ジプシー・ギター・マン

 私はコレクターではない、そう思っています。
 人にもそう言っています。

 そんな私が、気になるふたつの言葉があります。
 それは、こんな言葉です。

 「迷ったら買え」(…次の機会はない、後悔するぞ)
 「欲しがり続ければ、いつか手に入る」(…手に入らなかったからといって、くよくよするな)

 いずれも、アイテム収集にあたっての心構えですが、相反しているかのように聞こえます。
 厳密には、前段は事に当たっての行動基準で、後段は心の持ちようと言えるかも知れません。
 短期の真理と長期の真理と言い換えましょうか。

 ものにこだわる限り、心の葛藤は常にやってくるのでした。


The Rains Came
Joey Long

Side One
1. The Rains Came (Huey P. Meaux)
2. Don't Got No Education (J. Longoria)
3. I'm Gonna Preserve Your Love (J. Longoria)
4. Treasure Of Your Love (B. DeVorzon)
5. If I Should Need You (J. Rhodes)
Side Two
1. You Can't Give Back The Love (Jack Rhodes, Porter Jordan)
2. Funky Junky Woman (J. Longoria)
3. Part Time Love (C. Hammond)
4. Cajun Country (J. Longoria)
5. Midnight Blue (J. Longoria)

 Joey Longの名前は、数年前から常に私の心の中にあり、わずかでも情報が欲しい、1曲でも多く音が聴きたいと思っていました。

 私には、そんな存在が何人かいます。
 Joey Long、Buck Rogers、Gene Thomas、この三人こそ、数年に渡って私の関心を惹き続けている人たちです。
 いずれも、アイテムの絶対数が少なく、露出も少ない人たちです。
 ウェブ上にも、限られた情報があるのみです。

 そんな中、今回、私が以前から欲しかったアルバムを入手することが出来ました。
 Joey Longの70年代のアナログLP盤です。

 本盤は、Huey P. MeauxのCrazy Cajun Recordsから78年にリリースされたもので、以前に入手した"Flying High"というLPと合わせ、同レーベルから出された彼のアルバムは全て入手出来たことになります。

 Joey Longは、ルイジアナ出身のギターリストで、10代からプロとして演奏していました。
 ホンキートンク・カントリーからブルースまで、何でも弾きこなす人で、ヒューストンでHuey P. Meauxの眼に留まり、関係を深めた人です。

 Meauxのシュガーヒル・スタジオで他人の伴奏を数多くやった人で、本人のリーダー作がどれくらいあるのか、私にはよく分かりません。
 Meauxは、複数のレーベルを持っていましたが、そのひとつであるTear Drop Recordsのカタログには(LPは)ないようです。

 まあ普通に考えて、そんなにLPが作れた人だとは思えないので、シングルがどれくらい、どこのレーベルから出ているのか、気長に探していきたいと思います。

 これまで私が入手出来たのは、次の3種のフォーマット、計5アイテムです。

CD
"The Guys From Big Mamou" 94年 (Collectables COL-CD 5341) 米盤
Link Davisとのカップリング盤、全14曲中、Joey Longの曲は6曲。各曲のソースは不明ですが、"The Rians Came"は、70年代のCrazy Cajun録音ではないかと思います。

"Anthorogy" 00年 (Blues Factory BFY 47029) オランダ盤(?)
14曲入り、上記コレクタブルズ盤と4曲が重複(ただし、一部ミックス違いがある可能性あり)
上記同様、各曲のソースは不明ですが、"The Rians Came"は、70年代のCrazy Cajun録音ではないかと思います。

12インチLP
"The Rains Came" 78年 (Crazy Cajun CC-1027)
10曲入り、上記2枚のCDとは、表題曲の1曲のみが重複。
他の9曲はおそらく未CD化ではないかと思います。
表題曲は、シングルと同じバージョンだと思いますが未確認です。

"Frying High" 78年 (Crazy Cajun CC-1049)
10曲入り、上記のCD、LPとは重複なし。
おそらく全て未CD化だと思われます。

7インチ・シングル
"I'm Grad For Your Sake"/"The Lights Have Gone Out" (Running Bear 45-8300)
A面が、Doug Sahmの愛唱歌であるため、どうしても欲しかった7インチ盤。
上記のCD、LP、いずれにも未収録。
両曲とも、コンピCDにも未収録だと思われますが、収録CDがあるのなら、ぜひ入手したいです。

 さて、本盤の全体の印象ですが、これまで聴いたCD、LPの中で最も聴きごたえがあると思います。
 ブルースに聴きものが多く、なかなかにサイケで強力なフレーズが刺激的です。

 本盤は、スワンプ・ポップ・バラードの表題曲、"The Rains Came"を柱に、ブルースやソウル風の曲をうまく配置したアルバムだと思いました。

 "The Rains Came"は、比較的ゆるいアレンジでやっています。
 この曲は、Big Samboという黒人サックス・プレイヤーがオリジナルの曲で、Heuy Meauxが、自身が手掛けるアーティストに繰り返し吹き込ませている曲です。

 すぐに思いつくところだけでも、以下のようなアーティストが録音しています。

Sir Douglas Quintet
Freddy Fender
Warren Storm
Doug Kershaw
B. J. Thomas
Quintet (Doug Sahm抜きで作られた唯一のアルバムでやっています。)

 とりあえず、当分はこのアルバムを味わい尽くしたいと思います。

 でも、人間の欲は際限がありません。
 早くも、もっともっとという思いが募ってきています。



4 O'lock Blues by Joey Long


この曲は、"Anthorogy"に収録されています。



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Joey Long
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I'm Glad For Your Sake
グラッド・フォー・ヨ・セイク
バードからワームへ

The Rains Came
アンクル・サンボズ・キャビン
ロックン・カントリー
ビニール・オンリーのクインテット
テキサス熱中時代
テックス・マニアのうたげ
ダーティ・ドッグ・ワルツ
懐かしのアーケイディア
もっとジミーの好きなもの



夢はキングサイズベッドで

 コンピレーション・アルバムが好きです。
 たとえダブリが満載でもファン心情をくすぐるものがあれば、たとえコンセプトが究極にニッチでも、いーえ、それならかえって「その意気やよし!」と嬉しくなってしまうのでした。

 つい先だって、これは誰得なんだろう? そう思うコンピCDを見つけました。
 テキサスはサン・アントニオのガレージ・ロックをコンパイルしたアルバムです。
 Home Cooking Recordsが編纂して、Collectables Recordsが95年にリリースしたものです。

 このいかにも一般受けしそうにないコンセプトの仕掛け人は、Roy C. Amesさんという人で、この制作チームは、Doug Sahmの初期作品集や、Harlem Recordsのレーベル・コンピをCD化した布陣と同じです。

 うーん、Roy C. Amesさん、期待を裏切らない人ですね。
 これは入手するほかないです。


Classic Rock
from San Antonio, Texas 1958-1979

1. Sally Let Your Bangs Hang Down   (J. Olenn)  Johnny Olenn & The Jokers
2. One More Time (org. varsion)  (Head, Gibson, Bulton, Frazier, Buie, Pennington)  Roy Head & The Traits
3. One More Time (national varsion)  (Head, Gibson, Bulton, Frazier, Buie, Pennington)   Roy Head & The Traits
4. Sapphire   (J. Corduway)  Doug Sahm
5. Little Girl  (Gerick, Jones)   Pandora'Box
6. I Want You To Love Me (Ray Libert, T. Calderon) Ray Libert
7. Crazy Baby (R. London) Robb London
8. Henrietta (Fore, Hichfield) J. Dee & The Offbeats
9. Why Why Why (Doug Sahm) Doug Sahm
10. Don't Be Blue : Roy Head & The Traits
11. You're Late Miss Kate (Fore, Hichfield) J. Dee & The Offbeats
12. Mary Jane (R. London) Robb London
13. Set Me Free (B. Morrison) Bill Morrison & His Band
14. Don't Be Shy (Allison) Gary Middleton

 このCDは、残念ながら、全体的に音がよくないです。
 とはいえ、音なんて、アナログLP時代は細かいことはいいませんでした。
 そうですよね、同世代の皆さん。
 最近は、私もついつい言ってしまいがちですが…。

 もう、聴けるだけで嬉しい、そんな風に考えられたのは、思えば幸せな時代だったのかも知れません。
 ジャンプ・ブルースが手に入らなくて、スウェーデン盤のブートを漁ったことが懐かしい想い出です。
 今の若者たちは、スクラッチ・ノイズの彼方から聴こえる憧れの音楽なんて、そんな感慨を味わうことはないんだろうなあ…。

 さて、構えることなく聴きましょう。
 まあ、構えるような内容でもないです。

 Doug Sahmの初期作品が2曲入っていますが、この時期の作品は、いまやNorton Recordsから、ほぼコンプリート集が出て、有難みは少なくなりました。
 本盤リリースと同じ95年に、Roy C. AmesさんがDoug Sahmの初期音源のCD化への最初の仕掛けを行っています。
 このあたりの復刻CD化の流れは、だいたいこんな感じです。

