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スワンプ・ポップのふるさと

 このところ、私はSwamp Popを好んで聴いています。
 ただ、そのアイテムの多くは近年のものが多くなっています。
 これは、現役で活動しているシンガーが気になるからです。
 しかし一方で、手に入るものなら、古い音源が聴きたいとも思っています。

 そこで今回は、久々にヴィンテージものを聴くことにしました。
 本盤は、作者クレジットこそありませんが、Jivin' Geneの50年代から60年代の録音集だと思われます。


Breaking Up is Hard To Do
Includes Demo's, Promos, other Rereities
Jivin' Gene and the Jokers

1. Breakin' Up Is Hard To Do (orig Hall 103)
2. Love Medicine (Hall 103)
3. The Creek Don't Rise (Hallway 1202)
4. Love Light Man (Hallway 1202)
5. Little Country Girl (Hall 121)
6. Cry By Night (Hall 121)
7. Going Out With the Tide (Jin 109)
8. Up, Up, and Away (Jin 109)
9. Hooked To It (Jin 405)
10. The Thing Called Cheatin' (Jin 405)
11. My Need For Love (Jin 116)
12. Breakin' Up Is Hard To Do (Jin 116 version)Tracks 13 Thru 24 Mercury Records
13. You Make a Fool Out of Me
14. Don't Pretend
15. Poor Me
16. Breakin' Up Is Hard To Do (Radio Mix)
17. That's What It's Like To Be Lonesome
18. I Cried
19. You've Got a Spell On Me
20. You're Jealous
21. Go On, Go On
22. Goin' Out With the Tide (With Overdubs)
23. Release Me!
24. Breakin' Up Is Hard To Do (Hit version w. With Overdubs)
25. Cryin' Towel (Chess 1873)
26. Genie Bom Beanie (Chess 1873)
27. Leave Me (Capitol 2296)rare promo's recorded as Gene Bougeois
28. Look At Them (Capitol 2296)rare promo's recorded as Gene Bougeois

 本CDは、Mr. Moneyという会社からリリースされていますが、パッケージのつくりが簡素で(ジャケはリーフレットではなくペラ1枚)、匂いとしてはブートっぽい雰囲気が漂っています。

 全28曲入りという点も、お得感よりブート的な詰め込み感のほうが勝っているかも知れません。
 とはいえ、現在入手できるCDでは、唯一ヴィンテージ時代の音源をまとめた単独CDだと思います。
 音も悪くないので(LP時代と違い、最近のスタジオ音源のブートは音が悪い方が珍しい)、ありがたく拝聴しましょう。

 さて、Jivin' Geneです。
 この人は、本名をGene Bourgeoisというらしいのですが、Geneというのは、正式名の可能性もありますが、通常はEugene(ユージーン)の愛称(短縮形)です。

 まあ、これは普通ですが、姓の方が興味深くて、Bourgeoisという珍しい姓は、フランス語を語源とする「ブルジョワ(資産階級)」という意味の英語です。
 
 やはり、スワンプ・ポップ・シンガーは、ケイジャン(仏系米国人)なのだな、などと一人得心してしまうのでした。

 この人については、あまりよく分からないのですが、Huey Meauxの経歴をまとめた文章などでは、しばしば名前が特記されています。
 Jivin' Geneという芸名を付けたのが、Hueyだと記している文章もあります。
 また、その流れからいきますと、最初のプロデューサーはHuey Meauxだったということなんでしょうか。

 初期のレコード自体は、JinというFloyd Soileauが設立したレーベルから出ています。
 番号からいっても、ごく初期の契約アーティストだったのでしょう。

 最初の代表曲、"Going Out With the Tide"のレコード番号は、Jin 109でした。
 もうひとつの代表曲、"Breakin' Up Is Hard To Do"は、Jin 116です。
 (レーベルは、100盤か101盤からスタートしたのではないでしょうか。)

 ところで、本盤には、"Breakin' Up Is Hard To Do"が4バージョンも収録されていて、冒頭の1曲目に(Orig Hall 103)として収録されているバージョンがあります。
 これは、普通に考えると、オリジナル盤だという意味にとれます。
 (Jin 116は、トラック12に入っています。)

 これこそが、Heuy Meaux制作のオリジナルなのでしょうか?
 Hallというレーベルも含め、気になります。

 さて、"Going Out With the Tide"ですが、私は、Freddy Fenderのバージョンで親しんできた曲です。
 FreddyとTommy McLainとのデュオもあったような気がします。

