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2016年08月02日
オロモウツスーパー事情4(七月卅日)
最後に、マクロという特別なスーパーについても触れておこう。オロモウツから東に向かった ビストロバニとベルカー・ビストジツェの間にあるこのスーパーは、レストランなど飲食店向けの業者用スーパーなので利用したことはないのだが、利用するための条件は飲食店を経営していることではないらしい。
プラハに住んで通訳として生計を立てている知人が、オロモウツからプラハに帰る途中で、マクロによってマグロの切り身を買ってうちで焼いて食べたら美味しかったなんてことを自慢していたことがある。こいつはフリーの通訳で、あちこちの企業と契約をして仕事をしているのであって、断じてレストランの経営者でも喫茶店のオーナーでもない。
事情を尋ねてみたら、フリーの通訳として活動するためには、個人事業者登録のようなことをしなければならないのだが、その個人事業者登録があれば、飲食業のものでなくても、マクロで買い物ができるのだという。普通のスーパーのように品物を持って現金かカードでお支払いというわけではなく、企業間での取引のように、納品書とか請求書とかそんなものを形だけ発行して、購入するという形をとる。その際に個人事業者としての登録番号のようなものが必要になるのだとか。
お前も通訳で登録しろよと言われたのだが、結構ややこしい手続きが必要そうだったし、通訳として仕事をする際の労働許可は、会社がやってくれて自分で取る必要がないことはわかっていたので、特別なスーパーで買い物をするためにだけ、登録する気にはならなかった。チェコ人と比べると外国人が登録するのは手間が多いし、登録して仕事をすると毎月自分がした仕事の請求書を出して、それを保管しておいて税金の申告が必要になるなんて面倒も桁違いに増えてしまうのだ。
以上あれこれ、オロモウツにある行ったことのあるスーパーを中心に、よたを飛ばしてきたのだが、チェコの人の中には、配達される広告を見比べて、少しでも安いものを買うためにスーパーのはしごをする人もいるようなので、行動原理は日本の主婦達と大きな違いはないのかもしれない。実際にはそこまで大きな値段の違いはないし、特価品なんかは数量限定のことが多いので、確実に買えるとは限らないのだけど。
確かオロモウツに来たばかりのころは、師匠がロフリークの価格でスーパーが争っているとか言っていた。当時はロフリーク一本一コルナを超えるかどうか、というのが安いところと高いところの違いだったのだが、今はいくらぐらいになっているのだろう。滅多に食べなくなったから意識の外だなあ。
以前は、スーパーによって品揃えが大きく違い、同じチェーンでも店舗によってあるところとないところがあったりしたので、特定の物を買うために、特定の店に行く必要があったが、最近はそんな特別な商品もなくなったため、特定のスーパーの特定の店舗にしか行かなくなった。。
例えば、野菜、果物に関しては、どこのスーパーでも品物の種類が増え質が上がった。この前は、テスコでシメジとナメコを見つけてびっくりしたし。それに、野菜は最近はスーパーで買うよりも、春から秋にかけて毎週土曜日にホルニー広場で開催されている農場市場(変な訳だけど、原則として野菜なら農家の人が自分たちで育てたものを売ることになっている)で購入することが増えた。農家の人と顔見知りになって、あれこれ試しに育てたものをお金は要らないからと言ってもらって帰ってくることもある。ミズナとか日本の野菜も手に入らないわけではない。
特定のスーパーでしか手に入らなかったキッコーマンの醤油も、日本の食材を扱っているお店ができてそっちで買うようになったし、全体的にスーパーよりも、個々の専門店での買い物のほうが増えている。コーヒー豆を専門の焙煎店で買うようになったのが、その最初の一つだったかもしれない。
最近使うスーパーは、自動車で出かけたときの帰り道に当たるビラと、うちから自動車で行きやすく、ついでに大きな電気屋や家具屋なんかにも行きやすいツェントルム・ハナーの中のテスコぐらいになった。この二つのスーパーでは会員登録してあって、定期的に割引のクーポンが送られてきたり、特定の商品が会員向けの価格で販売されたりするのも、わざわざよそのスーパーに行かない理由の一つになっているのかもしれない。歩いて行くなら、ビラとシャントフカの中のアルベルトが同じぐらいのところにあるのだけど、ビラのほうを選んでしまうし。
週末になると、オロモウツに限らず、市内はほとんど人の影がなく、死んだ町のようになるのに、郊外のショッピングセンターには、いやになるぐらい人がいるという状況は、現在でもあまり変わっていない。子供連れも多いので遊園地に出かけるような感覚なのかもしれない。以前は、毎週のように買い物に出かけていたので、ショッピングセンターの人ごみの中に行くたびに、お前ら他に娯楽はないのかと叫びたくなるような苛立ちを感じていたのだが、最近は滅多に行かなくなったので、どうでもよくなった。人間というのは勝手なものである。
7月31日23時。
こんなどうでもいい話題で四回も使うとは……。サマースクール以来、一つのテーマで長く書く続き物を許容することにしたのも原因の一つだなあ。次も続き者になりそうである。二回で終わると思うけど。8月2日追記。
