徳川家康の国造りの陰の功労者である伊奈忠次・忠治親子の墓所を訪ねました。
<惣門>
鴻巣市の勝願寺です。号は天照山良忠院。浄土宗の寺院です。
<栴檀林>ぜんだんりん
僧侶の養成所を意味しています。勝願寺は関東における浄土宗の僧侶養成のための十八カ寺(関東十八檀林)のひとつです。
<仁王門>
もともとは結城城から移設された仁王門がありましたが明治に焼失。再建された際に秩父の三峯神社から贈られた仁王像が立ち並んでいます。
<鐘楼>
屋根をよく見ると、三つ葉葵の紋があります。
<本堂>
鎌倉時代創建の古い寺院です。16世紀末期に清巌上人によって中興されました。
こんなにも立派な寺院を拙ブログではご紹介できませんので、のちに深い関りを持つことになる徳川家康、そして伊奈氏との接点に話を絞ると、戦国時代末期ということなります。鷹狩りの際に勝願寺を訪れた家康は、住職(円誉不残)の教養と徳の高さに感銘を受けます。自ら帰依するとともに、同行していた伊奈忠政と伊奈忠家らに檀家になるように命じました。忠政は伊奈忠次の長男、忠家は父です。勝願寺と伊奈氏の関係は、おそらくこの時から始まったわけですね。
<伊奈忠次・忠治墓>いなただつぐ・ただはる
こちらが伊奈氏墓所です。周囲の墓と比べれば大きく立派なため目立ちますが、関東郡代(厳密にいうと関東代官頭)という役割を担ったことを思うと、やや地味な印象です。ただ、この辺りが、いかにも庶民に信頼された役人という感じもします。4基の墓(宝筺塔)が並んでいるので、忠次と忠治、他も伊奈家当主のものかと思いましたが、それぞれの妻のものとのこと。この時代にして、夫婦が並んでいるという構図です。
<説明板>
伊奈忠次と忠治に関する説明が記されています。私の主観も入りますが、引用(『』内)を含めながら簡単に説明させて頂きます。
まず初代の伊奈忠次について
『三河国幡豆郡 小鳥の城主伊奈忠家の嫡子』として生まれ、徳川家康の近習を経て関東郡代に任ぜられ、武蔵国鴻巣・小室で一万石を賜わったと記されています。のちのち関東郡代を継承した伊奈一族始まりということですね。忠次は『関東各地を検地し桑・麻・楮の栽培や水利の便を開く等、関八州は彼によって富む』といわれたそうです。茨城県の特産物として有名な結城紬が、忠次の奨励によるものという話は初めて聞きました。きっとこれも功績の一例に過ぎないのでしょうね。
忠次は江戸幕府の財政の基盤造ったことで知られていますが、検地検税は忠次が採用した方法が基本となったようです。やがて『従五位下に叙せられ備前守に任ぜられた(のち大正元年正五位を追贈)』とあります。忠次が築いた水路が備前堀などと呼ばれるのは、この官職に由来しているわけですね。
次に伊奈忠治について
ここには記されていませんが、忠次には先ほど名をあげさせて頂いた忠政という兄がいました。関東郡代の2代目である忠政は、大坂冬の陣では外堀を埋め立てる際に奉行を任されるなど、徳川の家臣として既に活躍し始めていました。
ただ、忠政は34歳の若さで亡くなってしまいます。本家の家督はまだ幼い忠政の子が引き継ぎ、事業は弟である忠治が引き継ぎました。忠治はすでに独立していたので、実家(現在の伊奈町)とは別の足立郡赤山(現在の川口市)を拠点に活動しました。
続きは鴻巣市教育委員会さんの説明を転記させて頂きます。
『元和四年(一六一八)関東郡代を嗣ぎ、武蔵国赤山(現埼玉県川口市)に陣屋を構え七千石を領し、父忠次と同じく新田の開拓、河川の付け替え、港湾の開さく等に努めた。その在任は三十五年の長さに及び、幕府の統治体制確立の重要な時期に郡代兼勘定奉行として民政に尽くした功績はきわめて大きい。』
絶賛されていますね。初代の忠次あってのことですが、次男で3代目の忠治によって、伊奈氏の関東郡代としての地位は盤石なものとなりました。幕府直轄領約30万石を管轄する関東郡代・伊奈氏は、12代(約2百年)続くことになります。
<関東郡代の墓所>
伊奈忠次・忠治親子は、全国的にはあまり有名ではありませんが、徳川家康から絶大な信頼を得ていました。幕府のおひざ元である関東において、治水や新田開発、検地といった仕事で国造りに関わった影の功労者の墓です。
■訪問:伊奈氏墓(勝願寺)
[埼玉県鴻巣市本町]8丁目
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■参考及び出典
・現地説明板(鴻巣市教育委員会)
・Wikipedia:2023/12/28
・こうのす広場HP
「勝願寺にでかけよう」
https://kounosu-portal.jp/article/shoganji_kounosu
・鴻巣商工会HP
「勝願寺」
https://www.syokoukai.or.jp/syokokai/kohnosu/060/20140403180048.html
2023年12月28日
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