95年 "Doug Sahm His Early Years" (Collectables COL-5559)
Roy C. Ames編纂14曲入り、別テイク1曲収録。

00年(98年?) "Doug Sahm In The Begining" (AIM 1308) 
豪盤。同じく14曲入りだが、上記盤とは2曲が別の曲。

00年 "Doug Sahm San Antonio Rock" (Norton ced-274) 
18曲入り。10代のとき他人の伴奏をやった4曲を収録。

 Doug Sahmの話になると脱線しそうなので、軌道修正します。

 期待していなかったのに、興味深かったのは、Roy Headの"One More Time"が2バージョン収録されていて、しかも続けて収録されているため、その違いがよく分かることです。

 オリジナル(TNT)は、思いのほかブルージーで攻撃的なギターをバックに、手拍子とタンバリンの連打を重ねるという手作り感満載のつくりです。
 …音がこもりまくっています。

 一方、全国盤(Septer?)のほうは、まずボーカル・エコーが深めで、なおかつブラス陣を前面にたてたアレンジです。
 アグレッシブなギターは、歌伴ではホーン・リフに隠れてオフ気味のため、間奏でのソロが引きたってとても効果的です。

 そして、終わったと見せかけるブレイクのあと、サビをもう一回繰り返すアレンジになっています。
 聴きやすさでは全国盤の圧勝ですね。
 ローカル盤は、比較するとチープなつくりが際立ちますが、それよりも音がこもりすぎだと感じました。

 Jimmy Deeの"Henrietta"が聴けるのも嬉しいです。
 この曲は、一時期かなり追っかけた曲でした。
 "Henrietta"は、海外サイトではロカビリーと紹介されることが多いですが、日本人の感覚ではスクリーム系ロックンロールじゃないでしょうか?

 この曲は、John Fogertyがお蔵入りになった幻の3rdソロ・アルバム(アサイラム)でカバーしていた曲で、Doug Sahmもライヴ盤でやっていたため(未入手ですが、"Country Groove"をB面とするDoug Sahm名義の76年の7インチ盤があるようです。)、一時期、私がたいへん関心を寄せていた曲です。

 過去記事で、この当たりのことをくだくだと書いていますので、よければご覧ください。
 当時は、ようつべでしか聴けないと思っていましたが、今なら本盤以外でも、以下のCDで聴けることが分かっています。

96年 "Dot Rock 'n' Roll" (英Ace) 
Dot Recordsのレーベル・コンピ。元はTNTですが、全国盤はDotから配給されました。

99年 "That'll Flat Git It! Vol.5" (独Bear Family) 
熊家族のレーベル別ロカビリー・コンピのDot編。

07年 "The Golden Age Of American Rock 'n' Roll, Vol.11" (英Ace) 
ビートルズ登場以前のヒットを網羅したコンピ・シリーズの1枚。

 ちなみに、Jimmy Deeの59年リリースのシングル、"Rock-Tick-Tock"(TNT 161)では、17歳のDoug Sahmがリード・ギターを弾いているらしいです。
 (上記のNorton盤、"Doug Sahm San Antonio Rock"に収録。)

 その他の曲は、いかにもローカルな感じがしますが、案外心地よく和めたります。
 時代の空気感みたいなものに、理由不明の好感を持ちます。

 もしかすると、今はその価値にさほど気付いていないだけかも知れません。
 このレアな無名曲たちを、いつか宝物と感じるときがくるかも知れないな、そんなことを夢想すると楽しいです。



Henritta by Jimmy Dee & The Offbeats




Henrietta by John Fogerty




Henrietta by Doug Sahm







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ヘンリエッタを探せ



オーキー・フロム・レイト60s

 今回は、おそらくほとんどの方がご存じないだろうと思われるアーティストをご紹介します。
 サザン・ロック、ブルース・ロック系のギターリスト、シンガーのDavid Doverさんです。
 この人は、オクラホマ州タルサの出身で、本名をDavid Dover Barberといいます。

 私が勝手に推測するところ、この人はファンが高じてプロになった人で、録音機材好きのオタク系ミュージシャンではないかと思います。


Mississippi Mud
David Dover

1. You Rascal You (Sam Theard)
2. The Jealous Kind (Robert Guidry)
3. Mississippi Mud (David Dover)
4. Place in Your Heart (Manny Charlton)
5. It Came Out of the Sky (John Fogerty)
6. Slide Man (David Dover)
7. Dust My Broom (Robert Johnson)
8. Take Care of Me (David Dover)
9. Fool for Your Stockings (Beard, Gibbons)
10. Peter Gunn (Henry Mancini)

 David Doverは、通常はバンド編成で録音してはいますが、曲によっては全てのパートを自ら演奏することもまれではありません。
 そして、これはまず間違いないと思うのですが、60s70sロックの熱心なファンであり、何よりもJohn Fogertyの熱狂的なファンだろうと思います。
 私がそう思うのには理由があります。

 David Doverは、これまで4枚のアルバムをリリースしています。
 以下のとおりです。

04年 Seal Of Approval (この1枚のみ、David Dover Band名義。下の3枚はソロ名義)
05年 Mississippi Mud
05年 Veterans Day
10年 Dover Soul

 これらは、いずれも自身のレーベルからリリースしており、まだメジャーからの配給はないようです。
 
 今回、4枚のうち、どれを取り上げようかと考えました。
 最近作の"Dover Soul"にしよう、一旦はそう思ったのですが、結局考え直しました。

 4枚には、ほとんど音楽性の違いはありません。
 ただ、1stがサウンド的に若干しょぼい気がします。

 私の思うところ、バンド名義の1stが最もオタクっぽい音で、なぜか一人多重録音の匂いがします。
 これは、リズム隊が弱く感じるからだと思います。
 とりわけ、ドラムスが弱いように思います。
 きちんと額面どおりバンドでやっているとすれば、録音が悪いのかミックスのバランスが悪いのか、私にはリズム隊の音が軽く感じられます。

 アルバムの構成では、1st、2ndは有名曲のカバーを中心に、自作曲を交えるというスタイルです。
 対して、3rdは、ほぼ自作曲でまとめています。
 5年のブランクを開けて出された4thは、自作曲を抑え目にして、再び1st、2ndに近い構成に戻しています。

 というわけで(?)、音に若干不満がある1stはまず外し、カバー曲が多く、音楽的嗜好がわかりやすい2ndを選びました。
 本盤の参加メンバーは、以下の通りです。

David Dover : vocals, guitars(all), keys(2,3,4,5,6,8),bass(3), drums(3,4)
Rick Paul : guitar(2,4)
Rick Potter : guitars(2)
Michael Vines : screaming lead guitar(10)
C. J. Anderson : bass(1,2,4,5,6,7,8,9,10)
Rick Heck : drums(1,2,6,7,8)
Terry Brawley ; drums(5,10)
Stanley Lindley : drums(9)
Rick Morrow : keys(1,7,10)
Dave Russell : sax(1,2,10)
Jimmy 'Junior' Markham ; harmonica(8)

 最初の方で、この人は、John Fogertyのファンだろうと書きました。
 David Doverは、リリースした4枚のアルバムで、必ずJohn Fogertyのカバーをやっています。
 次のとおりです。

1st : 110 In The Shade
2nd : It Came Out of The Sky
3rd : Run Through The Jungle
4th : Who'll Stop The Rain

 "110 In The Shade"以外は有名曲ばかりですね。
 "110 In The Shade"は、唯一John Fogertyのソロ・アルバムからのチョイスで、97年の"Blue Moon Swamp"収録曲です。
 "Hundred And Ten In The Shade"と表記されていた曲で、ゴスペルっぼい曲調の作品です。
 残りの3曲は、いずれもCCRの曲で、説明不要の作品ばかりですね。

 David Doverは、もともとJohn Fogertyと声質が似ています。
 さらに、大好きな曲をやるということで、これらの曲では思い入れたっぷりにやっています。
 
 本盤では、冒頭の曲、"You Rascal You"が、John Fogertyの曲ではありませんが、Johnが75年のソロ2作目でやっていた曲です。
 どれだけ好きなんだ、と言いたいです。

 各アルバムのカバー曲からも、この人の趣味嗜好をうかがってみたいと思います。

1st : She Caught The Katy タジ・マハールのカバー
    Never Ending Song Of Love ディレイニー&ボニーのカバー
    Run Run Rudolph チャック・ベリーのカバー
    It's Not My Cross To Bear オールマン・ブラザーズのカバー 
    From Small Things デイヴ・エドモンズのカバー
    Life Is Hard ジョニー・ウインターのカバー

