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第70回 荒川堤 [2016/04/07 12:02]
文●ツルシカズヒコ  野枝と岩野清子がらいてう宅を訪ねると、らいてうは折りよく居合わした。  三人は荒川の方へ歩いて行くことにした。  本郷区駒込曙町のらいてうの家を出て、駒込富士前町の裏手から田端にかけての道は、野枝がよく知っていた。  お天気が馬鹿によかった。  彼方此方に木蓮が咲いてゐた。  荒川までは大分あつた。  田端の停車場を出て山の手線の掘割に入らうとする曲がり角近くの断層の処に子供が大勢..
第69回 国府津(こうづ) [2016/04/04 12:01]
文●ツルシカズヒコ 『元始、女性は太陽であった 平塚らいてう自伝(下巻)』(p449~450)によれば、 一九一三(大正二)年三月、前年暮れの岡本かの子の処女歌集『かろきねたみ』を青鞜叢書第一編として出版したのに引き続き、『青鞜小説集』が第二編として東雲堂から発行された。  社員の小笠原貞子の自画自刻の装幀本で、野上弥生子ら青鞜女流作家十八名の作品が収録されている。  しかし、青鞜の講演会は反響を呼んだが、新聞の無責任な記事による..
第64回 神田の大火 [2016/04/02 12:50]
文●ツルシカズヒコ  一九一三(大正二)年二月二十日、午前一時二十分ごろーー。  神田区三崎町二丁目五番地(現在の千代田区神田三崎町一丁目九番)の救世軍大学植民館寄宿舎付近より出火した火の手は、折りからの強風に煽られながら朝八時過ぎまで燃え続けた。  全焼家屋は二千三百以上、焼失坪数は四万二千坪以上の被害を出した「神田の大火」であった。  このころ、辻潤と野枝は染井の家を出て、芝区芝片門前町の二階家の二階に間借り住まいをして..
第63回 姉様 [2016/04/01 17:17]
文●ツルシカズヒコ  青鞜社講演会の後、おそらく一九一三(大正二)年二月半ばのころであろうか。  野枝は当時の青鞜社内部の人間関係について、こう記している。  もっとも紅吉はすでに青鞜社の社員ではないのだが。  紅吉と平塚さんの間は旧冬の忘年会以後、ます/\妙なことになつて来てゐた。  平塚さんは西村さんと、哥津ちやんの交渉が後もどりをすると、だん/\に西村さんの方に心をよせて行つた。  神経過敏の紅吉は..
第62回 女子英学塾 [2016/03/31 22:06]
文●ツルシカズヒコ 「青鞜社第一回公開講演会」の翌日、『東京朝日新聞』は「新しき女の会 所謂(いはゆる)醒めたる女連が演壇上で吐いた気焔」という見出しで、こう報じた。  当代の新婦人を以て自任する青鞜社の才媛連は五色の酒を飲んだり雑誌を発行する位では未だ未だ醒め方が足りぬと云ふので……神田の青年会館で公開演説を遣(や)ることになつた ▲定刻以前から変な服装(なり)をして態(わざ)と新しがつた女学生や 之から醒めに掛つ..
第61回 青鞜社講演会 [2016/03/31 19:56]
文●ツルシカズヒコ 「玉座を以て胸壁となし、詔勅を以て弾丸に代へて政敵を倒さんとするものではないか」  立憲政友会党員の尾崎行雄が、桂太郎首相弾劾演説を行なったのは、一九一三(大正二)年二月五日だった。  前年暮れに成立した第三次桂内閣への批判は「閥族打破・憲政擁護」のスローガンの下、一大国民運動として盛り上がり、二月十日には数万人の民衆が帝国議会議事堂を包囲して野党を激励した。  議会停会に憤激した民衆は警察署や交番、御用..
第60回 相対会 [2016/03/31 14:09]
文●ツルシカズヒコ  この発禁になった『青鞜』一九一三年二月号で野枝が月刊『相対』創刊号を紹介している。  今度かう云ふ雑誌を紹介致します。  小さい雑誌ですが極めて真面目なものでかう云ふ種類の雑誌は他にはないさうです。  本誌は小倉清三郎氏が単独でおやりになつて居ります。  材料も非常に沢山集めてあるさうです。  私共はかう云ふ真面目な小雑誌の一つ生まれる方が下だらない文芸雑誌の十生まれるよりはたのもしく思..