 今回、Jivin' Geneのオリジナルを聴いて思ったのですが、いかにもヴィンテージ期のスワンプ・ポップという感じで、その空気感がたまりません。

 アレンジは、ホーンの導入とゆったりした三連リズムから、ニューオリンズR&B調ですが、曲調からは古いヒルビリーのような雰囲気がします。
 しかし、作者クレジットはHuey Meauxとなっているものが多いようです。

 このヒルビリー(マウンテン・トラッドなど)や、ニューオリンズR&Bとの深いつながりこそ、初期のスワンプ・ポップを特徴づける音だと思います。
 むしろそこには、フランス的匂いはあまり感じられません。

 さらに、時代が下がって60年代半ばになると、メンフィス・ソウルやJBなどの影響が出てきます。
 いずれにしても、そのときどきの黒人音楽の趨勢を反映したサブ・ジャンルなのだと感じます。

 "Swamp Pop - Cajun and Creole Rhythm and Blues"という本の著者、Shane K. Bernardによれば、58年がスワンプ・ポップの黄金時代の始まりの年だそうです。
 "Going Out With the Tide"は、その58年にリリースされています。
 さらに、"Breakin' Up Is Hard To Do"もまた58年リリースです。

 ちなみに、そのほかの58年のスワンプ・ポップのヒット曲は、Jimmy Clantonの"Just a Dream"、Cookie and the Cupcakesの"Mathilda"、Rod Bernardの"This Should Go On Forever"、Jimmie Donleyの"Born to Be a Loser"などがあります。

 いずれ劣らぬ珠玉作ですが、中でも"Just a Dream"がナショナル・ヒットしたため、このジャンルを知らしめる代表曲となりました。
 ナショナル・ヒットは、ジャンルをクロスオーバーしたカバーが生まれやすいです。

 バーナード氏は、いつがスワンプ・ポップの最盛期か明記していませんが、この爆発期最初の年が大きなうねりを生み出した年と言えるでしょう。
 彼によれば、ブリティッシュ・インベイションの来襲の年である64年を、スワンプ・ポップ黄金時代の終焉としています。

 これからいきますと、私がスワンプ・ポップに親しんだ最初の頃のアーティスト、Clint Westなどは終焉期以降に活躍してきた人だったりして、認識を新たにしたところです。

 プレ爆発期の58年以前は、スワンブ・ブルースとニューオリンズR&Bの代表曲、例えばGuitar SlimやBobby Charlesなどの曲に、スワンプ・ポップ誕生への萌芽がみてとれるような気がします。
 (ただし、これはスワンプ・ポップ中華思想の視点でみた話です。メインストリームの音楽シーンはもちろん、ブルース、R&Bもスワンプ・ポップなど、さほど関係ないところで発展していきます。)

 今回は、個別の曲について触れません。
 なにしろ、その音楽世界にひたっているだけで幸せな気分になれるのです。

 全28曲、なんの淀みもなく聴きとおすことが出来ます。
 とてもリラクゼーション効果の高い音楽だと感じました。
 これは、Bobby Charlesの初期の音源を初めて聴いたときと少し似ています。

 さらにいいますと、初期のBobby Charlesには、若干性急感を感じさせる曲もありましたが、本盤収録曲は、いずれもほんわかムードのなか、至福のひとときを過ごせるナンバーぞろいとなっており、弛緩効果はより増しています。
 曲によっては、後のCharlie Richのカントリー・ソウルに通じるようなものも見受けられます。

 本盤の流通は、あまりいいとはいえませんので、中古盤店などで見つけたら、ぜひゲットしていただきたいです。
 音楽全体からにじみ出る、しみじみとした幸福感、連休中日(なかび)を怠惰に過ごす日向ぼっこ感、などなど、何とも表現しがたいこの空気感を味わっていただきたいものです。

 また、宝物の1枚が加わった、そういいたいです。


 追記
 個別の曲については言及しないと書きましたが、きっと気になるに違いないことだけ記しておきます。
 トラック15の"Poor Me"は、ご想像のとおり、Fats Domonoのカバーです。
 そして、もう1曲、トラック23の"Release Me !"は、ホンキートンク・カントリーの名作で、黒人音楽では、エスター・フィリップスやジョニー・アダムスのカバーで有名なあの曲で間違いありません。

 いずれも、Jivin' Geneのバージョンは、時代の空気感も加味されて、素晴らしい味わいを堪能できます。




Breaking Up is Hard to Do by Jivin' Gene and the Jokers







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