2nd : The Jealous Kind ボビー・チャールズのカバー
    Dust My Broom エルモア・ジェイムズ(ロバート・ジョンスン)のカバー
    Fool For Your Stocking Z. Z. トップのカバー

4th : Same Old Blues J. J. ケイルのカバー(ただし、本人のお手本はフレディ・キング盤らしいです。)
    Johnny B. Goode チャック・ベリーのカバー(何とChuck Berry本人と共演しています。ライヴ録音)

 音を聴かなくても、何となくどんなタイプの人か想像できてきていませんか?
 ルーツ・ミュージック好きの方なら、少なくとも、彼のカバー曲のチョイスに、好感をいだく人は少なくないと思います。

 趣味っぽい、アマチュアイズムもうかがわせながら、だからこそ共感できる部分が多々ある人だと思います。
 まあ、メジャーで出せないのには、それなりの理由があるとは思います。
 雌伏に不思議の雌伏なしではあります。

 とはいえ、B級、C級好みの奇特な皆さん、一度ご賞味されてはいかがでしょう。



Mississippi Mud by David Dover





タフでなければ 優しくなれない

 今回は、Dr. Feelgoodの96年作、"On The Road Again"でリード・ボーカルを担当した、Pete Gageのソロ・アルバムをご紹介します。
 Pete Gageは、主としてピアノとハーモニカをプレイする、ブルース系の英国人ボーカリストです。

 彼は、Lee Brilleauxの後を受けた最初のボーカリストでしたが、結果的に1作のみの参加にとどまりました。
 ただ、Dr. Feelgoodのヨーロッパ・ツアーなど、ライヴの活動期間はそれなりにあったようです。


Tough Talk
Pete Gage

1. Tough Talk Boogie (Pete Gage)
2. Bad Feeling (Pete Gage)  
3. Victim Of Your Love (Pete Gage)
4. Relaxing With My Baby (Pete Gage)
5. No Other Woman (But The One From Louisiana) (Juha Takanen, Pete Gage) 
6. Standing At The Crossroads Again (Mickey Jupp)
7. Mose (Pete Gage)  
8. Midnight Hour Blues (Leroy Carr)
9. Under My Skin (Pete Gage)
10. I Got A Right (Pete Gage)
11. Other Side Of The Street (Pete Gage)
12. Sweet Mercy (Pete Gage) 
13. Let The Four Winds Blow (D. Bartholemew, A. Domino)
14. Living In My Sin (Pete Gage)
15. Do Some Rock'n'Roll (Pete Gage)

 本盤は、10年にフィンランドのヘルシンキのレーベル、Goofin Recordsからリリースされました。
 録音もフィンランドで行われています。

 Pete Gageとフィンランドとのゆかりは、やはりDr. Feelgoodの北欧ツアーがきっかけだったのではないかと推測します。
 "On The Road Again"のリリースが96年ですので、それを受けて同年か翌年くらいに、スウェーデンやフィンランドを回ったのではないでしょうか。

 Pete Gageは、97年に初のソロ・アルバム"Out Of Hours"をリリースしています。
  (その前には、私は未入手ですが、Pete Gage Expression名義で95年に1枚出しているようです。)

 その"Out Of Hours"がヘルシンキ録音で、Goofin Recordsからのリリースでした。
 このアルバムは、サイドメンを使わない、純粋なピアノの弾き語りアルバムで、スロー・ブルースを中心にやっていました。

 対して、13年ぶりとなる本盤は、素晴らしい伴奏陣を得て、ビート・ロック、ブルース・ロックのスタイルでやっています。
 参加メンバーは、以下のとおりです。

Pete Gage : vocals, piano, harmonica(2,9)
Gypie Mayo : guitars(4,6,8,9,11,13), bass(8)
Archie Hamalainen : guitars(1,2,4,5,6,9,12,15)
Honnu Pikkarainen : guitar(3,10), organ(3,7)
Arto Makela : guitar(7,14)
Teuvo Lampinen : bass(3,10,11,12,14)
Teppo Nattila : bass(1,2,4,5,6,7,9,13,15)
Juha Takanen : drums, percussion(all), accordion(5)
produced by Pete Gage, Juha Takanen, Teppo Nattila

 このメンツだと、やはりGypie Mayoの参加が目を惹きますね。
 もちろん、Dr. Feelgoodの2代目ギターリストです。
 Wilcoに比べると、ほのかにアメリカンなテイストも感じる人で、私は大好きでした。 

 そして、そのほかのメンツは、英米系の名前とは少し違う感じですね。
 これを見ると、フィンランド系の名前は、語尾が「〜ネン」で終わるのか、などと妙なところに感心してしまいます。
  
 実は、Gypie Mayoはスペシャル・ゲストで、本盤でPete Gageを強力にサポートしているのは、Doctor's Orderというバンドのメンツなのでした。

 Doctor's Orderは、98年から活動しているフィンランドのトリオ編成のビート・バンドで、スタイルとしては、完全にDr. Feelgood、The Pirates系のバンドです。
 (98年というのは、10周年記念と銘打たれていた彼らの08年リリースの編集盤から逆算しました。
 同盤には、「リー・ブリローに捧げる」と献辞が記されています。)

 このバンドは、その活動の開始時期が、Dr. Feelgoodが北欧ツアーをした(と思われる)すぐ後であること、また、バンド名が、Dr. Feelgoodの84年作、"Doctors Orders"を連想させることなどから、ウラは取れていませんが、強いリスペクトを感じます。

 Doctor's Orderは、Piratesとも深い関わりがあり、これまでMick Greenをゲストに迎えたミニ・アルバムを出したほか、直近の2作では、同じくPiratesのボーカルで、ベーシストのJohnny Spenceをフロントに立て、名義までJohnny Spence & Doctor's Orderとしてアルバムをリリースしています。
 どうです?
 興味がわいてきましたか。

 ちなみに、Doctor's Ordersという、酷似した名前の別バンドが存在しますので、ご注意ください。
 バンド名の語尾に(s)がつかないほうが、フィンランドのロッキンR&Bバンドです。

 本盤の参加メンツのうち、ギターのArchie Hamalainen、ベースのTeppo Nattilaの二人がDoctor's Orderのメンバーです。
 なぜか、ドラムスのメンツのみ不参加です。

 そのかわりに、ドラムを叩いているJuha Takanenは、これまでDoctor's Orderのアルバムを何枚もプロデュースしている人です。
 (ベースのTeppo Nattilaは、本盤ではバックに徹していますが、Doctor's Orderのリード・ボーカルで、Pete Gageの97年のソロ作、"Out Of Hours"で、既に制作陣の一人として参加していました。)

 さて、そろそろ中身を聴いてみましょう。
 Doctor's Order勢がサポートとはいえ、当然、メインのPete Gageのスタイルに合わせた演奏になっています。
 ガチのビート・ロックもありますが、全体的には、スライドを使ったブルース・ロック調のものが耳を惹きます。
 そして、Pete Gage自身による、ピアノのソロが聴きものです。

 全て必聴といいたいです。
 しかし、あえて私の注目曲をいくつかご紹介します。

1. Tough Talk Boogie
3. Victim Of Your Love
4. Relaxing With My Baby
5. No Other Woman
6. Standing At The Crossroads Again
8. Midnight Hour Blues
13. Let The Four Winds Blow

 うーん、チョイスしすぎですね。
 まあ、その他の曲も捨て曲なしといいたいです。

 アルバムの冒頭を飾る"Tough Talk Boogie"は、本盤を象徴する1曲です。
 Pete Gageのタフなボーカルが、名刺がわりの一発で、ガツンときます。
 アーシーなスライドが、ブギを基調としたメロにはまっていて、Peteのブルージーな咽喉もたっぷり聴けます。
 このスタイルこそ、Pete Gageの根幹をなすものでしょう。

 一方、驚かされるのが、本盤では珍しいストレートなバラードの"Victim Of Your Love"です。
 ブルージーなマイナー・バラードなら他にもありますが、ここでは男気たっぷりに、ダイナミックな込みあげ系バラードをやっています。
 サビを前にして、絞り出すようにハスキーになるボーカルが、John Hiattを連想させます。
 胸にぐっとくる名唱です。 
 お奨めの1曲です。

 "Relaxing With My Baby"は、Gypieがギターを弾いた曲で、アルバート・キング風のスクイーズ系スロー・ブルースが聴けます。
 マイナー・ブルースでも、比較的からっと乾いたトーンがGypieらしいと感じました。

 "No Other Woman"は、飛び道具的な1曲です。
 ここでは、ケイジャン・ロックンロールをやっています。
 アコーディオンも加わり、とにかく、楽しさ一杯のダンス・チューンに仕上がっています。

