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第271回 クララ・サゼツキイ [2016/07/02 22:34]
文●ツルシカズヒコ
大杉豊『日録・大杉栄伝』によれば、一九一八(大正七)年十一月一日に開かれた同志例会で、外国の新聞や雑誌の情報を入手していた大杉は、近くドイツで革命が起きることを予見したという。
ドイツでは十一月三日にキール軍港の水兵の反乱が起き、十一月九日に皇帝が退位、ワイマール共和国が誕生する革命が進行中だった。
ドイツが連合国との休戦協定に調印し、第一次世界大戦が終結したのは十一月十一日だった。
十一月十五日..
第268回 無政府主義と国家社会主義 [2016/06/30 10:50]
文●ツルシカズヒコ
野枝は『新日本』十月号に「惑い」、『民衆の芸術』十月号に「白痴の母」を寄稿している。
以下は「白痴の母」の冒頭である。
裏の松原でサラツサラツと砂の上の落松葉を掻きよせる音が高く晴れ渡つた大空に、如何にも気持のよいリズムをもつて響き渡つてゐます。
私は久しぶりで騒々しい都会の轢音(れきおん)から逃れて神経にふれるやうな何の物音もない穏やかな田舎の静寂を歓びながら長々と椽側近くに体をのばして……..
第263回 戯談 [2016/06/28 16:34]
文●ツルシカズヒコ
一九一八(大正七)年四月七日、赤坂の福田狂二の家で「ロシア革命記念会」が催された。
広義の社会主義者の内輪の集まりだった。
堺利彦、大杉栄、荒畑寒村、高畠素之といった各派の顔合わせであり、馬場孤蝶、当時まだ早稲田の学生だった尾崎士郎なども出席していた。
和田久太郎『獄窓から』(「村木源次郎君の追憶」)と近藤憲二『一無政府主義者の回想』(「村木源次郎のこと」p78~79)が、この会合について言及して..
第225回 新婚気分 [2016/05/28 18:52]
文●ツルシカズヒコ
『神近市子自伝 わが愛わが闘争』には「私が葉山の宿に着いたのは、夜になっていた。大正五年十一月八日のことである」と記されているが、「十一月八日」は十一月七日の誤記である。
日蔭茶屋に着いた神近が、出て来た女中さんに「大杉さんご夫妻はみえていますか?」と訊ねると、出で来た女中さんは無邪気にみえていると答え、そのまま奥二階の部屋に案内した。
廊下の唐紙は開いていた。
「お客さまでございます」
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