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2017年05月16日
女王はかえらない
ご無沙汰でしたが
まあ、ぼちぼち。
降田天著『女王はかえらない』
第三十回
『このミステリーがすごい!』
大賞を射止めた作品です
大きく3部構成になっており
特に2部からミステリーの
色が出てきますが……
個人的にミステリー関係なく
非常に濃くて
つくりこまれた作品だと
思います
勿論ミステリーとしても
非常に秀逸な作品で
読了後もう一度
目をかっぴらいて
読み直したくなるほど
衝撃的な
ラストではありますが
それまでの伏線と
なっている
針山小学校の
子ども達が
描かれた
第一部も中々に
心を抉ってくる
出来栄え
一部だけでも十分、
満足できる位……
それだけに
2部、3部の満足感は
半端ではありませんが!
各学年2クラスしかない
針山小学校の
三年一組
そんなクラスの
「女王様」がマキ
圧倒的な権力を持って
何かを決める時には
必ず彼女の声が
鶴の一声となる
彼女の
トレードマークは
いつも髪に着けている
ハートのパッチンピン
ハートのパッチンピンを
つけていいのは
マキだけ。
「階級」の高い
女子は星柄の
パッチンピンを
着けることを
許され
それより下は
ストライプや
チェック
さらに下は
無地……
女の子たちは
少しでも
マキに気に入られようと
そうすることで
スクールカーストで
少しでも上位へ
食い込もうと
必死です
そんな三年一組は
そのまま持ち上がりで
四年一組になり、
今までと同じように
マキによって
クラスが支配
されていくのだと
「オッサン」こと
語り手となる「ぼく」
は思っていたのですが……
始業式にやってきた
転校生エリカ
東京からやってきた
彼女は、
田舎のぼく達には
遠い世界
英会話とピアノと
バレエを習い
パッチンピンではなく、
バレッタを髪につけ
ふんわり微笑む
挨拶に来ない転校生に
しびれを切らした
マキが
「なんでパッチンどめ
着けないの?」
と苛々と詰め寄ると
「へぇ、今、
流行ってるんだ。
前の学校では、
三年生の夏頃に
流行ってたよ」
何気ないような
一言であっさりと
マキを言い負かした
エリカの登場に
クラス内の体制が
徐々に変っていき……
基本的にはマキにも
エリカにも
我関せず、
「変わり者」という
キャラクターと
なることで
スクールカーストから
外れて
クラスの中での
激しい権力闘争を
眺める「ぼく」
そんな「ぼく」視点は
冷めているのですが
それゆえに
彼女達の残酷さを
非常に克明に
映し出します
権力闘争の中心に
なっている
エリカとマキや
その取り巻きだけではなく、
一見関係なく
遊んでいるだけの男子や
「ぼく」のような
はずれ者も確かに
関わっていく中で
目まぐるしい毎日が
過ぎていくクラス
元々はマキに
最も気に入られていた
一人「ミッキー」
どこか不気味な
いじめられっ子「モック」
クラス内での問題
いじめ全てを
見ない振りで
通す担任の先生
そんな担任の先生に
やたらと懐いている
「コージー」
そして、「ぼく」の
幼馴染で
誰にでも優しく
正義感の強い「メグ」
様々な思惑を含んだ
クラス全体を巻き込んで
エリカとマキは
闘争を繰り広げ……
とある決定的な事件に
より、その闘争は
終わりを迎えたかに
見えましたが……
相手をどこまでも
どこまでも
傷つけようと
躍起になる……
そうすることが出来る
小学生
無邪気で単純で
感情的で自分が一番
であると絶対の
自信を持っているからこそ
相手に対して
ぶつけることの出来る
直接的な言葉の暴力
嫌がらせ……
子どもならではの
目を覆いたくなるような
残酷さ。
まさに惨状と化した
クラスはどうなってしまうのか……
スクールカーストを
モチーフとした
話というのは
珍しい訳では
ないのかもしれませんが
語り手が完全なる
傍観者である「ぼく」
であるという点
そして、女子同士による
激しいいがみ合いの
傍ら、どうやら
他のクラスメイトによって
引き起こされたらしい
小さい(しかし「ぼく」達に
とっては大きい)事件
エリカとマキとの対立も
見応えはあるのですが
圧倒的な力を持って
互いに傷つけ合う彼女達は
実は、物語の中心にはいない
物語の中心は
あくまで四年一組。
おそらく、ここが
読者に読ませるのでは
ないか、と思います
そうしてがっくりと
気力を吸い取られた
第一部に続く
第二部、第三部は
まさにミステリー
一部で明かされなかった
伏線も回収され
心の奥におぞましさを
存分に刻んで
物語は幕を閉じます
とにかく、満足感が
すごい作品です
本当に、一部だけでも
十分すぎるくらい
お腹一杯なんですもの
それに被せてくる
第二部、第三部の
破壊力がまたすさまじい
是非とも
読んでみてください
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2016年09月24日
ミミズクと夜の王
気を抜くとしばらくぶりに
なってしまいました。
お久しぶりです。
さてさて珍しく?
