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2015年08月12日
てんやわんや
今日も今日とて
蝉が元気ですね〜
さて、本日はこちら
獅子文六著『てんやわんや』
まずですね、読み始めてすぐ、
思ったのが、タイトルのセンス!
でした。
うん、まさに「てんやわんや」
「てんやわんや」という
タイトルがあまりにも
しっくりしています。
主人公犬丸順吉は
なかなかに情けない男で
主体性というものが
全く、本当に
全くなくてですね
流されに流され
てんやわんやしながら
生きている
鬼塚という男の
言いなりになっていた
彼は、戦後の空気に
当てられ、
にわかに「自由」を
意識しだした挙句
自分も鬼塚から
自由に、人権は我に!
と、意気込んで
いざ。
鬼塚を前にすると
彼にまんまと
言いくるめられて
彼の言うまま
四国へ身を隠す
(実際隠す必要が
あるのやら、ないのやら)
その四国の地でも
いろいろとあっと
驚きながらも
別段強い意思もなく
ずるずる生きる
そんな彼の前に
どん、と存在感をはなつ
花輪兵子という
女性。
彼女のたくましさに
順吉はたじたじ
しっぽを巻いて逃げてしまう
そのくせ、彼女と鬼塚の
間柄を訝しがって
勝手に一人苛々する
面もあったり
かと思えば、
仲間につれられて訪れた
村の娘に熱を
上げてみたり
へまをやらかしては、
一人あわてて
嘆き悲しみ
むやみに怒り
そのくせ騙され
後悔しつつ
最終的にそれほど
傷を負っている
ようにも見えぬ
なんともまぁ、
生きるのが楽なのか
苦なのか分からない
男なのですが
彼の「てんやわんや」な
生き様は、なかなか
純粋に面白い。
如何せん、とんちんかんな男で
本人は悲しみに暮れて
泣いているのに
周りには「ちいと、おかしいわい」
「頭へ、きとるらしいの」
なんて言われて、読者の
笑いを誘ったりする
どこまで情けないんだ
順吉……
と、同情する気持ちも
どこかへ飛んで行って
けらけら笑いながら
彼の悪戦苦闘を
眺めてしまいます
これが、戦後の
大変な時期であるというのが
かえって滑稽に
思えるほどに
彼はてんやわんやしている
周りに翻弄され続け
とんちんかんな
思い込みを何度も
しては馬鹿をやる
けれども憎めないのは
これまたどうしたことか
そう、情けないけれども
憎めない男、
それが犬丸順吉の
ようです。
ちなみに、本人に
自覚あり笑
そんな、てんやわんやな
お話、是非是非気軽に
読んではみませんか?
新聞連載だったと
いうことで、
当時楽しんでいた人達は
さぞかし毎日
わくわくしながら
新聞を待った
ことだろうなぁ、などと
思います
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2015年08月11日
各書名言集(小説pert28)
暑いですねぇ
学校とバイト先のクーラーの為に
風邪をひいてしまったもよう。
皆様もお気をつけて
さてさて、溜め込んでいる
名言集をば
『すいかの匂い』
―ビー玉よりおはじきの方が好きだった。
おなじようにガラスでできていても、
ビー玉は持ち重りがするし、ぶつけたときに、
ばちんと無遠慮な音がする。
おはじきの方がずっとひそやかで心愉しい―
何なのだろう、この短篇集の
無条件に同意してしまいたくなるような
そんな語り方は
紹介記事は
コチラ
『夜光虫』
―ユーモアのない人生なんて、凡そ糞面白くないものだが、
同時に、人生から偶然というものを取り除いてしまえば、
随分味気ないことになるだろう。
しかも、偶然の面白さというものは、
こいつが続き出すときりがないという点にある。
余り上品でない比喩を使って言えば、
偶然というやつは、まるで金魚の糞のように
ゾロゾロと続くものなのである―
こう言って、ユーモアと偶然に
溢れた作品を展開させていく
センスが素敵です
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『下町ロケット』
―「オレは──オレは、あの技術は
ぜったいに手放したくありません」
瓶底のような分厚いめがねの奥から、
決意を秘めたような目が
会議室の空気を睨みつけていた。
「感情論だろ、それ」
黙って聞いていた
唐木田が吐き捨てる。
だが
「違います」
山崎はきっぱりと言った。
「あの特許は確かに、大型水素エンジンを
制御するための技術です。ですが、その用途は
水素エンジンに限らない。
もっと汎用性の高い、
斬新なシステムなんですよ。
売ればその可能性を捨てることになる。
二十億円ぽっちでそれを捨てていわけはありません。
そんな安いもんじゃないんだ」―
夢を見、誇りを持つ技術者たち
その熱い思いは一体
どこから、と驚く程の熱意
紹介記事はコチラ
さてさて、一度区切りますね〜
ごきげんよう
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2015年08月10日
綺羅星波止場
暑さが厳しい、
厳しすぎる……
皆様、お元気ですか?
