2011年10月25日
ルイジアナ・バウンド
現役のスワンプ・ポップ・シンガー、Ryan Foretの新譜がリリースされました。
スワンプ・ポップは、古いスタイルの音楽かもしれませんが、こうやって地元で需要があるというのが嬉しいです。
加えて、今回驚いたのは、本邦アマゾンで普通に予約して、遅延なく入手できたことです。
まず、予約できたことからして(つまりラインナップに上がったこと自体が)小さな驚きでしたが、発売日に予定通り発送通知がきたときは、軽い感動がありました。
1. If It's Really Gotta Be This Way (Fritts, Nicholson, Alexander)
2. Wastin' Time (D. Richard)
3. Party Time (B. Channel)
4. Not Here for a Long Time (Colla, Hayes, Lewis)
5. Misery Loves Company (J. Reed)
6. Let the Groove Move Ya' (Gary Thibodaux, Shea Lander) .
7. Beggin' You Please (W. Foret)
8. Lousiana Bound (Mabery, Vieregge)
9. Already Gone (Gary Thibodaux, Shea Lander)
10. Bye Bye Baby (D. Richard)
11. Two Rights Don't Make It Wrong (Mabray, Viergge)
12. Must Be Love (E. L. Herrold)
13. Ain't No Trick (Hurt, Pippin)
14. My Other Woman (K. Butterhill)
15. Misery (M. Templet)
16. You Left the Water Running (Franck, Hall, Penn)
アマゾンでは、予約していたにもかかわらず、発売日になった途端、該当ページの表示が「発送まで2週間から1か月」などと変わった例を何度も体験していたので、今回の思いのほかスムースな展開には嬉しい戸惑いを覚えたほどです。
がっかりした例としては、最近では、英Aceの新譜のいくつかが入荷時期の変更通知がきています。
英アマゾンでは、既に「在庫あり」となっているので、くやしいですね。
こんなことなら、英アマゾンへオーダーすべきでした。
欧州債務危機のあおりで、ポンドもユーロにつれ安になる傾向が顕著で、なにげに円高の恩恵も少なからず受けられます。
(まあ、ポンド自体の体力が弱っていますが…。)
さて、脱線してしまいましたので、軌道修正します。
Ryan Foretは、デビュー当初、兄弟でバンドを組んでスタートし、Foret Traditionというバンド名を名乗りました。
それからメンバーの変遷はあっても、同じ名前を使い続けています。
今作のメンツでは、ギターがForetという姓ですので、縁者なのだと思います。
とは思いますが、実は、Foretは、ケイジャンではよくある姓で、私の知る限りでも、Wayne Foret、Aaron Foretというスワンプ・ポップ・シンガーがいます。
未確認ですが、彼ら相互の繋がりは、おそらくないでしょう。
今作のパーソネルは以下のとおりです。
Ryan Foret : vocals & Keys
Jason Parfait : sax, keys, organ, bg vocals
Mark Templet : guitar
Lynn Boudreaux : drums
Allan Maxwell : bass
Brandon Foret : guitar
Jerry Plaisance : erectric piano
Jimmy Reamey : trumpet
ギターが2本いますが、基本的にあまり目立たず、メインは、三連のピアノの連打又はオルガンのロング・トーンに、ホーン・リフというのが全体のサウンドから受ける印象です。
さて、今作は、2曲の有名曲(?)とその他の無名曲で構成されたポップ・アルバムとなっています。
スワンプ・ポップの特徴である哀愁のバラードは少し控えめで、私などは若干さびしい感じがしました。
何といっても注目は、アーサー・アレキサンダーの名作、"If It's Really Gotta Be This Way"ですね。
ここでのRyanは、とても丁寧に歌っていて、誠実な人柄が伝わってくるようです。
その分、スリルは乏しいかも知れません。
この曲のカバーでは、Maecia Ball盤もいいですが、やはりRobert Plant盤が最高でした。
セクシーなボーカルとセンチメントな伴奏が胸に迫るベスト・カバーだと思います。
ラストの"You Left the Water Running"は、誰が決定版なんでしょう。
私は、この曲に関してはダントツに好きというものがありません。
ここでのRyanのバージョンは、やはり誠実感は感じますが、まあ普通の出来でしょう。
Don Richの曲を2曲やっています。
トラック2の"Wastin' Time"とトラック10の"Bye Bye Baby"がそれで、いずれも私は初めて聴きました。
初期の曲なのかも知れません。
Don Richは、現役のスワンプ・ポップ・シンガーの中でも最も精力的に活動している人です。
私の好みでは、"Bye Bye Baby"でしょうか。
そして、Wayne Foretの曲もやっています。
トラック7の"Beggin' You Please"がそれで、モダンではありますが、Don Richの作品より伝統的なスタイルに近く、私の好みです。
B. Channel作となっている、トラック3の"Party Time"が気になる曲です。
この作者は、あの「ヘイ・ベイビー」のBruce Channelでしょうか?
