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2016年08月12日
中国難民(八月九日)
シリアやイラク、アフリカから入国してくる難民に悩まされているヨーロッパだが、チェコには中国からの難民申請者が数十人いることが判明した。難民申請者たちは、いずれもキリスト教徒で、共産党政権によって人権侵害を受けていることを難民、この場合は亡命のほうがいいのかな、申請の理由にしているらしい。
このニュースを聞いたときには、中国からの飛行機の直行便に乗って集団でチェコにやってきたのかと思ったのだが、実は今年の二月ぐらいから、少数のグループで断続的にチェコに入国し、難民申請をしたらしい。現在その審査が行なわれていて、難民収容施設で生活をしているようだが、チェコ政府も対応に苦慮しているというのが正直なところであろう。これは、二重の意味で、中国からチェコ政府に突きつけられた踏み絵である。
認定する、しないのどちらを選んでも非難にさらされるのは明白なので、一番いいのは、審査中で引っ張り続けることだろうが、法律によると申請から六十日以内に結論を出す必要があるという。必要な場合には特別に延期が可能だというけれども、それでも最大百八十日の延期だというから、今年中には、最初の申請者に関して結論を出す必要がある。正規の期間よりも、延長できる期間のほうが長いのが不思議な気はしないでもないけど。
チェコに住んでいる人間としては、どうしてチェコに来たんだろうと考えずにはいられない。EUの中で中国に擦り寄っているのは、チェコだけではないのだから、ドイツとか、イギリスなんかに行ってもいいだろうに。
ヨーロッパ的価値観、つまりキリスト教に根ざした価値観を標榜する政治家の多いチェコでは、イスラム世界に取り残されたキリスト教徒たちの難民としての受け入れプロジェクトを行なっていた。チェコ側がイラクまで出向いて、キリスト教徒たちの中で、イスラム国に生活を脅かされている人たちの中から、祖国を離れてでもチェコで安全に生活することを希望した人たちを選んで、政府の特別機でチェコまで連れてきていたのだ。
そのプロジェクトは、一部の心ない似非難民に悪用された結果頓挫してしまっているが、このキリスト教徒を救おうというチェコ側の姿勢に、中国のキリスト教徒たちが、難民として受け入れられるかもしれないと希望を抱いたのだろうか。
この状況で、チェコ政府が難民認定を拒否した場合には、国内外のキリスト教関係者から非難を浴びることになるのは間違いない。秘密警察の監視を受け続けているなどの人権侵害を理由としてあげているから、人権団体もうるさいことを言うだろう。そしておそらく、EUやドイツ政府あたりも、他人事だと考えて、人権保護の観点から難民として受け入れることが望ましいとか、非難のコメントを発するのだろう。いっそのこと、認められたらチェコに住まわせることを前提に、決定をEUに投げてしまってもいいのかもしれない。実行不可能なことばかり言いやがるEUの官僚どもに、現場の苦労を味合わせてやるのだ。
その一方で、チェコの判断で受け入れてしまった場合には、今度は中国政府が黙っていないだろう。難民を受け入れるということは、政府が公式に中国で政府による人権侵害が行なわれていることを認定することになるのだから。姉妹都市の協定の中にさえ、中国はひとつしかないことを認定することを押し込んでくるのが中国である。ゼマン大統領が中国に行って結んできた何らかの協定の中に、政府による人権侵害などの内政に関することについては、チェコ政府は関与しないとかいう条項があったとしても不思議ではない。こと中国との関係においては、経済と政治は分けて考えるのが、チェコ政府、ひいてはEUの立場らしいから、そんな条項があっても気にせずサインしてしまうだろうし。
そうすると、ゼマンだかネチャスだか知らないがのおかげで、何とか改善できたらしい中国とチェコの関係が一気に悪化することも考えられる。中国からチェコへの観光客や投資が激減なんてことになったり、チェコから中国への輸出や投資が難しくなったりしたら、国内の企業からの反発は大きいだろう。だから、この観点からも決定をEUに投げちまえと思う。
この手の決定は各国政府の専権事項だというのなら、これを理由に、EUが押し付けようとしている、ドイツ行きを希望しながらドイツで受けいれられない難民の強制的な受け入れを拒否できるし、EUが決めてくれれば、責任をEUに押し付けることができる。EUの方針を決めるばかりで、その実現の仕方や結果に対してまったく責任を持たない姿勢に、辟易しているのはチェコだけではないはずだから、嫌がらせにもちょうどいい。
嫌がらせと言えば、この難民申請自体が、チェコの中国に対する姿勢を確認するための中国政府の秘密警察によるオペレーションだったりしてなんて妄想も頭に浮かばないわけではない。その可能性も含めて、決定はEUに任せてしまおう。
ところで、繰り返しになるがチェコ政府は難民の受け入れを拒否しているわけではない。チェコへの移住を希望する人に対しては、積極的に受け入れている。しかもドイツ何かの自力でたどり着けという傲慢な態度ではなく、チェコ側が難民キャンプにまで出向いて、調査をしたうえで政府の特別機でチェコまでつれてくるのだ。最近もトルコの難民キャンプから数十人の難民を受け入れたというニュースが流れた。
受け入れを前提にチェコまで連れてくるから、申請が認められずに国外退去ということもないし、悪辣な一部を除けばチェコに対する感謝の気持ちを持ってやってくるから、社会に受け入れられようという意欲も強い。EU全体で大々的にやればいいのに。イスラム国の手先が入り込む危険性も減ると思うんだけど。
8月10日18時。
発音の話は一時休憩。8月11日追記。
2016年08月11日
いんちきチェコ語講座(第?+1回)HとChの発音(八月八日)
チェコ語の発音で一番厄介なのは、チェコ人の誇りŘでも、日本人が英語でも苦しんでいるRとLの問題でもなく、実はHとChの区別である。普通のアルファベットでは区別しきれない子音を表記するために、付加記号ハーチェクを使用するチェコ語において、唯一二つのアルファベットを組み合わせて表記するChの音は、チェコ語の教科書によれば、有声音Hに対応する無声音だという。
有声音、無声音というと、何だかわかりにくいが、日本語の五十音表で、カ行やサ行などの濁点をつけることができる音が無声音で、ガ行やザ行などの濁点がついているものが有声音だと考えれば、大きな間違いではない。ただ問題になるのがハ行で、パ行が無声音、バ行が有声音の組み合わせになり、濁点も半濁点もないハ行は浮いてしまうのである。この有声音と無声音の組み合わせに関する発音の困難さもチェコ語にはあるのだが、それについては稿を改める。
例によって日本語の発音から考えてみよう。日本語のハ行の子音は、実は一つではなく三つある。ハ・ヘ・ホの音と、ヒの音と、フの音を発音するときの舌の位置、息の使い方が違うのはわかるだろう。あとはこの中からチェコ語のHとChに近いものを選んで、意識的に発音する練習をするだけだ。まず、日本語のフの発音は、チェコ語を使うときには忘れてしまおう。HでもChでもないのは、もちろんFの音でもないのだから。とは言え、無意識にやってしまうのだけど。