2016年08月01日
オロモウツスーパー事情3(七月廿九日)
前回の最後にちらっと出てきたリードルだが、実は今住んでいるところから一番近いところにあるのがこのスーパーである。カテゴリーとしてはプラスと同じディスカウントスーパーになるのだろうか。店内に商品陳列のための棚はほとんどなく、大半の商品は大きなダンボールに入って床の上に置かれている。ほしいと思うものはほとんどないので、滅多に行かない。断水したときに廉価なペットボトル入りの水を買いに行くことがあるぐらいだろうか。
思い返してみると、以前一つだけこのスーパーで買っていたものがあった。オランダ語を勉強してオランダ関係に強い友人がこのスーパーのゴーダチーズを勧めてくれたのだ。当時チェコで手に入ったオランダのチーズの中では最高のものだったらしい。ただ、グランモラビアの直営のチーズ店でイタリアのチーズだけではなく、ゴーダなどのオランダのチーズも手に入るようになって、リードルに行く理由がなくなった。いや友人に勧められたゴーダをリードルで見かけなくなったののほうが先だったかもしれない。
よくわからないことに、このスーパー、チェコの消費者が選ぶ一番いいスーパーに毎年のように選ばれている。商品が安いからだというのは十分以上にわかっているのだが、物価が高いはずのドイツで生産されたチェコのビールよりも安いビールを飲みたいと思う人はいるのだろうか。どう考えても美味しいとは思えない。ピルスナー・ウルクエルなどの普通のチェコのビールもないわけではないのだけど。一体に、チェコでよく知られている会社の製品よりも、ポーランドなどの見たことも聞いたこともないような会社の商品が多い。ポーランドだから駄目だと言うつもりはないが、ポーランド産のウォッカならともかく、チョコレートなんかには食指は動かない。
同じような印象が残ったのが、ペニー・マーケットである。以前知人の家に行ったときに、近くにあるというので帰りに夕食と翌日の朝食になるようなものを買おうと思って行ったら、文字通り何もなくて、商品はたくさんあったのだけど、目的に適うものが何もなくて、もう一軒別のスーパーに行く破目になった。それ以来、一度も足を運んでいない。
オロモウツの市域の外、フシスコという村にオリンピアというショッピングセンターがある。グローブス、ツェントルム・ハナーに次ぐオロモウツ近辺で三番目の郊外型のショッピングセンターだが建物の敷地の広さと出店している店舗の多さでは一番かもしれない。そのオリンピアの一番奥に入っていたスーパーがヒペル・ノバだった。現在では同じ系列だったアルベルトに名前が変更されているのかな。当時は店舗の大きさによってヒペル・ノバとアルベルトという名前を使い分けていたのだが、現在では名前は同じにしてで、スーパーマーケットとハイパーマーケットというカテゴリー分けをしているらしい。ハイパーのほうが大きくて、扱っている商品も幅も広いということになる。
アルベルトは、駅すぐ前にある改装して新しくなったホテルの裏側にもあるので、よその町に用があって電車で出かけて戻ってきた後、帰り道に買い物をするのによく使った。それに旧市街の外れ、モラビア劇場の裏にあった独立系のスーパーがいつの間にかアルベルトに変わっていたし、社会主義時代に建設された団地の中で見かけることもあって、店舗の数ではオロモウツで一番多いかもしれない。ちゃんと数えていないし、知らない、使ったことのないスーパーもあるはずだけど。
このアルベルトで一番の問題は、格変化である。チェコ語の名詞には男性、女性、中性の区別がある。これは男性名詞で問題ない。問題は男性名詞の中に生きているもの活動体と、生きていないもの不活動体の区別があることだ。つまり、アルベルトをスーパーだと考えれば、当然生きていない不活動体の名詞として使うことになるはずなのだが、同時にアルベルトというのは人名でもあるので活動体としても理解できてしまうのである。
実際にチェコ人が使うのを観察してみると、活動体と不活動体が混ざったような使い方をしているようである。「jdu do Alberta」になるし。昔、師匠に質問して説明してもらった記憶はあるのだが、活動体的に使う部分と不活動体的に使う部分の境目がはっきり思い出せない。だから、正しく話す必要があるときには、師匠に教わったもう一つの方法を使うようにしている。スーパーマーケット・アルベルトとまとめて使えば、スーパーマーケットだけを格変化させればいいらしいのだ。ちょっと長すぎて毎回使うのは辛いかな。だからというわけでもないけど、最近行っていないなあ。
チェコ国内に展開している大手のスーパーのチェーンの中で、オロモウツで見かけないのはインテル・シュパーぐらいだろうか。日本の西日本に展開していたコンビニチェーンのスパーとほとんど同じ木のマークの入ったロゴを見かけたときにはびっくりした。ウヘルスケー・フラディシュテかどこかで行ってみたら、コンビニではなく大きなスーパーだった。これもドイツ系だったかなあ、バイアスロンだったかノルディックスキーだったかのテレビ中継で、スポンサーとして会場のあちこちに看板が置かれていたのを見たんじゃなかったかな。
自分でも意外なことに、もう少し続く。
7月30日12時。