これらのお話みたいなこと
ないはずだ、と思うんです
どの少女も、少女なのに
どこか、ひどく大人びています
子どもっぽいのに、
子どもっぽくないといいますか
どれもこれも
静かで穏やかに語られて
いるような気がするのに
ドキドキするようなところも
小学生相応の、
むしろ懐かしさを伴う
ひやひや感だったりするのに
(悪いことをしている
時の、あの、心臓が口から
飛び出そうな感じ)
全体的にですね、
ゆるーく
狂気じみています笑
全体的に、ちょっと
病んでいる感じがですね、
あるんです
でも、そんな物語を
絶妙に「ひらがな」を使いこなして
とても柔らかい柔らかい
文章に仕立て上げています
そう、言葉の選び方
比喩の仕方
とにかく秀逸。
比喩に一々感心
させられたような気がします
西瓜でもスイカでもなくって、
「すいかの匂い」
これは、大事。
少女の中にある、狂気と
非常に綺麗な夏
綺麗な夏の中で、
きれいな少女が
少し狂気を感じさせる
思い出を語る
不思議とセンチメンタルに
なりながらも
どこか遠い知らない場所へ
連れて行かれたような、
そんな気分になる
涼しげという訳ではないのに
やはり夏に読みたくなる一品です
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2015年07月08日
春琴抄
谷崎潤一郎著『春琴抄』
非常に短い小説ですので
是非是非、あまり気負わず
読んで頂きたいと思います
その美しい美貌と
舞、読み書き何につけても
天才を発揮し
両親からの期待を
一心に背負っていた娘春琴
しかし、その春琴を
不幸が襲う
わずか9歳で彼女は
目の光を失うことになったのです
元々、驕慢なところのあった
お嬢様育ちの春琴は、
それにより、同情を感じる
両親からさらに甘やかされ
さらに、驕慢になっていく
そんな、かなり我が儘な
お嬢様のお世話役として
佐助という男が
長年仕えることになる
春琴の思いをくみ、
春琴が機嫌を悪くしても
ひたすら、どうにか
丁寧に、彼女のために……
とする佐助
そして、そんな佐助によって
ますます、その意地悪さを増す春琴
そして、その意地悪をしかし、
恩寵のように感じる佐助……
主従の関係であった二人は
やがて、琴を媒介に
師弟の関係をも結び
さらには……
しかし、春琴の気難しさから
二人の関係はどうも、曖昧なまま
公然の秘密として
佐助はかいがいしく
お世話を続ける
春琴は、佐助でなくては
嫌じゃという
かといって、佐助に
優しいかというと
むしろ逆で
読んでいて、佐助が
可哀そうに思われてくる
のですが、
当の佐助は全く持って
平気らしい
いや、平気という
言葉はおかしいですね…
平気なのか、何なのか……
とにかく、ここの
二人の儘ならぬ、尋常ではない
愛などと言う温かな
なにものかを微塵も感じさせぬ
割に、何かとてつもなく
鋭い結びつきの
描写、これを描けるのは
さすがとしか。
何と言いますか、
春琴の変化も、
違和感のあるものでは
ないといいますか、
確かに、そのようになる
女は、多くはなくとも
少なくともないのでは、と
思われるのです
光を失って、
ただ自分の思うその通りに
尽くしてくれるは佐助のみと
なって、その佐助に
まるで、意地悪することが
目的かのような、
そんな言動が増え
しまいにはコントロールが
きかなくなってしまう
非常に異端な恋のありようが
切々と描かれていて
話の展開そのものは
文庫の裏に書いてあることで
全てと言えば全てなのですが
始めは、ただ不幸な娘さんと
思われる春琴が
次第次第に本性を現す
もしくは、
次第次第に、その
嗜虐的な面を
開花させていく
そして、それと同時に
佐助の方も
自虐的な部分をじゅくじゅくと
成長させていく
春琴が、人生における
2度目の不幸により
その容貌を変わらせて
しまった際
佐助は、自ら盲目の道を
選ぶことにする
この、佐助が盲目になるシーン、
これ、見ていられないですね
言ってみれば
分かりやすい刺激的な
擬音語擬態語を用いている
訳でもないのに
この、、、
とにかく、これを
描いてしまうことが
とてつもないことです
ひいい、と
貼った絆創膏を
痛くて少しずつ少しずつ
剥がすようにしてしか
読めませんでしたが、
これを書くって、