ハ・ヘ・ホを発音するときの舌の位置を確認すると、下のほうにあって、口の中には大きな空間があるはずだ。これがチェコ語のHの音に近いので、舌をこの位置においたまま、ヒとフと発音する練習をして、できるようになったらハヒフヘホを日本語のヒとフが出てこないように発音する練習をする。Hの子音だけの発音は、チェコ語の特質上、語末で子音Hだけを発音することはないので、単独ではなく、hradなどの別の子音の前に来る単語で練習したほうがいい。hradは日本語で書かれた教科書で最初に勉強する男性名詞不活動体硬変化の例として使われる言葉だし、Rの練習にもなるしちょうどいい。
ヒを発音するときには下の先端は下に下がるが、中間は上に盛り上がって、口の中の空間は、ハと発音するときよりも、狭くなっているだろう。この音が、チェコ語のChに近い。日本語ができるチェコ人の「ヒ」の発音が、ときどき母音が消えてChだけになってしまうこともあるので、ほとんど同じだと言ってもいいのかも知れない。
とまれ、このヒと言うときの舌の位置で、ハヒフヘホという練習をするのだが、注意するのはヒャヒヒュヒェヒョと拗音化しないようにすること。拗音化しても、Hとの違いは出せるので、そんなに気にしなくてもいいような気もする。こちらはHと違って語末などでも使われる音なので、子音だけを単独で練習してもいいけど、子音だけを発音するのは難しいから、形容詞の複数の二格など、活用語尾によく出てくる「ých」で練習するのがいいだろう。息を吐きながら「イー」と長く発音し、舌の先端を上に曲げて息の流れを止めてフと言う練習である。
舌の位置なんか意識して発音できないと言う場合には、Hを発音するときには、口の中の奥のほうで音を作ることを意識して、Chは前のほうで音を作る意識をして発音するといい。この説明だと却ってわかりにくいかもしれないなあ。とまれ、Chを発音するときに、あまりに前で音を作ると日本語のフの音になってしまうので注意が必要である。
以上のようなことを考えながら、発音をし分けているのだが、完全に正しい発音をしているかどうかは、チェコ人のみぞ知るである。そしてRとLの場合と同じく、自分の発音を耳で聞いて、聞き分ける自信はまったくない。普段話すときに問題なく使えている言葉であっても、つづりを覚えていないと、どう書くのかわからず、メールなんかで使うたびに辞書を引くなんてこともある。当然チェコ人の発音を聞いても、区別はできない。
それにHとChは有声音と無声音のペアをなしているので、理論上は、HをChで、ChをHで発音しなければならない場合も出てくる。そもそも、日本語のハの音とヒの音の関係が、カとガ、サとザなんかの関係と同じだと認識すること自体が、不可能に近い。その分、RとLの問題よりも厄介なのだ。
さらに日本人にとって厄介なのは、カタカナ表記をどうするかという問題である。ハ行に関る音の中でFの音は、まったく同じにはならないがフで、母音が付く場合にはファフィフフェフォで書き表せばいい。HとChの音をどう表記するかが問題である。
個人的には、日本語のカタカナ表記は子音だけを音写するときにはウ段のカタカナで書くという原則があるので、どちらもフで書いて、母音が付いたものもハヒフヘホで書き表すようにしている。ただHの子音をハやホで書く人もいるし、Chをヒで書く人もいる。自己流の表記法でも、カタカナのフは、いくつもの音に対応させることになるので、カタカナ表記からチェコ語の表記に戻すのが大変である。ルビつきの教科書を使っていると、チェコ語の単語をアルファベットではなくカタカナで覚えていることもあるし。カタカナ表記というものは、便利なものではあるのだけど、厄介な部分もあるのだ。
8月10日10時。
RとLより難しい分、書くのも難しかった。8月10日追記。
2016年08月10日
いんちきチェコ語講座(?回目)RとLの発音(八月七日)
金曜日にサマースクールに来ている知人とリーグロフカで、ジェザネー・ピボを飲んでいたら、チェコ語の発音について書くように求められたので、またまたいい加減なことを書き散らしてみる。ジェザネー意外ときれいに分かれていたし。
チェコでも日本人のRとLの発音の問題は知られているようで、サマースクールの発音矯正教室の日本人向けのプログラムでも取り上げられるほどである。ただ、ここで気をつけなければいけないのは、外国語イコール英語の日本では、日本人はRの発音ができないと言われるが、チェコ人にとって日本人のラリルレロはRに聞こえることが多いという事実である。
多いというのは絶対だとは言い切れないからなのだが、日本人のラ行の音の発音は個人差が大きいし、同じ人でも言葉によってばらつきがあって、厳密にいえばチェコ語のRでもLでもない音を発音している。私自身の場合には、RとLの中間で発音するのか、チェコ語で話すときに、あまり意識しないで発音をすると、Rに聞こえる場合もあれば、Lに聞こえる場合もあるようだ。腹が立つのは大体間違ったほうに聞いてくれることなんだけど。
だから、RとLの発音を区別するためには、まず自分の日本語で普通に話すときのラ行の音が、チェコ人にはどちらに聞こえるのか、聞こえやすいのかを確認しておく必要がある。聞こえやすい音のほうはとりあえず日本語風に発音しておいて、もう一つの音を発音するときに、意識して違う発音をすれば、完全に正しくはなくても聞き分けてもらえる発音はできるようになる。チェコ人だってある程度の個人差はあるのだから、これで満足してしまってもいいだろう。
問題は、言葉によって発音のばらつきがある場合で、その場合には両方意識して発音しないといけないので、最初はちょっと大変かもしれない。私自身も多分英語などの勉強でRとLの発音を学んでしまったせいだと思うが、何種類かの発音を無意識に使い分けているようである。ラ行の音の位置によっても違うし、しゃべり方によっても違うような気がする。気がするとか、ようだというのは、自分の発音を自分の耳で聞いても違いがよくわからないからだ。
それで、ラ行の音を発音するときの舌の位置に注目してみた。上の前歯の裏側の先端から付け根にかけての部分に下の先端を当てて発音する場合、もっと上の部分に当てる場合、当てずに口蓋部との隙間を狭くする場合があるかな。そして、舌をゆっくり意識して動かす場合と、息を吹き込むような感じで舌先を勢いよく動かすような場合があるんじゃないかな。音韻学の専門家ではないので、こんな説明でいいのかどうかはわからないが、RとLを意識して発音し分けなければいけないときには、この感覚を基にしている。
Lを発音するときには、舌を前目の位置、前歯の裏側ぐらいに当ててゆっくり引き離しながら発音する。ゆっくり過ぎたり、離さなかったりすると、ワ行の音に近づくようなので注意が必要かな。多分これを突き進めるとポーランド語のLにハーチェクの付いた子音になるんじゃなかろうか。ポーランドの川の名前が「ビスラ」だったり「ビスワ」だったりするのも、昔は「ワレサ」だった人物の名前が「ワウェンサ」になったりするのもLとWの間の音だからなのだろうか。ちなみにチェコの一部の方言でもLの音をワ行に近い音で発音するところがあって、チェコ人でも聞いて理解するのが大変だという話を聞いたことがある。