第59回 新らしき女の道 [2016/03/30 19:20]
文●ツルシカズヒコ 『青鞜』一九一三年一月号の附録(特集)は「新らしい女、其他婦人問題に就いて」だった。 『元始、女性は太陽であった 平塚らいてう自伝(下巻)』(p422~423)によれば、この特集を組んだ目的はまず対外的なもので、ジャーナリズムや世間の「新しい女」攻撃に対する反撃だった。  そして対内的には「私は新らしい女ではない」という逃げ腰の社員に対する、自分たちの覚悟の表明だった。  この特集には八人が寄稿しているが..
第58回 夏子 [2016/03/30 13:50]
文●ツルシカズヒコ  このときの野枝の印象を、神近は4年後にこう書いている。  ……学校の休暇(やすみ)の時、根岸のKのところで逢つたのは正月であつた。  女中のやうな至つて質素な着付けが、お体裁屋の、中流の東京の家庭の人々とばかり接触してゐて、その嗜好と幾分の感情さへも分ち始めてゐた私には、その人までも何んとなく親しみ難(にく)いものに思はせた。  その上に、髪を振り下げにして素通しの眼鏡をかけて居(を)られたことが、..
第57回 東洋のロダン [2016/03/29 20:55]
文●ツルシカズヒコ  一九一二(大正元)年十二月二十七日、忘年会の翌々日、らいてうから野枝に葉書が届いた。  昨夜はあんなに遅く一人で帰すのを大変可愛想に思ひました。  別に風もひかずに無事にお宅につきましたか。  お宅の方には幾らでも、何だつたら、責任をもつてお詫びしますよ、昨夜は全く酔つちやつたんです。  岩野さんの帰るのも勝ちやんのかへるのも知らないのですからね、併し今日は其反動で極めて沈んで居ります。 ..
第56回 軍神 [2016/03/29 15:40]
文●ツルシカズヒコ  紅吉は頑固に黙ってしまった。  荒木の軽いお調子にもなかなか乗ってはこなかった。  しまいにはぐったりして、野枝の膝を枕にして寝てしまった。  哥津はとうとう帰り支度を始めた。  岩野も先が遠いからと仕度を始めた。  野枝の膝には紅吉がいたので、野枝はらいてうと一緒に帰ることにして、哥津と岩野は先に座を立った。  西村は蒼い顔をいよいよ蒼くして、背を壁にもたして荒木と話をしていた。..
第55回 メイゾン鴻之巣 [2016/03/29 13:54]
文●ツルシカズヒコ  一九一二(大正元)年十二月二十五日、クリスマスのこの日は『青鞜』新年号の校正の最後の日だった。  帰りにどこかで忘年会をしようと、らいてうが言い出した。   文祥堂の校正室にはらいてう、紅吉、哥津、野枝、岩野清子、西村陽吉がいた。 『元始、女性は太陽であった 平塚らいてう自伝(下巻)』によれば、京橋区新栄町にあった東雲堂が発行する出版物は、築地にある文祥堂で刷っていた。  らいてうの記憶では校正室は二..
…高津正道  渡辺政太郎 、ロンブローゾ 『三太郎の日記』 『女の世界』 『女性改造』 『婦人世界』 『婦人公論』 『婦人解放の悲劇』 『実業之世界』 『平民新聞』 『白樺』 『第三帝国』 『萬朝報』 『蕃紅花』 『近代思想』 『魔風恋風』 きだみのる わだつみのいろこの宮 アダム・スミス アドリフ・ヨッフェ アルツィバーシェフ アンドレイ・コロメル アンドレ・ コロメル イワン・コズロフ エドワード・カーペンター エマ・ゴールドマン エリアナ・パヴロワ エリゼ・ルクリュ エレン・ケイ クララ・サゼツキイ クララ・サゼツキー クララ・ザゼツキイ グリゴリー・セミョーノフ グリゴリー・ヴォイチンスキー シャルル・ルトゥルノー シング ジャン・アンリ・ファーブル ソフィア・コワレフスカヤ チェーザレ・ロンブローゾ トマス・ロバート・マルサス