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2014年10月30日

空中庭園

本日ご紹介するのは、こちら

角田光代著『空中庭園
空中庭園.jpg


何と言いますか、最初は、ちょっと、何だか変わっているけれども
羨ましいな、なんて個人的に思ってしまったほど
一見とっても仲が良い家族。
その、家族それぞれ一人一人の視点が切り替わりながら、
章が変わっていく形式の小説です。
セントーバッターは娘のマナちゃん。

お母さんの決めたルール
隠し事は絶対にしないこと!

家族のだれかの誕生日には必ず誕生パーティ
勿論、娘の彼氏が誰かは家族皆が知っているし
なんとお母さん、娘に私はどこで生まれたの?と聞かれて
躊躇無く、ラブホテル野猿ってとこ、なんて答えてしまうくらい
徹底して「隠しごとはなし」(いや、本当に変わってるなとは思いました苦笑

お父さんと、お母さんは元ヤンで、結婚してヤンキーやめて
今の生活があるんだよねーなんて、娘が言って
あー、なるほど…この異様なテンションはそれで…???
と、微妙に納得したりしなかったりするのですが

しかし…

視点が父親に切り替わって、読者はぞっとします。
あるわあるわ、隠しごと。父親もあるし、母親もあるある……
父親もどうしようもないダメ男だけれども、
しかし母親のことを思うと同情したりしなかったり
いや、阿呆であることに変わりはないんだけれども…

そして、章は表題「空中庭園」お母さん視点です
確かに、この小説、一番の中心はなんだかんだ、
お母さんな気がするんですね
彼女が抱えている秘密と闇と……
非常に複雑で、深刻で、どうしようもない
それを押し隠して、幸せな主婦をヒステリックに演じる彼女は
見ていて気の毒なような、苛々するような、でも、やはり気の毒
そんな過去があったのか、と読者が思ったところで
視点がまたまた切り替わり、
今度は先程お母さんがボロクソにけなしていた
人物の視点に移り、またまたそれまで
知らされていなかったことが明るみに出て…

この小説のすごいところは
視点が切り替わる、章が変わるたび
それぞれの人物像ががらっと
変わっていくところだと思います

そしてもう何が真実なのか、何が秘密なのか
自分であいつは知らないけれども…と語っていても
実はその秘密はばればれだったりだとか

人間関係と、それぞれの持つ事情が闇でかつ複雑
最初は、少しここの登場人物と世界が違い過ぎてどうも共感もできず
飽きちゃうんじゃないかな、なんて思っていたのですが
気づけばすっかり引き込まれてしまいました笑

なんだか少しぞわぞわと怖いお話ではありますが
如何でしょうか?






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星座のはなし


さてさて、本日ご紹介するのはこちら

野尻抱影著『星座のはなし
星座のはなし.jpg

最近、寒くなってきて
そろそろ星も綺麗に見えるんじゃ
ないかしら、ということで選びました

簡単に言うと、
星座説明書、です

目次には、春の星座からはじまって
星座の名前がびっしり
ふたご座、しし座、おとめ座など
誰もが知る星座から、

からす座、かみのけ座、こいぬ座
のように、ちょっとマイナー?
と思われる星座まで

天体図ものっていますし
子午線経過がいつなのかも
書いてあります、

が!