Rのほうはもう一つの極端、つまり舌の位置を後ろに下げて、もしくは口蓋に当てることなく、息を吹き込むことで舌の先端を動かすことで発音する。どうしても巻き舌っぽくしたいときには、舌を曲げて先端をできるだけ後ろに持っていってから発音するようにしているのだが、正しく巻き舌の音になっているかどうかは、発音している本人にはわからない。
こんな感じで、必要な場合には、そして表記がわかっている場合には発音し分けているのだけど、チェコ人の耳にはどう聞こえているのだろうか。自分では音が違うような気はしても、聞き分ける自信はまったくない。
そうなのだ。RとLの発音の問題は、いや、一般に発音の問題は、自分自身がどう発音するかだけでは終わらないのだ。他人の発音を聞いてRなのか、Lなのか、聞き分けられるようになって初めて、RとLの発音の問題が解決されたと言える。しかし、これはRでもLでもラ行の音で聞き取ってしまい、外来語として受け入れる場合にもラ行のカタカナで済ませてしまう日本語を母語としている我々には、至難の業だろう。特別に耳のいい人なら可能かもしれないけど。
日本ではチェコ語の教科書にもカタカナでルビが振ってあるから、ついついカタカナで日本語のラ行で発音してしまう。最近はRをひらがなで表記して、Lとの区別をするという工夫がなされた教科書もあるようだが、これはどう考えても逆だろう。RとLを比べるとLのほうが軟らかく発音されるのだから、軟らかいひらがなで表記したほうがよさそうだ。ここにも日本人ができないのはRの発音だという思い込みがある。
個人的には、このRとLの聞き分けは諦めた。諦めて、自分の知っている語彙から文脈によって判断することにしている。カタカナで書いたら同じ「フラット」になっても、hrad(城)とhlad(空腹)は、使われる場面がまったく違うので、聞こえてきたのがRかLかなんてあんまり気にしなくてもいい。問題は、知らない言葉が出てきたときと、耳で覚えてつづりを知らない言葉が出てきたときなのだが、その場合には、もう外国人である特権を生かして、質問するだけである。
以上が、我がRとL問題に対する姿勢なのだけど、リクエストには答えられているだろうか。
8月8日12時。
確か黒田龍之助師の著書にRの前に、TとかPをつけて発音の練習をすると、Rの音が発音しやすいということが書いてあった。ただね、私みたいな人間が、そればっかりやっているとね、plzeňがprzeňになって、tlakがtrakになってしまうことがあるのだよ。8月9日追記。
楽天でも購入できるようになっていたので、キャンセルになる可能性はあるとは書いてあったけど、下巻は楽天ブックスのものを載せる。
2016年08月09日
サマー・スクール驚愕の改善(八月六日)
金曜日に、日本からサマースクールに来ている人たちと会って、少し話を聞かせてもらった。そうしたら、サマー・スクールの内容も運営も、信じられないくらいの大進歩を遂げていて、こんなことがオロモウツで実現できたのかと思わず驚きの叫び声を挙げそうになってしまった。良くも悪くも手作り感いっぱいで、よく言えば臨機応変、悪く言えば行き当たりばったりだった運営が、変わってしまったというのには、称賛したい気持ちもあるけれども、どことなく寂しさを感じてしまうのも否定できない。
まず、最初のクラス分けのテストからして、一つ受けてお仕舞いというのではなかったらしい。初級のペーパーテストを受けて、その結果を基に口答試験があって、それで問題がないと判断されたら、中級のテストを受けてという風に何段階にもわたって受講者のチェコ語のレベルを確認するようになっていて、クラスも参加者が100人ほどしかいないにもかかわらず11に分けられていて、どのクラスも多くても十人ほどだという。
一年目のクラス分けのテストは、日本で一年も勉強していればほぼ完璧に答えられるような簡単なもので、面接などなかったし、期日までに到着できなくて、自分で勝手にクラスを選ぶ人もいた。いやクラス分けのテストを受けた人でも、クラスを移動する人は非常に多かった。二年目は多少改善されたとは言え、クラス分けのテストは二種類しかなく、適正クラスを細かく分けれらるようなものではなかった。一クラスの人数も、少ないところではドイツ語で教えるクラスで四人というのがあったのに、多いところは廿人ぐらいなんてところもあって、ばらばらだった。
午前中の授業以外のプログラムも充実していて、午後にチェコの歴史や文学などの講義が行われるのは昔と変わらないが、それに加えて、文法が苦手な人の補講や発音矯正のためのクラスも作られているらしい。文法が苦手な人のための補講は、結構スパルタで、動詞に合わせてさまざまなタイプの名詞を必要な形に格変化させていくというドリルを、次々に出席者に当てながら進んでいくのだという。これ長く続けると頭がくらくらしてくる練習である。何度も何度も繰り返しているうちに自然に変化させられるようになるということなのだろうけど、そこまで行くのは大変だろうなあ。ただ、三格なら三格の活用語尾としてどんなものがくるのかを覚えるためには必要な練習である。
発音の矯正のほうは、少人数で先生のところに行って、うまく発音できていない音について繰り返しテキストを読み上げさせて、おかしな点を指摘して修正するという形で進めるようだ。文法の補講は自力でもやれなくはないけど、こっちはちょっとうらやましい。しかも、日本人なら日本人の苦手な発音というものがわかっていて、例えばRとLとか、それに合わせた教材が準備されているというから、感動ものである。
師匠の話では、昔チェコ語自体は上手なのにRとLの発音がどちらも同じになってしまう日本人がサマースクールにいて、授業中に指摘しても直らないということをサマースクールの校長にぼやいたら、校長が授業中にその人だけを呼び出して直接指導に乗り出したことがあったらしい。直接指導から戻ってきたその人のRとLの発音は、指導の前からは変わっていたけれども、どちらも同じ発音になっているという点では変わっていなかったという落ちが付く。両方Rで発音していたのがLで発音するようになっていたのかな。そして、サマースクールが終わって日本に戻ったその人からの礼状に「自分の英語の発音のどこが悪かったのかやっと理解できました」なんてことが書いてあって、師匠たちはチェコ語の発音じゃねえのかよと憤慨したというのだけど、師匠の話なのでどこまで信じていいものやら。
他にも夜の映画上映が行なわれているのは当然にしても、参加者がチェコ語での演劇に挑戦するワークショップがあったり、モラビアの民族舞踊のレッスンがあったりと、それって本当にオロモウツのプログラムなの? と言いたくなってしまう。プラハにしか行かず不満だった真ん中の週末の小旅行は、今年はリベレツなどの北ボヘミアを回るというから、昔もこうだったら、このひねくれ者もキャンセルしてオロモウツに残るなんてことはしないで、参加していたに違いない。
