2015年07月07日
蝉しぐれ
藤沢周平著『蝉しぐれ』
清流とゆたかな木立に
かこまれた城下組屋敷。
普請組跡とり牧文四郎
まずは、何気ない
日々の一ページから。
隣に住む少女おふくは、
最近、文四郎に対して
よそよそしい。
何か機嫌を損なう
ことをしただろうか?と
首を傾げつつ
文四郎は、剣術に励む
母親に反発する年頃なのか
文四郎は、母親の言いつけを
五月蠅くおもいながら
友人とぶらりとしてみたり、
また、血は繋がっていないが
父親を大変尊敬していたり
それなりに
年相応の少年なのですが
青天の霹靂のように、
突如文四郎の父親が
藩命により捕えられ……
とにかく、濃厚の一言。
物語自体が、一つの
テーマで語りつくすことの出来ない、
まさに、一人の男の
成長、生き様を描いた作品
それも、これ程までに
細やかに描き出すかと言うほど
全ての出来事が丁寧に描かれていて
とてつもないスピード感で
駆け抜けてゆく時間の
流れの速さに胸が締め付けられるような
心地さえします
何気ない日々の
破壊力がすさまじい。
隣に住むおふくとの
すれ違いすれ違いつつ
心のなにがしかの
思いを感じたり
親友たちと悪ふざけをしつつ
語り尽くすうちに
家路が遅くなったり、
稚拙な理由で喧嘩を
ふっかけてくる相手に
対峙したり……
ふっと胸に懐かしさが
こみ上げるような描き方で
少年の日々が語られる
少年は、決して安泰に
無邪気に過ごせる訳では
なかったけれども
親友逸平と与之助との
交友は長い年月を経て
なお絶えず
藩の裏で実権を握ろうと
動く家老たちに翻弄されながらも
必死に生きている
父親はなぜ、捕えられ
ねばならなかったのか
そんな大きな謎を
残しつつ、
かつて、密やかに
想いあっていたのであろう
ふくとの関係はどうなってゆくのか
これも、当人達にも
分からぬまま。
少しずつ、少しずつ
自分達が大人になっていき
終わる少年時代
そして。
物語だけで、十分過ぎるほど
読者を惹きつけて止まない
作品です、
しかし、それだけではなく
風景描写の美しさ
これも目を引きますし
剣による、試合を含めた
闘いの場面、これも上手い。
言葉の使い方で、
こうまで迫力が出るのか、と
思います
するする、と下がる引き足
刹那詰められる間合い
感じる相手の熱い息……
自分も息が止まるような
痛みを感じそうになる、
それほどの、迫真の描写
時代小説好きには
これはたまらんでしょう
まったくもって、濃いですね。
読んで損はないどころか
是非是非読むべき作品で
あるなぁ、と感じ入りました
一気に読みたくなる作品です
時間をとって、どん、とどうぞ。
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