ネストル・マフノ ハヴロック・エリス バートランド・ラッセル バーナード・リーチ パウル・ハイゼ ピョートル・クロポトキン ピョートル・ヴラーンゲリ フセーヴォロド・ガルシン フュウザン会 フランク・リトル フリードリヒ・エーベルト ブレシコ・ブレシコフスカヤ ブレシコ・ブレシコフスカヤ ホワイトキヤップ マックス・シュティルナー マーガレット・サンガー ミハイル・アルツィバーシェフ メイゾン鴻之巣 ローザ・ルクセンブルク ローザ・ルクセンブルグ ワシリー・エロシェンコ ヴァスィリー・エロシェンコ ヴォルフガング・カップ 万世橋駅 万松堂書店 三嶋一輝 上司小剣 上山草人 上村清敏 上村草人 上野高女 上野高等女学校 下中弥三郎 下田歌子 与謝野晶子 与謝野鉄幹 中原秀岳 中名生いね子 中名生幸力 中名生静 中央新聞 中尾富枝 中岡艮一 中島清 中村狐月 中村還一 中浜鉄 中野初 久保田富江 久板卯之助 久津見房子 久米正雄 九津見房子 二宮神社 五十里幸太郎 五日市憲法 井元麟之 井出文子 井川恭 今井邦子 今宿 今宿小学校 今宿瓦 今東光 仏英和高等女学校 代キチ 代準介 仲宗根源和 仲宗根貞代 伊井敬 伊庭孝 伊是名朝義 伊藤ルイ 伊藤Y子 伊藤真子 伊藤野枝 佐藤惣之助 佐藤愛子 佐藤政次郎 佐藤春夫 佐藤紅緑 佐藤緑葉 保持研子 信友会 八木さわ子 内ヶ崎作三郎 内山愚堂 内田魯庵 内藤民治 初代中村吉右衛門 加藤シヅエ 加藤一夫 北原鉄雄 北川千代 北村和夫 北白川宮成久王 千原代志 千家元麿 千葉亀雄 千葉吾一 南湖院 原田潤 原田皐月 原田(安田)皐月 原阿佐緒 古田大次郎 吉屋信子 吉川守圀 吉本哲三 吉田一 吉田只次 吉田喜重 吉野作造 名和昆虫博物館 呂運亨 周作人 周船寺小学校 和気律次郎 和田久太郎 和田信義 哲学館 土岐善麿 坂本真琴 堀保子 堀切利高 堀口大學 堀場清子 堀紫山 堺利彦 堺真柄 塩瀬 増田篤夫 売文社 夏目漱石 大井憲太郎 大住嘯風 大倉喜八郎 大内士郎 大杉伸 大杉栄 大杉豊 大杉進 大杉魔子 大正ロマン 大濠公園 大石七分 大須賀健治 大須賀里子 太陽閣 夷魔山 奥むめお 奥山伸 奥村博史 女子文壇 宇野浩二 守田有秋 安成二郎 安成四郎 安河内麻吉 安田善次郎 安田皐月 安藤枯山 安谷寛一 安部磯雄 実業之世界社 宮城房子 宮島資夫 宮崎光男 宮崎虎之助 宮嶋資夫 宮本百合子 富士川旅館 富士見小学校 富士見小学校付属幼稚園 富本一枝 富本憲吉 寺内正毅 寺田鼎 小倉清三郎 小台の渡し 小宮豊隆 小川未明 小杉天外 小松清 小林助市 小林哥津 小林清親 小林登美枝 小生夢坊 小笠原貞 小野賢一郎 尾崎士郎 尾崎行雄 尾形節子 尾竹福美 尾竹竹坡 尾竹紅吉 尾竹紅吉(一枝) 尾竹越堂 山内みな 山口二矢 山口孤剣 山崎今朝弥 山崎俊夫 山川均 山川浦路 山川菊栄 山村暮鳥 山田わか 山田嘉吉 山田耕筰 山路千枝子 山鹿泰治 岡本かの子 岡本一平 岡本潤 岡村青 岡田八千代 岡田時彦 岡田茉莉子 岩佐作太郎 岩出金次郎 岩崎呉夫 岩田富美夫 岩見照代 岩野泡鳴 岩野清子 岸田劉生 岸田辰彌 峰尾節堂 島村抱月 島田宗三 嶋田宗三 川口の渡し 川口慶助 川合義虎 川崎悦行 市川左團次 (2代目) 市川房枝 布施辰治 帆足理一郎 平塚らいてう 平林初之輔 平沢計七 平澤計七 平野威馬雄 幸徳秋水 広津和郎 延島英一 弘前高女 張太雷 張継 後藤新平 後藤新平記念館 御宿 御隠殿坂 徳冨蘆花 徳富蘇峰 徳田秋声 成瀬仁蔵 文祥堂 斎藤兼次郎 斎賀琴 斎賀琴子 新井奥邃 新妻イト 新妻莞 新婦人協会 新居格 新橋耐子 新発田市立外ヶ輪小学校 日向きん子 