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2017年10月14日

三戸城のなごり 南部宗家の夢の跡

つわものどもが夢の跡
北東北の名族・南部一族の城跡を訪ねました。
<三戸城>さんのへじょう
SN sannohejo.jpg
陸奥北部に勢力を誇った南部一族。ここ三戸城は南部氏の宗家・三戸南部氏の本拠でした。場所は岩手県との県境。青森県三戸郡三戸町です。城跡は城山公園として整備されています。別名は留ケ崎城(とどめがさき)。ちょっと季節が違いますが、桜の名所とのことです。


>名族・南部一族とは・・・

■ 南部氏の起源 ■
甲斐源氏は甲斐国に土着した清和源氏の河内源氏系一門(八幡太郎義家の弟・源義光から始まる)。なんとなくピンとこなくても、その代表格が「武田氏」と聞けば「ああ」と納得して頂けるのではないでしょうか。今回登場の南部氏も甲斐源氏から枝分かれした家筋。清和源氏の流れをくむ一族です。
南部氏の始祖は南部光行。源頼朝から甲斐国の南部郷(現在の山梨県南部町)を与えられ、館を構えて拠点としました(この時に南部三郎と名乗りました)。

それ山梨の話だろ?

はい。ちょっと青森からは遠いですね。ただこの時代の猛者たちは、ほんとうにフロンティア。東北のあちらこちらに源氏の末裔が根をはっています。南部氏もそんなフロンティア一族の仲間と言って良いのではないでしょうか。

■ 陸奥国へ ■
鎌倉の源頼朝と奥州藤原氏との戦いにおいて、南部光行は頼朝に従軍(1189年)。この功績により、陸奥国糠部五郡の土地を与えられ(奉行を命じられ)、家臣とともに移住しました(1191年頃)。一族は陸奥北部に勢力を拡大します(移住については資料により異なっていますが、概ねこの時期)。

どういう感覚で突き進んで行ったのかわかりませんが、比較的安定を求める日本人の気質とはちょっと違いますね。ひとつの一所に留らず、流動的に次なる場所へと移って行く。現代でも、転職を繰り返してステップアップしていく人たちがいますね。身軽というか、考え方が流動的というか。リスクを受け入れて、新たな何かを手にしようとする姿勢。まぁ正直無茶するのもイヤなんですが、ちょっとは見習いたいですね。ちょっとは。

■ 三戸城 ■
<石碑>
shirononagori sannohejo (1).JPG
三戸城を築いたのは24代目当主の晴政(はるまさ)でした。もともと拠点としていた平城(聖寿寺館:しょうじゅじだて)を家臣に焼かれ、新たに築いた山城です。

家臣に放火されるとは物騒な・・・

拡大し続ける南部氏でしたが、あまり統制がとれていないのが実情だったようです。新たに堅固な山城を必要としたのは、他国の侵入に備えるというより、領内の中央集権化を推し進めるための手段だったようです。この当主、やや問題ありといった話もありますが、周囲の助けもあって、とにかく勢力を拡大しました。

■ 南部氏の謎 ■
三戸城を築いた晴政。この頃、南部氏そのものが八戸系と三戸系に分裂していたようで、晴政が本当に宗家の三戸系の生まれかどうか疑問視する説もあります。つまり、八戸系でありながら宗家を乗っ取ったという説です。これだけでも話がこんがらがるのに、晴政には長らく男子がなかったことから、勢力拡大に尽力した家から養子(娘の婿)を迎える話がまとまっていました。家督相続の候補者は田子信直。のちの南部信直です。ところが、晴政に実子・晴継が誕生。晴政は信直を疎んじ始め、更には争い、ドロドロの世界に突入です(そうとういろいろあるので省略)。

晴政が病没すると、長男・晴継が第25代当主となりますが、相続した直後に死亡。まだ13歳でした。諸説ありますが、父の葬儀からの帰路に暗殺された可能性が高いようです。首謀者としては、家督を狙っていた南部信直とする説が有力。ただ対立する九戸政実とする説まであります。いずれにしても、三戸城を築いた南部晴政の実子は、暗殺により短い生涯を閉じました。

