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2015年06月28日

遮光

すみません…
今月はさぼりっぱなしに
なってしまいましたね…
わざわざお越しいただいたのに
更新してなかったー、
となってしまった方も
いらっしゃるかと思います、
申し訳ありませんm(__)m


本日は、こちらです


中村文則著『遮光
遮光.png

先に断っておくべきは、
この物語は、暗いということです

この、暗さに惹かれる人は
とてつもなく惹かれると
思うのです

じっとりと、離れられなく
なるような。

淡々と、感情が無いのではないか、
少なくとも、何かが抜け落ちているのではないか、と
思うような、そんな主人公が大切に持っている瓶


一見、激高して相手に向かって
棒を振りおろしている、そんな瞬間
そうして「怒っているふり」を観察し
喜びを覚えている自分がいる……

どんな時も、彼は心から
その言動に到っているのではなく
きっと、こういう場合、こうするだろう、
そう思った人間を演じることに、喜びを覚える

一体この人は何なのだろう……
そう思うのだけれども、どこかに、
訴えかけるものがあるんです

何かを、この人は
抱えている

それも、かなり切実で悲痛な
叫びがずっと、彼の語りの根底には
流れているような…。

彼は、大切に大切に持っている、その瓶の
中身が他人に露見することを
非常におそれています

一体、ではその、遮光布に包まれた
瓶の中身は一体何なのか?

演技なのか、演技でないのか……
読みながら彼に翻弄される

ひたひた心が締め付けられる

けれども、目が離せない
彼は脆い、脆いように感じる
その脆さはどこからきているのか

その瓶は何なのか

何が彼をそこまで無感動にしているのか。

人と繋がるかと思えば、
それをぷつんと切ってしまうような
破壊的衝動へ駆り立てているのか

彼は時にひどく他人を傷つけているのに
どうして、駄目だよ、と思いつつ
何とはなしに憐れに見えるのか

彼のその特異な人格は、
おそらく元々そういうものだったのでしょう
しかし、その人格に僅かばかり変化が現れる
出来事というか存在が
出来たのではないかな、と思います

物語を読んでいくうちに、そんな風に思う
残酷なことは、彼自身がその変化に
気づいていなかったこと

全く理解できない
彼の中に、少しずつ分かった
ような気分になるものを
見つけていく

彼が、全く理解できない
ただの気味悪い人では
なくなっていき、

ついには……

思わず彼の為に
落涙してしまうほどの
共感を見つける瞬間

私だって、彼に
なりうるかもしれない……

そう思う瞬間

癖のある作品といえば癖があります
まずもって主人公の人格が
ひと癖どころではないですし…

でも、残酷ながら、
切々と訴えてくる作品です

切々と訴えてくる?
少し言葉が優しすぎるかも
しれないですね


いいではないですか
暗い作品も。
傑作でしょう

是非是非




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