この本の魅力は
星座を、神話から知ってもらおう!
というコンセプトです

著者が語るように、
黄金時代のギリシャが
大成した星座神話を

たっくさん収録してあります

先程述べた星座も勿論。

有名で聞いたことが
あるな、という神話から、
そんな話があったのか!と
いうような話まで

ギリシャ神話の世界を
少し、覗きながら
星座への思いをはせる
ことが出来ます。

ヘーラクレースのように
誰もがしる神様もいれば
私は全然知らなかった!
(寡黙なせいでもありますが
という神様もたくさん出てきて

それこそ、星座を人と
見る機会があれば
話のタネにもなりそうな。

最後は太陽系の神話で
締められています

ここにのってある星座が
全てちょっと外へ出てみて
見えるかどうかは
別として、

星と星を結んで
形をつくり
さらにそこに物語まで
付け加えてしまった
古代の人々の
想像力の豊かさに
酔いしれる、
それだけでも
十分楽しいではありませんか

綺麗な満点の星空を
見たくなる

そんな作品です






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2014年10月29日

本日ご紹介するのは、こちら

幸田文著『
木.jpg

幸田文さんによる、
草木花に関するエッセイ集です

彼女の豊かな感性から
草木を慈しみ
花を愛でること
が語られていて

本当に、彼女の優しさや
感性に、感心するばかり

言葉も美しい…

これぞ、日本の女性による
美しき文章です

しかし、幸田さんはなかなか
積極的で、アクティブです

かなりご高齢ではあるものの
縄文杉を見たい一心で
ついには人におぶわれて
見に行ってしまったり

職人さんに苦笑されながらも
材木になりえない
木を自分で確かめなければ
材木になりえないだなんて
信じられぬと
無理に加工してもらったり

「木」に対する彼女の
執着もよくよく現れています

そんな彼女の草木を
いつくしむ心を養ったのは
どうやら、父親である
幸田露半さんのようで、

彼がちらっと語られるところも
あるのですが、私は
それらのエピソードが好きです

例えば、
文さんの幼い娘さんが
高い胡蝶蘭を欲しがって
文さんは一笑にふして
安い他の鉢を買い与えるのですが
露半さんが、それを聞いて
文さんのことを
叱るのですね
孫の感性を大事にしろ!と。
一番高い胡蝶蘭を欲しがるなんて
この子は、見る目があるのに
その芽をお前がつんで
どうする!と。

なるほど、このような
お父様に育てられればこそ
彼女の鋭い観察眼と、
草木に向けた愛情とが
備わるのでしょうか…

この感覚も、何て
豊かなのかと、憧れます

今や、町の中で緑を
見かけることさえ少なくなり
ましたが、

このエッセイを読んだ後だと
思わずいつもみている
木々をまじまじと見てみたくなりますし
花をいつも以上に綺麗と
褒めたくなります

美しく整った日本語で
このような感性を伝えてくれた
ことに、感謝です






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posted by at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 幸田文

2014年10月28日

各書名言集(pert6)

さてさて、昨日に引き続きまして…
どんどん消化…していく所存です。

是非、ピンとくる文章を見つけてみて下さいね


嶽神
がくじん.png
―「違うぞ多十」蓮が起き出してきた。
「多十の仇は、私らにも仇なのじゃ。ここまで一緒に戦うて来たのに、
水くさいぞ。のう、サカキ」―

サカキは、元々は敵の人間でしたが……苦笑
多十の、その人柄は、仲間だけでなく、敵まで心底惚れさせてしまう…
とにかく、ヒーローなんです、それなのに、見ていて気持ちのいい
わざとらしいだとか、偽善っぽさを感じさせないのが、著者様の筆力だと思います!


紹介記事はこちら


パラレルワールド・ラブストーリー
parareruwa-rudorabu.png
―俺は心から喜んでいた。ようやく彼が真の幸せを感じられる時が来たのかもしれない
とさえ思った。そんなふうに思うのも、彼のことを一番よく知っているのは自分だという
自負があるからだった―

少し、体に障害のある大親友、彼にやっとできた恋人。それを上のように
喜んでいた崇史はしかし、その恋人を見て、絶句する…
そうして崇史は、自分の黒い部分に気づきながらも、その黒い部分の暴走を止められず
物語はどんどん、悲劇性を増しながら展開していきます


紹介記事はこちら

荒野にネコは生きぬいて
荒野にネコは.png
―どんなところであろうと、人間といっしょに暮らすのは、しばらくの間にすぎないのだ、苦い経験から
ネコはわかっていたのだ―