 "Standing At The Crossroads Again"は、Micky Juppの作品で、Dr. Feelgoodが91年のアルバム"Primo"でやっていた曲です。
 人生の岐路(女が去っていくという、本人にとっては重大事件)に立った主人公の心情を歌った曲で、比喩として、十字路でロバート・ジョンスンとエルモア・ジェイムズに出会う描写があります。
 Feelgood盤では、Steve Walwynがギターを弾いていた曲を、ここではGypie Mayoがプレイしていて、とても興味深いです。
 この曲は、Dave Edmundsもやっていますね。
 ぜひ、聴き比べてみてください。



 "Midnight Hour Blues"は、リロイ・カーのカバーで、これはPeteの97年のピアノ・ブルース集、"Out Of Hours"をすぐに連想しました。
 "Out Of Hours"は、期待せずに聴いたせいもあり、予想以上に気に入ったアルバムでした。
 ここでは、バンドをバックに、ゆったりとウォーキン・ブルースしています。
 弾き語りでも、バンド形式でも、本質は変わらないPeteのブルース・ボーカルが聴けます。
 タフでドスの効いたスタイルと、柔らかい歌いくちの切り替えが、大変魅力的です。

 "Let The Four Winds Blow"は、ファッツ・ドミノの比較的後期の作品で、私はどちらかといえば、もっと初期の作品が好きです。
 ここでは、ニューオリンズ風のピアノの雰囲気は希薄で、メンフィスあたりの、例えばロスコー・ゴードンなんかを連想しました。

 その他、GypieがT-Boneのフルアコっぽいサウンドを聴かせる、ウエストコースト・ブルース風の"Other Side Of The Street"や、これぞDoctor's Oederの本領発揮という感じのビート・ブギ、"Under My Skin"なんかも良いです。
 "Under My Skin"は、いくつかあるDr. Feelgood直伝のスタイルの1曲で、思わず頬が緩みます。

 全体を通して、Peteのボーカルからは、汗やガッツといったワードが頭に浮かび、Lee Brilleauxを想い起こさせてくれます。
 とりわけ、それはファストな曲に顕著で、Birilleauxの在りし日の姿を思い出さずにはいられません。

 Doctor's Order勢のプレイという面でいいますと、一本調子のビート・ロックだけじゃない、別の一面を知ることが出来ました。
 ちなみに、Doctor's Orderの06年作、"The Doc Pack"(生産終了、未入手)では、Pete Gageがゲスト参加して、2曲でボーカルとハーモニカを披露しているらしいです。



How Do You Sleep by Doctor's Order




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サンアントニオ・ソウル・グレイツ

 これは、はずれもあるな、そう思いながらも期待半分で聴きました。
 短い曲が、わずか12曲、とりとめなく入っています。
 色んなタイプの曲を、ノー・プランでぶち込みました、とりあえず一丁上がり、そんなチープ感が漂っています。

 …しかし
 しかし、私にとっては、何気に刺激たっぷりの盤でした。

 結論
 これは良いです。


All I Could Do Was Cry
Rudy Tee Gonzales y sus Reno Bops

1. All I Could Do Was Cry (B. Davis)
2. Crazy, Crazy, Crazy Baby
3. Tell Me What You Gonna Do (B. Peterson) she's about amover
4. Have Faith (B. Ferguson)  
5. In The Palm Of Your Hand (B. Spurlock)   
6. Further On Up The Road
7. It Was Just An Illusion (Rudy T. Gonzales)
8. Oh Baby, I'm Crying (Rudy T. Gonzales)  
9. The Phillie (Rudy T. Gonzales)  
10. Only You (Can Break My Heart) (Buck Owens)
11. A Pair Of Sevens (Rudy T. Gonzales)  
12. The Tables Have Turned (Parker) 

 Rudy Tee Gonzalesは、名前だけは知っていました。
  
 まず間違いなく、サン・アントニオ出身のチカーノ・シンガー(グループ)だと思います。
 Huey P. Meauxのレーベルの一つ、Taer Drop Recordsから、60年代(多分)にアルバムを出しています。 
 (ざっくりいって、Tear Dropは60年代のテキサス中心、Crazy Cajunは70年代のルイジアナ中心だと思います。)

 私は、Sunny Ozunaのファンとして、彼のように歌えるチカーノ・シンガーを探していました。
 Sunnyのように、というのは、英語で歌うChicano Soul(R&B)を得意としている歌手ということです。

 そんな条件のもと、私が出会い、聴くようになったのが、Joe Jamaであり、Little Willie Gでした。
 そして今回、私は、Rudy Tee Gonzalesを新たにお気に入りリストに追加したのでした。

 Huey P. Meauxは、Tear Drop Labelから、Rudy Tee GonzalesのLPを4枚リリースしています。
 これは、同レーベルでは2番目に多いリリース数で、Meauxのお気に入りだったのだと思います。
 (ちなみに、最多リリースは、Sunny & Sunlinersの6枚です。)

 本盤は、05年にテキサスのGolden Eagle Recordsからリリースされました。
 録音クレジット等全く記載がないため、いろいろと推測するほかありません。

 収録曲数が12曲と少なく、LPのストレートCD化の可能性もなくはないです。
 ただ、Tear Dropの4枚のLPには、該当するタイトルがありません。
 また、ジャケが近影をコラージュしたもので、仮にLPをCD化したものだとすれば、ジャケ、アルバム・タイトルともに変更したものだということになります。

 普通に考えれば、新たに組んだ編集盤ということでしよう。
 しかし、05年のリリースで12曲入りというのは、やはり少ないですね。
 何とも、もやもやが残りますが、この真相は、Tear DropのLPの内容を確認するほかないてず。

 実は、Tear Drop盤のストレート・リイシューと思われるCDが、Golden Eagleから3枚出ています。
 これらは、LPと全く同じタイトルのCDです。
 LP盤の実物を見たわけではないため、確定とはいえませんが、おそらく間違いないでしょう。
 
 残る1枚の内容がわかれば、すっきりします。
 あせらないで、自然に明らかになることを待ちたいです。



 では、音を聴いた印象はどうでしょうか?

 正直、分からないです。
 60年代のヴィンテージ録音のような曲もあれば、70年代か80年代の音のように聴こえる曲もあります。
 ただ、音圧のレベルが曲によって不安定で、寄せ集めのような気はします。
 少なくとも、アルバム単位で録音された音源ではないと思います。

 私の印象では、70年代の音源を一部含む、60年代中心の音源をコンパイルしたものではないかと考えます。
 とはいえ、これまでの経験から、私の耳は全くあてになりません。
 そろそろ、単純に音を楽しみましょう。

 すべてが注目曲といいたいですが、あえて選ぶなら次の5曲です。

1. All I Could Do Was Cry
3. Tell Me What You Gonna Do 
5. In The Palm Of Your Hand
6. Further On Up The Road 
9. The Phillie

 いずれも個性がはっきりした曲で、全くかぶっていません。
 
 "All I Could Do Was Cry"は、Chess時代のEtta Jamesのナンバーです。
 映画「キャデラック・レコード」で、Etta James役のビヨンセが歌っていました。

 Rudy Gonzalesのバージョンは、あたかもOscar Tony Jr.が歌う、"For Your Precious Love"のようです。
 この意味、分かりますか?

 イントロから、プリーチが延々と続き、「もしかして、このまま歌詞を語り風にやるだけで終わりなのか?」と勘ぐり始めたころ、やっとメロにのせて歌いだした途端、すぐに終了してしまうという荒ら技です。
 アルバム冒頭からやってくれます。
 この曲は、RudyのR&Bバラードの代表作かも知れません。

 "Tell Me What You Gonna Do"は、誰が聴いても、Sir Douglas Quintetの"She's About A Mover"を連想してしまう作りの曲です。
 そっくりとまではいいませんが、全体のリズム、オルガンのリフなど、姉妹曲とでもいいたい曲です。
 この曲は、Rudy版のテキサス・ガレージ・ロックでしょう。

 この系統では、"The Phillie"も、楽しい曲です。 
 こちらは、Sam The Sham & The Pharaohsの"Wooly Bully"のスタイルに近く、影響力の大きさを感じます。

 "In The Palm Of Your Hand"は、三連の美しいDoo Wopバラードです。
 このスタイルこそ、Rudy Gonzalesの真価が最も出ている曲だと思います。
 バックのハーモニーが、とても効果的に使われて、Rudyのリードを引き立てています。
 同様のスタイルでやった、"Oh Baby, I'm Crying"も素晴らしい出来です。

 "Further On Up The Road"は、もちろんBobby Blandの名作のカバーです。
 こちらは、ブルージーなRudyを代表する曲でしょう。
 ここでは、奇をてらったフェイクはなく、素直にオリジナルに沿ったアレンジでやっています。
 ホーンの鳴りがいいです。
 ブルース・ギターが、ソロでペンペンとチンピラっぽい音を出していて、大好きです。

 最後に、"Only You (Can Break My Heart)"についても触れておきましょう。
 この曲は、もしやPlattersの大有名曲(Buck Ram作)ではと思いましたが、クレジットどおりBuck Owensの曲でした。
 あちらは、"Only You (And You Alone)です。 

