2015年06月11日
卍
さてさて、本日は少し
激しい作品です。
谷崎潤一郎著『卍』
「先生」に、園子が語りかけている形で綴られている小説です
彼女の口調は関西弁でして、これがまた、味を出しています
に、しても園子さん、
あなたのお話は随分と凄まじいですわね。
まず、園子と夫の関係から、何やら複雑です
園子の話によると、夫は園子に
嫌気がさしているようでありながら
しかし、確かに園子の事を愛しているのではないかな、
と思われるような言動もしている
園子も夫の事が好きなのか
どうなのかが何だか難しい
複雑な夫婦関係だと思われますね
そんな折、園子はある美術学校へ通うことにする
これによって、朝園子は夫と一緒に家を出て
しばらく一緒に通勤・通学することになるのですね
少し、夫婦関係が温かくなる……
(この時、夫さん、かなり喜んでいるんですよね……
園子はちょっと微妙なのですが……)
しかし問題が、その美術学校で起きます
ひょんなことから、園子はその学校の校長による
嫌がらせの対象になってしまったのです
その発端は、光子という女性。
とてつもない器量を持った女性で、
芸術大学でのモデルなんかよりまだ、
比較にならぬ程美しい。
お嬢様らしく無邪気なところもあったりもする、
美しさ可愛らしさ全てを兼ね備えているのでは、
という魅力に溢れる女性
可笑しいことですが、校長の嫌がらせが実を結び(?)
園子がその光子に同性愛を捧げている、
という噂が立ってしまう事態にまで
発展してしまい、内心一笑に付す園子でしたが、
なぜ、そんなことになったのか、
後程光子本人から理由を聞くと
光子も自身のその類稀なる器量によっていろいろと
面倒事に巻き込まれているのだということが分かり、
二人で校長先生等の悪口で盛り上がった挙句、
悪戯心も手伝って
わざと、噂のように振舞ってみよう、
ということに……
ところが……
二人は「気が合う」どころの
騒ぎではなくなって、
ついに、本当に愛し合うようになってしまう……!
ここから、女性同士の激しい激しい
恋愛が展開されます
まず、あまりの熱烈さ。
これは、男女、ではなしえない
恋愛ではないでしょうか。
二人の間で取り交わされた文が登場しますが
お互いが、お互いに、競い合うように相手を求めている
文通に用いられた便箋さえ「さすが大阪の女」と評して
丁寧に描写する、谷崎さんの
関西弁へのこだわりっぷりも垣間見えます
とにかく、熱い。二人とも、女らしい熱さで、ねちっこさで
しつこさで、すがりつくようにして求め合う
友人だから、と夫をごまかしごまかしするものの
さすがに鈍感な夫も、あまりの異様な
「友達付き合い」に疑問を感じはじめる……
しかし、園子はそれをつっぱね
二人して、夫を気にすることなく、どんどん
情熱をエスカレートさせていく
園子はもう、夫とどうなってもいいや、と
それくらい、のめり込む。
とまあ、ここまででも、十分過ぎるくらい濃いのですが
さらに、この物語は
2転3転4転修羅場を何度もむかえます
出て来る登場人物同士の人間関係が、
まさに卍のように、繰り返し、入り乱れ……
複雑に絡み合って、ずるずるずる、
転がりながら話が進んでいく
愛し合い、騙し合い、求め合い、
出し抜き合い、疑い、しかし愛する……
これは、単純に、女性同士の愛を描いたものではなく
(その描写も十分すぎるくらい濃厚なのですが)
強いて言うならば「愛」そのものについて
それも、少し歪んだ、あまりに熱烈な、複雑で奇妙な、
こんな愛の形もあるのか、と驚かされる、そんな「愛」について
これでもか、これでもか、と描写してきます
読んでいると、もう、何が普通で何が普通でないのか
分からなくなってくる本作品
しかし、素晴らしいですね、目が離せなくなります
次はどうなる、次は? 次は?
全く予想が出来ないんです、どんどん、登場人物達が
予想できない人々へと変貌していく
どうなる? どうなる?
そして、最後。
園子自身は涙しながらも、
あっさりと話を終えているのに
何この衝撃……。茫然としてしまいました。
最後の方は、正直に言いまして
状況そのものが「狂っている」という言葉が
当てはまるような、そんな状態になっているのですが
訳の分からない異様なスピード感で、ずぶずぶずぶと
奥の奥まで沈んでいくと思ったその時、突然ふっと
体が軽くなった、そんな印象です。
この感覚、読まなければ分かりません。
読めば、思わず読了後表紙を閉じて
しばらく気が抜けたようになる
あの感覚を味わえるはずです
どうでしょう、少し危険な香りもいたしますか?