ちょっと、暑さも忘れるような
一冊を
長野まゆみ著『綺羅星波止場』
とにかく、思わず
ほうっとため息を
つきたくなるような、
素敵な不思議短編集
収録されているのは
「銀の実」
「綺羅星波止場」
「雨の午后三時」
「レダの卵」
「耳猫風信社」
「黄金の釦(ボタン・ドール)」
「月夜の散歩」
「銀色と黒蜜糖」
題名だけで、なんだか
綺麗で不思議で
ひたっとくっつくような
感触があるように
思います
独特な世界観は
作者があとがきで
触れているように
透明感に溢れていて
可愛らしく、綺麗です
でも、時々少し
不気味なことも
でも、不気味さも
含めて、カランと音を
たてるガラス玉のように
透き通っています
どれもこれも
本当に大好きなのですが
作者が『野ばら』の亜種と
語る、「銀色と黒蜜糖」
これがですね
(読んだ当時私は
『野ばら』を
知らなかったのですが)
衝撃を受けました
こんなに、現実と夢の世界を
織り交ぜ織り交ぜ
自然と、わざとらしくなく
夢と現実が、どちらがどちらか
分からなくなるように
描くことが、出来るものなのか…と。
読了後は、夢から覚めた
直後の、少し世界が
ふらふらしている感じが
しばらく続きます
不気味なはずなのに
綺麗で透き通った
光に満ち満ちているように
思われるような
そのくせ、ぼんやりと
しているような
物語が、薄くひらひら
漂いながら
自分を包みこんでくる
そんな印象
私は、こういう世界観
たまりません
どちらかというと
このような世界観の
不思議なことが
当たり前のように起こるお話は
癖があることが多いのですが
案外癖も少なめで、
さらっと読めて
どなたにも楽しめそう
是非是非、如何でしょう?
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2015年08月08日
新世界より
ほんっとうに、お久しぶりでございます
すみません、やっとのこと
提出期限の近いレポートは
残り1つに……
と、いう訳でよかった
久し振りに、やっと更新です
そんな本日はこちら
貴志祐介著『新世界より』
文庫本で
上中下とある、どどーんと
ボリューミーな本作品
とっても、大満足な
超大作だと思います
世界は1000年後の世界
主人公によって、
過去を綴られる手記の形で
お話は進んでいきます
実をいいますと
上の、最初の方は
結構読みづらいかも
しれません
理由としては、まず
世界観を掴むまでに
少し時間がかかるかな、
と思われること
そして、とてつもなく
主人公が思わせぶりなこと笑
あのような惨劇は……
後々おこる怖ろしい事態を……
まだ希望に満ち溢れていた……云々
もう分かった、惨劇分かった
分かったから先が気になる
何があったの〜〜〜〜〜!?
と、いう訳で、ここで
挫折しないでほしいのです。
上の中盤あたり、さあ、
主人公達の運命を狂わせる
一つの事件が起きた頃から、
もう、目が離せない
これも、十分主人公達
ピンチなのに、まだあるの?
何があるの?
