2010年02月04日
無人島シリーズ
私にクラシック音楽鑑賞を手ほどきしてくれた師匠は、銀座のとあるギャラリーを経営する好々爺だが、事あるごとに「無人島に残されたら・・・これとこれとこれは、外せない」と何枚かのCDを紹介してくれる。
本当に無人島に取り残されたら、電気もないし・・と考えても仕方のないことで、もし自分だったらと想い起してみる。もし10枚が許されるなら何と何を選ぶだろう。
まずはバッハ。数々の名作の中で私の好みは@「無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調・BWV1007」だ。これは「聴衆の為にでなく、自分の為に弾く音楽です」と奏者ロストロポーヴィッチが語った様に、悲しみとそれに耐える強さを兼ね備えた私の葬送曲だ。
次にヘンデル。あまり詳しくないのだが、上記の師匠に紹介してもらったA「SUITES FOR KEYBOARD」(Piano キース・ジャレット)だ。キース・ジャレットといえば知る人ぞ知るジャズピアニストだが、ひたすら続くこの演奏の明るさと、天国にも昇る幸福感は何者にも代えがたい。
次は、モーツアルト。これもどうしても1曲しか選べないと言うなら、Bピアノソナタ第8番イ短調K310。夭折の天才リパッティーによる第一楽章アレグロ・マエストーノが始まるともう胸騒ぎで座っては居られない。厳冬の風吹きすさぶ街路で、襟を立てながら一人前へ歩を進める光景を思い浮かべながら、音の化身に金縛りになる。この若さで孤独をうたうとは。
次はシューマン。愛妻クララの28回目の誕生日プレゼントとして贈ったC「ピアノ三重奏第1番ニ短調・作品63」だ。魂の奥から絞り出すような哀切のこもったメロディーは彼の後の人生からの卒業を早くも予感させる。なにしろ彼は「Here」(此岸)よりも「There」(彼岸)に行っている時間の方が多かった芸術家だったから。
次は同時代人且つ世間ずれした友人からブラームスを選ぼう。ブラームスでは、D「間奏曲集」を選択する。「草枕」の愛読者だった鬼才グレン・グールドによる切実なそして暖かみを交えたしっかりとしたタッチはもはや男同志の友情の告白にもきこえる(野暮な推測はやめてくださいよ)。私の一番好きなCDで、坂本龍一さんが旅行の際には必ず持参するとか聞いて嬉しかった。それからどうしても外せない2曲目はE「ヴィオラソナタ・No2」(Viola =Kim Kashkashian)だ。これこそが西洋の美しさだと言いたくなるような、甘く美しいメロディーは必聴ものだ。
醜い顔でいじめられっ子だったシューベルトからは、「神の降り立つ未完成交響曲」でなく、彼の心情を吐露している、慟哭のF「即興曲集作品90(D899)」を採る。演奏は勿論ウイーンっ子グルダ。チャイコフスキーとともに、ソナタ形式に反旗を翻したというシューベルト。即ち「和解」の章を設けなかった悲劇人。そんな彼にも、美しくやすらぎのある夕べの曲G「アルペジオーネソナタ」がある。これも2曲目になるが、どうしても聴いてほしい。チェロはロストロポーヴィッチのものがいい。
ベートーベンを忘れたわけではないが、余りに多い傑作の中でとても絞り込めない。H「ピアノソナタ第31番変イ長調作品110」・・あの元気をくれるベートーヴェンがこんなにも美しい天国的な曲を作っていたとは。信じられなかった。もちろんピアノ演奏はポリーニがベスト。そしてI「ピアノ協奏曲から第4番ト長調作品58」。余りにも独創性みなぎる傑作。グルダもいいが、やはり不器用でも精神性の高いバックハウスの崇高な演奏を聴こう。
最後を飾るのは(おっと「字余り」ならぬ曲余りで10曲を超えてしまったがお許し願いたい。)やはり大ハイドンの名作J「ピアノソナタ第49番変ホ長調作品66」だ。滋味に富むゼルキンの75歳記念コンサート版が秀逸だ。始まりからして、いきなりの「水のような酒を飲む」様な本当に素直に魂を揉まれるようなこの曲を名作と呼ばずして何と言おうか。第2楽章の転調するところは、気品とドラマ性に富んで清々しい。
余りついでにもう1曲。これもハイドンのK「弦楽四重奏第76番ニ短調作品76-2「五度」(アルバン・ベルク四重奏団)。
モーツアルトを始め多くの作曲家に大きな影響を与えたハイドンは、弦楽四重奏75〜80番に至る6曲のエルティーデ四重奏と呼ばれる連作を作曲したが、中でも私のお勧めはこの「五度」だ。第1楽章からソナタ形式により、2つの主題を対立させるのだが、第2主題の冒頭部分が、第1主題の同じ部分の5度下降するモチーフを流用していることからこの名がつけられたようだが、そんなことは別にして私は、何か不安があるとこの曲に落ち着きを貰う。
ベートーヴェンには勇気を貰うが、ハイドンにはもっと大きなゆとり・均衡を貰う。
皆さんの無人島シリーズは、何ですか?