人間を信じてやまなかったネコが、ここまで人間を信じられなくなり
過酷なムアから離れられなくなるということ……
このネコを飼った人たちの、一人でも最後まで責任を持って
育ててくれたなら…

紹介記事はこちら


だんだん、各書名言集につけるコメントが
長くなってきましたね汗
本当に、文章を書くとすぐに
長くなる癖があって困ります……

引用箇所から、少しでも作品の雰囲気を
感じ取り、興味を持って頂ければ
幸いです……

ではでは、本日も寒くなりそうです
お気を付けて
posted by at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 名言

一千一秒物語

さてさて、本日ご紹介するのは
こちら……

稲垣足穂著
一千一秒物語
一千一秒物語.jpg

短編集になっています
収録されているのは、
『黄漠奇聞』『チョコレット』『天体嗜好症』
『星を売る店』『弥勒』『彼等』『美のはかなさ』
『A感覚とV感覚』

とにかくですね、
前半の小説たちがですね!

もう、素晴らしいんです!

全体に流れるファンタジーで
メルヘンチックな、
しかしどこかブラックな雰囲気

酔えます

『弥勒』だけ、少し違いますが
他の4篇では、
お月様や、お星さまが
主役で、この短編集に対する
私のイメージは、そんな
動いて、しゃべって、怒って、光って
人を魅了し、圧倒する
そんな、お月様やお星さま

とにかく、この短編集を読んだ後は
夜、散歩をしたくてうずうず
するようになると思いますよ

『黄漠奇聞』は一番万人受けしそうなお話
ではないかと、個人的に思います

とある王様が、旗印の新月が
本物の三日月に劣ることに気づいてから
狂ったように、本物の月以上の
月をつくりたい、と人々を
巻き込んだ挙句……

王様の愚かしさが、際立ちますが
王様を月が狂わしてしまうのも
何だか、分かる気がしてしまいます

『星を売る店』や『チョコレット』
はどこまでも幻想的なお話です
映像的にも非常に美しい
特に『星を売る店』をはじめて
読んだときには、本当に
その美しさ、というよりも綺麗さ、に
とにかく嬉しくなった覚えがあります
いつか、私も星を売る店に行ってみたい
そう思わずにはいられないくらい
素敵なお話です

そしてそして表題『一千一秒物語』
こちらが、また
何ともいえない中毒性を持った
ショートショートの集まりです

「一千一秒物語」の中では
何だか新鮮なくらい乱暴なお月様がいたり
(私はこのちょっとこわいお月様が好きです
さらっと、ありえないことが起きたり
何が何だか分からないままお話が
終わってしまったり

よく分からないのに、
ページをめくる指は止まらない止まらない

雰囲気を掴んでもらうために
すこうし、引用しますね

―黒猫のしっぽを切った話
ある晩 黒猫をつかまえて鋏でしっぽを切るとパチン!
と黄色い煙になってしまった 頭の上でキャッ!という声がした 
窓をあけると、尾のないホーキ星が逃げて行くのが見えた―


このお話は、おそらく一番短いレベルですが
しかし、これくらいの本当に短い文章が
次から次へと、読者の前に現れるんです
このお話は、すごくお洒落な感じですが

お星さまをとったことに怒ったお月様に殴られた

なんて、ハチャメチャなお話も。

ありえないお話であり
起承転結もなにも、ぱっと出て
ぽっと終わってしまう
訳が分からない、
本当ならば理解出来ないお話

なのに、どうしてこんなに
中毒性があるんだか…笑

万人受け、はしないかも……
と思わないでもないですが
一読してみる価値あり、ですよ!