ライトノベルです
紅玉いづき著
『ミミズクと夜の王』
いやね、白状しますと
少しだけ、この本
取り上げようか
迷ったんですけれども
いやぁ、でも
怒涛の後半まんまと
掴まれて
涙ぐんでしまったので笑
このお話は、
まだ読書に慣れていない
うーん……
もっと平易な
お伽噺から
ようやく抜け出すか
どうか……
くらいの少年少女に
紹介したいですね
物語は王道も王道
王道でしかない
設定も、不幸な少女と
夜の王(魔王)との
出会い
かなり、ベタ。
何だかんだで
少女を助けてくれる
サポーター的な
存在もちゃっかり
存在し
人間を嫌うはずの
夜の王が
なぜか少女を
殺しはしない
良く聞く言葉を
使えば
ご都合主義
でしょうか?
中盤までは
その主人公の
口調もあいまって
少し読みずらいなぁ
とも思ったのですが
なぜこう惹き込まれて
しまったのか
解説有川さんの
言葉で納得しました
これは、平易な文章で
綴られるお伽噺のような
物語なんですね
だから、読書好きでかつ、
深くて複雑ながらもきちんと
組み立てられている
物語が好きな方は
あまりむいていないのかも。
突っ込みを入れだしたら
キリがないんです
でも、私たちが幼い頃
初めて「シンデレラ」の
物語を聞いて
都合よく現れた魔法使いや、
シンデレラが「偶々」
忘れたガラスの靴が
他の魔法と異なって
消えることなく
それが彼女の幸せに
当たり前のように
繋がったことを
疑問に思わなかったように……
この物語はそんな
ところへ突っ込みを
入れつつ読むお話では
ないんですね
ここまで、ひねらんかね、
という位ひねらないからこそ
勢いがあると言うのでしょうか
あとがきで
作者は
大人になれば
忘れてしまうお話で
構わない
その一瞬だけ
心を動かすものが
書きたかった
とおっしゃられて
います
うん。
分かる。
このお話はまさに、
そんな物語
いいね。
大人になっても
こういう物語を
読んで平気で
涙ぐめるというのは
我ながらいいね、
なんて自惚れて
しまいました
これから先も
そういう単純さ
持っていたいような
気がします
思春期か、子どもの頃に
読んでいたら、
一生大事な本に
なっただろうな、って
思います
私には、私の、
子どもの頃に読んで
今でもとっても
大切な本が
何冊かきちんと
存在しているのです
けれどもね。
そんなこと言いながら
読了後しばらく
たつと、また
読みたくなるような
魅力がこの
物語にはある
何と言いますか、
何がどうとかではなく
好きだなぁ、と
思う物語
素朴ですが
何だかとっても
大切なものを
含んでいるような
気がする、
そんな作品です。
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2016年09月05日
くちびるに歌を
おはようございます。
折しも、テレビで合唱コンクール
のニュースが流れていましたので…
中田永一著『くちびるに歌を』
Nコンと言われて、
何のことか、分かりますか?