 さて、アルバムとしては、まとまりのなさが、かえって善玉カオス(?)という感じです。
 チカーノR&Bの好アルバムだと思います。
 こういうスタイルに需要があったのは、いい時代だったですね。

 Rudy Tee Gonzalesは、初期からスペイン語での歌唱曲も多く、その意味でもSunny Ozunaとよく似ています。
 カントリーの名曲たちを全編スペイン語でカバーした、その名も"Country"というアルバム(多分、Tear Drop原盤)もお奨めです。



unknown song by Rudy Tee Gonzales y sus Reno Bops




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Sunny Ozuna
サニーの歌声にダグを偲ぶ
おかえり ブラウン・ブラザー
こだまでしょうか、いいえだれでも
サニー・ミーツ・ジーン・トーマソン

Sunny & Sunliners
ハリウッドのサニー
泣いたサニーがもう笑った
ぼくらのチカーノ・ヒーロー

Joe Jama
ブラウン・ソウル 孤高のテハーノ
ジョー・ジャマの音楽と人生

Little Willie G
ディスカバー・ウイリー・ガルシア
心の扉を開けてくれ

Compilation
ウエストサイド・ソウル
チカーノ・タウンからの贈り物
ハーレムのダイスを転がせ
バリオでロッキン
イーストサイド・ワールドへようこそ
イーストL.A.の郷愁




ハワイアン・カウボーイ

 今回は、ハワイのカントリー・シンガーをご紹介します。
 ハワイはアメリカの州とはいえ、ちょっと不思議な感じです。
 「マウイのハワイアン・カウボーイ」を自称するこの人、さてどんなテイストなんでしょうか?
 実は、ファースト・コンタクトです。


My 9th Island Paniolo Ranch
Danny Estocado

1. Hook In My Heart (Kevin Wicker)
2. Volcanic Heart (William Nauman)
3. Ring of Fire (June Carter, Merle Kilgore)
4. Long Black Train (Josh Turner)
5. Keeper of the Key (Harlan Howard)
6. Po'o Wai U Makawao Rodeo (Danny Estocado)
7. Heart That You Own (Dwight Yoakam)
8. Wasted Days and Wasted Nights (Huey P. Meaux)
9. My 9th Island Paniolo Ranch (Danny Estocado)
10. It's Only Make Believe (Conway Twity, Jack Nance)
11. Hello Love (Betty Jean Robinson, Aileen Mnich)
12. Daddy's Home (William Henry Miller, James Sheppard)
13. Jesus Hold My Hand (Albert E. Brumley)
14. Pele Pu'uwai (William Nauman)
15. Sweet Spot (Mark May)
16. Pride and Joy (Stevie Ray Vaughan)

 プロフや最近の活動などの詳細は不明ですが、彼のサイトの情報によれば、オアフ島生まれで、94年CDデビュー、これまでに6枚のCDをリリースしています。
 主な活動の拠点は、ラスベガスらしき内容が記載されていました。

 そして、定期的にハワイへ戻って活動しているほか、毎年日本で公演を行っているとの記述がありました。
 実は、日本のカントリー・ファンの間では周知の人なんでしょうか?

 熊本や京都のカントリー・フェスに出ている人なのかな?
 どうも思い切り無知をさらけ出している気がしてきました。 

 本盤は05年のリリースですが、アマゾンのエントリーでは最近作です。
 既にかなり前という感じですが、くだんのサイトの記述ともあっています。

 とにかく、聴いてみましょう。
 
 ……。

 通して聴いて最初に頭に浮かんだのは、「ハワイのフレディ・フェンダー」というワードでした。
 本盤の録音はナッシュビルで、なーんだと拍子抜けする思いですが、70年代のFreddy Fenderの作品を思わせる、輪郭のくっきりしたポップなサウンドが、とても聴きやすいです。

 本盤では、"Wasted Days and Wasted Nights"をやっていますが、Freddy Fenderを連想したのは、それだけが理由ではありません。
 ミディアム、スローのバラードでの泣き節が、Freddy Fenderを思い起こさせるのでした。

 本盤では、さほど顕著には出てはいませんが、そこはかとなく漂うハワイアン・テイスト、ポリネシアン・フレイバーが色々と想像力をかきたててくれます。

 直接的には、"Po'o Wai U Makawao Rodeo"や"Pele Pu'uwai"のような曲ですね。
 とりわけ、"Pele Pu'uwai"です。
 ハワイ語(?)の不思議な懐かしい響き、いかにもな「らしい」音階、旋律を使ったメロに癒されます。
 こういった曲を、もっとバイリンガルでやれば、さらにFreddyっぽく感じることでしょう。

 ハワイ風味探しに気持ちがとられていましたが、何気に、ビッグ・カントリーをやっていて興味深い内容になっています。 

 ジョニー・キャッシュの名作から、ホンキートンク・マイスター、ハーラン・ハワードの作品、ドワイト・ヨーカムのしっとり系バラードまで、バラエティに富んだ選曲です。
 コンウェイの初期の名作ロッカ・バラード、"It's Only Make Believe"には意表を突かれました。

 まあ、意表を突くといえば、ラストのスティーヴィー・レイ・ヴォーン作品、"Pride and Joy"に勝るものはないですね。
 ここでは、ぶっとい迫力のシャッフル・ブルースに果敢に挑戦して、"Sweet Spot"と並んで、ブルージーなDannyが聴けます。

 そんな中、私のお奨めは、オリジナルでは、アルバム・タイトル曲の"My 9th Island Paniolo Ranch"、カバーでは、"Daddy's Home"です。

 "My 9th Island Paniolo Ranch"でいう、9番目の島とはなんでしょう。
 ハワイ州は、8つの島と100以上の小島で構成されています。
 この自作の軽快でポップなナンバーは、「ぼくがほんの子どもだったころ…」という歌詞で始まります。
 ハワイ生まれの気概みたいなことを歌っているのではないでしょうか。
 バックで適時入ってくる「掛け声」「囃子言葉」が雰囲気を盛っています。

 "Daddy's Home"は、ドワイト・ヨーカムのバラードとともに注目のバラードです。
 この曲こそ、最もFreddy Fenderを思わせる歌唱だと思います。
 泣き節が見事に決まったサービス・エース級の1曲でしょう。

 "Daddy's Home"の原曲は、Shep & LimeLitesが61年にリリースした、遅れてきたドゥ・ワップの名作でした。
 時は既にアーリー・ソウルが芽吹き始めていたころです。

 この曲の歌詞の最期は、"〜A Thousand Miles Away"と結ばれています。
 この"A Thousand Miles Away"のフレーズこそ、リーダーで作者のJame Sheppardが、以前に組んでいたグループ、The Heartbeats時代にヒットさせた、もうひとつのワン・ヒット・ワンダー曲のタイトルなのでした。

 Danny Estocadoは、なかなかに面白いアーティストだと思います。
 過去作では、もっとハワイ・ルーツに根差したアルバムもあるようなので、聴いてみたいです。

 ところで、思いつきを書かせてください。
 アメリカのもうひとつの飛び地、アラスカ州には、カントリー・シンガーはいるんでしょうか?
 もちろん、ここでイメージしているのは、エスキモーやカナダのイヌイットのような先住民族出身のシンガーです。
 どうでしょう?

 



Po'o Wai U Makawao Rodeo by Danny Estocado






遊び人ら 国境の南にたむろする

 今回は、初物です。(もちろん、私にとって)
 初めてこのバンドの名前を知った時、字づらから間違った覚え方をしてしまいました。
 よく見ればすぐにわかるのですが、Tejano Gigolos(テハーノ・ジゴロズ)だと思ったのです。
 当然、頭にあったのはTex-Mex系のバンドでした。

 しかし、二度見するまでもなく、正しくはTijuana Gigolosです。
 Tijuanaはメキシコの街の名前、Gigoloはもう英語化してるのでしょうが、もともとはフランス語で、意味はまあ分かりますよね。
 一体、どういうバンドなんでしょうか?


Do Ya Wanna Go ?
Tijuana Gigolos

1. Blind Man Walkin' (Marty Steinhausen)
2. Oh Me Oh My (Marty Steinhausen)
3. Ice Cream Cone (Marty Steinhausen)
4. Le Bigga Mack (Marty Steinhausen)
5. Cajun Jukebox (Marty Steinhausen)
6. Haley's Comet (Dave Alvin)
7. 25 to Life (Marty Steinhausen)
8. Mas Fina (Marty Steinhausen)
9. The Letter (Marty Steinhausen)
10. Days and Days (Marty Steinhausen)  
11. El Fuego Del Sol (Marty Steinhausen)
12. Knock Knock (Marty Steinhausen)
13. South of the Border (Marty Steinhausen)
14. Jeff's Banana (Pick Your Own Damn Fruit) (Jeff Boehmer)
15. Do Ya Wanna Go? (Marty Steinhausen)

 Tijuanaという街からは、レイモンド・チャンドラーの小説(「長いお別れ」?)を連想します。
 私立探偵フィリップ・マーロウが、テリー・レノックスの事件で関わりを持った(?)街でした。

 この街のカナ表記は、ティファナか、ティワナかなんて、訳者のあとがきでしたか、書評だったかで話題になっていたのではないかと思います。

 当時、私は中2くらいだったと思います。
 中1でエドガー・ライス・バローズ(John Carter, Tarzan)に出会い読書の面白さを知り、中2でハワード(Conan)やチャンドラーを知って、さらに夢中になって翻訳小説を読みまくったものでした。
 あれっ 何の話でしたっけ?