食事に関しては、朝食と昼食は、大学の学食が営業していて、そこで食べられるようになっていて、夕食の分だけどこでも使える食券をもらったらしい。昔は、大学の学食は夏休みは閉鎖中だったし、朝食は放置されて、昼食、夕食用の食券なんてサマースクールの事務局の手作りだったのに。宿舎が遠かったから、朝食を学食でと言われても利用しない人が多かっただろうけれども。
そんな話を聞いたのは、オロモウツ第三の醸造所付きビアホールのリーグロフカだったのだけど、最初に行ったときより、ビールの種類が増えていた。ジェザネーもかなり上手に切れていたし、黄金色のレジャークも飲めるようになっていて満足度が上がっていた。入り口の看板も完成していたし、おつまみ系の料理も充実していたし、使う機会が増えそうである。
8月7日12時。
以前、紹介したアロイス・イラーセクの『暗黒』が出版されhontoで購入できるようになっていた。楽天ブックスでは購入できない書籍になっていた。これからかな。8月8日追記。
2016年08月08日
ヨーロッパリーグ予選のチェコチーム、あるいはオーストリアのお粗末(八月五日)
ヨーロッパリーグの予選に出場するチェコのチームは、昨シーズンの三位と四位のスロバン・リベレツ、ムラダー・ボレスラフのにチームに、ムラダー・ボレスラフがMOLカップに優勝したおかげで順番が回ってきた五位のスラビア・プラハの三チームである。このうち、スラビアは二回戦に登場して、エストニアのチーム相手にやっとこさっとこ勝ち抜けての三回戦である。
二位のリベレツの相手は、オーストリアのアドミラ何とか、確かウィーンの一地区を本拠地とするチームじゃなかったかな。オーストリアで行なわれた初戦はひどかった。エゴン・ブーフの活躍でリベレツが勝ったので、結果は最高だったし内容も悪くなかったのだと思う。最悪だったのは、スタジアムと運営である。
本来ならこの試合はテレビで見られるはずではなかったのだが、たまたまケーブルテレビでオーストリアのテレビ局が入っているうちのの実家にいて、最後の20分ほどだけ、ドイツ語のコメントを聞いても何のことやらわからなかったが、音なしで見ることができた。しかし、本来なら最後の20分も見られなかったはずなのである。十一時ごろにもう終わっているだろうと、テレテキストで結果を確認したら、この試合だけなぜか終わっていなかった。首をかしげながらチャンネルを変えていると、オーストリアのテレビ局で、サッカーの試合を放送していた。よく見たら、リベレツの試合だったので、そのまま最後まで見ることにしたのである。
サッカーの試合という面では、最後の20分間には、特筆すべきことは何も、いやアドミラの選手が元オロモウツのナブラーティルを突き倒して退場になったの以外は、何も起こらなかった。しかし、突然照明が消えて真っ暗になるという事態が、たったの二十分の間に二回も発生したのだ。二回目は確か90分の試合時間が終わってロスタイムとか、アディショナルタイムとか言われる時間に入ってからで、そのまま終了にしてもよかっただろうに、審判は律儀に照明が戻ってからプレーを再開した。こんなことチェコでも最近は起こらないし、以前起こったときも、比較的すぐ復旧されたと思うのだが、オーストリアではなかなか照明が戻ってくることはなかった。
後で確認したところ、照明が消えたのは二回だけではなく、三回起こったらしい。一回目が一番ひどく復旧まで三十分以上かかったらしい。時間がかかった理由は、電源を管理する部屋の鍵が見つからなかったことだと言うからひどい話である。そのおかげで、最後の20分だけでも見られたから、とも考えたが、こんなことを起こしたチームにはペナルティがあってもよさそうな気がする。しかも試合の終盤には、髭もじゃらの変な変装をしてメッセージらしきものを書いたファンがグランドに侵入するのを放置して、何回目かの試合の中断を招いていていたし。
しかし、しかしである。ニュースによれば、この試合で起こったとんでもない出来事はこれだけではなかったらしい。ハーフタイムには主審が怪我のために続行を断念し、後半から笛を吹いたのは第四審判だったらしい。まあこれは不可抗力で、運営側のミスというわけではないのだろうけれども、オーストリアお粗末過ぎるぞと言いたくなってしまう。
選手の話では、照明が復旧できなかったときには、翌日の金曜日に残った分を続行するというプランもあったらしいのだが、国内リーグならともかく、この手のヨーロッパのカップ戦では、主催者側の開催能力の欠如ということで、没収試合にしてアウェー側の勝利ということにするのが一番いいような気がする。実際リベレツは週末にチェコリーグの第一節を控えていたわけで、金曜日に試合の残りを続行するということになった場合には、国内リーグの日程や結果にまで影響を与えてしまいかねないのである。
いや、リベレツがその第一節でムラダー・ボレスラフに0−3であっさり負けてしまったのは、アドミラとの試合で、試合以外の部分で神経をすり減らしていたことにも原因があるのかもしれない。選手がグラウンドに乱入したファンが、実は自爆テロのために爆弾を身に付けているのではないかと、昨今のヨーロッパの情勢から考えると、そしてこの日のオーストリア側の運営体制から考えても、ありえなくはない想像をして、恐ろしかったとコメントしていたし。
リベレツでの第二戦は、木曜日ではなく水曜日に行なわれた。そのおかげでチェコテレビが放送してくれたのだが、前半は素晴らしかった。積極的に攻めて二点とって勝ち抜けをほぼ確定させてしまったのだから。初戦で大活躍だったブーフがほとんど目立っていなかったのは、相手に警戒されたからなのか、いつもの悪いときのブーフだったのか。後者かな。
後半は、典型的な悪いときのチェコチームで、積極的に前に出なくなり、相手にボールを持たれて、無駄に攻め込まれていた。相手があまり強いチームではなかったので、そのまま問題なく勝ちぬけに成功したけど、リベレツはアウェーで3−0で勝って戻ってきたのに、ホームで守りに入りすぎて延長だったか、PK戦だったかの果てに敗退したという過去があるから、試合が終わるまでは安心も信用もできないのである。
リベレツの次の相手は、スパルタク・モスクワを破ったキプロスのチームになったようだ。チェコのチームとキプロスのチームというと、何年か前にヤブロネツが手も足も出ずに敗退したのを思い出す。リベレツはヨーロッパ・リーグ本戦の経験も豊富だから勝ち抜いてくれると思いたい。プラハとプルゼニュだけがヨーロッパの舞台で活躍するようでは、さびしすぎる。
8月6日12時。
ムラダー・ボレスラフは、一勝一敗だったけど得失点差で敗退。スラビアは二戦とも引き分けだったけどアウェーゴールの差でせこく勝ち抜け。8月7日追記。
2016年08月07日
チャンピオンズリーグ予選のチェコチーム(八月四日)