NHK全国学校音楽コンクールの
略称なのだそうです。
合唱部の高校生達が、
一番の目標にして
出場するコンクール
課題曲は、そのコンクールのために
毎年書き下ろされるのだとか。
テレビの前で、録画された
NHKによる発表番組を
固唾を飲んで見つめる生徒達…
そんなところから、
物語ははじまっていきます
メインとなる主人公は二人。
一人は、理由があって、
「男嫌い」なナズナちゃん。
五島列島にある、
五島高校に通うナズナは、
そこで、合唱部に所属しています。
合唱部は女子のみ。
女声合唱のクラブなんですね。
ところが、顧問の先生が懐妊となり、
代りに美人な柏木先生という
先生が臨時の顧問として
やってくることになる。
そして、柏木先生を目当てに、
合唱部へ男子が突然入部をはじめ……
混声合唱へと、
五島高校の合唱部は姿を変える
合唱、と聞くと、楽といっては何ですが
大人しいものかと思いきや、
かなりハードで、
全員で心を合わさなければならない、
難しい共同作業です
しかし、先生目当てなだけの男子と、
元から合唱部の女子との
間には合唱に対する
情熱のギャップがありすぎて、
また、男嫌いのナズナは
最初から男子の入部そのものに
拒絶感を露にしたりして、
雰囲気は最悪に。
そして、そんな中、
先生目当てではなく、合唱部へ
入ることになった男の子、サトル
「ぼっち」を自覚している
非常に地味な男の子ですが、
「ぼっち」の裏側には
彼の置かれている
家庭的状況があって……
そんな彼がはじめて入るコミュニティー
はじめて繋がりを持つことになる、
合唱部の男子
歌う、ということの
優しさが新参者の彼から
少しずつ、語られていく
この雰囲気最悪な合唱部は
ちゃんと、心ひとつに課題曲を
歌えるようになるのか……?
ちなみに、この物語の中の課題曲は、
かの有名なアンジェラ・アキさん
『手紙』です
この歌の歌詞を理解するために、
柏木先生は生徒に未来の自分へ、
手紙を書くことを宿題に出します
様々な悩みを抱えて、
未来に不安を持ちながら
目の前のNコンに向かって
進んでいく高校生が書く手紙とは……?
微妙な思春期の心情が
こまやかに描かれつつ進んでいく物語は
何度も、こう、胸がきゅうと
締め付けられそうになります
ナズナやサトルは、どう成長していくのか。
いや、他の合唱部員たちも、
確かに成長していく、
その様が時に非常に
脆いながらも、眩しい。
やがて迎えるNコン当日……
彼ら、彼女達は、
一体何のために、歌うのか。
歌うという行為の
何かとてつもなく
大きな力が見えてくるラストは
落涙ものです。
青春ものは、本当に、こう、何だか
精神にダメージを負うのですが笑
作品のクオリティが高ければ高い程
本当に、ダメージは大きいのですが笑
なかなか、読まずにはいられませんね
是非是非。
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タグ:中田永一
2016年09月01日
廃市・飛ぶ男
9月です。読書の秋へと
入ってまいりました
こんな季節に
読みたい作品です
福永武彦著『廃市・飛ぶ男』
収録されているのは
「夜の寂しい顔」「影の部分」
「未来都市」「廃市」
「飛ぶ男」「樹」
「風花」「退屈な少年」
の8編
哀しいものは美しい
それ故
哀しいものが
好きなのですけれども
だからと言って
哀しいものが
全て美しい、と
いう訳でもなく
はぁ、と気だるげに
だけれども
十分その世界へ
入り込んで
美しさを堪能できるような
そんな数少ない
作品ではないか、
と思います
表題作の「廃市」
滅んでいく、死んだ町
水の町、田舎
目の前に風景が
浮かぶよう
それも自分の記憶として
浮かび上がるような
そんな、不思議な町が
舞台となって
人間の哀しさ
愛することって
何なのだろうか
擦れ違いというのか、
心の複雑さと言うのか
やりきれないながらも
愛おしいような
登場人物たちの
動きが秀逸です
最後の方では
衝撃的な真相が
明かされたはずで
あるのに、
衝撃が伝わって
こないほど
この作品を読んでいると
心が、すう、と
内省的になって
しまいます
哀しく美しい作品
「飛ぶ男」はうって
変わるようで
鬱々とした雰囲気は
やはり同じ
こちらは、独り
ぐっと、孤独が
語られる
やはり、魅せたいと
思うところで
読者に見事に
魅せているなぁ、と
いう印象です
最後、すこうし、
後ずさりたく
なるような、
そんな迫力があります
個人的には、
「未来都市」と「樹」が
大好きですね
どちらも愛と孤独とが
ぐにゃぐにゃと
世界を歪めそうな
それら二つが
鮮やかに描かれていて
複雑でわからない
登場主人公たちの、
その「分からない」
ところが、魅力とでも
いいましょうか
でも、分かる気も
するんです
哀しいかな。
切実な思いが
迫ってくるようにも
思うんです。
「未来都市」は
読み返してみると
かなりドラマチックな
話の展開になっている
のですけれども
やっぱり、読んでいる間は
ずーっと、静か
本当に、秋風を
感じながら
ゆったりゆったり
読みたい作品なんです
この本に収められている
作品は、それぞれ
似ているようで
似ていないようで
一貫した雰囲気が
あるように思います
静かに夢中に
なれてしまう、と
いうのも魅力です
登場人物たちは、
ぐつぐつと心の中で
孤独に苛まれて
いたり、
不幸な愛を貫こうと
したり、
逆に、そんな自分に
気がついて
はっと目覚めてしまったり。
激しいけれども、
静かな静かな
心の動きが
そのまま哀しく美しい
是非、冬にならない
うちに、じっくり
考えながら
読んでみてください
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2016年08月25日
月夜の誕生日
さてさて、本日はこちら
岩瀬成子 作
味戸ケイコ 絵
『月夜の誕生日』
所謂表紙買いを
してしまった作品。
下鴨神社での
古本市で見つけた
ものですが、
その話はおまけにて。
さてさて、
どうですか、この
美しい絵!!!
