2014年10月24日
帰らざる夏
本日ご紹介するのは、こちら
加賀乙彦著『帰らざる夏』
大長編です。とっても
ぶあつーい、文庫本
普段あまり読書は…
という方には少しハードルが高いかも
しれませんが
(長いし、文体も昔風というか
今の私達が読んで、読みやすい!
というものではないと思うので、おそらく
読書好きな方には
是非一度、読んでみて下さいと
お勧めしたく思います
個人的な話になりますが
私が加賀乙彦の全集を全て読んで
面白いというか考えさせられるなぁと
この作品へ至りました
良かったら、全集も読んでみて下さい
さて、こちらの作品
時代は太平洋戦争真っ只中
主人公省治が、がばっと
跳ね起きるところから
彼の回想へと話がうつります
幼い省治は、
ごくごく、普通の少年…
そんな少年が、
100人に1人の難関である
エリート将校を養成する
陸軍幼年学校
を受験し、見事、合格する
この受験勉強の様子もなかなか
今も、すごい大変なところを受ける子は
そうなんでしょうが
何だかもう、、、
勉強も塾の厳しい先生のもと
文字通り死にもの狂いという
漢字ですし
試験に通っても
身体検査?があるしで
とにかく凄まじい
しかし、本当に凄まじいのは
入学してから後。
あの時代の、陸軍を養成する学校
なのですから、勿論
最終的に、
「天皇のために死ぬこと」
これを、みっちり
もう、そんな言葉では
生半可なくらい、
とにかく、教え込まれる
体に叩き込まれていく
中の規則というのが
これまたかなり、狂気じみている
と、戦争を知らない世代の
私は思ったりするのですが
その狂気じみている、のが
当たり前、なんですね
ごく普通の少年省治、
最初は、その規則を破ったり
(当時で言うと
天皇を敬わないことをしたり
いろいろ、していて
こちらの方が、とても
親近感がわきます
しかし、先生、そしてそれ以上に
もうすでに洗脳されつくした
先輩方からの叱咤激励の元
どんどん洗脳されていく
この言葉でいいのか分からないのですが
私は、本当にそう思いました
真っ白の幼い省治は
見事に、染められていく
多分、彼は真面目だったんだと
思うんです・・・
同じ学校にいながら
何だか最後まで染まり切らない
(省治から見たら、天皇を
敬わない気に食わない)子や
父親の死を機に
考えを改める友人も
いるんですが
省治は、抜け出せない
「絶対に正しい」
と一度信じたが最後
もう、引き戻せない
この、恐ろしさです。
私達世代が、学校の
教科書なんかで読む
戦争文学は
基本的に
「一般庶民」が主人公です
戦争が嫌だなぁ、とか
死にたくない、死なせたくない
という、私達が共感できる人々
そんな文学の中で
軍人さんというのは、
悪く、描かれがちです
平気で人に
天皇のために死ね!
と言える、それが分からない
分からなかったのですが
彼らが本気だったということを
身に染みて実感してしまい
かなり、衝撃を受けたものです
玉音放送……
戦争が終わったと知り
ほんの一瞬、「安堵」を
感じた、そのくせ
戦争が終わるだなんてことを
信じることが出来ない
省治の哀れさ
彼だって、本当の本当は
生きたいと思っていただろうに
そのことを彼自身が認めない
一体、どのような心中だったのか…
その一方で
玉音放送の直後
洗脳された子どもを
せせら笑って
態度を急変させる
洗脳されなかった子ども達と
そんな子どもをつくりだした
張本人であるはずの
年増の教師たち
(若い教師は、この後
最後まで抵抗する側に回ります
彼も、完全に洗脳されきった
大人だったのでしょう)
玉音放送後の学校の様子は
悲惨です。
それまでの、規則がすべて
当たり前のように覆される
順応できる子どもだけが
精神的に安定している
しかし、それまで必死で
頑張って、それまで褒められていた
そんな子どもに限って
馬鹿にされてしまう
本気で天皇のために
死のうという考えを
戦争が終わればすっぱり
捨てれてしまう大人が、
その思想を捨てることが出来ず
辛い、悔しい、混乱
様々な感情に苦しむ
子どもをつくりだせる、という事実は
怖ろしい
そんな大人が、また
省治を、ばかにしているのが
悔しくて、つらくて、腹が立って…
でも、実際にあったんでしょうね
同じようなことが
それまで、省治に
そんなこと、一言も言わなかった
母親や父親が
これから、生きれるぞ
良かったな、と声をかけ
それに省治が混乱するのも
本当に、痛ましい
戦争中に、その言葉を
お前だけに言うからな、と
かけてあげる勇気が
母親、父親にあったならば
何か変わったのだろうか……
そして、省治は結局
若年16歳にして、
自ら命を絶ってしまう
16歳ですよ。
ほんの少年です
いくら鍛えた体でも
まだまだ、青年にもなっていない
心も、体も、まだまだ
少年ではないでしょうか
それは、現代の感覚だから
かもしれませんが…
それにしたって
まだまだ若い、若すぎる
決して楽しい話ではありませんが
おそろしくって、
目をそらしたくなるけれども
逸らせない
逸らしちゃいけないと
感じました
省治と違って
戦争後生きた、軍人の卵
だった少年の話などが
全集にはかなりの数
見られました。
彼らも、痛ましい…
戦争が終わってなお
あの思想を捨てきれない
の、ですがこれ以上の
言及は避けましょう
省治の、文字通り
『帰らざる夏』
重いとは思いますが
一度、読んでみて欲しい
そう思います
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加賀乙彦著『帰らざる夏』
大長編です。とっても
ぶあつーい、文庫本
普段あまり読書は…
という方には少しハードルが高いかも
しれませんが
(長いし、文体も昔風というか
今の私達が読んで、読みやすい!