と、一度物語が転がり
はじめると、もう
物語の世界から
抜け出せなくなって
しまいます
子どもらしい、
真っ直ぐ、時々無鉄砲
そしてやっぱり幼い
そんな主人公とその
友達が、1000年後の
世界の歪んでいる部分を
見つけてしまう
それまで、何の疑いもなく
信じ切っていた世界を
疑わなければならなくなる
その衝撃やいかに
しかしながら、それは
ほんの悲劇の幕開けでしかなく
よくもまぁ、こんなに、と
思う程、終始主人公達はピンチです
終始、は言い過ぎかもしれませんが笑
いや、しかし、本当に
感心するくらい、読みながら
常に心臓が早鐘を打っているような
そんな物語、一体全体
主人公が何度も思わせぶりに
書いた、悲劇とは何なのか
私は何度も、これが言ってた
悲劇か、え、違うの、
まだもっと恐ろしいことが
起きるの……?
と唖然としてしまいました。
子どもならではの
絆と呼ぶにふさわしい友情
それと対比されるように
描かれる
どろどろとした、人間の
弱さや利己的な部分や愚かさ
ラストのオチはかなり
ぞっとします
何がぞっとするって
ありえそうな所が
人間の何とも言えない
傲慢さといいますか
残酷さを物語の中で
暴き出した後だからこそ
何だか、納得できてしまって
怖ろしい、そんな
見事なオチでした
長いのですが、
上、中、下
それぞれ、あっという間に
読んでしまいました
しかし、あまりに
恐いので、それぞれの
巻を読む間隔は
あけてしまったり
しまいましたが笑
でも、読み始めると
文字通り、逃げられない。
読んでいない間も
ともすれば、1000年後の
日本を考えてしまうような
心にぐぐぐっと迫ってくる
世界観。
是非是非、どっぷりと
浸かってみて下さい
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2015年07月29日
各書名言集(小説pert27)
さぼり気味で申し訳
ありません……
テスト期間中ですが
見事に上中下ある
長い小説に手を出し
いろいろ困っています
断ち切れ誘惑
さて、本日は名言集です
『薬指の標本』
―わたしの残像の中でその肉片は、
桜貝に似た形をしていて、
よく熟した果肉のように柔らかい。
そして冷たいサイダーの中を
スローモーションで落ちてゆき、
泡と一緒にいつまでもそこで揺らめいている―
主人公が指を失う場面
生々しくて、すうと左指がする
心地がするのに
浮かんでくるのはパステル調の
綺麗な絵で、感嘆してしまった一文
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『さようなら、ギャングたち』
―ゴミ捨て場の「不燃物は火曜日に」の貼り紙の下に、
ポリバケツと女の子とポリバケツがならんで置いてあった。
ポリバケツたちも女の子ともびしょびしょに濡れていた。
わたしは女の子にかさを差し出した
「ここに人を捨ててはいけないことになっています」
とわたしは言った―
「ポリバケツと女の子と
ポリバケツがならんで置いてあった」
この文章に感じたセンス
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『蝉しぐれ』
―「泣きたかったら存分に泣け。おれはかまわんぞ」
「もっとほかに言うことがあったんだ」
文四郎は涙が頬を伝い流れるのを感じたが、
声は顫えていないと思った。
「だが、おやじに会っている間は思いつかなかったな」
「そういうものだ。人間は後悔するように
出来ておる」
「おやじを尊敬していると言えばよかったんだ」
「そうか」―
文四郎の父への思いと
逸平の優しさと
彼らの友情とが詰まった
場面だと思います
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さてさて、もう7月も
終わりですね……
暑いですが
皆様体調には
お気を付けなさって
それでは。
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2015年07月27日
さよなら、シリアルキラー
久方ぶりです……
最近とにかく、暑いですねぇ
少し夏バテ感もあったり…しつつ。
珍しく、外国文学でございます
バリー・ライガ 著, 満園真木 翻訳
『さよなら、シリアルキラー』
小さな街で、名を轟かす
連続殺人犯
を、父に持ジャズという