お話しも王道かつ
幻想的で
この誕生日会の世界へ
飛んで行って
しまえます。
誕生日の
プレゼントに
赤い洋服と
星のブローチを
もらった
女の子万理
嬉しくてその
洋服を着たまま
眠ります
すると……
夜遅く、誰かが
よんだ気がして
目を覚ました
万理の目の前には
カワウソと
ちょっと欠けた月
いそいで、いそいで、
とカワウソ
慌ててカワウソを
追う万理
川へさしかかると
さあ乗って
とカワウソ
こうして万理が
カワウソに乗って
川の奥へ向かう
絵もですね
非常に素晴らしい
美しくて
大好きな場面です
川の中州へ到着したら
ぽっかり見える
桃色の月の影
今日は月蝕だったの
ですね。
さて、この後
カワウソも今日が
誕生日だから
プレゼントが欲しい
と言い出して
万理はおしい気が
するけれども
星のブローチを
あげます
とってもよくにあう
と言うと
うれしそうに
笑う
カワウソ
すると、つるが
するりと伸びて…
この後現れる
生き物たちに
おしい気はするけれども
プレゼントをあげる
万理
その万理の
やさしさが
どんどん
つるを伸ばしていきます
どこまでも、どこまでも
つるはのびて……
星が散りばめられた
夜空に
月の影
下を見れば蛍でしょうか
ちらちらちらと
地上も光っています
様々なものを
あげてしまって
おしい、という
気持ちだった
少女は
最後になると
気持ちがいっぺんに
新しくなったようで
うれしい気持ちに
同じ誕生日の
生き物たちとともに
夜の空に近づいて
大きく成長した
少女
優しさと
美しさに溢れた
作品ではないか、
と思うのです
表紙を見ていただければ
分かるように
文句なし、美しくって
世界観に溢れた
絵と
それにぴったり
あたたかな物語
素敵
誰かの誕生日に
あげたくなるような
絵本です
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おまけ: 古本市
2016年08月23日
各書名言集(pert36)
本日は名言集でーす
『長い長い殺人』
真面目と真剣は違うぞ
財布目線から、偶に
格言めいた言葉が
飛び出すのもまた魅力
紹介記事はこちら
『光の指で触れよ』
あの人はバカよ。
でも、人は人の欠点を
愛するものだから
この言葉は……!
この作品このキャラクター
だからこそ
さらに胸に…きます!
紹介記事はこちら
『カラスの親指』
人生の失敗の多くは、
この小さな疑問を
見逃すことからはじまる
幸せな生活が一変する
その無念さ、悔しさ
憎しみに満ちた過去と
決別するために
「善良な」犯罪者集団は
どうする……!?
紹介記事はこちら
さてさて、本日は
ここまで。
ではでは〜
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2016年08月21日
背中の勲章
さあて、本日はこちら。
吉村昭著『背中の勲章』
戦争を扱う小説は
案外久しぶりでしょうか?