本当に無人島に取り残されたら、電気もないし・・と考えても仕方のないことで、もし自分だったらと想い起してみる。もし10枚が許されるなら何と何を選ぶだろう。
まずはバッハ。数々の名作の中で私の好みは@「無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調・BWV1007」だ。これは「聴衆の為にでなく、自分の為に弾く音楽です」と奏者ロストロポーヴィッチが語った様に、悲しみとそれに耐える強さを兼ね備えた私の葬送曲だ。
次にヘンデル。あまり詳しくないのだが、上記の師匠に紹介してもらったA「SUITES FOR KEYBOARD」(Piano キース・ジャレット)だ。キース・ジャレットといえば知る人ぞ知るジャズピアニストだが、ひたすら続くこの演奏の明るさと、天国にも昇る幸福感は何者にも代えがたい。
次は、モーツアルト。これもどうしても1曲しか選べないと言うなら、Bピアノソナタ第8番イ短調K310。夭折の天才リパッティーによる第一楽章アレグロ・マエストーノが始まるともう胸騒ぎで座っては居られない。厳冬の風吹きすさぶ街路で、襟を立てながら一人前へ歩を進める光景を思い浮かべながら、音の化身に金縛りになる。この若さで孤独をうたうとは。
次はシューマン。愛妻クララの28回目の誕生日プレゼントとして贈ったC「ピアノ三重奏第1番ニ短調・作品63」だ。魂の奥から絞り出すような哀切のこもったメロディーは彼の後の人生からの卒業を早くも予感させる。なにしろ彼は「Here」(此岸)よりも「There」(彼岸)に行っている時間の方が多かった芸術家だったから。
次は同時代人且つ世間ずれした友人からブラームスを選ぼう。ブラームスでは、D「間奏曲集」を選択する。「草枕」の愛読者だった鬼才グレン・グールドによる切実なそして暖かみを交えたしっかりとしたタッチはもはや男同志の友情の告白にもきこえる(野暮な推測はやめてくださいよ)。私の一番好きなCDで、坂本龍一さんが旅行の際には必ず持参するとか聞いて嬉しかった。それからどうしても外せない2曲目はE「ヴィオラソナタ・No2」(Viola =Kim Kashkashian)だ。これこそが西洋の美しさだと言いたくなるような、甘く美しいメロディーは必聴ものだ。
醜い顔でいじめられっ子だったシューベルトからは、「神の降り立つ未完成交響曲」でなく、彼の心情を吐露している、慟哭のF「即興曲集作品90(D899)」を採る。演奏は勿論ウイーンっ子グルダ。チャイコフスキーとともに、ソナタ形式に反旗を翻したというシューベルト。即ち「和解」の章を設けなかった悲劇人。そんな彼にも、美しくやすらぎのある夕べの曲G「アルペジオーネソナタ」がある。これも2曲目になるが、どうしても聴いてほしい。チェロはロストロポーヴィッチのものがいい。
ベートーベンを忘れたわけではないが、余りに多い傑作の中でとても絞り込めない。H「ピアノソナタ第31番変イ長調作品110」・・あの元気をくれるベートーヴェンがこんなにも美しい天国的な曲を作っていたとは。信じられなかった。もちろんピアノ演奏はポリーニがベスト。そしてI「ピアノ協奏曲から第4番ト長調作品58」。余りにも独創性みなぎる傑作。グルダもいいが、やはり不器用でも精神性の高いバックハウスの崇高な演奏を聴こう。
最後を飾るのは(おっと「字余り」ならぬ曲余りで10曲を超えてしまったがお許し願いたい。)やはり大ハイドンの名作J「ピアノソナタ第49番変ホ長調作品66」だ。滋味に富むゼルキンの75歳記念コンサート版が秀逸だ。始まりからして、いきなりの「水のような酒を飲む」様な本当に素直に魂を揉まれるようなこの曲を名作と呼ばずして何と言おうか。第2楽章の転調するところは、気品とドラマ性に富んで清々しい。
余りついでにもう1曲。これもハイドンのK「弦楽四重奏第76番ニ短調作品76-2「五度」(アルバン・ベルク四重奏団)。
モーツアルトを始め多くの作曲家に大きな影響を与えたハイドンは、弦楽四重奏75〜80番に至る6曲のエルティーデ四重奏と呼ばれる連作を作曲したが、中でも私のお勧めはこの「五度」だ。第1楽章からソナタ形式により、2つの主題を対立させるのだが、第2主題の冒頭部分が、第1主題の同じ部分の5度下降するモチーフを流用していることからこの名がつけられたようだが、そんなことは別にして私は、何か不安があるとこの曲に落ち着きを貰う。
ベートーヴェンには勇気を貰うが、ハイドンにはもっと大きなゆとり・均衡を貰う。
皆さんの無人島シリーズは、何ですか?
[url=http://www.gkg3306w1jj184s7zbf1v6kuo86qe484s.org/]uzsyhxtji[/url]
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