2014年12月24日
海と毒薬
さてさて、本日ご紹介する
のはこちら
遠藤周作著『海と毒薬』
![海と毒薬.png](/tanpekinosiori/file/E6B5B7E381A8E6AF92E896AC-thumbnail2.png)
勝呂医師という医者ののもとへ、「私」が診てもらいに
いくその前あたりから、物語がはじまります
勝呂医師は、素晴らしい腕の医者でした
「私」も思わず感服。
しかし、彼には壮絶に暗い過去があった…
戦争直後の新聞に勝呂医師の名前は載っていました
戦争中に、医大の医局員たちが、捕虜の飛行士8名を
医学上の実験材料にした、という内容のもの。
人間は血液をどれほど失えば死ぬか、
血液の代わりにどれほど塩水を注入できるか、
肺を切り取って人間はどれほどの間生きながらえるか……
この実験に、彼は参加したという
しかし、彼は主だった被告ではなく、懲役二年で済んでいる
冒頭の勝呂医師の少し不気味な雰囲気からもして
勝呂医師は余程人間らしい暖かさの欠けた人なのかと
思ったところで、時代がぐんと遡る。
戦時中の医療現場の実態
手術をしたところで幾何も生きながらえる時間の増える訳でも
ない患者、むしろその負担の方が大きいような患者相手に
どうせ死ぬなら、オペで実験をやりたい、実験に最適だと
言う柴田教授
それを見て、その患者に本当のことも言えるはずも無く
苦悩する若き日の勝呂。
こんなエピソードからはじまるのです
医療現場でも、患者を救いたいなどと思えることもなく
倫理観が極端に欠如した状態が伺えてしまう
しかし、病院で死なんやつは空襲でどうせ死ぬんや
という現場の人間の声を聞くと、彼らを
一様に責め立てるということも出来ないのだろうか…
暗澹とした気分で物語を読み進めていきますが
そこでは、やはり、どこか疲れ切って
ネジが飛びきってしまったのかと
思えるような人々、倫理観の欠如した人々の姿
それぞれの幼少期や、過去を通じて
何だか仕方ないのではないかと思えてしまう
のも恐ろしいところ
そうして罪の意識を忘れ去っていたもしくは
意識してそんなもの忘れていた人々が
冒頭の実験に立ち合うことになってしまう
実験の後の反応は、それぞればらばらです
勝呂の反応と、その同期戸田の反応の違いは
そら恐ろしいものがあります
そんな勝呂も、時を経て、どこか諦念を持ったまま
今を生きているのか…
読者を茫然とさせ、物語は終わります
そして、遠藤周作さんの問いかけ
慄然として神を持たない、私達日本人の倫理とは、
罪の意識とは何なのか……
倫理や道徳なんて、当たり前に形成される
もののような気もしてしまいがちですが
極限状態においてまで、一体何を罪とすればいいのか
衝撃を受けること間違いなしの作品です
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