少年が主人公です
父が逮捕され、祖母と
二人、暮らしていましたが
とある、殺人事件
その現場の捜査を
じっと見つめるジャズ
父から「英才教育」を
受けてきた彼は
殺人犯の目線に立ち、
この殺人事件が
連続殺人になる、と
確信し、事件解決に
乗り出そうと思いますが……
父親が連続殺人犯、それも
非常におぞましい連続殺人犯
であるということからくる
周りのどこか距離を置いた目
しかし、あまり、シリアスな
雰囲気はないのです
いや、シリアスではあるのに
重さがあまりない
理由の一つは、彼の親友と
彼女の存在でしょうか
どちらも、素敵な
キャラクターで、
ジャズ曰く、
彼が狂気へいくのを
食い止めている人物の
ようです
「獲物」を見た時に
それはもう自然と
どのようにして殺すのか、
が頭によぎってしまうほど
徹底して「英才教育」を
受けたジャズは、それでも
心の中で呟き続けます
人は大事だ、人は大事だ……
壮絶な人生を送っている
にも関わらず
どこも卑屈な、というか
狂人的なところがなく
ごくごく普通の高校生として
悩んでいる
そうこうしているうちに、
ジャズの予想通り
第二の被害者が現れ……
連続殺人犯がこんな
小さな街で2人も
出るはずがない、と
思い込みたい、そんな
人々の視線は
自然とジャズへ向きます
連続殺人犯の息子だから
という理由で、
インタビューをどうにか
とりつけようとする記者
ジャズの望む望まぬに
関わらず、彼を
施設へ入れようとする大人
そんな、理不尽に
悩み、時に怒りながらも
ジャズと親友との
会話はとても楽しいものですし
恋人との会話は
とても素敵だと思います
父親の「職業」に
何の疑問を持たない程まで
洗脳されてしまっていた
少年が、父親の逮捕を
きっかけに、
自分は、変わろうと
必死に努力をはじめる
変化出来ない自分を
一方で誇りに思いつつ
一方で自虐的に思いつつ
しかしながら、彼の
成長からは、なかなか
目が離せない
どうも、応援したくなって
しまう少年です
その一方で、難解な
連続殺人事件
この捜査も、一体
警察が犯人を見つけるのか
ジャズが見つけるのか
それとも、見つからないのか
ハラハラします
結果はどうなるんでしょう?
テーマとしては、かなり
重いはずなのですが
サスペンス要素と
ジャズとその素敵な仲間達の
お蔭であまり心に重く
ずっしりとくることもなく
ぐっと読んでしまえます
外国文学ということで
この、自然と異文化な
ところも、やはり外国文学の
魅力ですね
日本の文学でも
まだまだ読みたいものが
ありすぎて
普段手が出せないで
いるのですが
たまに手をだすと
いやぁ面白い。
是非是非どうぞ
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2015年07月21日
オニじゃないよおにぎりだよ
さてさて、本日は
久しぶりに絵本なんて
いかがでしょう?
シゲタサヤカ著『オニじゃないよおにぎりだよ』
とにかく、表紙のオニが
なんと可愛らしい!
一見不気味かと思いきや
何とも言えない愛嬌を
兼ね備えていますね
絵本の王道をいっている
と思います
何といいますか、
とにかく、ほっこりします
絵本、読んでるなぁ〜と
実感できる
勿論、読み聞かせにもいい
低学年から中学年
きっと、明るい雰囲気の中
楽しく読めると思います
あらすじとしては・・・
(以下ネタバレ注意です
おにぎりが大〜好きな
オニ3匹組
おにぎり、とにかく
おにぎりを食べる
いつも食べる
おにぎり、おにぎり
そんな、可愛らしくって
悪いことの一つも
考えられないほど
頭がおにぎりで詰まった
オニたちなのですが
ある日のこと
一人の人間が、彼らを見て
ぎゃーっと逃げてしまいます
(見た目はオニですからね苦笑
しかし、オニにその
自覚はなし
だいぶだってから、
人間が落としていった
おにぎりを見
どれどれ、と食べてびっくり
不味い。
(そりゃそうだ笑
言ってみれば腐ってしまったから
不味いだけのおにぎりなのに
オニは、人間に心から
同情。
人間、可哀そう
こんな不味いおにぎりを
食べてるなんて!
(違うってば笑
オニは、せっせせっせと
おにぎりをつくって
よーし、と意気揚々、
村へ。
しかし、結果は
勿論、人間は慌てふためき
逃げるばかり
オニ「「「?」」」
意味が分からない
オニたちは
考えた末
突然お邪魔したから
駄目だったんだ!