というものではないと思うので、おそらく
読書好きな方には
是非一度、読んでみて下さいと
お勧めしたく思います
個人的な話になりますが
私が加賀乙彦の全集を全て読んで
面白いというか考えさせられるなぁと
この作品へ至りました
良かったら、全集も読んでみて下さい
さて、こちらの作品
時代は太平洋戦争真っ只中
主人公省治が、がばっと
跳ね起きるところから
彼の回想へと話がうつります
幼い省治は、
ごくごく、普通の少年…
そんな少年が、
100人に1人の難関である
エリート将校を養成する
陸軍幼年学校
を受験し、見事、合格する
この受験勉強の様子もなかなか
今も、すごい大変なところを受ける子は
そうなんでしょうが
何だかもう、、、
勉強も塾の厳しい先生のもと
文字通り死にもの狂いという
漢字ですし
試験に通っても
身体検査?があるしで
とにかく凄まじい
しかし、本当に凄まじいのは
入学してから後。
あの時代の、陸軍を養成する学校
なのですから、勿論
最終的に、
「天皇のために死ぬこと」
これを、みっちり
もう、そんな言葉では
生半可なくらい、
とにかく、教え込まれる
体に叩き込まれていく
中の規則というのが
これまたかなり、狂気じみている
と、戦争を知らない世代の
私は思ったりするのですが
その狂気じみている、のが
当たり前、なんですね
ごく普通の少年省治、
最初は、その規則を破ったり
(当時で言うと
天皇を敬わないことをしたり
いろいろ、していて
こちらの方が、とても
親近感がわきます
しかし、先生、そしてそれ以上に
もうすでに洗脳されつくした
先輩方からの叱咤激励の元
どんどん洗脳されていく
この言葉でいいのか分からないのですが
私は、本当にそう思いました
真っ白の幼い省治は
見事に、染められていく
多分、彼は真面目だったんだと
思うんです・・・
同じ学校にいながら
何だか最後まで染まり切らない
(省治から見たら、天皇を
敬わない気に食わない)子や
父親の死を機に
考えを改める友人も
いるんですが
省治は、抜け出せない
「絶対に正しい」
と一度信じたが最後
もう、引き戻せない
この、恐ろしさです。
私達世代が、学校の
教科書なんかで読む
戦争文学は
基本的に
「一般庶民」が主人公です
戦争が嫌だなぁ、とか
死にたくない、死なせたくない
という、私達が共感できる人々
そんな文学の中で
軍人さんというのは、
悪く、描かれがちです
平気で人に
天皇のために死ね!
と言える、それが分からない
分からなかったのですが
彼らが本気だったということを
身に染みて実感してしまい
かなり、衝撃を受けたものです
玉音放送……
戦争が終わったと知り
ほんの一瞬、「安堵」を
感じた、そのくせ
戦争が終わるだなんてことを
信じることが出来ない
省治の哀れさ
彼だって、本当の本当は
生きたいと思っていただろうに
そのことを彼自身が認めない
一体、どのような心中だったのか…
その一方で
玉音放送の直後
洗脳された子どもを
せせら笑って
態度を急変させる
洗脳されなかった子ども達と
そんな子どもをつくりだした
張本人であるはずの
年増の教師たち
(若い教師は、この後
最後まで抵抗する側に回ります
彼も、完全に洗脳されきった
大人だったのでしょう)
玉音放送後の学校の様子は
悲惨です。
それまでの、規則がすべて
当たり前のように覆される
順応できる子どもだけが
精神的に安定している
しかし、それまで必死で
頑張って、それまで褒められていた
そんな子どもに限って
馬鹿にされてしまう
本気で天皇のために
死のうという考えを
戦争が終わればすっぱり
捨てれてしまう大人が、
その思想を捨てることが出来ず
辛い、悔しい、混乱
様々な感情に苦しむ
子どもをつくりだせる、という事実は
怖ろしい
そんな大人が、また
省治を、ばかにしているのが
悔しくて、つらくて、腹が立って…
でも、実際にあったんでしょうね
同じようなことが
それまで、省治に
そんなこと、一言も言わなかった
母親や父親が
これから、生きれるぞ
良かったな、と声をかけ
それに省治が混乱するのも
本当に、痛ましい
戦争中に、その言葉を
お前だけに言うからな、と
かけてあげる勇気が
母親、父親にあったならば
何か変わったのだろうか……
そして、省治は結局
若年16歳にして、
自ら命を絶ってしまう
16歳ですよ。
ほんの少年です
いくら鍛えた体でも
まだまだ、青年にもなっていない
心も、体も、まだまだ
少年ではないでしょうか
それは、現代の感覚だから
かもしれませんが…
それにしたって
まだまだ若い、若すぎる
決して楽しい話ではありませんが
おそろしくって、
目をそらしたくなるけれども
逸らせない
逸らしちゃいけないと
感じました
省治と違って
戦争後生きた、軍人の卵
だった少年の話などが
全集にはかなりの数
見られました。
彼らも、痛ましい…
戦争が終わってなお
あの思想を捨てきれない
の、ですがこれ以上の
言及は避けましょう
省治の、文字通り
『帰らざる夏』
重いとは思いますが
一度、読んでみて欲しい
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