2015年07月09日
すいかの匂い
さて、だんだんと暑くなって
きましたね……
少し真夏を先取りして…
江國香織著『すいかの匂い』
11人の少女の
夏の思い出
忘れられない、秘密の
少女だけの、思い出
収録されているのは
『すいかの匂い』『蕗子さん』
『水の輪』『海辺の町』『弟』
『あげは蝶』『焼却炉』『ジャミパン』
『薔薇のアーチ』『はるかちゃん』『影』
と、それぞれ全く異なる
少女のお話なのですが
何というのか……まずは、
不思議と、自分もこんな
思い出があるように
錯覚させるのが、上手い。
そう感じました。
親戚に預けられてホームシックに
なったりだとか、
近所の不思議なお姉さんだとか、
遠くからきたほんの僅かの間
友達だった子だとか……
ありそうで、ないような。
そのくせ、自分もいかにも
そんな体験をしたことが
あるような気がする
どれも夏が舞台で
そのうだるような暑さや、
蝉の鳴き声や
個人的に感心したのは、
アイスクリームを食べるシーン
木べらですくって
ジュっと吸うと、
アイスに木の味が混ざる
うん、分かる分かる。
いや、最近だって同じような
体験はしたのだろうけれども
いかにも、
少女だったあの夏の時の体験
として、生々しく蘇ってくる
たむろして、大声を
あげている男の子たちが
なんだか怖い、だとか
そんな頃も、確かにあった
どうして忘れていたんだろう?
と思ったりする
でも、やっぱり、実際には
これらのお話みたいなこと
ないはずだ、と思うんです
どの少女も、少女なのに
どこか、ひどく大人びています
子どもっぽいのに、
子どもっぽくないといいますか
どれもこれも
静かで穏やかに語られて
いるような気がするのに
ドキドキするようなところも
小学生相応の、
むしろ懐かしさを伴う
ひやひや感だったりするのに
(悪いことをしている
時の、あの、心臓が口から
飛び出そうな感じ)
全体的にですね、
ゆるーく
狂気じみています笑
全体的に、ちょっと
病んでいる感じがですね、
あるんです
でも、そんな物語を
絶妙に「ひらがな」を使いこなして
とても柔らかい柔らかい
文章に仕立て上げています
そう、言葉の選び方
比喩の仕方
とにかく秀逸。
比喩に一々感心
させられたような気がします
西瓜でもスイカでもなくって、
「すいかの匂い」
これは、大事。
少女の中にある、狂気と
非常に綺麗な夏
綺麗な夏の中で、
きれいな少女が
少し狂気を感じさせる
思い出を語る
不思議とセンチメンタルに
なりながらも
どこか遠い知らない場所へ
連れて行かれたような、
そんな気分になる
涼しげという訳ではないのに
やはり夏に読みたくなる一品です
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