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冬の紳士
定年前に会社を辞めて、仕事を探したり、面影を探したり、中途半端な老人です。 でも今が一番充実しているような気がします。日々の発見を上手に皆さんに提供できたら嬉しいなと考えています。
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2012年08月14日
コンプレックス1
コンプレックスとは、人の心の無意識内に住み、何らかの心的外傷とか感情によって、結合されている、感情で色づけられた心的内容の複合体と説明されています。
要するに人や社会や外界との出会いに際して、自分で納得の出来ない、折り合いの付けられないまま心の奥にしまい込められた感情のようなものだと思います。
これが何かのきっかけ、動作、情景、出会いなどによって、しまい込んだものが甦る時、様々な反応を示す。例えばヒステリー(身体的には何の異常もないのに、耳が聞こえなくなるなど)やノイローゼ(何らかの意味で自分の意志に反する行動や観念に悩まされている人)などです。
ヒステリーはノイローゼの症状が劇的に現れたものとも言われています。

ノイローゼは、自分の自我が狭く些細なことにも耐えきれなく悩んでいる人から、「時代の病」とでもいう大きな観念と戦い悩んでいる人まで様々です(夏目漱石やフロイトなど)。こうしてみると、ノイローゼは病気というより、自分の「自我」の大きさが大きいほど大きな問題と戦えるのですから、時代の先駆者といった方が適切かもしれませんね。

先ほどからなんども出てきた「自我」についても確認しておかないと、話がこんがらがってくる可能性がありますね。

自我とは、実はその正体はコンプレックスでもあるんです。生きてきて、出来上がった自分のコンプレックスの中で、自分と折り合いのついた(と思い込んでいる)部分が「自我」なんですね。コンプレックスの親分みたいなものです。「と思い込んでる」がとても重要なところなんですが、これについてはまたあとで。
自分と折り合いがついて納得している総体だから、自分の行動・運動をも支配できるんです。コンプレックスは、まだ感情のままだから、意識の奥にしまいこまれて時々何かのきっかけや、「時」が熟すと頭をもたげてくるだけです。
自分の体験を「自分なりに」納得・統合出来た自我は、外界や社会を相手に「知覚」や「記憶」を育てながら、それを「概念化」「言語化」して或いは「関係付け」をして記憶の中にしまい込んだり、思考機能や運動機能をも備えるに至る。(更には対外界(社会)での顔として、自分のペルソナ(仮面)を確立していく。(じゃー、対内界はと言えば無意識世界での人間の元形とも言うべきアニマ・アニムスとの付き合いなんですが、コンプレックスのもっと奥の話になるので別の時に)いわば自我は、コンプレックスの中の「主流派」なんですね。与党としての予算や法の作成力ももつ訳ですね。

でもなんか今一つ「違うんじゃないか?」という気持ちも残されたままです。先ほどの「と思い込んでる」によくあらわれています。
何かを認識したり、行動したりする時、「違う見方もあったんじゃないか?」とか「別の生き方もあったんじゃないか?」と心残りの気持ちがくすぶります。
これがコンプレックスの中でも、最も深いところの一つに眠っている「影」なんですね。なにしろ、誰それが虫が好かないとか、これは苦手で近づきたくないなどの意識の浅い部分の話ではなく、もっと深刻な人生の岐路に関わることですから。

「影」は「自分の生きなかったもう一人の自分」なんですね。
アンデルセンの童話に「影法師」という、怖い話がありますが・・・ある学者が向かいの家の壁に映った影に、その部屋に入ってみたらと冗談に言ってみると、本当に向かいの家に入ってしまい、学者は翌日自分の影が無いのに驚きながらも、そのうちまた新しい影法師が出てきたので、そのまま祖国に帰ってしまった。前の影法師は(もう一人の)自分の天分を知り、人間となり影の特性を利用して、隣人のプライバシーを知り、それをネタに金を稼ぎ、更にもとの自分(学者)を訪ね、うだつの上がらない学者を自分の「影法師」となることを(つまり逆転することを)承諾させてしまう。影はその特性を利用して王女と結婚し、学者は反撃をする前に処刑されてしまう・・・・・

つまりコンプレックスは「もう一人の私になる可能性を秘めている」ということなんですね。

我々の人生は常にコンプレックスとの戦いで「自我」を拡大していく旅です。怠れば影に乗っ取られる。というところでしょうか。
では、コンプレックスとの対決とは、どんなものなのか?その解消とはどのような道のりなのか?

これについては抽象的な話では捉えにくいと思うので、或る例に挙げられていた話をすることにします。

・・・・・或る中学の男子が学校恐怖症となった。本人も周囲も確たる理由は定かではないのに、学校に行けなくなる。この子の家庭構成は変っていて、母及び母と年の離れた姉(伯母)が同居し、この伯母を「大きいお母さん」と呼んで非常になついていた。この伯母は傾きかけた家を結婚もせずに商売に励み立て直し、妹を(つまりその子の母)を養子に迎え、同じく養子に来た父親も頭が上がらない状態だった。唯父母はまじめで仕事にも精を出したが、子どものことに関しては「大きいお母さん」に任せて、口出し出来なかった。そんな子どもが学校恐怖症になった為心配は普通では無かった。心配した伯母はその子にカウンセリングを受けさせることにした。しかし商売の中心人物の伯母は、ついてこずに、母親が同伴した。さすがに心理療法家は問題点を見抜いており、子どもが生まれて育っていくには、母親の暖かい保護を必要とする。しかし成長してゆく為にはこの母親コンプレックスの世界から分離してゆかねばならない。つまり自立してゆかねばならない。そうしないといつまでも自立するための自我が育たない、と。しかしそれは辛く、余りにも不安な旅立ちだ。とはいえ一方ではこのままでは駄目だという心の動きも強くこの葛藤状態で学校に行けずにいるのだ。
この家族は、子どもという犠牲者の上に成り立った偽りの均衡だったのだ。この均衡は、伯母が家を立てなおした頃は皆が幸せでそれでよかった。しかし「時」が熟し、伯母も母も父親もそしてなによりこの中学生が、それぞれが次の体制に移らねばならない時期に来ていたのだ。(続く)

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Posted by:ncvckmyezl at 2015年11月20日(Fri) 17:38



 
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