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2022年03月02日

くたばれチェコ政府、もしくはバビシュ政権の最後っ屁



 チェコに住んでいる人は、気づいていると思うが、昨年の十一月、十二月ぐらいからチェコ政府による外国人いじめが一段と進行している。外国からの郵便物に関しては、その内容が何である可に関わらず、手紙扱いであったとしても、確か50グラム以上のものは、全て税関で止めて通関手続きを求めるようになっているのである。これまでは、2キロ以下の手紙扱いで送ったものは、箱入りの小包であっても、通関手続きをする必要はなかったのだけど、退陣間近だったバビシュ政権が最後っ屁とばかりに最悪の決定をくだし、新政権も特に問題視していないようで、変更しようという動きは見られない。結局バビシュも非バビシュも目くそ鼻くその違いしかなかったのである。

 この最悪の事態に気づいたのは、昨年の十月初めに国会図書館の遠隔複写サービスで依頼したコピーが、昨年の十月末には既に発送したという連絡があった後も、いつまでたっても届かず、十二月の半ばになって郵便局からメールが届いたときである。そのメールには、日本から発送された郵便物が税関で止まっているから、委任状送付などの所定の手続きをするようにと書かれていた。多くとも数十枚のコピーが2キロを越えるはずもなく、手紙として送られているはずなのに、なんで税関で止められなきゃならんのだ。
 仕方がないので、委任状を書いてスキャンして、日本の国会図書館から送られた複写物で(趣味の面が大きいけど)学問的な研究上の目的に使用するものだというメールと共に郵便局に送った。考えてみれば、郵便物にはこちらの住所は書いてあっても、メールアドレスなど書かれていないのに、メールアドレスを探して連絡をしてきたということだから、かなりの手間がかかったはずだ。一応通関手続きを郵便局に代行してもらうために委任状を出すのだから、手数料を取られることになるのだが、その額200コルナ、割に合うのかね。
 念のために、うちのに確認したところ、最近制度が変わって50グラム以上のものはすべて手続きが必要になったというニュースを聞いたような気がすると言っていた。このときは、非常事態宣言中だったので、非常事態宣言下での特別対応であることを期待したのだが、年明けすぐのニュースで郵便局のEU圏外からの荷物の配達が遅れているというニュースで、非常事態宣言とは関係ないことがわかった。本来であればクリスマスまでに配達されるはずだったプレゼントが年が明けても届かないと不満たらたらのチェコ人も多かったようである。

 こちらの手続きのほうは十二月の半ば過ぎにメールを送って以来反応がなく、どうなったのかと思っていたら、郵便局からこちらのメールを読んでいないような、頓珍漢なメールが来た。請求書とか支払い証明を添付しないと通関手続きができないというのである。この辺も、請求書なんてもらってないし、支払いは郵便物が届いてからするんだということを、その事情も含めて最初のメールに詳しく書いておいたはずなのだけど理解されなかったのか。
 再び同じことを書いたメールを送ったら、郵便物の表面に値段が書かれていないということは、プレゼントだということではないのかという返事が返ってきた。もしかしたら、面倒くさいからプレゼント扱いで通関させるための書類を出せということだったのかもしれないが、誓約書を出せなんて面倒くさいことをいわれたのと、どんな税額が出てくるのかという好奇心とで、断じてプレゼントではなく、郵便物が届いたら中にはいっている請求書を見て、カードで支払いをするのだというメールを送った。
 そうしたら、封筒を開けて中を確認するしかないけどいいかという反応があり、「お前等これまでにも、勝手に荷物の中開けてチェックしたことあるじゃねえか、今回も勝手にやるんじゃねえのか」と書きたい気持ちを抑えて、それしか方法がないならそうしてくれと書いた上で、念のために請求書にはカード払いの場合と、銀行振り込みの場合の請求額が併記されているけど、実際に支払うのはカード払いの場合の請求額だけだということも強調しておいた。

 その結果、税額がいくらで確定したというメールが来たのだが、その税額はちょっと頭がおかしいものだった。今回の複写依頼で支払ったのは手数料、郵便料金を含めて合計5千数百円、支払い後のカードの請求額によると、1100コルナほど。それに対する税額が、430コルナほどで、郵便局に払う手数料と合わせて、630コルナほどとなっていた。税率40パーセント、手数料を入れると価格の60パーセントを追加で払わなければいけないのである。恐らくは、こちらのメールでの説明も、請求書に英語で欠かれた説明も無視して、カード払いと銀行振り込みの請求額を合計した数字に税をかけたのだろうが、面倒だったのでいちゃもんはつけずに受け入れた。
 これで、通関手続きが終わり、配達体制の不備でまたまた郵便局まで取りに行くことになったのだが、無事にコピーを受け取ることはできた。でも毎回こんな無駄な二重以上の税金を取られるとなると国会図書館で遠隔複写サービスをたのむのも考え物である。法律の改正で申し込んだ複写物をデジタルで送ることができるようになったという話も聞くので、一刻も早くサービスとして導入してほしいものである。戦前の雑誌に関しては全面的にインターネット公開するというのが一番ありがたいのだけど、微妙に著作権が残っているのがあるみたいだからなあ。