せわしない三連リズムに、ホーンが被さるパーティ・チューンです。
トラック5の"Misery Loves Company"は、J. Reed作となっており、多くの人がJimmy Reedを連想すると思いますが、正解はJerry Reedの作品のようです。
ジェリーは、エルヴイスの「ギター・マン」などで知られる人で、彼のスタイルは、一部ではカントリー・グラスなどと呼ばれることもあった、スワンプ・スーパー・ピッカーでした。
ただし、この曲からは、特別Jerryぽさは感じません。
ジェリーが他のシンガーに提供した曲ではないかと思いますが、ここでのRyanのアレンジはカントリー調が希薄で、お手本になったバージョンが知りたいです。
タイトル曲のトラック6、"Let the Groove Move Ya'"、そしてトラック9の"Already Gone"の作者のひとり、Gary Thibodauxは、スワンプ・ポップ・シンガーのGary T.の本名です。
私は、この人は未聴で、近いうちにぜひ聴きたいと思っています。
"Already Gone"は、作者を確認するまで、私は、ジャック・テンプチンの同名曲を期待していました。
トラック8の"Lousiana Bound"とトラック11の"Two Rights Don't Make It Wrong"は、いずれもCrosscutというバンドのレパートリーです。
Crosscutは、スワンプ・ポップとモダン・ブルースを演奏するブルース・ロック系のバンドです。
ソロ・シンガーや、シンガーとバック・バンドではなく、完全なバンド形態というのは、スワンプ・ポップ界(?)では珍しい存在でしよう。
2曲とも、彼らの1stからの選曲です。
彼らは、バンド名からも想像できるとおり、アルバート・キング・フリーク"でもありますが、"Two Rights Don't Make It Wrong"は、サウス・ルイジアナらしいスワンプ・バラードです。
トラック4の"Not Here for a Long Time"と、トラック14の"My Other Woman"は、なんとヒューイ・ルイス&ニュースのナンバーです。