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少し追加…お詫び
posted by at 07:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 稲垣足穂

2014年10月27日

各書名言集(小説pert5)

すみません……
すっかりサボってしまいました
久しぶりに、各書名言集いってみます

獣の奏者T闘蛇編
獣.png
―この世に生きるものが、なぜ、このように在るのかを、知りたいのです―

エリンが、なぜ獣の医術師になりたいか問われた時の、答え。
彼女のこの知的好奇心が、
彼女自身の道を切り開くのであり、人生のすすむ方向を決めているといっても過言ではありません。


獣の奏者U王獣編
獣の王.png
―トッチは気のいい雌馬だ、おまえにも、おれにも馴れている。家族みたいなものだ。だが、たとえば、スズメ蜂に刺されて、その痛みで動転したりすれば、暴れた表紙に、一撃でおまえを蹴り殺してしまうかもしれんのだ。人であれば、スズメ蜂に刺されて動転したって、仲のよう子どもを蹴り殺したりはしないが、馬には、そういう配慮はないんだぞ―
王獣であるリランと、心を通わせられた!とエリンが喜んだも束の間起きたある事件
エリンは、人間と獣との間にある隔絶を痛感し、昔育ててくれた蜂飼いのおじさんの言葉を思い出します
彼女は、この隔絶を、どうしていくのか。彼女がこの事件で大きな挫折を味わってから
さらに物語は、面白くなっていきます


紹介記事はこちら
(しれっと、かなり昔紹介した気がするような作品を
のせてしまってすみません…まだ続きます


アルジャーノンに花束を
アルジャーノン.png
―いいわ。知りたいのね? あなたは前とは違ってしまった。あなたのIQのことを
言ってるんじゃないの。他人に対するあなたの態度よ……自分は同じ人種じゃないとでも……―

幼児の知能から、超知能へ…
その変貌はチャーリイに何を与え、そして…何を奪ったのか……
IQ,知能、そのようなものについて、もう一度よく考えたくなります


紹介記事はこちら


失はれる物語
失はれる物語.png
―普通の人と同様に、幸福な世界で生きていけるんじゃないかと、勘違いしていたようだ―

これは、迷いますね…まずどの作品から、で迷いましたが、何と言いますか、このセリフを吐くような
キャラクターが、個人的なthe乙一キャラクターなんですね
ホラー苦手で乙一さんのホラーに手を付けていないのでかなり偏重しているとは思うのですが
このセリフは「しあわせは子猫のかたち」という作品中の、主人公のセリフです
こういう、ちょっと、この世界で生きるのが生きずらいな、と感じているキャラクターを描かせると
本当に、嘘っぽさがないというか、生身の人間らしいというか、乙一さんはうまいと思います


紹介記事はこちら



さてさて、一端終わろうかと思います
いつもいつも、こう、いろいろだらしがなくてすみません
こんな管理者ですが、訪問して下さって
さらに最後まで読んでくださって、ありがとうございます…

それにしても、最近本当に肌寒くなってきましたね
風邪などおひきにならぬよう…
ではでは。
posted by at 08:50| Comment(34) | TrackBack(0) | 名言

2014年10月25日

中江藤樹

本日ご紹介するのは、こちら

竜門冬二著『中江藤樹
中江藤樹.png


内容は、見ての通り
中江藤樹の一生です

中江藤樹、どうでしょうか
高校の倫理を選択した方なら
覚えてらっしゃいますでしょうか?

近江聖人と称えられた
陽明学者で
有名な著作は『翁問答』
センター等での
キーワードは「孝行」「良知」等…
でしたっけ……?笑

しかし、あまり深くは
習わなかったのでは
ないでしょうか
(私の高校では、そうでした苦笑

さて、そんな、
有名だけれども、
超、がつく程ではない
そんな彼の一生

まず、陽明学者ということで
藤樹さんの、考え方が
分かるかどうか、
これが非常に重要になって
くるのですが

竜門さんは、これを非常に
巧みに、描いていらっしゃいます

だから、読める。
逆に言うと、元々が
とっても難しいことを考えて
いる方のお話なんだから、
分かりにくかったら
多分、挫折しちゃうと思います

しかし、この本は
上・下と、あっという間です

おそらく、授業で聞いた覚えが
あまりない、のですが…
(とはいえ記憶が古いため
自信がないのですが
この小説の中では
「処士」というのが
一つのキーワードになります

