つわものどもが夢の跡
徳川幕府の農財政全般、特に治水で名を馳せた伊奈氏の陣屋跡を訪ねました。
<陣屋跡>
荒川沿いの左岸(東側)に位置する場所。さいたま市西区土屋の陣屋跡です。
■現地訪問■
JR指扇駅で下車。現地は駅から南へ1キロ強です。バスという手もありましたが、私は徒歩で向かいました。
<現地近く>
まもなくというところでこの景色。土塁の跡でしょうか?気分が高まる瞬間でしたが、後で調べても、そうだと言い切る情報とは出会えませんでした。まぁ素人の史跡探索なので、勘違い(かもしれない)も含めて楽しみます。
<水堀>
陣屋の前の水堀です。個人の所有で、こういうのを維持するのも大変かと思います。有り難いですね。
<長屋門と築地塀>
さいたま市指定文化財の「永田家長屋門及び築地塀」です。江戸後期創建の長屋門。見事ですね。
<忍び返し>
凝ってますね。ただの飾りではなく、侵入を防ぐ「忍び返し」です。
<説明板>
ちょっと画像では伝わりにくいですが、旧大宮市教育委員会による丁寧な説明がなされています。
以下は転記です
『長屋門の建築規模は桁行き21.1メートル、梁間4.75メートル、棟高6.18メートル、面積100.51平方メートルと市内最大規模を誇ります。門の両端に接しているのが忍び返しの付いた築地塀です。
門扉と潜り戸は堅牢な開き扉で、同性の八双金具や乳房状の饅頭金具が付いています。また、右手には出格子が二つありますが、市内では希有な例です。
長屋門及び築地塀の正確な建築年代は判っておりませんが、凡そ江戸時代の後期と考えられます。
永田家の屋敷地は、江戸時代初期に関東郡代伊奈忠次が陣屋を設置した地で、家臣であった永田氏が拝領しました。長屋門及び築地塀は、周辺の景観によく融合し、かつての陣屋の雰囲気を今に伝えているばかりではなく、木造日本建築の美を併せ持つ貴重な建造物となっています。
平成13年3月 大宮市教育委員会』
伊奈忠次が築き、永田氏が拝領した。そういうことですね。現在も子孫がお住まいとのことです(屋敷跡は永田医院の敷地となっています)。とても貴重な陣屋跡ですが、個人の暮らしの場です。そのあたりを配慮しての見学が望まれますね。
<堀跡>
<屋敷の周辺>
竹林の左手も堀の跡と思われます。
■伊奈忠次の陣屋■いな ただつぐ
伊奈忠次は徳川家康の古くからの家臣。関東代官頭をつとめた忠次は、荒川水系の治水と灌漑のためにこの陣屋を築いたとされています。伊奈忠次の本拠は現在の埼玉県伊奈町でしたので、この地の陣屋は出先機関のような存在だったのでしょう。
さて
その陣屋が、家臣の永田氏に受け継がれたことは間違いないようですが、その時期がどうもはっきりしません。大まかには、伊奈氏の本拠が赤山陣屋(埼玉県川口市)に移った頃とのこと。ちなみに、陣屋を築いた伊奈忠次が亡くなるのは1610年。職を継いだ長男が若くして没するのが1618年。次男だった忠治が代わって関東郡代となりますが、赤山陣屋を築いたのは1629年です。これ以降の話ということでしょうか?
忠次がここ土屋に築いた陣屋と、次男・忠治が築いた赤山陣屋は、物資輸送や人の行き来のために設けられた『赤山街道』で繋がっていました。このことから、赤山陣屋が築かれた後も、この地の陣屋は引き続き伊奈氏の出先機関として役割を担ったと考えるのが無難ですね。そしてしかるべき時に、永田氏に譲られた。その程度の理解で納得しますかね。拝領したのは、家臣としてなのか、地元の名主としてなのか、その辺りも良くわかりません。
ここまでの話は、江戸時代初期の話。これよりかなり後の話になりますが、関東郡代を世襲し続けた伊奈氏も、1792年には諸事情で改易となります。つまり失脚ですね。永田氏が引き続き伊奈氏の家臣だったら、同じくこの陣屋も没収されそうですが、そうはなりませんでした。素人のブログなのでお許し頂きたいのですが、この時には既に伊奈氏と切り離され、独立した存在だったのはないでしょうか。
まぁいずれにしても、このような陣屋を引き継げるのですから、永田氏が名だたる家であったことは間違いありません。そして今でも維持し続けている。凄いことですね。
<つわものどもが夢の跡>
伊奈氏、そして家臣だった永田氏の陣屋跡です。
ともに社会の基盤造りに尽力しました。
--------■ 永田陣屋 ■--------
別 名:伊奈陣屋 土屋陣屋
築城年:(江戸時代初期)
築城者:伊奈忠次
城 主:伊奈氏 永田氏
[さいたま市西区土屋]5番地
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2018年12月10日
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読んで頂きありがとうございます。赤山道は興味深いですね。ただ永田陣屋から赤山陣屋!JRの駅だと指扇から東川口で、更にもうちょっとありますから結構歩きますね!
実は赤山道を永田陣屋から赤山陣屋まで歩こうと目論んでおりまして貴重な情報になりました。実は他の方のブログを覗くくらいで大した準備をしていないのです・笑