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冬の紳士
定年前に会社を辞めて、仕事を探したり、面影を探したり、中途半端な老人です。 でも今が一番充実しているような気がします。日々の発見を上手に皆さんに提供できたら嬉しいなと考えています。
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2010年12月30日
後ろ姿
「写真は嫌いだ」と、皆の輪の中に入らなかった友人の口癖だった。
きっと自分一人でないと皆の中に埋没してしまうとか、写真映りが悪いの何のといったつまらない理由だろうと推測してやり過していた。
その彼が、或る時ふと「風景はいいな。みんなそれぞれの場を持ってる」とつぶやいた。

そういえば彼が最近よく、写真を撮っているのを目にするようになった。
それは風景の気が熟したのを狙ったショットだった。
持ち論人影は見当たらない。
どうやら彼の写真嫌いは、ナルシストというより、人間嫌い、もっといえば自然界での人間の傲慢を嫌っての、或いは人間の在り方の不敵さに原因があった様な気がする。少し大げさな、とは思いつつも、いまの世情や、人々の生活の姿を感じるにつけて、まんざら大げさなとは思えない深刻さを感じてきた。
華やかなスポットライトを浴びて踊り歌う時、或いはそこまでいかなくとも正面から自分を主張して表現するとき。面と向かって意見をする時、何か勝ち誇った、優位性を持った猥褻さや空しさを感じるものだ。
それはなぜなのか。

20世紀の初頭、若きピカソによって描かれた「アイロンをかける女」は、パリの下町の生活苦にあえぐ女の働く姿をヒューマニスティックな、社会主義的な同情と憤りを持って見ることも可能だがその奥には、裕福さをもたらす富で一時的に解決してもしきれない、魂の喪失といった奥深い人間の課題が見え隠れする。
毎日、汚れては持ちこまれるワイシャツの襟のしわをのばすことの繰り返しに精力を消耗しやせ衰えていく姿は、ギリシャ神話のシシュフォスのように同じ作業を繰り返し続ける姿とだぶってくる。
一体人間とはこんなものなのか?

新潟県の高柳というところに門出(かどいで)という集落がある。今はもう全国でも数えるほどに少ない和紙職人が居られる。これは今は亡き俳優の渡辺文雄さんのエッセイから教えられたお話しなのだが、その職人さんの言うことには、
「冬の陽、しかも障子紙を通しての光、その明りは丸みがあり温和です。これは間違いなく障子紙の、つまり生紙の持つ生命からのメッセージです。そのメッセージはその中で暮らす人々の心に落ち着きという物を与えてくれた。これが毎日なんです。そしてその毎日がずっと続いた一生なんです。」
生紙とは勿論生きている紙ということで、その証拠はいろいろあるが、まず生紙は呼吸すると言うところがある。気候(湿度)によって呼吸し、雨天のとき繊維は伸びて乾くと縮む。晴天の時は通風をよくし、雨天のとき室内の湿気を吸い取ってくれる。寒い日には冷たい外気を防いで熱伝導率の低さからガラスより熱を外に逃がさない。その職人さんはこの生きた生紙(キガミ)を作る為に国産の楮(こうぞ)にこだわり、その紙1枚1枚にはすべて原料・煮方・漉き方・乾燥方法など、技術の粋が詰まっている。そしてそこまでこだわってもその年の天候によって原料の善し悪しが決まってしまうあっけないほどフラジャイルなものなのだ。
「紙という物は作るのではなく、育てるものなんです。生紙が美しいのは生きているからなんですね」「10年たった生紙はぐつぐつ煮てもびくともしません。生紙は成長していく、命ある紙なんです。300年くらいたった紙が一番強度があるだろうと言われていますが、現存のもので古いのは千年を超えています。」
「素朴の中にある智恵深さ、これはゆっくり流れる時間の中で、まわりにある全てのものにある命と徹底的に話し合い、その命を見極めて見出したものだと思います。」「紙が教えてくれることはきりが無い、何か掘っても掘っても終わりのない
鉱脈のような気がします。鉱脈を掘り続ければくたびれる筈なんですが、逆に面白さが増して元気が出ます。これはやはり命の鉱脈のせいではないかと、思っています。」

思わず廻り道をしてしまいましたが、「アイロンをかける女」もスポットライトを浴びるスターも、それを見ている我々も、またさみしくて買い物依存症で買い物を繰り返している人も、皆命の琴線に触れることができるのでしょうか。
それは紙すきの職人さんが「後ろ姿」で教えてくれているように、命の尊厳に気づきその尊厳に頭を垂れて、自らの自然の中での立ち位置を知って対処することから見えてくる者なんでしょうね。
私の知人も「俺が死んだら、遺影は「後ろ姿か、風景の中で樹や草や土といっしょになった横顔みたいな姿」がいいな」と言った。

「不思議なのは、両方の写真共に細かい表情には重点をおいてなくて、それだけなおさら、まるで彫刻作品のように、サバという人間全体のヴォリュームだけが、見るものに迫ってくる。そして表情を細やかに撮った写真よりも、それはサバの人格そのものについてずっと多くを伝えてくれるようだ。」(須賀敦子・「きらめく海のトリエステ」)

「前向きな後ろ姿!」、本年はこの言葉でさようならを言わせてもらいます。皆さんよいお年を!

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