物語は、
太平洋戦争初期の
昭和17年4月から
はじまります。
主人公である
中村末吉は
玉砕を覚悟で
特設監視艇・長渡丸へ
乗り込みます
彼らの任務は
太平洋において
敵機動艦隊を
発見すること
そして、この任務は
敵を発見した時、
乗組員たちは
死ぬことになる
そんな任務です。
この、死を前提とした
任務に誇りを持って
従事する日本人たちの
姿は、何度見ても
こう、ぞっと
するほどの
真っすぐさで
恐ろしくなります
船上の異様な
雰囲気が
生々しく描かれ
ています。
そして、ついに
敵のアメリカ艦隊を
発見して、
任務が遂行され……
次々と死んでいく
乗組員たち
しかし、彼らは
決して逃げず、
一人でも
敵を殺す、
そのことのみに
執念を燃やしていて……
中村末吉も勿論
死を覚悟し
その悲壮な覚悟は
恐ろしい決意を
彼にさせるの
ですが……
何と、彼は
敵に捕らえられ
捕虜として
生きながらえて
しまうのです
生きて辱めを受けず
この教訓が
中村に重くのしかかり
何度も死を考える
そんな中村は
しかし、死ぬことを
許されない
捕虜になって
すぐの彼のこの
葛藤もまた、
非常に重く響きます
手足を縛られて
死ぬことも出来ず
すぐ傍に敵がいるのに
危害一つ与えられない
そのことを
ひたすら悔やんで
生きることに
意味を見いだせない
常軌を逸しているなぁ、と
思うのですが
当時、あのような
日本人が、
多くいたのであった
ことを考えると
本当に、ぞっとしてしまう
そうして、中村が考えた
捕虜である身を
生かして日本の為に
出来ることとは……
凄まじい愛国心
そして
敵への憎悪
周囲からの情報を
一切断たれて、
本当は
不安に思いつつも
日本の勝利を
信じ続ける
捕虜の人々
時に日本人同士で
起こる争い
日本人を異質な
存在として
時に気味悪がっている
アメリカ軍の人々
中村の心境は
変らないはずなのに
何となく、何かが
変っていく様子も
巧みに描き出されて
います
捕虜になってからの
運命は、彼にとって
悲惨なものだったの
でしょうけれども、
彼の生涯からは
あの戦争の悲惨さが
生々しく浮かび上がって
何だか、考え込んで
しまいます。
日本人捕虜たちに
共通する、悲壮感
絶望感、不安と
敵への憎悪
ストーリー自体も
一転二転して
面白くて
自然と引き込まれて
しまいます。
たとえ、
戦争を舞台の
話なんて、
暗くて重くて
面白くなさそう、
と思う方も
一度手にとって
みてはいかがでしょう?
と薦めたくなる
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2016年08月19日
霞町物語
さてさて本日はこちら
浅田次郎著『霞町物語』
こんなに無骨で
暖かい物語があるとは
読了直後は
そう思いました
同じ舞台、
同じ主人公の
短篇集
時系列に
沿っている、
という訳でも
ないのかな……
今はなき
霞町での
僕の記憶が
それぞれの
短篇集で
語られます
友人とのこと
忘れられない女性
とのこと
そして、家族
とのこと……
高度経済成長
真っ只中で
高校時代を
生きた僕たち
僕たちの
青春の形は
今と全く違って
驚きました
おそらく、
解説の方が
おっしゃるように
実際にあの時代を
生きた方にとっては
まさに「青春」
甘く切ない
描写なのだろうと
思いますが……
炸裂する
フラッシュライト
踊り狂う若者
べったりとポマードで
固めたリーゼント
ピカピカに
磨き上げた愛車
夜な夜なディスコへ
繰り出して……
そんな若者同士での
色恋沙汰を
メインとする
The「青春」
そんな話も
良いのですが
カメラマンの祖父を
中心とした
家族の物語が
本当に、素晴らしい
僕が面食いに
なる原因となった
美しい祖母
頑固で言い出したら
聞かない、
年のためか
ピンボケの写真を
撮るようになっても
譲らない
そのくせ
やっぱり素晴らしい
写真を撮ったりする
そんな祖父
とにかく、この
祖父がね、
もう、素敵なんです
最初はなんて
めんどうくさい
頑固おやじだって
思わなくも
ないのですが笑
彼の写真への
哲学は
本当に胸を撃たれます
スタジオで
被写体となった
お客を笑わせ和ませ
一番いい顔を
撮るカメラの名人
「あっち、ねえ、さん」
という掛け声