藤樹は、幼い時に、
祖父に連れられ、父母の元を
離れることになってしまうのですが

その前に、父が
藤樹に、「処士」について語ります

藤樹は「処士」が何なのか、
考えて生きていくことに
なっているのではないでしょうか

そうして、あまりに生真面目すぎて
敵を作っていた若年期を経て

どのように、「聖人」と
呼ばれるに至ったのか

彼の思想は、何度も
洗練されていき

それに伴い
彼自身も熟成していく

やがて、弟子を持つようになる

そうそう、熊沢藩山も
ちゃーんと、出てきますよ!

確かに、藤樹さんが
講義をしたりする場面では、
言葉はかなり小難しいのですが
しかし、面白い

なぜ、「面白い」と
感じれるか

それは、やはり著者の筆力と
それまでの物語を経て
読者が藤樹さんの
それまでの経験を
知っているからこそでしょう

この小説を読むと、あの
ちょろっと触っただけの
倫理の知識というのは、何というか
勿体ないなぁ、と思います

その人の一生を知り、
そこから、彼の思想に
ちょっとでも触れる……

と、いうのも、たまには
やってみても、いいじゃないですか
身を引きがちな
哲学思想に対する敬遠感が
和らぐきっかけにも
なるでしょう……

と、何だか小生意気なことを
言ってしまいましたが
正直なところ、普通に
面白いんです、
この方の歴史小説。笑

あまり、かたく考えず
文句なしに
面白い歴史小説!

という気持ちで読んでみて下さい。
(結局そこに落ち着くんかい






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posted by at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 竜門冬二

2014年10月24日

帰らざる夏

本日ご紹介するのは、こちら

加賀乙彦著『帰らざる夏
帰らざる夏.png

大長編です。とっても
ぶあつーい、文庫本

普段あまり読書は…
という方には少しハードルが高いかも
しれませんが
(長いし、文体も昔風というか
今の私達が読んで、読みやすい!
というものではないと思うので、おそらく

読書好きな方には
是非一度、読んでみて下さいと
お勧めしたく思います

個人的な話になりますが
私が加賀乙彦の全集を全て読んで
面白いというか考えさせられるなぁと
この作品へ至りました
良かったら、全集も読んでみて下さい

さて、こちらの作品
時代は太平洋戦争真っ只中
主人公省治が、がばっと
跳ね起きるところから

彼の回想へと話がうつります

幼い省治は、
ごくごく、普通の少年…

そんな少年が、
100人に1人の難関である
エリート将校を養成する
陸軍幼年学校
を受験し、見事、合格する

この受験勉強の様子もなかなか
今も、すごい大変なところを受ける子は
そうなんでしょうが
何だかもう、、、
勉強も塾の厳しい先生のもと
文字通り死にもの狂いという
漢字ですし
試験に通っても
身体検査?があるしで
とにかく凄まじい

しかし、本当に凄まじいのは
入学してから後。

あの時代の、陸軍を養成する学校
なのですから、勿論
最終的に、
「天皇のために死ぬこと」
これを、みっちり
もう、そんな言葉では
生半可なくらい、
とにかく、教え込まれる
体に叩き込まれていく

中の規則というのが
これまたかなり、狂気じみている
と、戦争を知らない世代の
私は思ったりするのですが
その狂気じみている、のが
当たり前、なんですね

ごく普通の少年省治、
最初は、その規則を破ったり
(当時で言うと
天皇を敬わないことをしたり
いろいろ、していて
こちらの方が、とても
親近感がわきます

しかし、先生、そしてそれ以上に
もうすでに洗脳されつくした
先輩方からの叱咤激励の元
どんどん洗脳されていく

この言葉でいいのか分からないのですが
私は、本当にそう思いました
真っ白の幼い省治は
見事に、染められていく

多分、彼は真面目だったんだと
思うんです・・・

同じ学校にいながら
何だか最後まで染まり切らない
(省治から見たら、天皇を
敬わない気に食わない)子や

父親の死を機に
考えを改める友人も
いるんですが

省治は、抜け出せない
「絶対に正しい」
と一度信じたが最後
もう、引き戻せない

この、恐ろしさです。

私達世代が、学校の
教科書なんかで読む
戦争文学は
基本的に
「一般庶民」が主人公です
戦争が嫌だなぁ、とか
死にたくない、死なせたくない
という、私達が共感できる人々

