つわものどもが夢の跡
江戸川沿いの崖城を訪問しました。
<国府台城>こうのだい
あの太田道灌が陣城として選んだ場所が、そのまま城となった国府台城。江戸川沿いの高台に築かれ、戦国時代の激戦区の拠点として機能していました。
■陣 城■
陣城とは戦のための臨時の城のこと。本格的に造成する場合もあれば、要害の地にとりあえず陣営を構えるような場合も含みます。
太田道灌が国府台にどのように陣取ったかはわかりません。ただ、戦上手の道灌に選ばれるだけの理由があったのでしょう。当時の道灌は、千葉氏宗家の血筋でありながら下総国を追い出された兄弟(武蔵千葉氏)を支援していました。下総国へ攻め込む足掛かりとして、江戸側から川を渡ってすぐの丘に仮の陣を構えたようです。
<江戸川>
江戸川です。かつては太日川と呼ばれ、江戸湾に注ぐ渡良瀬川の下流でもありました。右手に見えている丘を道灌が陣城として利用し、のちに道灌の弟である太田資忠が千葉氏の臼井城を攻める際に城を築きました。太田氏から始まる城ということですね。
■激戦の地■
国府台はもともとは下総の国府が置かれる文化の中心地でした。しかし国の堺に位置するため、戦国期になってそこに築かれた城は、政治の中心というより、利害が反する勢力同士が奪い合う出城のような存在となりました。支配者は太田氏・千葉氏・里見氏・上杉氏、そして関東の覇者となる小田原の北条氏。ちょっと誰の城とも言い切れません。
<里見公園>
城跡は里見公園として整備されています。
<城内>
花見の名所にもなっているそうです
<羅漢の井>
山城に井戸というと強い味方という印象ですよね。ただ、こちらの井戸は標高の低いところにあるので(目の前が江戸川)、戦闘とは切り離して見学させて頂きました。弘法大師がみつけた湧き水という言い伝えがあります。
<市川市最高標高地点>30.1m
公園内のこの一角は市川市で最も標高が高い場所です
<城内からの眺め>
江戸川の流れを見下ろす高台です。江戸方面がよく見えます
<明戸古墳>あけどこふん
城内の古墳に関する説明板。国府台城はこの地にもともとあった明戸古墳と敷地が重なります。
<明戸古墳石棺>
築城の時に発見されたと伝わります。国府台城は古墳を削って城を築いたわけですね。
<石積み>
石垣?これは城として整備された時のものではありません。明治時代以降に軍の施設が置かれていたことから、城内はかなり手直しされていると思われます。
<地形>
二重土塁のようにも映りますが、明治以降の造成の程度が分からず、なんとも言えません。いまも残る地形の凹凸に、城らしさを感じて眺めてみる。そんな訪問となりました。
■里見の前線基地■
国府台を舞台に繰り広げられた戦いで、特に有名なのが第一次及び第二次国府台合戦です。背景は複雑なので今回は省略しますが、北条軍と里見軍が激突した戦いです。
関東制覇を目論む北条氏に対し、里見氏は激しく抵抗し続けました。国府台城は北条氏の下総国侵攻を食い止める前線基地として、どうしても守り抜きたかった城だったのでしょう。
<国府台駅ホーム>
国府台駅で下車して最初に目に飛び込んできたのがこの『里見公園』の絵図でした。川沿いの高台であることが強調されています。国府台城は里見氏がずっと支配していたわけではありませんが、城跡は里見公園と呼ばれている。いいですね。
景色は変われど低地との高低差は昔も今も同じです。房総半島で勢力を誇った里見氏としては、なんとかここで強敵を食い止めておきたかったわけですね。
里見氏は第二次国府台合戦において北条氏に大敗。一旦衰退し、再び勢力を挽回するものの、最終的には北条に屈することとなります。しかしその北条氏は豊臣秀吉によって滅ぼされるに至り、戦乱の世を生き残った里見氏は、江戸初期において関東最大の外様大名となりました。
■つわものどもが夢の跡■
里見氏にとって前線基地だった国府台城は、北条氏の手に落ちたあと更に拡張整備されました。その北条氏が滅亡すると、城としての役割は終りました。
--------■国府台城■--------
別 名:市川城 鴻之台城
築城主:太田資忠
築城年:1479年(文明11)
(太田道灌の陣城1478年)
城 主:千葉氏 里見氏
北条氏
廃 城:1590年頃
[千葉県市川市国府台]
■参考
・現地説明板
(市川市教育委員会)
・Wikipedia:2021/2/20
---------(追 記)---------
国府台城は当ブログで二度目の投稿となります。最初の投稿は以下の通りです。
■投稿:2017年09月12日
■タイトル:江戸川沿いの崖城(市川市)国府台城
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2021年02月20日
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