(興国寺城の追記です)
<低地と山城>
[静岡県沼津市根古屋]
山麓の地形を利用して築かれた興国寺城。高台から低地へ降り立つと、見事な暗渠が続いていました。
深い谷戸から続く暗渠。奥の山が城跡です。
■ 暗渠と城跡 ■あんきょ
当ブログでは、都市化によって埋もれてしまった川と城を、「暗渠と城跡」と題して投稿させてもらっています。
コンセプトとしては
「暗渠に気付くアンテナがあると、街の中の城跡巡りが一層楽しくなる。川のなごりを感じることは、城のなごりを感じるのと同じ」
とまぁこんな感じです。水は川や沼、湿地といった形で城の防衛に大きく貢献しますからね。姿を消した水を感じれば、同じ縄張り図を見ても感慨深いものがあります。
ただ都市化が極端に進むと、視界を遮る高いビルが立ち並び、川跡と城跡を実感しにくい場合もありますね。まぁそれを乗り越えて実感に至るというプロセスも、楽しみといえば楽しみなのですが・・・
今回のご紹介の「暗渠と城跡」は、構造として極めて分かり易い状態。周辺に遮るモノがなにもありません。いわば「都市から建物を取り除けば、暗渠と城跡はこんな感じ」という仮想の構造見本です。こういうある意味中途半端というか、開発途上の状態を頭に入れておくと、街中の城巡りでも、より想像力が働くのではないでしょうか。
■ 山の麓の城 ■
静岡県の東部の愛鷹山(あしたかやま)、ご存じでしょうか?富士山の南隣に位置する山。東海道から見れば、手前にある山です。富士山麓同様、愛鷹山の麓も水が豊富。地図で見ると、あちらこちらに山側から海に向う水の流れが確認できます。
今回訪問の興国寺城は、そんな山の麓の最先端に位置します。平野との境目のような場所。
城の東と西の両サイドが谷戸。つまり、水が山のすそのを浸食して形成した谷です。南側で台地(山の裾)が途切れますので、何もしなくても三方は低地。そんな場所です。
山に降った水は、川となって流れ落ち、高低差を失ったところで溜まりやすくなる。つまり、城跡付近の低地には水が溜まりやすい。まさに天然の要害だったと考えられます。
縄張りで重要なのは、まずはこういう場所選び。地の利の無い場所で堅固な城を築くには、相当な労力が必要になります。曲輪や堀の配置を考える前に、どんな場所を選ぶかは築城者の腕の見せ所です。
これはここ興国寺城のような山麓の城に限らず、いま東京23区内で都市に埋もれてしまっている城にとっても同じです。世田谷城、奥沢城、、、これらはあまりに都市化されて実感が湧きにくいですが、ビルを取り除き、コンクリを剥がせば、武蔵野台地の地形を上手く利用していることがわかります。街の構造物を無視して、地形に注意を払い、想像してみる。これが街の中の城巡りのコツなんです。
さて、話を興国寺城周辺に戻します。
<山城の西側より>
谷戸から山を撮影。手前の低地には自然の川が流れ、湿地帯だったのでしょうね。
<平らな土地>
水は地表から姿を消し、平らな区画が広がっています。駐車場ではないのですが、探索中に車を止めさせてもらいました。
<暗渠>
湧き水が豊富なエリア。人が手を加えなければ、いまでもあちらこちらが水辺になっていることでしょう。周辺の水は効率よくこのコンクリの川に集まり、更に下流へ向かいます。蛇行もせず、溢れることもない。いわば優等生の川ですね(人にとって)。まだまだ余裕をもって眺めることができますが、いつかは周辺もコンクリに覆われ、建物が建ち並ぶのでしょうね。
<暗渠の行先>
人知れず大活躍しているこの暗渠は、道の向こうまで続いています。更に南で開渠となり、高橋川へ合流してから海へと繋がります。
<かつての水辺>
私はここまで「湿地」と説明してきましたが、ある程度の規模の沼があったとも考えられています。かつての沼津には、大小の沼があちらこちらに点在しており、それらを総称して浮島沼と呼ぶそうです。厳密なところまでは分かりませんが、この付近でも高台の直前まで、沼が迫っていた可能性もありますね。そして谷戸、そこに広がっていたであろう泥田。城を守っていたとされる水辺の話を、まだなんとなく受け入れやすい景色です。
<城の南端>
城跡の目の前まで道路が迫っています。訪問者が勝手なことを言って申し訳ありませんが、歴史ある貴重な城跡、もうしばらくはこののどかさと共存して欲しいですね。コンクリで覆われた街なかより、やはりこうして自然の中で城跡を味わいたいものです。自然の地形や水の流れを活かして、城は築かれるのですから。
姿は見えませんが、暗渠も水の流れ。それを意識した上で、広々とした平地を眺めれば、かつての湿地の姿が容易に想像できます。
お城巡りランキング
2018年10月28日
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