今日は、ではなくて明日は(建前は大切である)、午後から出かけて書いている時間がなくなるのが明らかなので、さっと書き始めてさっと書き終われるテーマにしよう。ということで、火曜日から三日連続でぼんやりと見ていたサッカーの試合である。ヨーロッパのカップ戦にチェコのチームが出ていないと、あまり興味が持てなくなるので、二チームぐらいには本戦まで進んでほしいところである。理想はチャンピオンズリーグに一チーム、ヨーロッパリーグに一チームなんだけど、贅沢な望みかな。
それではまず、優勝チームのプルゼニュから。このチーム、ブルバが監督だった時代には、本戦では相手が強すぎてても足も出ないこともあったけど、予選では無類の強さを発揮していた。前半は負けていても、後半には別のチームのようになって逆転することも多かったのだけど、ここしばらくそんな強かったプルゼニュの姿は見られていない。
プルゼニュが今シーズン最初の公式戦として臨んだのが、チャンピオンズリーグ予選のリーグ優勝チーム部門のカラバフとの試合だった。カラバフは、どこかで聞いたことがある名前だと思ったら、アゼルバイジャンとアルメニアの間で帰属問題が起こっているナゴルノカラバフ地方の名称から頭に残っていたようだ。もちろんこの地域のチームではなく、アゼルバイジャンの首都バクーのチームらしい。
プルゼニュでの初戦は、特に言うことはない。ゼロゼロで終わったし。バラネクの退場までは、そんなに悪い印象は受けなかった。ただ、去年のシーズンでベテランのライトラルや怪我から復帰したジェズニーチェクをベンチに追いやる活躍を見せたマテユーのできがひどいのが気になった。肝心なところで特に相手にプレッシャーをかけられているわけでもないのに、見方ではなく相手へのパスを連発して、攻撃のリズムを破壊していた。
バクーでの二戦目はひどかった。前半にマテユーのミスからあっさり失点すると、それまで多少はあったチャンスも作れなくなり、後半に入ると相手に決定的なチャンスを何度も作られ、三点、四点は取られてもおかしくない状況だった。審判が怪しいファウルをいくつか見逃してくれたのも大きい。もう駄目だな、こりゃと思っていた80分過ぎそれまで効果的なプレーのできていなかったクレメンチークがコピツのパスからあっさり得点を決めて、同点。試合はそのまま終わってアウェーゴールの差でプルゼニュが四回戦、もしくはプレイオフへの進出を決めた。
このわけのわからない勝負強さは、ブルバ時代に似ているかもしれない。ただ、出場した選手で調子がよさそうなのがコピツしかいないんだよなあ。そのコピツを先発で使わない監督もちょっと気になる。リーグ戦よりも、こっちの予選のほうが大切だろうに。でも、プルゼニュは三回戦を突破したからいいのである。これで最低でもヨーロッパリーグへの参戦は決定したし。
それが適わなかったのが二位でチャンピオンズリーグの予選出場権を得たスパルタである。このチームの試合は、チェコテレビでの放送がなかった関係で見られていないのだが、選手や監督のコメントを聞く限り、結果だけでなく内容の面でも、プルゼニュ以上にひどかったらしい。相手はブルガリアのステアウア・ブカレスト。勝てない相手ではなかったのだろうけれども、プラハでの初戦は1対1で引き分け、二戦目は0対2であっさり敗退が決まってしまった。失点は三点とも同じ選手(名前の読み方がわからん)に決められたもので、対策不足だったのか、相手の実力が上だったのか。
スパルタがまともだったのは、一点取った初戦の前半だけだったという話もあって、それ以降はチャンスらしいチャンスもほとんど作れないまま終わってしまったのだという。これで、スパルタは2005年に最後に本戦に進出して以来、七回連続の予選での敗退が決まった。プラティニの改革で、チャンピオンズリーグの予選が、各国優勝チームの部と非優勝チームの部に分けられるようになって以来、チェコのような弱諸国のチームも本戦までたどり着きやすくなっているのだけど、スパルタは一度も活用できていないのである。今年は二位で非優勝チームの部だから、本戦進出は難しかっただろうけど、三回戦ぐらいは勝ち抜いてほしかった。
気になるのは、プルゼニュのバラネクと並んで、期待の若手DFのブラベツが、二戦目で、監督の言葉を借りればまったく無駄なファウルで二枚目のイエローをもらって退場してしまったことだ。バラネクもそうだけど、一枚もらったら以後は慎重にプレーするもんじゃないのかね。この辺が、候補には挙がっていながら、ブルバがEUROの代表に選ばなかった理由なのかもしれない。
その代表組が、プルゼニュにいるスロバキア代表の連中も合わせて調子が上がっていないようである。チェコ代表は大失敗に終わった今回のEUROの後遺症に悩んでいると言ってもいいのかな。スパルタには、EUROで一度も出番がなくてふてくされていたらしいカドレツが復帰したけど、それでディフェンスが固くなったというわけではないし、無得点に終わったラファタも点が取れていないし……。
さて、今回の敗退を受けて、スパルタの監督シュチャストニーは選手の調子が上がらないのは監督の責任だとのたまっていた。監督交代もありうるということなのかもしれないが、スパルタがなかなか本戦に進めない理由の一つが、監督交代が多すぎることにある。最近はましになったけど、チャンピオンズリーグの予選でだめでも、国内リーグでの成績が悪くても、どちらでも監督交代につながるので、二兎を追うもの一兎をもえずなんてことになっていた。
最後に嫌なニュースを一つ、スポンサーのシノットが撤退して空いていた国内リーグのメインスポンサーが決定し、リーグの名称も変更になった。その名も、「エーポイシュチェニー・リーガ」。書くときには「ePojisteni.cz liga」。いやはや、もはや何も言うまい。いや、言えない。
ちなみに、ネット上で保険に関係することをやっている新しい会社のようである。
8月5日10時30分。
2016年08月06日
看板に偽りあり(八月三日)
まずこちらをご覧頂きたい。オロモウツを中心にもうすぐ開催される自転車のステージレース、チェック・サイクリング・トゥールのHPである。ポスターにあしらわれているのは、どう見てもエティックス・クイックステップの選手である。今年のジャージは青色が濃くなっているから、去年出場したときの写真を使ったものだろう。
それなのに、今年はクイックステップは出場しないのである。いや違うな。納得できないのは、出場しないのにクイックステップの選手の写真を使っていることである。去年出場したし、チェコ人の有力選手がいるし、オーナーチェコの成金だし、今年も出てくれると思っていたのだけどなあ。
多分、これはオリンピックのせいである。オリンピックと日程が近いために、オリンピックに出場する選手がこちらに出られない。完全に同日ではないので時間的には可能だろうが、移動などの時間や調整を考えると現実的ではないだろう。チェコの出場枠がロンドンのときの二人から、四人に増えたのも大きい。
その結果、クイックステップが誇るチェコ人有力選手が二人ともオリンピックに出ることになってしまった。シクロクロスの世界チャンピオンからロードレースに転向し去年はツール・ド・フランスでステージ優勝も果たしたズデニェク・シュティバルと、チェコ期待の若手で今年ツールに初出場を果たしたペトル・バコチの二人が代表に選ばれてしまった。二人にとっては喜ばしいことなのだろうけれども、その結果クイックステップとしては、オロモウツにまで来る価値がなくなってしまったのだろう。
