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2018年12月29日

中世の土の城 小机城のなごり 

つわものどもが夢の跡
横浜市に残る貴重な城跡を訪ねました。場所は港北区小机町です。

<小机城跡>こづくえじょう
shirononagori294 (20).JPG
ここまで良好な遺構とは思っていなかったので、ちょっと鳥肌が立ちました。

■城のはじまり■
正確な築城時期はわかっていませんが、15世紀前半に、関東管領の上杉氏がこの地に城を築いたのが始まりと伝えられています。当時の関東において、権威のあった者が築いたと城ということですね。
1476年、その関東管領上杉氏(山内上杉氏)の有力家臣だった長尾景春が反乱を起こします。関東の多くの国人や地侍が呼応することになりますが、太田道灌(扇谷上杉氏家宰職)がこれを鎮圧。小机城主の矢野兵庫は長尾景春側だったため、道灌により攻め落とされることになりました。道灌は小机城の北東に陣城を築き、鶴見川を挟んで対峙。2ケ月を費やして城を落としました

この攻防戦については、南武蔵(現在の東京周辺)で勢力を誇っていた豊島氏が、太田道灌との戦いに敗れたのちにこの地へ逃れ、城に立て籠もったという話もあります。当ブログでは、豊島氏は平塚城(東京都北区)での挙兵が最後の戦いという説を採用しているので、そういう説もあるというところでとどめます。

まぁいずれにしても、太田道灌に落とされたのち、小机城は一旦廃城となりました。


■城の再利用■
関東で勢力を拡大する小田原北条氏。小机城は、2代当主の北条氏綱により改修されたと伝わります。小田原城配下の城として再利用されたということですね。北条早雲にも仕えた家臣・笠原信為が送りこまれ、小机城を拠点に『小机衆』と呼ばれる武士団のネットワークが形成されました。小机衆は各々が居城・館を構える大小29の武士団からなり、その本部的な機能を小机城が担っていたわけですね。

その後は北条一族が城主を務めるものの、1590年の秀吉による小田原征伐の時には戦わずして落城。その後廃城となりました。ですから、現在確認できる遺構は、この時の城のなごりということですね。


■現地訪問■
<小机駅>
shirononagori294 (2).JPG
小机城跡の最寄駅です。日産スタジアムの最寄駅でもあるようですね。

<ホーム>
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城跡は小机駅から徒歩で10分くらい。駅の北西の木に覆われた丘です。実はホームから見えているのですが、意識しない人には、ただの雑木林にしか映りません。

<構内>
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そうそう、続日本100名城に選ばれているのです!

<日産スタジアム>
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よそからくる人のお目当ては、普通はあちらですね。城跡とは逆方向の日産スタジアム。ご存じマリノスの本拠地です。私は埼玉県人でレッズのファンなので、ちょっとだけ敵地へ乗り込んだ気分です。ちょっとだけ

さて
駅から見えているくらいですから、道に迷う心配はありません。ただただまっすぐ歩けば、城跡へ近づけます。問題は、あの山にどこから入るのか?ですね。

<マリノスケ>
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偶然こんなのと出会いました。この先に進んでみますか

<入口>
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画像中央下の根古谷(ねこや)が現在位置です。案内板もトイレもあるので、ここから入るのが無難ですね。根古谷はよく言われる根古屋と同じ意味で良いかと。戦闘目的の砦が築かれた山の麓に形成される居住目的のエリアのことですね。

<竹林>
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まだまだ入口付近ですが、斜面の不規則性に既に気持ちが高まってきました。明らかに人の手による段差。城のなごりが漂っています。

<入城>
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ああ、ここで終わっても来た甲斐があります。勿論まだまだ進みますが

<曲輪>
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ここは比較的小規模な曲輪。城の中心となる西曲輪と東曲輪の中間地点。それぞれが深い空堀で仕切られています。

<空堀>
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見事な遺構

<空堀の説明板>
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要所要所に説明板があります。堀がいかに重要かということと、水をはらない堀を空堀と呼ぶことなど。とても親切なので、「中世の土の城」が初めての人でも楽しめます。

<模擬冠木門>
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こちらは本丸の虎口。実は先述の西曲輪と東曲輪、どちらが本丸だったかのか議論になっています。当ブログでは西曲輪を本丸とみなす意見に従っています。現地の案内でも、ここを「本丸広場」としています。ちなみに、私の訪問時は無人でしたが、球技用のネットを見かけましたので、実際に市民の広場としても使われているようです。

<虎口>
shirononagori294 (17).JPG
土塁の切れ目が虎口、つまり曲輪への入り口ですね。

<土塁>
shirononagori294 (16).JPG
曲輪を囲む土塁もしっかり残されています。

<説明板>
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鶴見川の位置を確認。太田道灌はあの対岸に陣を敷いたわけですね。そしていま残る城の縄張りは、のちの時代に北条氏が構築したもの。いろいろと想像が膨らみます。
ここ小机城は標高42m・比高22m。南から延びる台地が鶴見川に張り出す突端部分に位置します。

<城を分断する道路>
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本丸のすぐ下は第三京浜。高低差も実感したかったので降りてみましたが、うるさいだけでした。実は道の向こう側も城跡なんです。道路がかつての城内を通っているとも言えますね。

<遺構の数々>
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立派です
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深い堀の底を歩く。飛び道具で上から狙われてたら、ひとたまりもありませんね。まぁここまで来れたらの話ですが

<井楼跡>
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井楼(せいろう)は、材木を井桁に組んで造る見張りのための櫓という意味ですね。

<東曲輪虎口>
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<東曲輪>
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<櫓台跡>
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だいたいこんな感じですかね


■中世の土の城■
<土塁の説明板>
shirononagori294 (32).JPG
土塁についても丁寧に説明がなされています。空堀と並んで、土の城の基本ですね。

小机城は背景となる歴史も魅力ですが、やはり横浜市内とは思えない良好な遺構が素晴らしいです。中世で廃城となり、その後しばらく放っておかれたことが幸いしています。再整備については、その方法等にいろんな議論もあるかと思いますが、私は「土の城」の雰囲気が漂う素敵な場所だと思います。高度に仕上がった近世城郭とは一味違う、独特の魅力があります。凝った復元は模型やCGに任せ、実物はこのままで、たくさんの人達に見てもらいたいですね。

<大物ゆかりの城>
shirononagori294 (22).JPG
太田道灌が攻めた城。北条氏綱が改修した城です。

<遊歩道も充実>
shirononagori294 (23).JPG
気持ちの良い訪問となりました。

-------■ 小机城 ■-------
別 名:飯田城・根古屋城
築城年:不明(15世紀前半)
築城者:不明(上杉氏)
改修者:北条氏綱
城 主:上杉氏・長尾氏
北条氏 (氏堯・氏光ほか)
廃 城:1590年
現 状:小机城址市民の森
[横浜市港北区小机町]



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posted by Isuke at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 城跡[関東]
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