 メキシコは、アメリカの4つの州と接していて、東端はテキサス、西端はカリフォルニアに接しています。
 Tijuana(ティファナ)は、メキシコの北西端にあって、カリフォルニア州の南端と接する街です。

 このバンドの本拠地ですが、ウェブから限られた情報を見る限り、ネブラスカ州リンカーンのような気がします。
 それでは、なぜティファナと名乗っていいるのか、という話になりますが、よくわかりません。
 でも、少なくともメキシコのバンドではないだろうと思います。

 本盤を聴いたところ、予想と違う展開で進行し、驚きました。
 当初、Tex-Mex系のバンドだ思っていたのですが、アーシーなカントリー・ロック("Oh Me Oh My")だったり、ケイジャン・カントリー("Cajun Jukebox")だったり、シャープなインスト・ブルース("Jeff's Banana")だったりして、「えっ」という感じです。

 マカロニ・ウエスタンのテーマみたいな曲("El Fuego Del Sol")までやっています。
 さらに、ロカビリーっぽい曲("Days and Days")もあり、ヒーカップ、マンブルを屈指したボーカルが聴けます。
 
 本盤は、05年にリリースされたもので、あるいは、このバンドの1stかも知れません。
 (この後に、もう1枚出でいます。)

 参加メンバーは、以下の通りです。

Marty Steinhausen : guitars, vocals(1,2,3,5,,8,9,11,12,13,15), bass(14)
Tony Meza : congas, bongos, percussion, vocals(6,7,10,12)
Jeff Boehmer : bass, guitar(14)
Tom Harvill : organ, piano, vocals
Dave Robel : drums
guest
Justin G. Jones : cowbell on "Le Bigga Mack"
David Fowler : fiddle on "Cajun Jukebox"
Benjamin Kushner : harmonies on "The Letter"
Joyce Durand : harmonica on "South of The Border"

 メンバーの編成は、ギター、ベース、鍵盤、ドラム、パーカッションからなる5人組です。
 主としてリード・ボーカルをとるのは、ほとんどの曲を書いているギターのMarty Steinhausen(ドイツ系?)で、パーカッションのTony Mezaがセカンド・ボーカルとして4曲ほどリードをとっています。
 Tony Mazaのボーカルは、若干荒い気もしますが、アルバムの中でいいアクセントになっています。

 既に何度か聴き返しているのですが、聴き返すたびに好感度が上がります。
 
 特筆したい曲があります。
 "Oh Me Oh My"です。

 ただ、この曲は、バンドを代表する曲といえるかどうかは難しいです。
 何しろ、いろんなタイプの曲をやるバンドなので、もしかすると突然変異的な1曲かも知れません。
 (見極めるため、もっとアルバムが聴きたいです。)

 あるいは、"Ice Cream Cone"のような、疾走系で不良っぽいロックンロールこそ本質かも、とも思います。
 それでも、"Oh Me Oh My"を、ぜひとも推したい理由があります。
 それは、この曲が、John Fogertyの歌唱を連想させてくれる、最高の曲だからです。

 CCRは、私にとって、Beatlesの次に、その後のレコード漁りの指標になったバンドでした。
 Beatlesからは、50sロックンロール、ロカビリー、ブラック・ハーモニー・グループ、ガール・グループなどに導かれました。

 そして、CCR(John Fogerty)からは、MGsを始めとするメンフィス・ソウル、カントリー、ジャグ・バンド、ゴスペル・カルテットなどに関心を寄せるきっかけを得たのでした。

 "Oh Me Oh My"は、いかにもJohn Fogertyが書きそうなメロを持つ、カントリー・ロックに仕上がっています。
 だけでなく、ボーカルの高音の出し方など、雰囲気がまんまJohn Fogertyという感じで、聴き惚れました。
 全てのJohn Fogertyファンにお奨めの1曲です。

 そして、もう1曲、"Haley's Comet"にも注目です。
 この曲は、元Blastersの中心メンバーだった、Dave Alvinとルーツ系シンガー・ソングライターのTom Russellが書いた曲で、作者盤のほか、Texas Tornadosのカバーがあります。

 ロックンロール・レジェンドの一人、ビル・ヘイリーの晩年の生活、孤独な最期を歌った曲で、「彗星が落ちた」という比喩が印象的です。
 (良く知られているように、彼のパンド名はコメッツでした。)

 アメリカで落ち目になったヘイリーは、ヨーロッパに活路を見出します。
 当初、大きなリスペクトを持って迎えられたヘイリーでしたが、その人気は長続きしませんでした。
 ロックンロールの危険で反抗的なイメージは、マーロン・ブランドから、エルヴィスやジェイムズ・ディーンへと受け継がれ、髪の薄い中年のヘイリーは、時代から置いていかれようとしていたのです。 
 かつてのスターに訪れた現実のペーソスと、栄光時代の幻覚を、疾走感たっぷりのアレンジで描写するロックンロールがかっこいいです。

 アーシーなロックンロールから、カントリー・ロック、ケイジャン・カントリー、シャッフル・ブルース、ウエスタン(?)・インスト、異国情緒漂うボーダー・ソング、繊細で内省的なバラードまで、ごった煮感満載で、まだ正体がつかめない、まだまだ底が深いんじゃないか、そう期待させてくれる好バンドだと思います。

 2ndが入手困難なのが残念です。
  (MP3アルバムは購入できます。)

 まあ、あせらずにいれば、そのうちいつか入手できるでしょう。



Oh Me Oh My by Tijuana Gigolos




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彗星はアメリカの心に沈む






エア・フォース・ロック

 皆さんは、もうDr. Feelgoodの4枚組Box Set、"All Through The City 1974-1977"は聴かれたでしょうか?

 私は入手こそしましたが、聴き終えてしまうのが惜しくて、まだDisc1と2をチェックしただけで、ぐずぐすしています。
 何度も聴いた内容ですが、パッケージやディスクが変わるだけで、ついつい嬉しくなる気持ちを抑えられません。

 さて、今回のアルバムは、Dr. Feelgoodと少なからず関連があります。
 少し前置きが長くなりそうですが、ご容赦ください。


Put Out The Cat
Geno Washington

1. Radio (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
2. Take That Job And Stuff It (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
3. Slow Down (Perkins)
4. Whatd I Say (Ray Charles)
5. Didn't I Tell You (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
6. Let The Good Times Roll (L. Lee)
7. Star Dreamin (W. Washington, M. Lee, G. Russell)
8. Let It Rock (W. Washington, M. Lee, G. Russell)

 94年にLee Brilleauxが亡くなり、最後のオリメンがいなくなったあとのことです。
 残ったメンツが、新たなボーカリストを加入させてバンドを継続すると知ったとき、私はもはや別のバンドだなと感じ、興味を失いました。
 実はそれ以前から、ギターのSteve Walwynのプレイがあまりしっくりこず、冷め始めていたのでした。

 そんな私でしたが、再び関心を持つことになります。
 00年の"Chess Masters"のリリースを知り、つい手に取ったのです。
 やはり、カバー集好きの私は、触手を伸ばさずにはいられなかったのでした。

 そして、食わず嫌いを反省した私は、改めてスルーしてきたアルバムに注目するようになったのでした。
 Lee Brilleauxの後を受けた最初のボーカリスト、Pete Gageが参加した唯一のアルバム、96年の"On The Road Again"は、繰り返し聴くうち、初めてSteve Walwynのギターも悪くないかもと思ったのでした。

 さて、なかなか話が進みませんが、お許しください、そろそろ核心へ近づいています。

 私は、"On The Road Again"でPete Gageに関心を持ちました。
 そして、彼のキャリアを調べるうち、その過程で同姓同名のミュージシャンにぶつかったのです。

 もう一人のPete Gageは、やはり英国人で、ただしギターリストです。
 こちらのPete Gageがメンバーだったのが、今回の主人公、Geno Washingtonが60年代に組んでいたバンド、Gene Washingtpn & The Ram Jam Bandでした。