去年はヤン・バルタがいるボラ・アルゴン18も出場したけど、今年はバルタがオリンピックに行くからか出場しないみたいだし、ケーニックのスカイとの交渉もそれで駄目になったのだろう。クロイツィグルはブエルタを優先するからティンコフも駄目。ティンコフは、スロバキア人選手がたくさんいるからスロバキアでの開催だったら出場したかもしれないんだけど。来年一ステージぐらいスロバキアでやればと思ったら、ティンコフ解散するから意味のない想定だった。
ということで、今年のチェック・サイクリング・トゥールの出場チームが正式に発表された。UCIのワールドツアーのチームとしては発表済みのランプレ・メリダに加えて、アメリカのキャノンデールが出場するようだ。このチームってクロイツィグルがいたリクイガスの後身だっけ? 自転車レースのチームは、スポンサーの関係で名前がころころ変わるところが多いのが辛いところだ。
公式ページによると出場チームは以下の20チーム。チェコのナショナルチームがいないのもオリンピックのせいだなあ。クイックステップの若手育成用のチームもあったはずだが、名前は何だったか。昔はエティックスが育成チームのスポンサーでチーム名にもなっていたのだけど、ワールドツアーチームのスポンサーに昇格してしまったからなあ。
Lampre Merida (It./Pro Team) イタリア
Cannondale Pro Cycling (USA/Pro Team) アメリカ
CCC Sprandi Polkowice (Pol./Pro Conti) ポーランド
Verva Activjet (Pol./Pro Conti) ポーランド
Gazprom Rusvelo (Rus./Pro Conti) ロシア
Novo Nordisk (USA/Pro Conti) アメリカ
Whirlpool Author (ČR/Conti) チェコ
SKC Tufo Prostějov (ČR/Conti) チェコ
Klein Constantia (ČR/Conti) チェコ
Aisan Racing Team (Jap./Conti) 日本
Adria Mobil (Slovin/Conti) スロベニア
Wallonie Bruxelles-Group Protect (Belg./Conti) ベルギー
BKCP Corendon (Belg./Conti) ベルギー
Team Unieuro (It./Conti) イタリア
Parkhotel Valkemburg (Niz./Conti) オランダ
Felbermayr Simplon Wels (Rak./Conti) オーストリア
Tirol Cycling Team (Rak./Conti) オーストリア
Amplatz BMC (Rak./Conti) オーストリア
Metec-TKH (Niz./Conti) オランダ
Tre Berg Bianchi (Švéd./Conti) スウェーデン
読み方がわからないのも多いので、カタカナには直さない。国名だけ付けておく。こうして見るとチェコの国内チームは三つだけか。少ないのかな。
自転車ついでに思いついたことを書いておくと、クロイツィグルのあだ名が、クシジャークであることが判明した。ツール・ド・フランスの解説者が、普通はロマンと名前で呼んでいるのに、興奮するとクシジャークという呼び名を連発していた。いやチェコの国内選手権の中継の時にもこの言葉聞いていたのだけど、交差点(クシジョバトカ)か十字架(クシーシュ)のある場所のことだと思っていたのだ。
クシジャークとは、十字架(クシーシュ)がもとになってできた言葉で十字軍兵士のことをさす。そうか、ドイツ語でクロイツは、ナチスのハーケンクロイツを思い出せば、十字架の意味ではないか。うーんチェコ人のあだ名のつけ方は一筋縄ではいかんな。えっ、ってことは英語だとクルセイダーとか呼ばれているのだろうか。
ちなみにティンコフの同僚のサガンが、スロバキア人選手を引き連れてドイツのボラに移籍するのは日本でも報道されたようだが、クロイツィグルはオーストラリアのオリカへの移籍が決まった。オファーがたくさんあった中から、昔同じチームで走った選手たちの話を聞いて、オリカを選んだのだといっていた。このチーム、世界で「最も楽しいチーム」(別の訳も可)として定評があるらしいのだが、どういう意味なのだろうか。
8月4日10時。
クロイツィグルがブエルタを欠場することが決定した。当初の予定に反してコンタドールが出るから、代わりに欠場ということかな。ツールでは予定外の活躍をしたわけだし。8月5日追記。
2016年08月05日
チェコにおけるビールの消費について――モラビア編(八月二日)
承前
記事によるとモラビアでは一般的にレジャークの割合が高いが、その中でもレジャークが一番飲まれているのがブルノだという。ただし、ブルノはレジャークはレジャークでも、一般的な12度ではなく、11度の消費量のほうがが多く、レジャーク全体で69パーセントだが、11度が40パーセントだというから、残りの29パーセントが12度の消費量ということになる。そうすると10度と12度はどっこいどこいの数字になりそうだ。
ブルノで11度の割合が高い原因としては、ブルノ人の愛郷心が挙げられている。ブルノにあるビール会社のスタロブルノでは、11度の生産販売に力を入れているため、ブルノを愛するブルノ人はスタロブルノの11度を飲むということらしい。ただ、ブルノ人でスタロブルノを愛飲している人なんて見かけたことはないしスタロブルノの11度なんて飲んだことないんだけどなあ。そこまでディープなブルノ人の世界に足を踏み入れたことはないから仕方がないか。
実は、最初にこの部分を読んだときに、11度の消費量を押し上げているのはスタロブルノではなく、ブルノの誇る(らしい)ミニ醸造所つき飲み屋のぺガスじゃないかと疑ったのだけど、ぺガスでは11度は生産していないみたいだから、間違いだった。
では、レジャークの中でも12度の比率が高いところはというと、オストラバである。オストラバでは12度だけで62パーセントである。レジャーク全体で67パーセントだから、11度はわずか5パーセントということになる。オストラバのビール会社であるオストラバルが12度に力を入れているという話は聞いたことがないんだけどなあ。最近オロモウツでは見かけないんだけど、スタロプラメンの子会社になっているんだったかな。
記事の説明では、共産主義時代にオストラバの中心産業だった炭鉱の労働者は、給与の面で優遇されており、普通の人には手を出しにくかった値段の高い12度のビールを飲むことができ、12度を飲むことが習慣となったのではないかという。そして、12度という強めの高いビールを飲むのは炭鉱夫たちにとっての誇りでもあったので、経済状況が悪化してお酒にお金を無駄にかけられる状況ではなくなってからも、12度を飲み続けているのではないかとも書かれていた。