そんな文学の中で
軍人さんというのは、
悪く、描かれがちです
平気で人に
天皇のために死ね!
と言える、それが分からない
分からなかったのですが

彼らが本気だったということを
身に染みて実感してしまい
かなり、衝撃を受けたものです

玉音放送……
戦争が終わったと知り
ほんの一瞬、「安堵」を
感じた、そのくせ
戦争が終わるだなんてことを
信じることが出来ない
省治の哀れさ

彼だって、本当の本当は
生きたいと思っていただろうに
そのことを彼自身が認めない
一体、どのような心中だったのか…

その一方で
玉音放送の直後
洗脳された子どもを
せせら笑って
態度を急変させる
洗脳されなかった子ども達と
そんな子どもをつくりだした
張本人であるはずの
年増の教師たち
(若い教師は、この後
最後まで抵抗する側に回ります
彼も、完全に洗脳されきった
大人だったのでしょう)

玉音放送後の学校の様子は
悲惨です。
それまでの、規則がすべて
当たり前のように覆される
順応できる子どもだけが
精神的に安定している
しかし、それまで必死で
頑張って、それまで褒められていた
そんな子どもに限って
馬鹿にされてしまう

本気で天皇のために
死のうという考えを
戦争が終わればすっぱり
捨てれてしまう大人が、

その思想を捨てることが出来ず
辛い、悔しい、混乱
様々な感情に苦しむ
子どもをつくりだせる、という事実は
怖ろしい

そんな大人が、また
省治を、ばかにしているのが
悔しくて、つらくて、腹が立って…
でも、実際にあったんでしょうね
同じようなことが

それまで、省治に
そんなこと、一言も言わなかった
母親や父親が
これから、生きれるぞ
良かったな、と声をかけ
それに省治が混乱するのも
本当に、痛ましい

戦争中に、その言葉を
お前だけに言うからな、と
かけてあげる勇気が
母親、父親にあったならば
何か変わったのだろうか……

そして、省治は結局
若年16歳にして、
自ら命を絶ってしまう

16歳ですよ。
ほんの少年です
いくら鍛えた体でも
まだまだ、青年にもなっていない
心も、体も、まだまだ
少年ではないでしょうか
それは、現代の感覚だから
かもしれませんが…

それにしたって
まだまだ若い、若すぎる

決して楽しい話ではありませんが
おそろしくって、
目をそらしたくなるけれども
逸らせない
逸らしちゃいけないと
感じました

省治と違って
戦争後生きた、軍人の卵
だった少年の話などが
全集にはかなりの数
見られました。

彼らも、痛ましい…
戦争が終わってなお
あの思想を捨てきれない
の、ですがこれ以上の
言及は避けましょう

省治の、文字通り
『帰らざる夏』

重いとは思いますが
一度、読んでみて欲しい
そう思います






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2014年10月23日

ジェノサイド

本日ご紹介するのは、こちら

高野和明著『ジェノサイド
ジェノサイド.png

とにかく、最初から最後まで手に汗握り、
展開が読めなくて、ぐいぐいと人を引き込む力の
ものすごい作品です。

お話は最初から、謎だらけ
大学院生の研人のもとに、死んだ父からのメール…
その内容は、かなり意味不明で、しかも、秘密めいていて
誰にも知られるな、という警告つき
混乱しながらも、父親の遺したメッセージを解きながら
指示通りに従っているうちに、
知らない人間から、これまた不穏な連絡が入って……
もう、大丈夫!? 大丈夫!? とひやひや。