どういうことなのだろう、と
思いましたね
静かに、とても静かに
書いてあるところが
怖ろしい……
佐助の自虐性の極致へ
至った瞬間では
ないでしょうか、これは…。
盲人になった佐助は
涙を流して歓喜する
うっすらと明るいということが
ぼんやり分かるだけの
彼には、ぼんやり見える
春琴の白い顔の輪郭に
彼の記憶の中の
美しい春琴のみを見る。
佐助は、生きている春琴を
夢の中でのみ見続け
徹底的に現実から
目を逸らす
このような結末に至るに
十分な程、佐助は
その自虐性を極限まで
開花させていたと言えるし
また、それによって
取り乱す事の無い
春琴も、それまでの
文脈を見れば納得できる
負けず根性が強く
気ままで驕慢な美しい女人と、
盲人になってなお
恍惚とした表情を浮かべ
その女人に進んで
翻弄される丁稚の男
純愛、というものでは
微塵もないというのに
いやらしさを見せず
ひたすらに官能的に、美しいと
思わしめるというのは、
並大抵のことでは
ありませんね
文学です、まさに文学
もしかして、ほとんど
あらすじを書かれたから
読む気が失われたという方は
早まらずに、読んでください笑
話の筋を知っているか
どうかは、重要では
ないように思うのです
だから、文庫本の後ろにも
今述べたようなほとんどの
あらすじを短くまとめたものが
書かれているのだと
思います
ようは、人の嗜虐性と
自虐性を緻密に緻密に
描いている、その緻密さに
驚嘆しながら読んでいく
小説なのだろうと思います
とりあえず読まないと
いくら読んだ人の感想を
聞いても何のこっちゃ
分からない、というような小説
いやあ、とにかく
読んで損はありませんので
短いですし。
少し時間を取って
読んで見てはいかがでしょうか?
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2015年07月07日
蝉しぐれ
藤沢周平著『蝉しぐれ』
清流とゆたかな木立に
かこまれた城下組屋敷。
普請組跡とり牧文四郎
まずは、何気ない
日々の一ページから。
隣に住む少女おふくは、
最近、文四郎に対して
よそよそしい。
何か機嫌を損なう
ことをしただろうか?と
首を傾げつつ
文四郎は、剣術に励む
母親に反発する年頃なのか
文四郎は、母親の言いつけを
五月蠅くおもいながら
友人とぶらりとしてみたり、
また、血は繋がっていないが
父親を大変尊敬していたり
それなりに
年相応の少年なのですが
青天の霹靂のように、
突如文四郎の父親が
藩命により捕えられ……
とにかく、濃厚の一言。
物語自体が、一つの
テーマで語りつくすことの出来ない、
まさに、一人の男の
成長、生き様を描いた作品
それも、これ程までに
細やかに描き出すかと言うほど
全ての出来事が丁寧に描かれていて
とてつもないスピード感で
駆け抜けてゆく時間の
流れの速さに胸が締め付けられるような
心地さえします
何気ない日々の
破壊力がすさまじい。
隣に住むおふくとの
すれ違いすれ違いつつ
心のなにがしかの
思いを感じたり
親友たちと悪ふざけをしつつ
語り尽くすうちに
家路が遅くなったり、
稚拙な理由で喧嘩を
ふっかけてくる相手に
対峙したり……
ふっと胸に懐かしさが
こみ上げるような描き方で
少年の日々が語られる
少年は、決して安泰に
無邪気に過ごせる訳では
なかったけれども
親友逸平と与之助との
交友は長い年月を経て
なお絶えず
藩の裏で実権を握ろうと
動く家老たちに翻弄されながらも
必死に生きている
父親はなぜ、捕えられ
ねばならなかったのか
そんな大きな謎を
残しつつ、
かつて、密やかに
想いあっていたのであろう
ふくとの関係はどうなってゆくのか
これも、当人達にも
分からぬまま。
少しずつ、少しずつ
自分達が大人になっていき
終わる少年時代
そして。
物語だけで、十分過ぎるほど
読者を惹きつけて止まない
作品です、
しかし、それだけではなく
風景描写の美しさ
これも目を引きますし
剣による、試合を含めた
闘いの場面、これも上手い。
言葉の使い方で、
こうまで迫力が出るのか、と
思います
するする、と下がる引き足
刹那詰められる間合い
感じる相手の熱い息……
自分も息が止まるような
痛みを感じそうになる、
それほどの、迫真の描写
時代小説好きには