そうすると、モラビア地方の主要都市では唯一レジャークの消費が49パーセントに留まっているズリーンは、共産主義の時代にバチャの城下町であることが嫌われて冷遇された結果レジャークを飲む習慣がなくなったということだろうか。昔ズリーンに行ったときに、ズリーンのビールはないのかと聞いたらないと言う答えが返ってきた。そして一番近いところにあるのは、スルショビツェだと言っていたけど、ズリーンでも見つけることができなかった。
ラデガストの本拠地であるノショビツェでレジャークの消費が49パーセントと半数以下なのはわかる気がする。ラデガストにはあんまりレジャークのイメージがないし。一番有名なのはノンアルコールのビレルだろうけど、これは基本的には瓶だから、集計に入っているのかどうかわからない。
では、我らがオロモウツはというと、モラビアの主要都市ではブルノとオストラバについでレジャークの割合が高く64パーセント。ただ記事の中では取り上げられていないので11度と12度の割合はわからない。チェコ人の知り合いと飲みに行くと、こっちが12度を頼むのに、10度を飲んでいることが多いような気がするんだけど、気のせいか。いや、そいつが10度が好きなだけか。
モリッツなんかの自分の店で醸造したビールを飲ませるお店や、ピルスナー・ウルクエルを扱っているお店が増えているのもレジャークの割合が高くなっている理由の一端かもしれない。まだ飲んだことはないのだけど、オロモウツの郊外にあるホモウトフという地区にもホモウトという地ビールがあって、オロモウツ市内に飲める店があるらしい。手を出すべきか、出さざるべきか、それが問題である。
ムラダー・フロンタの記事についているグラフによると、チェコ全体のビールの消費におけるレジャークの割合は年々増えているようだ。10度の割合が2009年には60パーセント近くだったのに、2015年には50パーセント弱まで下がっている。この変化の仕方から考えると、それ以前には10度の割合が70パーセントとかいう時代もあったのだろう。社会がささやかに豊かになった証拠と言っていいのだろうか。
他にもいくつかのグラフが付いていて、ビールの出荷量が2000万ヘクトリットル、だから200万キロリットルを超えたとか、人口一人当たりのビールの消費量が、143リットルだったとかいうことが確認できる。143リットルということは、普通の500mlのジョッキで286杯ということになるのか。一日一杯飲めば平均を超えられると考えれば、大したことのない数字のようにも思えるし、この数字がお酒を飲めない18歳以下も含めた上での平均であることを考えると大きな数字にも思える。比較対象として日本の数値が知りたいところである。
輸出と輸入の量のグラフも興味深い。チェコで普通に飲める外国ブランドのビールというとスタロプラメンでライセンス生産しているステラアルトワか、モラビア東部で飲めるスロバキアのズラティー・バジャントぐらいだし、輸出が圧倒的に多いのは当然であるが、2010年だけ輸入ビールの量が飛び抜けて多いのが気になる。何があったのだろうか。調べてみたいような気もするが、時間もないので今回はここまで。
8月3日23時。
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日本に輸入されているこれがスタロプラメンでのライセンス生産だとは思えないけど、モラビアのビールが発見できなかったので。8月4日追記。
2016年08月04日
チェコにおけるビールの消費について――ボヘミア編(八月一日)
承前
記事の内容は簡単に言うと、チェコ人がビールを大量に飲むのは全国一律同じだが、地域や町によって好まれるビールが違うという話である。チェコのビールは一般に醸造前の糖度で表され、10度、12度が一般的だが、ビール会社によってはそれ以外のものも生産されている。統計を取るときには、7度から10度までをビーチェプニー(うまい訳語が見つからないので普通のビール)、11度と12度をレジャーク(これは日本のラガービールにほぼ等しいのかな)と分類し、13度以上はその他の特殊ビールとして処理されることが多い。その他の中にはノンアルコールのビールも入る。黒ビールは度数に応じて分類されるのかな。
ちなみに、10度より下のビールは今では滅多に見かけなくなったが、共産主義の時代には、製鉄所やガラス工場などの暑さで発汗が激しく水分補給が重要な仕事をしている人に、支給されていたという話を聞いたことがある。単なる水だけではなくさまざまなミネラル分も入っていて、脱水症状対策の水分補給には最高だったというのだが、アルコール度数が高いと仕事中酔っぱらってしまうので、そうならないように特別に生産されたのが7度とか8度のアルコール分の低いビールだったらしい。当時もノンアルコールのビールはあったはずなんだけど。このビールは仕事中の水代わりという感覚も飲酒運転がなかなか減らない理由の一つかもしれない。朝食にビールを一杯飲んで、車で仕事に行くなんて言っているのもいたし。
さて、今回ムラダー・フロンタがガンブリヌス社から入手した資料によると、飲み屋で飲まれたビールに関して、レジャークの割合がモラビアで高く、ボヘミアでは低くなるという傾向が見られたらしい。
一番驚いたのは、12度しか生産していないピルスナー・ウルクエルのお膝元、プルゼニュが主要都市の中で最もレジャークの割合が低く、43パーセントだったということだった。プルゼニュの人は、ピルスナー・ウルクエルよりも、同じくプルゼニュで生産されているガンブリヌスの10度を優先しているということになるのだろうか。ピルスナー・ウルクエルはプリムスとかいうビールも出していたけど、あれは瓶のみだから飲み屋を対象にしたこの調査には関係なさそうだ。
しかし、ガンブリヌスの人の話では、プルゼニュ近辺では以前から10度の消費量が圧倒的に多く、今回の数字でも以前に比べたらレジャークの消費が増えていると言えるのだそうだ。
次にレジャークの割合が低いのがプラハで、プラハの人は味の面でもアルコール度数の面でも軽い10度を好み、プラハ人だけの統計であれば、チェコで一番レジャークが飲まれないのはプラハになるだろうという。しかし、プラハには観光客が来る。世界中からいい加減にしろと言いたくなるぐらいたくさんの観光客が来る。そのプラハにビールの飲むために(少なくとも目的の一つとして)やってきた観光客たちは、当然(でもないか)ピルスナー・ウルクエルなどのレジャークを大量に消費することになる。
もちろん、どのビールを現地の人が飲んで、どのビールを観光客が飲んだかなんてことは、統計に出てくるわけはないのだが、観光客の多い旧市街を中心にした地域と、プラハの周辺の住宅街、観光客が目当てにするようなものなどのない地域の統計を比べると、観光客の多い地域のほうがレジャークの割合が高いのだそうだ。ビール好きは、たくさん飲めるなら全種類飲むだろうけど、一杯しか飲めない場合には、せっかくだからということで一番いいビールを飲んでしまうよな、やっぱり。