それに並行して、また全く別の場所で、
傭兵・イエーガーは取引を持ちかけられます
結局彼は、不治の病に苦しむ我が子のためにそれを
引き受けるのですが、明らかに命が危ない…と思わせるその任務
命にかかわるほど危険なこと以外は全く内容の分からないその任務の
目的は何なのか?こちらもひやひや
そうして、現れる、その「目的」
それは、人知を超えたものであって……
イエーガー達は死闘を繰り広げながら、その任務を
遂行しようとするのですが、
実際に紛争の真っ只中、イエーガー達の命を狙うものだらけの
土地から、無事に抜け出せるのか…!?

そうして。研人とイエーガーは、意外なところでつながって…

勿論フィクションなのですが、近くか遠くかの未来で本当にあるんじゃ
ないか、だとかいろいろ考えさせられるほどに
物語が細かく生々しく、真に迫ってきます
実際に、現実であるところも、あるのでしょう…
私が知らないだけで…恐ろしい
最後の最後まで心臓に悪く、読了後もぞくぞくとします

本当に面白くて、お勧めできる作品なのですが
かなりリアルな戦闘描写や、紛争、虐殺、児童兵、なども
描き出されている場面が多く
物理的にも、精神的にも、結構くるものがある作品でもあります
(簡単に言ってしまえばかなり、「グロイ」作品でもあります

そういうものが、苦手、という方は、御控えした方が
よいかもしれません…
そういえば私も読んでからしばらくは、この作品中のいろいろな場面が
頭をちらついてびくびくというか、何というか、していました苦笑
私自身はなかなかのビビりなので笑

それでも読んでよかった!と思える
長編大傑作、是非是非。




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2014年10月22日

荒野にネコは生きぬいて


本日は久しぶりに2冊目です

荒野にネコは生きぬいて
荒野にネコは.png

児童書になります。
確かに、子どもに是非読んでほしい、と
思う作品であり

また、別に子どもでなくったて
読んだらいろいろと
感じるものがあると思います

ちなみに、
第25回少年読書感想文全国コンクール
の課題図書でもあります。
かなり昔ですが…苦笑

お話は、
無邪気でまだ毛玉のような
子ネコが、
ぽいっと車から投げ出される
ところから始まります

失敬な!
と一瞬憤慨した子ネコは
しかし、遊びと勘違いして
去っていく車を戯れに
追いかけた後、
草の上で寝っころがって
自分を可愛がってくれた
おくさんが、
迎えにきてくれるのを
待ちます…

しかし、おくさんは来なかった。

自分で狩りもしたことのないネコが
荒野、ダートムアで生きることを
突然強いられてしまう

人間を信じ切っていたネコが
一度裏切られ、
それから幾度がひどい仕打ちをうけ

少しずつ、人間に心を閉ざしていく様が
(人間である私がこんなのを
思うのもお門違いなんですが)
何とも、哀しい

しかし、一方で、ネコに優しい
人間もやはりいて
そのような人間に心を開きながらも
結局ネコが、傷つくのを
恐れるかのように
ムアへ戻ってしまうのも、
何とも……

想像を絶するような過酷な環境で
本来、元々おくさんが
捨てさえしなければ
絶対に経験しなくてよかったような
辛い思いをたくさんしながら
ネコは生きていく

読んでいると、
ネコが心の奥底で、
人間を嫌いになりきれていない
ような、そんなところが見え隠れして
そのくせ、人間を信じ切れず
虚しい思いを抱いたまま
ムアから離れられないというのが

解説文にもあるように
まさしく、忍苦の一生

そんなネコが、
最終的に人間との、
どのような関係を選び
そしてどのような最期を
遂げるのか

ネコに次々と襲い掛かる不幸
人間の身勝手さに
胸が痛くなりますが
しかし、名作だと思います

児童文学と侮らず
是非是非。






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