"My Other Woman"の作者クレジットはおそらく誤りでしょう。
意識して繰り返し聴いていると、ヒューイぽさがおぼろげながら感じられる気がしました。
Foret Traditionのメンバーが書いた、トラック15の"Misery"は、今作では最もスワンプ・ポップらしいバラードかも知れません。
アルバムは、全体的にモダンな雰囲気が感じられ、私の好みとしてはもっとイナタい方がはまったでしょう。
とはいえ、現役のスワンプ・ポップ・シンガーは貴重です。
こうやって、普通に流通しているのは、とても喜ばしいです。
関連記事はこちら
アリゲーター・バイユー、クロコダイル・スワンプ
メンフィス・ソウル、バイユー・スタイル
スワンプなポップにしてくれ
強く叩き続けろ
スワンプ少年の帰郷
スワンプ・ポップは、古いスタイルの音楽かもしれませんが、こうやって地元で需要があるというのが嬉しいです。
加えて、今回驚いたのは、本邦アマゾンで普通に予約して、遅延なく入手できたことです。
まず、予約できたことからして(つまりラインナップに上がったこと自体が)小さな驚きでしたが、発売日に予定通り発送通知がきたときは、軽い感動がありました。
Let The Groove Move Ya
Ryan Foret and Foret Tradition
Ryan Foret and Foret Tradition
1. If It's Really Gotta Be This Way (Fritts, Nicholson, Alexander)
2. Wastin' Time (D. Richard)
3. Party Time (B. Channel)
4. Not Here for a Long Time (Colla, Hayes, Lewis)
5. Misery Loves Company (J. Reed)
6. Let the Groove Move Ya' (Gary Thibodaux, Shea Lander) .
7. Beggin' You Please (W. Foret)
8. Lousiana Bound (Mabery, Vieregge)
9. Already Gone (Gary Thibodaux, Shea Lander)
10. Bye Bye Baby (D. Richard)
11. Two Rights Don't Make It Wrong (Mabray, Viergge)
12. Must Be Love (E. L. Herrold)
13. Ain't No Trick (Hurt, Pippin)
14. My Other Woman (K. Butterhill)
15. Misery (M. Templet)
16. You Left the Water Running (Franck, Hall, Penn)
アマゾンでは、予約していたにもかかわらず、発売日になった途端、該当ページの表示が「発送まで2週間から1か月」などと変わった例を何度も体験していたので、今回の思いのほかスムースな展開には嬉しい戸惑いを覚えたほどです。
がっかりした例としては、最近では、英Aceの新譜のいくつかが入荷時期の変更通知がきています。
英アマゾンでは、既に「在庫あり」となっているので、くやしいですね。
こんなことなら、英アマゾンへオーダーすべきでした。
欧州債務危機のあおりで、ポンドもユーロにつれ安になる傾向が顕著で、なにげに円高の恩恵も少なからず受けられます。
(まあ、ポンド自体の体力が弱っていますが…。)
さて、脱線してしまいましたので、軌道修正します。
Ryan Foretは、デビュー当初、兄弟でバンドを組んでスタートし、Foret Traditionというバンド名を名乗りました。
それからメンバーの変遷はあっても、同じ名前を使い続けています。
今作のメンツでは、ギターがForetという姓ですので、縁者なのだと思います。
とは思いますが、実は、Foretは、ケイジャンではよくある姓で、私の知る限りでも、Wayne Foret、Aaron Foretというスワンプ・ポップ・シンガーがいます。
未確認ですが、彼ら相互の繋がりは、おそらくないでしょう。
今作のパーソネルは以下のとおりです。
Ryan Foret : vocals & Keys
Jason Parfait : sax, keys, organ, bg vocals
Mark Templet : guitar
Lynn Boudreaux : drums
Allan Maxwell : bass
Brandon Foret : guitar
Jerry Plaisance : erectric piano
Jimmy Reamey : trumpet
ギターが2本いますが、基本的にあまり目立たず、メインは、三連のピアノの連打又はオルガンのロング・トーンに、ホーン・リフというのが全体のサウンドから受ける印象です。
さて、今作は、2曲の有名曲(?)とその他の無名曲で構成されたポップ・アルバムとなっています。
スワンプ・ポップの特徴である哀愁のバラードは少し控えめで、私などは若干さびしい感じがしました。
何といっても注目は、アーサー・アレキサンダーの名作、"If It's Really Gotta Be This Way"ですね。
ここでのRyanは、とても丁寧に歌っていて、誠実な人柄が伝わってくるようです。
その分、スリルは乏しいかも知れません。
この曲のカバーでは、Maecia Ball盤もいいですが、やはりRobert Plant盤が最高でした。
セクシーなボーカルとセンチメントな伴奏が胸に迫るベスト・カバーだと思います。
ラストの"You Left the Water Running"は、誰が決定版なんでしょう。
私は、この曲に関してはダントツに好きというものがありません。
ここでのRyanのバージョンは、やはり誠実感は感じますが、まあ普通の出来でしょう。
Don Richの曲を2曲やっています。
トラック2の"Wastin' Time"とトラック10の"Bye Bye Baby"がそれで、いずれも私は初めて聴きました。
初期の曲なのかも知れません。
Don Richは、現役のスワンプ・ポップ・シンガーの中でも最も精力的に活動している人です。
私の好みでは、"Bye Bye Baby"でしょうか。
そして、Wayne Foretの曲もやっています。
トラック7の"Beggin' You Please"がそれで、モダンではありますが、Don Richの作品より伝統的なスタイルに近く、私の好みです。
B. Channel作となっている、トラック3の"Party Time"が気になる曲です。
この作者は、あの「ヘイ・ベイビー」のBruce Channelでしょうか?