 やっと話がつながりました。
 この人は、過去に日本盤が出ていましたが、ソウル・ファンにも、ロック・ファンにも知名度が低い人でしょう。

 Geno Washingtonはインディアナ州出身のアフロ・アメリカンで、60年代は、英国に駐留する合衆国空軍に所属するパイロットでした。
 軍属を離れた彼は、既にバンドを組み、ボーカリストの交代を考えていたPete Gageの誘いを受け、そのまま英国に留まってバンド活動に参加します。

 彼以外のメンバーは、全員白人青年らからなるホーン入りのバンド、それがRam Jam Bandでした。
 このとき、リリースされた2枚のアルバムが評判となり、彼は母国よりもヨーロッパで成功したソウル・シンガー(?)となります。
 メンフィス・ソウルから影響を受けたバンドは、中でもジャンプ・ナンバーに魅力があり、特にライヴ盤での激しいノリが、R&B好きのモッズに受けたのではないかと思います。

 ようやく本題です。
 本盤は、70年代に米国へ戻り音楽活動を継続したGenoが、81年にリリースしたソロ・アルバムです。
 (ただし、なぜか録音はベルギーのスタジオになっています。)

 60年代には、ソウル・レビュー風のサウンドをやっていた彼ですが、ここでは、ロックンロール、もしくはビート・バンド系のサウンドに乗せて歌っています。
 それは、本盤を聴いたことがない方も、カバー曲のチョイスを見れば、なんとなく分かっていただけますよね。

 ただし、クレジットに誤りがあります。
 "Slow Down"は、作者がPerkinsと誤記されていますが、ここでやっているのは、もちろんBeatlesが有名にした、Larry Williamsのあの曲です。

 そして、"Let The Good Times Roll"は、Louie Jordanに同名曲があり、B.B.Kingが愛唱歌としているので、そちらが有名ですが、作者名がLeeとなっていますので、Leonard Leeが書いたShirley & Leeの曲だと分かりますよね。

 …と言いたいところですが、何とここでも間違っています。
 演奏を聴けば、これがEarl Kingの曲で、別名"Come On"として知られている曲だと分かります。
 うーん、気が抜けません。


 さてここで、本盤とDr. Feelgoodとを結ぶ、もうひとつの繋がりを披露しましょう。
 本盤をご存じの方、または今までの文章で分かったという方は、今少しおつきあいください。
 本盤の参加メンバーは、以下のとおりです。

Geno Washington : vocals
Gordon Russell : guitars & backing vocals
Jude 'Judge' Baptiste : bass
Mick Lee : percussion & backing vocals
add.
Bart Decorte : guitars
Keith Bonsor : piano & clavinet
Edward Kuczinski : electric piano

 気が付かれましたか?
 ギターで参加しているのは、この数年後にJohnny Guitarの跡を継ぎ、Dr. Feelgoodの4代目ギターリストとなった、あのGordon Russellその人なのでした。

 時系列でいいますと、本盤のリリースが81年で、翌82年にリリースされたのが、Johnny Guitarが参加した唯一のDr. Feelgoodのアルバム、"Fast Women and Slow Horses"でした。

 私は、リズム隊の総入れ替えが行われた、80年代半ばのDr. Feelgoodが当初は気に入りませんでした。
 まあ、演奏の良し悪しではなく、好き嫌いかも知れません。

 例えば私の場合、ベースに関しては、好きなプレイは頭に浮かびますが、嫌いだと思う演奏はすぐに思いつきません。

 その点、ドラムは好き嫌い双方の自覚があります。
 新メンバーのKevin Morrisのドラムは、80年代アメリカン・ロックによくあった、おかずの少ない、バッシャン、バッシャンとジャストだけれど単調な、うるさいだけのスタイルで、私の好みではないです。
 私は、ブリティッシュ・ロックのドラマーでは、Terry Williamsのシャッフルが好きです。

 ですが、ギターのGordon Russellは好きでした。
 Russellは、同じブルース・ベースのギターリストでも、WilcoやGypieに比べると、ロックンロール寄りのプレイだと思います。
 どちらも好きですが、Russellのプレイは、バンドの軌道を少し修整した感じがして、単純に新鮮でした。

 本盤でも、既にDr. Feelgoodで聴かせることになるスタイルの片りんがうかがえ、スイングするロックンロール・ビートが快感です。

 先にカバー曲について触れましたが、メンバーで共作したオリジナルは、完全にビート・ロックで、スキン・ヘッドのジャケ写からは想像つかない音に仕上がっています。

 Pub Rock、Dr. Feelgoodのファンなら、聴いて損のない好アルバムだと思います。




 追記
 Geno Washingtonとそっくりな名前のR&Bシンガーがいます。
 Gino Washingtonという人で、こちらはデトロイトのシンガーで、別人ですが、アマゾンの検索では混在してヒットします。
 ちなみに、Ginoさんもまた、日本では無名だと思いますが、なかなかに聴かせます。



Radio by Geno Washington




グッド・ロッキン・ダディ

 英国ピアノ・ロッカーのアルバムをご紹介します。
 ただし、新譜ではありません。
 私が入手したものは、英盤(アイルランド盤?)のCDで、リリース年のクレジットがありません。
 まあ、ミレニアム以降に出されたリイシュー盤だと思います。

 オリジナル盤は、楽曲の出版年のデータ等から、おそらく98年ころのリリースではないかと推測します。


  
Come On And Dance
Gavin Povey
& The Good Rockin' Daddys

1. Coma On And Dance (Gavin Povey)
2. Looks Likes Love (Gavin Povey)
3. Did I Tell You (Gavin Povey, Augie Meyers)
4. That's The Time (Gavin Povey)
5. Who's That Guy (Gavin Povey)
6. Hold Me Back (Gavin Povey)
7. Glory Bound (Gavin Povey)
8. Call Me Soon (Gavin Povey)
9. Hold Me Close (Gavin Povey, Phil Nelson) 
10. What It Is (Gavin Povey, Phil Nelson)

 Gavin Poveyは、プロフがあまり分からない人です。
 英国の鍵盤奏者で、現在は、Albert Leeのバック・バンド、Hogans Heroesの一員としでピアノやオルガンを弾いています。

 Albert Leeのライヴ盤を聴いたとき、この人は歌いたい人なんだと感じました。
 Leeの公演のセットリストでは、2曲程度、リード・ボーカルをとっています。

 Gavin Poveyは、80年代の英国ロカビリー・スター、Shakin' Stevensの全盛期のアルバム数枚で、ピアノを弾いていた人です。
 Shakyのファンである私は、Albert Leeのアルバムに彼の名前を発見して、俄然関心がわいてきたのです。
 しかも単にバックの人ではなく、自作曲を歌っていることから、ソロ活動はないのかと考えたのです。
 そして、少し調べました。

 結果、よく分かりません。
 ただ、言えることがあります。
 本盤は、おそらく本人のリーダー作としては、現在入手可能な唯一のアルバムだろうということです。

 本作の収録曲は、全て自作で、楽曲の出版は最も古いもので85年、新しいもので98年とクレジットされています。
 これらから、古い曲は、ソングライターとして他人に提供してきたものか、あるいはバンドなど別名義で、本盤以前に録音があるのではないかと考えましたが、調べきれませんでした。

 他人の伴奏では、パブ・ロック、ニューウェイブの時代に、いくつかの痕跡があるようです。

 79年のInmatesの1st、80年のLew Lewisの1stでピアノを弾いています。
 そして、その後まもなく、Shakin' Stevensのバンドに参加します。
 また、この間、84年にはBilly Blemnerのソロ作、"Bash"に参加し、やはりピアノを弾いています。

 興味深いのは、Augie Meyersとの関係です。
 本盤に収録されている曲、"Did I Tell You"は、Augieとの共作で、出版クレジットは85年となっています。
 Augieとは、どういう経緯でつながりが出来たのでしょう。 

 "Did I Tell You"は、Augieも吹き込んでいて、86年の"Augies Back"、同年の"My Main Squeez"と2枚のソロ作で取り上げたほか、Texas Tornadosの91年作、"Zone of Our Own"でも再演しています。

 "Augies Back"がロンドン録音で、Gavin Poveyがサポートメンの一人として参加していましたので、そのあたりがゆかりとなったのかも知れません。

 ところで、"Did I Tell You"は、二人の共作名義ですが、Augieの作風を強く感じさせるつくりの曲です。
 それは、本盤のその他の曲と聴き比べれば明らかです。
 仮に、Gavin Poveyの主導で書かれたとすれば、Gavinが完全にAugieをイメージして書いたのでしょう。

 Augie Meyersのファンなら、このGavin Poveyのバージョンはぜひ聴いていただきたいです。
 ここで、アコーディオンを弾いているのはPoveyです。
 (さらに言いますと、"Did I Tell You"は、Flaco Jimenezもアーフリー時代にカバーしていますので、そちらも聴くほかないですね。)