1582年
田子信直が三戸南部氏の家督を継ぎ三戸城へ入城。第26代当主・南部信直の誕生です。


>三戸城探索

■ 縄張り ■
典型的な山城です。城は馬淵川と熊原川の浸食によって形成された細長い独立峰を利用して築かれました。「天然の要害」です。この言葉、当ブログで頻繁に使いますが、そういう城に興味があって訪問してるので、結果としてそうなります。

東西に長い城山。西側に大手口、東側に搦手口。最も高い所が本丸で、その他の随所に曲輪。構造そのものは予習した通りです。

<鳩御門跡>はとのごもん
shirononagori sannohejo (7).JPG
やや観光用に整備されているエリアもありますが、なるべく遺構と出会えるところを探索。ここは枡形門だったような雰囲気が漂います。

■ 広すぎる・・・ ■
構造そのものは予習した通り。ただこの細長い山城、なんと1.5kmもあります。標高130m、比高で約90m。ネット検索して城の形に惚れ込んで訪問しましたが、思ったより広いです。

結構疲れな・・・

shirononagori sannohejo (6).JPG
登城前に川沿いも歩き回ったので、城内全部を徒歩は厳しいか?などと思い始めました。ただまぁせっかく来たので、ひたすら歩き続けました。

時代が時代なので、城は小規模で、のんびり歩き回れば縄張りを実感できる。そんな甘い期待で訪問してしまいました。現実は、壮大な規模を誇る大掛かりなお山城でした。復元された石垣とは別に、何らかの目的で集められた大きな石があちらこちらにゴロゴロ。これらもどこかに積まれていたのでしょうね。

<現地説明>
shirononagori sannohejo (2).JPG
いまさら遅いですが、ちゃんと書いてありますね。

<網御門付近にて>つなごもん
shirononagori sannohejo (9).JPG
復元された門より、土塁ばかり眺めていました。奥に「天地有情」の石碑。

<武者溜> むしゃだまり
shirononagori sannohejo (8).JPG
ようするに城兵の詰所ですね。そのための曲輪です。

<糠部神社付近> ぬかべ
shirononagori sannohejo (5).JPG
この付近には太鼓櫓跡や樹齢800年を越す杉などなど

<糠部神社本殿>
shirononagori sannohejo (4).JPG
城内には模擬天守(歴史民俗資料館)などもありますが、この付近の方が重みがあっていいですね。他に武家屋敷跡や御馬屋跡などを徘徊し、探索を終了させました。

とにかくたくさんの曲輪を巡って石碑を確認する。その間に土塁や堀切と出会う。そんな探索でした。ひとつひとつの曲輪が予想より広く、城のなごりを味わうというより、せっせと任務?をこなすような感覚で歩き回りました。一通り終わってから、改めて縄張り図を確認。後からじんわりと実感がわいてきました。


■ つわものどもが夢の跡 ■
南部氏は後に本拠を九戸城(岩手県二戸市)、そして盛岡城へ移すことになります。やがて盛岡藩が成立すると、信直の長男で、南部氏27代目当主となっていた利直が初代藩主となりました。
長い長い南部氏の歴史のなかで、ここ三戸城が拠点だった頃は、内部的には大混乱、対外的には飛躍の礎を築く時期だったのではないでしょうか。何かが変わる瞬間というのは、そういうものなのかもしれませんね。

<本丸跡>
shirononagori sannohejo (3).JPG
栄華を夢見た陸奥の猛者たちの城跡です。そのなごりを味わうことができました。

---------■ 三戸城 ■---------
別 名:留ヶ崎城
築城者:南部晴政
築城年:1539年(天文8)
城 主:三戸南部氏
廃城年:(江戸時代中期)
[青森県三戸郡三戸町梅内]


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タグ:青森
posted by Isuke at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 城跡[東北]
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