と気が付き
(間違ってます。笑
「「「今からオニが行きますよ〜」」」
と言いながら今度は
村へ。
ついてみると、、、
全ての家が戸締りきっちり笑
やっと、オニは自分達が
こわがられている、という
驚愕の事実に気づきます
しかし、ここで怒らないオニ達
このオニ達がどこまでの
愛されるキャラな所以でしょうが
怒らない、考える
どうしよう、どうしよう、そして……
タイトルにもなった
「オニじゃないよおにぎりだよ」
という名ゼリフとともに
大きなおにぎりを被った
オニが再び村を訪れる
(この絵は是非是非見て欲しい
村人はおもわず笑いだす
最後は皆でおいしく
おにぎりを頂く。
めでたしめでたし。
という、本当に
ハッピーエンドの王道と
言いますか
オニ達がとにかく
どこまでも良いオニで
かわいくて、おかしくて
好きになってしまいます
大人も子どもも
きっと好きになる
チャーミングなオニの話
そして、美味しい
おにぎりが食べたくなる
お話。
是非、一度
読んで、ほっこり
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タグ:読み聞かせ
2015年07月20日
箱庭図書館
今日も暑いですね
本日はこちら
乙一著『箱庭図書館』
短篇集ですが、
面白いのは、この中に
収録されているのは
読者のボツ案を募集して
それを乙一さんが
リメイクした、という
ちょっと珍しい
短篇集ということです
収録作品は
「小説家のつくり方」「コンビニ日和」
「青春絶縁体」「ワンダーランド」
「王国の旗」「ホワイト・ステップ」
書籍そのものには、
元々の作品は
のっていないのですが
実はコチラ
で読むこともできます
(どちらを先に読むのは
個人の好みによりますかね…
生きることへの不安というか
漠然とした辛さみたいな
ものが描き出されている
そんな作品が多くて
圧倒的な絶望感などは
あまりなく
どんどんと、一つ一つ
読み進めていったのですが
でも、どこか希望を感じるような
爽やかな終わり方のものが
多かった印象です
登場人物の鬱屈とした
気持ちも十分分かるし
それが、少し晴れる過程も
違和感なく受け取れる
全体的に
爽やかだった印象です
超鬱乙一はなりを
ひそめているご様子。笑
だから、結構気張らずに
読める短編集ですね
最後の「ホワイト・ステップ」が
個人的に、極上です
雪が降る。
つくはずのない足跡を見つける
おかしい、怪しんだ僕は
その足跡の主をつきとめる
その出会いによって
衝撃的な事実を
僕は知ることになる…。
素晴らしい設定と物語展開
この設定を思いついた
読者さんも素敵ですし
そんな元作品を
こうまで素敵なお話に
リメイクした乙一さんも素敵
かなり、元作品とは
雰囲気を変えてあるんですね
変えてあるというか
乙一になっていると
言うべきか。
はじめて読んだ時は
最後に泣いた記憶があります
不思議なのに、どこかリアルな
乙一さんらしいお話とも言えます
確かご本人も
一番僕っぽい発想の
話だったと
あとがきで書いておられましたし
何と言いますか、
暑いせいか、最近雪の話が
頭に浮かんでくる…のかな。笑
あぁ、お祭りでかき氷が
食べたいなぁ、など思いつつ……
是非是非、読んでみて下さい
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2015年07月18日
宵山万華鏡
さてさて、本日も
こんな時間ですが。
ちょうど先日祇園際と
いうことで、読みたくなってきた
こちらの作品
森見登美彦著『宵山万華鏡』
祇園祭の雰囲気に包まれる
京都で起こる、
ちょっと不思議な話等含めた
「宵山姉妹」「宵山人魚」「宵山劇場」
「宵山回廊」「宵山迷宮」「宵山万華鏡」
この6篇の短編集
でも、繋がっているお話もあり
繋がっているというか、
同じお話を別視点で
見たお話といいますか
あぁ、成程こうなっていたのか
と、不思議不思議だった
真相のようなものが
うかがえたり、
むしろ、余計に宵山が
不思議な光を
放ちだしたり……
最初の「宵山姉妹」は
不気味なお話で
一気に、祇園際の持つ
何か特別な力のような
何か特別な時空を
感じて、行きたくなります
祇園へ。
不気味なのだけれども
しかし、その後一変して
ごくごく普通の世界が
やってくる
