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第350回 弾丸 [2016/09/15 23:01]
文●ツルシカズヒコ
一九二一(大正十)年九月九日、夜の十時、野枝は堺真柄とともに警視庁特別高等課に出頭させられた。
『東京朝日新聞』(九月十日)によれば、野枝と真柄は高津正道の妻・多代子とともに一時間ほどの取り調べを受け、多代子はそのまま検束され、帰宅を許された野枝と真柄は高津夫妻に差し入れをして引き取った。
そのころ『お目出度誌』という謄写版刷りの小冊子が出回っていたが、それには縦に読めばなんでもない文句を横に読むと不敬なも..
第346回 赤瀾会講習会 [2016/09/12 17:14]
文●ツルシカズヒコ
一九二一(大正十)年七月十八日から五日間、麹町区元園町の旧社会主義同盟本部で、赤瀾会夏期講習会が開催された。
岩佐作太郎、堺利彦、守田有秋、山川菊栄らの講師陣に交じり、野枝と大杉も講演した。
野枝は七月十九日、第二夜の講師を務めた。
大杉豊『日録・大杉栄伝』によれば、演題は「職業婦人について」。
「女房としては実にけしからぬ」と云はれても、立派な女房である野枝氏が矯羞を含んだ調子で、産業..
第344回 百円札 [2016/09/08 21:29]
文●ツルシカズヒコ
野枝は『労働運動』二次十二号(一九二一年六月四日)の外国時事欄に「英国炭坑罷業形勢一転す」を書いた。
一九二一(大正十)年六月十一日、神田区美土代(みとしろ)町の東京基督教青年会館で、赤瀾会主催の婦人問題講演会が開催された。
「堺真柄嬢演壇に立ち 警官の眼物凄い 久津見秋田石川氏の演説に 目を瞑つてゐた官憲も」という見出しで、 『読売新聞』が報じている。
講演会は午後一時から始まったが、聴衆は学..
第340回 赤瀾会(一) [2016/09/03 13:44]
文●ツルシカズヒコ
一九二一(大正十)年四月十八日、神田区美土代(みとしろ)町の東京基督教青年会館で、暁民会主催の文芸思想講演会が開催されたが、小川未明、江口渙、エロシェンコらに交じり、野枝も「文芸至上主義に就いて」という演題で講演した(大杉豊『日録・大杉栄伝』)。
目的は資金稼ぎだったが、聴衆約千二百人の大盛況だった。
四月三十日、近藤栄蔵が東京を発ち上海に向かった。
コミンテルン(第三インターナシ..
第328回 アナ・ボル協同戦線 [2016/08/20 15:06]
文●ツルシカズヒコ
第二次『労働運動』で政治面を担当した高津は、早大時代に「暁民会」を設立し、右翼の猛者学生を向こうにまわして血を流したこともあるが、『近藤栄蔵自伝』によれば、『労働運動』においても筆よりはむしろ行動の男だった。
伊井敬(近藤栄蔵)の「ボルシェヴィズム研究」は、労働運動社外の無政府主義者からの批判もあったが、日本で最初の順序立てたロシア革命紹介記事として注目された。
近藤憲二はアナ・ボル協同戦線を具体化した第..
第327回 日本の運命 [2016/08/20 14:26]
文●ツルシカズヒコ
一九二一(大正十)年一月二十五日、週刊『労働運動』(二次一号)が発行された(日付は二十九日)。
タブロイド版、十頁(次号からは八頁)、定価は十銭、年間購読料は五円。
大杉豊『日録・大杉栄伝』によれば、発行部数は二千〜四千部。
一面トップには大杉が書いた社説「日本の運命」と約四千字の英文欄「THE RODO UNDO」があり、「THE RODO UNDO」は日本の労働運動を海外に紹介するためのも..