これはたまらんでしょう
まったくもって、濃いですね。
読んで損はないどころか
是非是非読むべき作品で
あるなぁ、と感じ入りました
一気に読みたくなる作品です
時間をとって、どん、とどうぞ。
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2015年07月06日
過ぎゆくもの
おはようございます
今日からまた一週間。
さてさて、本日は、こちらです
山本容子 / 浅田次郎 / 嵐山光三郎
池内紀/ 池澤夏樹/ 江國香織
小川洋子/ 関川夏央/ 谷川俊太郎
中沢新一 辻原登/ 湯川豊著 著
山本容子イラスト
『過ぎゆくもの』
大型本です。
まずは、この本が
できた経緯から。
銅版画家の山本容子さんが
2007年に、
さいたま市にオープンする
鉄道博物館のための
鉄道をテーマとする
縦3m、横10mの
ステンドグラスを
制作する際、
その着想をえるために、
本書の一番最初に
乗っている
谷川俊太郎さんの詩
「過ぎ行くもの――SL挽歌」
を基調として、
現代の書き手たちに
書いてもらった
鉄道にまつわる
エッセイを書きおろして
もらったのだそうです。
そして、これは、
その10点の
エッセイと、
それぞれのエッセイから
インスパイアを得て
山本さんが描いた
絵が挿絵として載っています
うーん、とにかく
読んで見て欲しい。
芸術ですね…
いや、私あまり
そういうものに
聡い訳ではないのですが
まず、どうして
鉄道とは、こうも
夢があって、
どこか懐かしげで
センチメンタルな面が
あるんでしょうか
著者は見ての通り!
私が紹介したことが
何度もある書き手さんも
ちらほらちらほら
何と言いますか、
この著者軍を見ただけでも
思わず、手をとりたく
なってしまうではないですか
ふっと開けば
まずはマルセス・プルースト
『失われた時を求めて』
より引用が載っていて
時間軸が変わる。
今私のいる時間が
少し、何か変わる
そんな気がすると
谷川俊太郎さんです
ぐっと心にきて
すーっと遠ざかっていく
さあ、私は今から
旅に出るんだ、
汽車に乗るんだ、
そんな気分になる
そうして、10点の
エッセイがはじまる――
この構成だけでもう、
素晴らしいと思うのですよ
そして、また
エッセイもやはり素晴らしいぃ
10点それぞれに
言及する訳にはいきませんが
説明的文章的なもの
まさに随筆、というもの
小説ちっくなもの……
それぞれがそれぞれに
独立して素晴らしいけれども
根底にある「鉄道」
というテーマが
何となく、どこか
同じ雰囲気を作品たちに
持たせていて
最後まで、ずっと
同じ汽車に乗っているような、
そんな不思議に安心した
気持ちで読み切ることができます
挿絵の雰囲気も良くて、
この本を読んでいる間は
全体的に現実感が薄くなります
それぞれ独立した
エッセイをもとに
やはり、それぞれ
独立した絵を描きながら
それらが一枚の絵と
なるように描かれた
大きな大きな絵。
それぞれの挿絵として
のっているだけでなく
これらの10枚の絵が
一枚となって見開きでも
本書にはのせられています
是非是非、全てのエッセイを
読んだ後に
見開いて見て欲しい
すうっと、それぞれの
エッセイが頭の中を
駆け巡って
もう、それだけで
旅をした気分になれます
何だか、寂しいような
嬉しいような、切ないような
幸せなような……
そんな気分になれる。
この本そのものが
一つの作品として
非常に価値あるものなのだと、
思いました
是非是非、読んでみて下さい
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2015年07月05日
各書名言集(小説pert25)
おはようございます。
本日は名言集でございます
そうそう、おそらくはじめて
本を読む夢を見ました
『あべこべ人間』
―東京の偉い先生たちは、犬がワンと吠え、猫がニャオと鳴くのは
非文化的だというのだ。男が男のようにふるまい、女が女のように
しとやかであるのも時代遅れだというのだ―
ミックスセックスを手放しで
賞賛していく「東京の偉い先生たち」
物語が進むにつれ
その熱狂具合があぶりだされて
いくように思います
紹介記事はコチラ
『ガソリン生活』
―あの緑の車はどうなったの?