せわしない三連リズムに、ホーンが被さるパーティ・チューンです。
トラック5の"Misery Loves Company"は、J. Reed作となっており、多くの人がJimmy Reedを連想すると思いますが、正解はJerry Reedの作品のようです。
ジェリーは、エルヴイスの「ギター・マン」などで知られる人で、彼のスタイルは、一部ではカントリー・グラスなどと呼ばれることもあった、スワンプ・スーパー・ピッカーでした。
ただし、この曲からは、特別Jerryぽさは感じません。
ジェリーが他のシンガーに提供した曲ではないかと思いますが、ここでのRyanのアレンジはカントリー調が希薄で、お手本になったバージョンが知りたいです。
タイトル曲のトラック6、"Let the Groove Move Ya'"、そしてトラック9の"Already Gone"の作者のひとり、Gary Thibodauxは、スワンプ・ポップ・シンガーのGary T.の本名です。
私は、この人は未聴で、近いうちにぜひ聴きたいと思っています。
"Already Gone"は、作者を確認するまで、私は、ジャック・テンプチンの同名曲を期待していました。
トラック8の"Lousiana Bound"とトラック11の"Two Rights Don't Make It Wrong"は、いずれもCrosscutというバンドのレパートリーです。
Crosscutは、スワンプ・ポップとモダン・ブルースを演奏するブルース・ロック系のバンドです。
ソロ・シンガーや、シンガーとバック・バンドではなく、完全なバンド形態というのは、スワンプ・ポップ界(?)では珍しい存在でしよう。
2曲とも、彼らの1stからの選曲です。
彼らは、バンド名からも想像できるとおり、アルバート・キング・フリーク"でもありますが、"Two Rights Don't Make It Wrong"は、サウス・ルイジアナらしいスワンプ・バラードです。
トラック4の"Not Here for a Long Time"と、トラック14の"My Other Woman"は、なんとヒューイ・ルイス&ニュースのナンバーです。
"My Other Woman"の作者クレジットはおそらく誤りでしょう。
意識して繰り返し聴いていると、ヒューイぽさがおぼろげながら感じられる気がしました。
Foret Traditionのメンバーが書いた、トラック15の"Misery"は、今作では最もスワンプ・ポップらしいバラードかも知れません。
アルバムは、全体的にモダンな雰囲気が感じられ、私の好みとしてはもっとイナタい方がはまったでしょう。
とはいえ、現役のスワンプ・ポップ・シンガーは貴重です。
こうやって、普通に流通しているのは、とても喜ばしいです。
In To The Mystic by Ryan Foret & Foret Tradition
関連記事はこちら
アリゲーター・バイユー、クロコダイル・スワンプ
メンフィス・ソウル、バイユー・スタイル
スワンプなポップにしてくれ
強く叩き続けろ
スワンプ少年の帰郷
【スワンプ・ポップの最新記事】