孫である僕を
写真に撮って
記録しつづけ
愛弟子となる
僕の父を叱り飛ばし
しかし姉御肌な
祖母には
頭が上がらず
面倒くさい人間味と
優しさ・暖かさに
満ち溢れた
江戸っ子の末裔
最終話「卒業写真」では
僕の友達を撮る時に
友達へ出す指示
そして最後の最後
僕を撮る場面
体力的にも写真を
撮ることが難しく
なってきた彼の
集大成とも言える作品
いやはや見事
おそらく、実際に
この時代に生きた方
にとっては
まさに、胸を締め付けられる
青春物語として
おおいに楽しめる
のでしょうけれども
平成生まれの人間も
十分、楽しめる
無骨なくせに
信じられない程
暖かい物語です
「霞町」を知らない、
という方も
是非是非。
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2016年08月17日
私たちが星座を盗んだ理由
暑いですねぇ
本日はこちら
北山猛邦著『私たちが星座を盗んだ理由』
短篇集です。
収録されているのは、
恋煩い/妖精の学校
嘘つき紳士/終の童話
私たちが星座を盗んだ理由
何といいますか、
中毒性のある
物語ばかりです
まず最初に読む
「恋煩い」
これから秀逸で
ほのぼの、と
いうべきか
ほろ苦い青春、と
いうべきか
まさに、表紙の
何ともメルヘンチックと
いいますか。
儚いような
不安定な、
そんなお話かと
思えば、かなり
こちらの予想を
裏切ってきて
余韻がですね
しばらく
動けなくなる程
最後のふっと書かれた
一文の衝撃力たるや、
見事です。
表紙をもう一度
見返して、
何となく、納得。
そうして、
「妖精の学校」へ
「恋煩い」にさらに
輪をかけて
ファンタジックな
色を見せつつ
それ以上に……
どのお話も、
何とも言えない
ねっとり絡みつくような
雰囲気に呑まれている
うちに、気づけば
とんでもない展開に
なっていて
瞠目してしまうような
話ばかりです
最後の方は
分かっている
はずなのに!
と思うのですが
圧倒的な世界観の前に
なすすべなし。
と言ったところでしょうか
なかなか類を見ない
世界観と言いますか
読了後の余韻
一つ一つのお話の
クオリティが高くて、
一気に読んでしまうのが
惜しくなってしまう程
表題作を読み終えた
後は、様々な意味で
虚脱感に襲われます
この虚脱感がまた
心地よかったりして
どのお話しも
本当にうまく
まとめられていて
もっと読みたい!
と思わせられる
大満足の一冊です
是非是非。
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2016年08月14日
命売ります
さて、本日はこちらです
三島由紀夫著『命売ります』
三島由紀夫さんの
作品は今までにも
いくつかご紹介しましたが……
それらとかなり
毛色が違います
何と言いますか……
どなたでも楽しく
軽くさくさく読めちゃう
そんな、通俗小説です
けれども、やっぱり
主人公は三島だなぁ…。
主人公は突然
生きていることに
意味を見いだせなくなり
自殺を図るも失敗
そこで、自分の命を
売る、ということを
考えつく。
そうして、新聞に
「命売ります」の広告
を載せて
自分が死ぬ時を待つ
さて、どんなお客が
来るのか……
基本的には
本当にとても読みやすい
ドタバタ劇です
死ぬことに恐れを
抱いていない主人公
羽仁男と、
そんな羽仁男に
命を売ってくれ!と
依頼する珍妙なお客達
「死ぬつもり」で
その依頼に応える羽仁男
けれども……?
この珍妙なお客達含む
羽仁男を取り巻く
キャラクターが
段々と非現実感を
増していきながら
やっぱり、彼らの
抱えている精神的に
暗い部分の
描き出され方は
お見事、という感じで
生々しい
(でも、全然作品は
暗くない)
主人公羽仁男の
一見凡人とは
全く違うようで
ごく普通にも
思える
精神的な動き等も
非常に読み応えが
あります
三島由紀夫の
世界観といいますか
人間観といいますか
そういうものを
味わえつつも
非常に楽しく読める
そんな作品です
三島が好きな方は勿論
今までに三島作品で
挫折したことのあるかたも
是非是非読んでみてほしい
一冊です。
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