 ここで、遅ればせながら、本盤の参加メンバーをご案内します。
 以下の通りです。

Gavin Povey : lead vocals, keyboads, accordion, bass
John Dillon : drums on Track1,7
Geoff 'Hound Dog' Haves : guitar & b.vox on track1,7
Jimmy Smith : guitar on track3,6
Fran Byrne : drums on track4,5,8,10
Rod Quinn : drums on track2,9
John McLoughlin : guitar on track2,4,5,8,9,10
John Rafferty : rhythm guitar : on track2

 うーん、誰一人知らないなあ…。
 私の今までの守備範囲には入ってこなかった人たちなのでしょう。

 本盤でのGavin Poveyの大半の演奏は、直球のロックンロール・ピアノで、さらに言えばライト・テイストなブギウギが基本という感じです。
 ボーカルには特段のあくがないですが、クールな雰囲気があります。

 "That's The Time"のような、ニューオリンズR&Bスタイルの三連曲もやっていて、ボーカルはFatsぽかったりしますが、ピアノのプレイは、Fats DominoでもHuey Smithとかの系統でもなく、歌伴で、ポロンポロンときれいなフレーズをいれるところなどは、フロイド・クレイマー風だったりして不思議です。

 早い曲はジャンプ系ですが、かといって、Amos Milburnのような怒涛の打楽器プレイでもないです。
 どちらかといえば、ムーン・マリカンやメリル・ムーアらを連想させる、転がるようなヒルビリー・ブギ・ピアノです。
 
 本盤では、あえて黒っぽさを抑え気味にしている気がします。
 それでも、にじみでてくるのは、ジャンプやジャイブ、ウエスタン・スイングなどのブギ曲のテイストです。
 マンブルぽいボーカルが曲に被さってくると、ピアノ系のロカビリアンという感じにも聴こえます。

 全体的には、ざっくりと、おかずの少ない、ライト・テイストのブギウギ・プレイといってしまいましょう。
 
 中には、スラッピングが聴こえる曲がありますが、クレジットが正しければ、本人のプレイということになります。
 また、ギター陣が良い感じで、Rockpileを連想させるバッキング・プレイは、やはり麻薬のような魅力があります。

 そして、トラック7の"Glory Bound"は、Albert Leeのライヴ盤でやっていた曲です。
 歌詞の中に、グローリーとか、ハレルヤとか出てくるのが特徴で、セイクレッド・ソングなんでしょうか。

 アルバムの終盤の2曲では、ポップ・カントリー調のミディアム・リズムの曲もやっていて、よい感じです。
 とりわけ、ラストの曲は、黒人シンガーがやれば、アーリー・ソウル風に聞こえそうな良曲です。

 本盤は、Gavin Poveyが、自身の資質のうち、あえてカントリー、ロカビリー・サイドのそれを前面に打ち出そうとしたアルバムだと感じました。
 それでも、ときおり顔をのぞかせ、滲み出てしまう、ほのかなR&Bテイストが、私にはたまりません。



Looks Like Love by Gavin Povey


これは、ギターがメインの曲ですね



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超絶速弾き男 実はこんな人

Shakin' Stevens
終わりだなんて言わないで

Augie Meyers
オーギーに首ったけ



テックス・マニアのうたげ


 今回は、Los Texmaniacsの最新作をご紹介します。
 Los Texmaniacsは、Tejas Brothersや、イーストL.A.のLos Fabulocosとともに、私が注目しているTex-Mexバンドです。

 本盤は、彼らの初のライヴ盤になります。
 録音時期は、クレジットがなく不明ですが、09年リリースの前作の収録曲を含む内容になっています。 


Live In Texas
Los Texmaniacs

1. Lucerito  
2. Lollypop Polka  
3. A Mover El Bote (Matias Munoz)
4. Rain, Rain (Huey P.Meaux)
5. Por Una Mujer Casada
6. El Pajualazo
7. Stranded (fea, Willie J. Blues)
8. Viva Seguin
9. Cuando Me Dejes De Amar
10. Que Bonita Chaparrita (Henry Gomez)
11. Sacate Los Piojos Chencha
12. Escaleras De La Carcel
13. Cancion Mixteca
14. Dame Tu Amor Baby (Studio Version)
15. Que Suerte La Mia (Studio Version)

 本盤は、テキサスのローズデイル公園でのライヴとなっていて、野外公演の収録なんでしょうか。
 トラック13までがそのライヴ音源です。
 加えて、2曲のスタジオ録音がボートラとして追加されています。

 収録曲のうち、過去作にスタジオ・テイクがあるものは、以下のとおりです。

1stアルバム "A Tex-Mex Groove" : 04年
チョイスなし

2ndアルバム "About Time" : 07年
4. Rain, Rain
9. Cuando Me Dejes De Amar
10. Que Bonita Chaparrita

3rdアルバム "Border Y Bailes" : 09年
1. Lucerito 
2. Lollypop Polka
3. A Mover El Bote

 ここで、Los Texmaniacsについて、おさらいしておきましょう。
 中心人物はMax Bacaという人で、バンドは、彼の弾くバホ・セスト(12弦ギター)とアコーディオン奏者とのデュオという、伝統的なコンフント・スタイルをベースにしたバンドだと思います。

 出身は、おそらくサン・アントニオだと思われますが、活動拠点はオースティンかも知れません。
 また、イーストL.A.のチカーノ・バンドとも交流があるか、もしくはウエストコーストで活動期間があるバンドではないかとも推察します。

 04年リリースの1stアルバムの頃は、バホ・セスト、アコーディオン、ベースというトリオ編成で、正式メンバーとしてはドラムレスのバンドでした。
 この時、Max Bacaの相棒としてアコを弾いたのが、様々なTex-Mex系バンドでセッションしている、Michael Guerraという人です。

 Michael Guerraは、Shawn SahmのTex-Mex Experienceに参加していた人で、あのバンドはどうなったんでしょう?
 Shawn Sahmが、新生Texas Tornadosを組んだ時点で自然消滅したのかな。
 Shawnとは交流が深いようで、Michaelは、そのTexas Tornadosの復活作へも参加したほか、少し以前のShawnのソロ作では、Max Bacaとともににクレジットされていました。

 その他、初期のLos Lobosを彷彿させる、Los Lonely Boysのアルバムへの参加をはじめ、Augie Meyersのソロ作、Krayolas(Tex-Mex Beatles !)のアルバム、Raul Malo(Mavericksのリード・シンガー)のソロ作など、色々とお呼びがかかっている人気者です。
 ただ、ツアーよりもスタジオを選んだのでしょうか、彼は1stのみでバンドを離れます。

 1stの"A Tex-Mex Groove"は、Los Lobos勢のバックアップのほか、Augie Meyers(key)、Sawn Sahm(g)、Ruben Ramos(vo)らが協力していて、華々しいデビューという感じです。 
 "She's About A Mover"のカバーをやっていて、それが、私がこのバンドに興味を持ったきっかけでした。

 2ndの"About Time"は、私が最初に入手したアルバムです。
 1stの路線を正統進化させたもので、伝統的音楽からの影響とポップなロックンロールのスタイルを融合させた素晴らしい作品で、やはりLos Lobos勢やAugie Meyersがゲスト参加しています。

 そして、このアルバムから、アコーディオンがDavid Fariasにチェンジし、現在まで続くツー・トップ体制が確立します。
 また、ドラムスが正式にに加入しました。

 対して、3rdアルバムの"Border Y Bailes"は、完全に伝統音楽の探求へとシフトしたコンセプト・アルバムになっています。
 アカデミックな性格を打ち出したもので、メキシカン・アメリカンのルーツに根差した、ポルカ、クンビア、ランチェラ、ボレロなどの伝統音楽のショーケースになっています。



 スペイン語中心のアルバムなので、前2作と比較するととっつきやすさは後退しています。
 バンドは、このアルバムでグラミーを受賞しました。
 そして、このときからベーシストが交代し、現在の編成になります。
 以下のとおりです。

Max Baca : bajo sexto, vocals
David Farias : Accordion, vocals
Oscar Garcia : bass, vocals
Lorenzo Martinez : drums

 本盤のセット・リストは、2ndと3rdからの選曲と、新たなレパートリーで構成されています。
 ここでの伝統曲は、あくまで皆が踊って集えるチューンとして、ポップな英語曲となんの違和感もなく溶け合っています。

 フォーク・ダンス曲のような"Viva Seguin"も、Doug Sahm盤、Freddy Fender盤が有名なスワンプ・バラードの"Rains Came"(本盤では"Rain Rain"と表記)も、流れるように展開して、耳に心地いいです。

 ざっくりいって、このバンドは、やはりバホ・セストとアコーディオンのデュオを核とした、ごきげんなダンス・バンドです。

 さらに言えば、テックス・メックスの王道を行く、豊かな音楽性を持ったポップ・バンドだと言いたいです。



Que Bonita Chaparrita by Los Texmaniacs




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