日夏耿之介( 日本基督教婦人矯風会 日蓮聖人銅像 日蔭茶屋 日蔭茶屋事件 昭憲皇太后 有吉三吉 有島武郎 有島生馬 服部浜次 服部麦生 望月桂 望月百合子 朝倉文夫 朝日平吾 木下尚江 木内錠子 木村時子 木村荘八 木村荘太 木村荘平 本間久雄 朱樂 杉山茂丸 李増林 李東輝 村上信彦 村上浪六 村木源次郎 村木源次郎氏 東京監獄 松下竜一 松下芳男 松井須磨子 松内則信 松本克平 松本悟朗 松本治一郎 松本淳三 板橋鴻 林倭衛 林初子 柴田菊 栗原康 根岸正吉 桑原錬太郎 桜楓会 桝本卯平 棚橋絢子 森まゆみ 森戸辰男 森田草平 植木徹誠 植木等 椎の山通れば 樋口麗陽 横関愛造 橋本徹馬 橋浦はる子 橋浦時雄 橘あやめ 橘宗一 正力松太郎 武林文子 武林無想庵 武田伝次郎 武者小路実篤 武者小路房子 武藤三治 武藤重太郎 武部ツタ 殿上湯 水沼辰夫 水野葉舟 永井荷風 永代静雄 江口渙 江川宇礼雄 江戸家猫八 (初代) 江渡狄嶺 沢モリノ 沢田柳吉 河合道子 河本亀子 沼波瓊音 泉正重 波多江小学校 波多野秋子 津田光造 津田梅子 活水女学校 浅枝次郎 海禅寺 深尾韶 清水金太郎 渡瀬駅 渡辺政太郎 湯溜池 澤村源之助 (4代目) 澤田柳吉 瀬川つる子 瀬戸内寂聴 瀬戸内晴美 瀬沼夏葉 片山潜 物集和子 獏与太平 玉名館 生田春月 生田花世 生田長江 田中伸尚 田中勇之進 田中孝子 田中正造 田中純 田村俊子 田村松魚 田端の断層 田辺聖子 番町小学校 白柳秀湖 白樺 相対会 矢嶋楫子 矢部初子 矢野寛治 石山賢吉 石川三四郎 石橋臥波 石田友治 神近市子 福士幸次郎 福富菁児 福田正夫 福田狂二 福田英子 福音印刷 秋山春 秋月静枝 秋田忠義 秋田雨雀 秦豊吉 竹内平吉 竹内鶴子 竹尾房子 竹尾房子(宮城ふさ) 米村嘉一郎、 精華小学校 素木しづ 結城礼一郎 続木斉 育英小学校 能古島 芥川龍之介 花柳はるみ 若い燕 若山喜志子 若松流二 若林やよ 若林八代 英子セオドラ尾崎 茂木久平 茅原華山 荒川堤 荒川義英 荒木一郎 荒木滋子 荒木道子 荒木郁 荒木郁子 荒波力 荒畑寒村 菅沼幸子 菊地幽芳 菊富士ホテル 菊池寛 蒲原房江 藤森成吉 蟻川直枝 衣川孔雀 袋一平 西光万吉 西原和治 西山女児高等小学校 西崎(生田)花世 西川文子 西村亜希子 西村陽吉 誠之小学校 谷中村 谷崎潤一郎 賀川豊彦 赤旗事件 赤木桁平 赤電車 足助素一 足尾鉱毒事件 跡見花蹊 軍神広瀬像 辻まこと 辻潤 辻美津 近藤千浪 近藤憲二 近藤栄蔵 近藤真柄 逸見斧吉 ケ夢仙 里見ク 野上弥生子 野上彌生子 野上素一 野上茂吉郎 野上豊一郎 野依秀一 野依秀市 野坂参三 野村つちの 野沢重吉 野澤笑子 鈴木厚 鈴木文治 鎌田慧 長塚節 長尾豊 長嶋亜希子 長谷川時雨 門司港駅 関門連絡船 阪本清一郎 阿部次郎 阿野徳次郎 陳独秀 陶山篤太郎 青山義雄 青山菊栄 青木穠 青木繁 青柳有美 青鞜 頭山満 馬場孤蝶 高山義三 高島米峯 高島米峰 高嶋米峰 高木信威 高木顕明 高村光太郎 高橋悦史 高津多代子 高津正道 高畠素之 高野松太郎 鳩山春 鶴見俊輔 鶴見和子 鶴見祐輔 黄凌霜 黒瀬春吉 鼠島

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1955年生まれ。早稲田大学法学部卒業。『週刊SPA!』などの編集をへてフリーランスに。著書は『「週刊SPA!」黄金伝説 1988〜1995 おたくの時代を作った男』(朝日新聞出版)『秩父事件再発見』(新日本出版社)など。
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