その言葉を、僕は復唱している。いつか、そう言われる時が
間違いなく、来るのだろう―
コミカルか、ハラハラか……
この二つが占める物語の中で
緑デミがこのことに言及した時だけ
少し切なさが混じる。
この切なさが、後々効いてきます
紹介記事はコチラ
『キッチン』
―天を、星が動いてゆく音が耳の奥に聞こえてきそうなくらいに、
しんとしている孤独な夜中だ。
かすかすの心に、コップ一杯の水がしみてゆく。
少し寒く、スリッパをはいた素足がふるえた―
私はこういう文章を書かれると
もう、ノックアウトです笑
まさに心が震えそうな名言も
沢山出て来るのですが。
紹介記事はコチラ
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タグ:名言
2015年07月04日
陽気なギャングが地球を回す
おはようございます
本日はこちらです
伊坂幸太郎著『陽気なギャングが地球を回す』
昨日に引き続きまたギャング、
でも、全然テイストは違います笑
主人公は
4人組の銀行強盗。
彼らが出会ったのは
「偶然」それとも
「必然」???
彼らが銀行強盗を
はじめたのは……?
でも、とにかく彼らは
銀行強盗なのです。
4人とも、ちょっとした
特殊能力を持っています
しかし、それは
本人たちが、
ある程度年齢を重ねてから
ああ、これって
普通じゃなかったのか
と気づく程、些細な
能力とも言える
役に立つような、立たないような?
けれども、その能力とともに
生きてきた4人。
そんな4人が集まると
最強の銀行強盗が
誕生して
痛快爽快コメディー
が生まれるようです
とにかく、伊坂幸太郎さんは
伏線の回収の仕方が
毎度毎度見事なんですよね…
本当に、ちょろっと出たことも
思わず唸りたくなるような
タイミングで、活用されている
などなど思いつつ
純粋に楽しく一気に
読み切ってしまう作品です
まさに、終わりは痛快。
気持ち良い、の一言です
銀行強盗、だけれども
憎めないどころか
好きになってしまうような
キャラクター達
4人とも、異なる能力を
持っていて、そして
とっても個性的
でも、その個性は
本当にキャラクターとして
読者が愛さずには
いられないような、
そんな個性。
そんな4人が
いつものように、仕事を
完璧にしたというのに、
思わぬ横やりが
入って……
銀行強盗として
プライドをかけた
猛反撃……???
そんなところから、
お話ははじまっていきます
ぐるぐる、あっちこっちへ
話が飛ぶようで、その実、
全てが繋がっている
地球儀をくるくると
回しているようなお話
そして、テンポよく
ぽんぽんぽんと
進んでいく
とにかく、文句なしに
面白い!
きっと、誰が読んでも
面白い。
と思います
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伊坂幸太郎著『陽気なギャングが地球を回す』
昨日に引き続きまたギャング、
でも、全然テイストは違います笑
主人公は
4人組の銀行強盗。
彼らが出会ったのは
「偶然」それとも
「必然」???
彼らが銀行強盗を
はじめたのは……?
でも、とにかく彼らは
銀行強盗なのです。
4人とも、ちょっとした
特殊能力を持っています
しかし、それは
本人たちが、
ある程度年齢を重ねてから
ああ、これって
普通じゃなかったのか
と気づく程、些細な
能力とも言える
役に立つような、立たないような?
けれども、その能力とともに
生きてきた4人。
そんな4人が集まると
最強の銀行強盗が
誕生して
痛快爽快コメディー
が生まれるようです
とにかく、伊坂幸太郎さんは
伏線の回収の仕方が
毎度毎度見事なんですよね…
本当に、ちょろっと出たことも
思わず唸りたくなるような
タイミングで、活用されている
などなど思いつつ
純粋に楽しく一気に
読み切ってしまう作品です
まさに、終わりは痛快。
気持ち良い、の一言です
銀行強盗、だけれども
憎めないどころか
好きになってしまうような
キャラクター達
4人とも、異なる能力を
持っていて、そして
とっても個性的
でも、その個性は
本当にキャラクターとして
読者が愛さずには
いられないような、
そんな個性。
そんな4人が
いつものように、仕事を
完璧にしたというのに、
思わぬ横やりが
入って……
銀行強盗として
プライドをかけた
猛反撃……???
そんなところから、
お話ははじまっていきます
ぐるぐる、あっちこっちへ
話が飛ぶようで、その実、
全てが繋がっている
地球儀をくるくると
回しているようなお話
そして、テンポよく
ぽんぽんぽんと
進んでいく
とにかく、文句なしに
面白い!
きっと、誰が読んでも
面白い。
と思います
さあて、次は
何読もうっかなー
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