しかし、さすがの傑作です。
是非是非、読んでみて下さい
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激しい作品です。
谷崎潤一郎著『卍』
「先生」に、園子が語りかけている形で綴られている小説です
彼女の口調は関西弁でして、これがまた、味を出しています
に、しても園子さん、
あなたのお話は随分と凄まじいですわね。
まず、園子と夫の関係から、何やら複雑です
園子の話によると、夫は園子に
嫌気がさしているようでありながら
しかし、確かに園子の事を愛しているのではないかな、
と思われるような言動もしている
園子も夫の事が好きなのか
どうなのかが何だか難しい
複雑な夫婦関係だと思われますね
そんな折、園子はある美術学校へ通うことにする
これによって、朝園子は夫と一緒に家を出て
しばらく一緒に通勤・通学することになるのですね
少し、夫婦関係が温かくなる……
(この時、夫さん、かなり喜んでいるんですよね……
園子はちょっと微妙なのですが……)
しかし問題が、その美術学校で起きます
ひょんなことから、園子はその学校の校長による
嫌がらせの対象になってしまったのです
その発端は、光子という女性。
とてつもない器量を持った女性で、
芸術大学でのモデルなんかよりまだ、
比較にならぬ程美しい。
お嬢様らしく無邪気なところもあったりもする、
美しさ可愛らしさ全てを兼ね備えているのでは、
という魅力に溢れる女性
可笑しいことですが、校長の嫌がらせが実を結び(?)
園子がその光子に同性愛を捧げている、
という噂が立ってしまう事態にまで
発展してしまい、内心一笑に付す園子でしたが、
なぜ、そんなことになったのか、
後程光子本人から理由を聞くと
光子も自身のその類稀なる器量によっていろいろと
面倒事に巻き込まれているのだということが分かり、
二人で校長先生等の悪口で盛り上がった挙句、
悪戯心も手伝って
わざと、噂のように振舞ってみよう、
ということに……
ところが……
二人は「気が合う」どころの
騒ぎではなくなって、
ついに、本当に愛し合うようになってしまう……!
ここから、女性同士の激しい激しい
恋愛が展開されます
まず、あまりの熱烈さ。
これは、男女、ではなしえない
恋愛ではないでしょうか。
二人の間で取り交わされた文が登場しますが
お互いが、お互いに、競い合うように相手を求めている
文通に用いられた便箋さえ「さすが大阪の女」と評して
丁寧に描写する、谷崎さんの
関西弁へのこだわりっぷりも垣間見えます
とにかく、熱い。二人とも、女らしい熱さで、ねちっこさで
しつこさで、すがりつくようにして求め合う
友人だから、と夫をごまかしごまかしするものの
さすがに鈍感な夫も、あまりの異様な
「友達付き合い」に疑問を感じはじめる……
しかし、園子はそれをつっぱね
二人して、夫を気にすることなく、どんどん
情熱をエスカレートさせていく
園子はもう、夫とどうなってもいいや、と
それくらい、のめり込む。
とまあ、ここまででも、十分過ぎるくらい濃いのですが
さらに、この物語は
2転3転4転修羅場を何度もむかえます
出て来る登場人物同士の人間関係が、
まさに卍のように、繰り返し、入り乱れ……
複雑に絡み合って、ずるずるずる、
転がりながら話が進んでいく
愛し合い、騙し合い、求め合い、
出し抜き合い、疑い、しかし愛する……
これは、単純に、女性同士の愛を描いたものではなく
(その描写も十分すぎるくらい濃厚なのですが)
強いて言うならば「愛」そのものについて
それも、少し歪んだ、あまりに熱烈な、複雑で奇妙な、
こんな愛の形もあるのか、と驚かされる、そんな「愛」について
これでもか、これでもか、と描写してきます
読んでいると、もう、何が普通で何が普通でないのか
分からなくなってくる本作品
しかし、素晴らしいですね、目が離せなくなります
次はどうなる、次は? 次は?
全く予想が出来ないんです、どんどん、登場人物達が
予想できない人々へと変貌していく
どうなる? どうなる?
そして、最後。
園子自身は涙しながらも、
あっさりと話を終えているのに
何この衝撃……。茫然としてしまいました。
最後の方は、正直に言いまして
状況そのものが「狂っている」という言葉が
当てはまるような、そんな状態になっているのですが
訳の分からない異様なスピード感で、ずぶずぶずぶと
奥の奥まで沈んでいくと思ったその時、突然ふっと
体が軽くなった、そんな印象です。
この感覚、読まなければ分かりません。
読めば、思わず読了後表紙を閉じて
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どうでしょう、少し危険な香りもいたしますか?
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タグ:小説
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