いつもの、「あの」大学生たち……
彼らのお話は、やはりとにかく
面白い。笑いに笑ったその後で
あぁぁ、こんな裏事情も
あったのか、と
他のお話を見て
ちょっとしんみり……
したと思えば
またまた不気味な
祇園際が迫ってくる
とにかく、万華鏡という
題名そのままに
くるくると目が回る程
鮮やかに
テイストの違うお話が
絶妙に現れては消え、
現れては、消え。
大きなお祭りの持つ
何か神聖な感じのある
不思議な雰囲気を
存分に楽しめつつ
相も変わらずの
おばかっぷりに
大笑いしつつ
とにかく、
行きたくなります
祇園へ。
あぁぁ、今年も
行きたかったのに…
と無念を感じる時には
どうしたって
読みたくなる一品です
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2015年07月17日
旅のラゴス
さてさて、こんな
時間になってしまいました…。
休みになるかな、と思ったけれど
休みにならなかった時の
無念さ。
本日はこちらです
筒井 康隆 著『旅のラゴス』
この表紙もなかなか
魅力的ですよね。
ラゴス、は主人公の
旅人の名前
「この世界」
は、どうやら全くもって
私達の世界とは
違う世界らしい、というのが
冒頭から滲み出ています
スカシウマやミドリウシ
という動物が
当たり前のように
記述され、その説明もなく
そう、当たり前。
そして、彼らは
動物に
感情移入をする
最初は、何か
テキトウなことを
言っているのかと
思ったら
彼らは本気で、
感情移入が出来る
すなわち
スカシウマの思っている
ことが分かる!
なるほど、こんな
世界かぁ、と
納得したら
今度はまた、とんでもない
能力をしれっと
皆が使いだす……
ラゴスが、なぜ
旅を続けているのか
これは、読んでいくうちに
分かってきます
彼が旅先で出会う
出来事というのは、
まるで、ぶつぎりの
短篇集のようでありながら
彼の人生を組み立てている
かけがえのない
パーツになっている
よくよく考えたら
人生なんて、そんな
ものなのでしょうか。
確実に、あの出来事と
今が繋がっている、という
感覚はなくっても
「あの出来事」はどこか
自分の根底を
なしている
ふっと、昔出会った人を
思い出したりする
でも、彼は旅を続ける
出会い、別れ、出会って
最後はやっぱり別れる
この淡々としながらも
人々を惹きつけてやまない
主人公ラゴス
一体、彼の魅力は
何なのだろう?
不思議だけれども
でも、何となく
誰もかれもが
彼のペースに
乗せられてしまっている
ことに、納得がいく
そんな主人公
「この世界」では、一瞬
思考が停止して
意味が呑み込めないような
「ありえない」ことが
当たり前のように
何度も何度もおきます
よくもまぁ、こう絶妙に
ありえないけど、ありえそう、な
出来事を重ねられたなぁ、と
感心するほど、
最後の最後まで
なかなか慣れないと
いいますか
読者をぎょっとさせたり、
憧れさせたりしながら
「この世界」の住人は
暮らしていて
ラゴスは旅をする
だんだん、「この世界」の
ことが分かってきて
気づいたら物語の世界に
いるような、不思議な小説
劇的に面白いか、と言われると
そういう訳ではなく(語弊があるでしょうか
最初は、本当に
何の脈絡もなく、
小さなエピソードを
羅列してあるだけなのかと
思うほど、ちょっと
不思議なエピソードが
ぽんぽんと
書かれているだけ、
それだけなのですが
多分、人により
違うでしょうけれども
どうも忘れられない
エピソードがあって
ちょっと、心の片隅に
ひっかかってしまって。
でも、ラゴスは
呆れるくらい、淡々としていて
最後まで入り込めるような
入り込めないような
何とも不思議なお話というのが
個人的な印象です
熱狂的なファンも
結構いらっしゃるようですが
それも、分かる
好きな人はとてつもなく
好きになりそうな小説
私的には、読んでいて
ふっと、このエピソードを
思い出したいなぁ、と
思えるような
人生の中でこの小説を
読んだことが
大きく未来のどこかに
繋がる訳ではないとはいえ
どこかで、ああ、と
腑に落ちるような形で
思い出せるんじゃないか
そう思わせる一品です
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