もう一つ考えられるのは、旧市街に住んでいるチェコ人は、金持ちのチェコ人が多いから、見栄を張って値段の高いレジャークを飲むということかな。何せプラハの旧市街には、お昼の定食メニューが300コルナとかいう店が並んでいて、そこで食事をしているのは、観光客だけではないし、そんなところに置かれているのは大抵ピルスナー・ウルクエルである。
ボヘミア地方で一番レジャークの割合が高いのは、リベレツの65パーセントとカルロビ・バリの64パーセントだけど、この二つの町には有名なビール会社はあったかなあ。最近評判が高くオロモウツでも見かけるようになったスビヤニがリベレツに近いと言えば近いかな。でもここのビールを飲ませる店に行ったことがないから、レジャークが中心かどうかはわからないんだよなあ。ビールに関しては信頼している畏友がここのビールは評判倒れでいまいちだと言っているので、あんまり飲む気になれない。カルロビ・バリはよくわからん。今から二十年以上前に行ったときには地元のビールがあったような記憶はあるのだけど……。
有名なビール会社がある町を見てみると、ブドバルで有名なチェスケー・ブデヨビツェはレジャークが57パーセント。レジャークの中に11度と12度があることを考えると、このぐらいの数字だと一番たくさん飲まれているのは10度ということになるのかな。微妙な数字である。ブルノやオストラバに関しては11度、12度別の数字が出ているので、もう少し詳しいデータはないかと思って、ニュースソースに書いてあった、チェコ麦酒麦芽生産者協会のHPに行ってみたけれども、求める数字はなかった。多分この報告書に関係するデータだと思うのだけど。
長くなったのでもう一回。
8月2日16時。
「プラハNo.1ビール!」と言われてもなあ。ブラニークもスタロプラメンの傘下に入って生産もスミーホフのスタロプラメンの工場になったから、スタロプラメンはある意味プラハ唯一のビールなんだけど。一時ベルギーのインベブに買収されていたんだけど、現在はカナダのビール会社の子会社になっているらしい。西欧向けのアサヒ・スーパードライの生産を担当しているのもスミーホフの工場じゃなかったっけ。8月3日追記。
2016年08月03日
チェコにおけるビールの消費について――前史(七月卅一日)
十日ほど前の新聞をぱらぱらとめくっていたら、面白そうな記事を発見した。見出しからして「オストラバ人たちは12度を飲み、プルゼニュを支配するのは10度だ」と、わかる人にはわかる、わからない人にはわからないだろうけれども、ビール関係の記事である。
思い返せば十五年ほど前、オロモウツでチェコ語の勉強を始めたころ、毎日新聞を買っていた。あれこれ手を出すよりは、一つの新聞のほうがいいだろうと考えて、毎朝チェコ語の授業に行く途中の売店で「ムラダー・フロンタ・ドネス」を購入して、授業の後に図書館にこもって勉強と称して眺めていた。文法的なことはともかく、圧倒的に自分の語彙が不足していた上に、チェコ語―日本語辞典には出ていない言葉がたくさん出て来て、まともに最後まで読み通せる記事はほとんどなかった。わからない言葉をメモして授業で師匠に質問するという手もあったのだが、興味を持てるかどうかもわからない記事にそこまでする気にはなれなかった。
ただ、毎日眺めて終わりでは新聞を買う意味がないので、興味を持てそうな記事に関しては頑張ってあれこれ質問をして最後まで読むことにした。選んだテーマの一つはスポーツで、とくにサッカーやハンドボールなどルールがわかっていて戦評にどんなことが書かれるかも大体わかる競技なら、多少の語彙の不足は問題ないだろうと考えたのだ。試合の結果や内容は日本語で読んでもチェコ語で読んでも変わらないはずだし。
たまたま知り合いになった人が大学の体育学部でハンドボールをやっているというので、反則をチェコ語で何というかなど、ハンドボール用語を細かく教えてもらったこともある。クロキ、プロラジェニー、プシェシュラプ、ピボット、パッシブニー・フラなどなど、中には日本語で何と言うのか忘れてしまって考えなければいけないものもある。
そして、もう一つの選んだテーマがビール関係の記事だった。毎日というわけではなかったけれども、さすがビールの国だけあって、ビール、もしくはビール会社に関する記事は意外と多かった。短い記事が多かったのも、初学の者にはありがたかった。もちろん、見たことも聞いたこともない表現が頻出して、短いのにお手上げというものもあったけれども、自分一人で理解できないのなら、理解できる人に質問すればいいだけである。質問を繰り返していれば、そのうちに語彙も増えていくはずだし。
ということで、ビールの記事を見つけたら、どんな長い記事でも、短い記事でも、ノートに書き写して全訳するという勉強?をしていた。そのおかげでベルナルトがベルギー企業の傘下に入ったとか、ピルスナー・ウルクエルが南アフリカビールに買収されたとか、ポーランドでライセンス生産が始まったとか、世界的に名高いジャテツのホップはチェコ国内でのビールの生産にはほとんど使われていないとか、はっきり言ってどうでもいい、普通のチェコ人も知らない情報を知ることができた。よかったのか悪かったのか。
一つだけ読み切れなかった記事があった。新聞ではなく雑誌の記事で「チェコビール」事件と呼ばれる経済犯罪については、経済用語の多さに根を上げてしまったのだった。日本語で読んでもよくわからないのだから、チェコ語でなんて……。この事件は日本の野村證券の子会社だったチェコの金融会社が、ピルスナー・ウルクエルグループの株式に関して起こした詐欺事件で、逮捕者まで出しているのだが、関係者で逮捕を逃れて国外に脱出した人物がいたりして、どんな事件だったのか、本当に詐欺だったのかなどよくわからないことだらけなのだ。それを解説した雑誌の記事をコピーしてもらったのだけど……。
とまれ、師匠や友人知人たちのおかげで、語彙は増えた。増えたんだけど、ビール関係以外では使えない語彙も多くて、チェコ人でもパッと見ではわからず辞書を引く必要があるような言葉、専門用語を覚えてどうしようというのだろう。それで、他のテーマにも目を向けるようになるのだが、それはともかく、ビール関係の記事を読むのだったら、辞書も滅多に使わなくなるまでにそれほど時間はかからなかった。
だから今でもビール関係の記事を見かけると、つい読んでしまう。今回も発見したからにはということで、暑さで頭が動かない中、何とか読んでみた。読んでみたら面白かったので、かいつまんで内容を紹介しよう。
というところで以下次回。
8月1日14時。
本日から三日分の記事の元となった新聞ムラダー・フロンタの記事はここをご覧頂きたい。この記事からどうしてこうなるのという疑問はあるかもしれないけど、書いていたらこうなったので仕方がないのである。昨日の予定では二日分で終わるはずだったんだけど。8月2日追記。
チェコでも見かけたことのないビールだけど、楽天で確認したらプロチビーンで生産されたものだと言う。つまりロプコビッツに買収されて、ロプコビッツごと中国の手に落ちたあれね。プラタンというブランドでビールを生産している会社である。