 とまれ、外国のネットショップで購入した商品にかんして、外国でもチェコでも消費税が課されないのは、チェコ国内の業者に対して不公平だという理由で導入されたこの制度、本来の目的は完全に忘れられて、外国から届く郵便物を使って税収と、赤字にあえぐ郵便局の収入を増やそうというものに変わってしまっている。だから、コロナ渦で国家財政が大きな赤字に陥っている中、所得税の大減税を行ったバビシュ政権は、税収増加のために通関手続きの対象を拡大したのであろう。赤字を減らすことを目的の一つとするフィアラ政権もそれを改める気はないようである。財政の責任者が、カロウセクであれバビシュであれ、別の誰かであれ、外国人から不当に金を搾り取ろうという姿勢では変わりがない。だから、くたばれチェコ政府なのである。
2022年3月1日







2022年01月21日

2021年後半のできごと3、ゼマン大統領の健康問題



 ゼマン大統領は、二期目に入って、衰えた姿を見せることが増え、最近では移動だけでなく職務の際にも車椅子に座っていることが多いのだが、昨年の後半、特に下院の総選挙の前後には、その健康状態がただでさえ混迷するチェコの政局に、更なる混乱をもたらした。

 発端は、選挙を直前に控えた九月末のゼマン大統領が軍の病院に入院したというニュースだっただろうか。大統領は健康診断も兼ねた入院を、これまでも定期的に繰り返していたから、今回も選挙後に予想される首班指名を巡る困難な交渉などの激務を控えて予防的に入院したものと思っていたら、最初は同時期にバーツラフ・クラウス前大統領も同時期に入院したことがわかって大騒ぎになった。そしてゼマン大統領の入院がこれまでよりも長くなったことから、健康状態がひどく悪化したのではないかと噂されるようになった。
 その噂を払拭するためにだろうが、選挙の日には軍の病院を退院しマサリク大統領の頃から、大統領別邸となっているラーニの城館で投票する様子を写した写真がSNSで公表された。しかし、遠目からの撮影でゼマン大統領の表情もよく見えず健康に問題はないという側近たちの発言を証拠立てるようなものではなかった。しかも、注意深い人はいるもので、写真を拡大して手の皮膚や、爪の色などから重病を患っている可能性が高いという見解を表明する人もいた。

 土曜日の午後二時に選挙が終わり、開票作業が進んで、結果の見通しが出てくると、大統領の見解として、三党合同での合計の得票率がANOより高かったとしても、単独の政党ではANOの得票率の方が高くなるわけだからバビシュ氏に、首班指名、組閣の支持を出すことになるとかいうコメントが、多くは広報官を通じて発表された。また、翌日曜日には、当時の与党の政治家が具体的には確か当時のシレロバー財務大臣がラーニの城館にゼマン大統領を訪ねて会談をしたとして、その内容を発表したりもしていたが、今から考えると眉唾物である。
 それは、その日曜日のうちに、噂によればバビシュ首相のイニシアチブで、ゼマン大統領が軍の病院に緊急搬送され、再度入院することになったからである。すぐに集中治療室に入れられて面会禁止の状態に置かれたから、何日か前に一旦退院した時点でも、実はかなりよくない状態にあったのではないかと推測されるのである。この辺の事情はバビシュ首相も含めて関係者の発言が、二転三転して意味不明なことが多いのだが、ミナーシュ氏やオフチャーチェク氏などの側近たちが、選挙後の政局への影響力を維持するために瀕死のゼマン大統領を入院させないようにしていたのだと主張する人もいる。

 ゼマン大統領の入院で困ったことになったのが、改選された下院の会議をどうするかである。チェコの憲法によれば、国会を召集することができるのは大統領だけで、選挙後一か月以内に最初の会議が行われなけらばならないことになっている。大統領不在の場合にどのようにして招集するのか、上院の議長が権限を代行できるのかなんて話が、まじめに議論されるようになったころ、改選前の下院議長ANOのボンドラーチェク氏が、面会禁止のはずのゼマン大統領のところに出向いて、国会召集の書類に署名をもらったことを発表した。
 その書類の内容は、市民民主党などが、最悪の場合権限代行で招集しようと計画していた11月8日付けで招集するというもので特に問題はなかったのだが、面会禁止の病室に潜り込んだボンドラーチェク氏、ゼマン大統領のところまで案内したミナーシュ氏などが強く批判され、一部には署名が偽造なのではないかという疑いも出た。それで、ミナーシュ氏はゼマン大統領が署名する様子をビデオで公開したのだが、服装や髭の状態などから、ボンドラーチェク氏などが主張する日ではなく、発表の当日に撮影されたものじゃないかという新たな疑いが持ち上がった。

 幸いなことにその後、ゼマン大統領は快復し、たしか12月の初めに退院の日を迎えた。退院してラーニの城館に戻ったのだが、戻ったと思ったら、コロナウイルスに感染していたことが発覚して病院に逆戻りということになった。またまた幸いなことに感染はしたけれども無症状か非常に軽い症状でラーニの城館での療養が許可された。

 これで終わっていれば、大変だったねえという評価で終わるのだが、ここは不思議の国チェコである。そうは問屋が卸さない。
 12月の初めには、選挙の結果、首班指名を受けた市民民主党のフィアラ氏の組閣作業がほぼ終わっていて、後は大統領の任命を待つばかりとなっていた。ゼマン大統領は、例によって任命前にそれぞれの大臣候補者と面談をすることを求めたのだが、コロナウイルス感染による隔離期間が終わるの待っていたら、年内に任命するのはほぼ不可能になる。
 そこで、ゼマン大統領の取り巻たちが考え出したのが、ガラスの檻の中の大統領である。部屋の一部を、三方ガラスで仕切って、ゼマン大統領は、ドアから直接ガラスで仕切られた部分に入り、他の人たちは別のドアからその部屋に入って、ガラス越しに話をするという、思わず「ティ・ボレ」と叫んでしまいたくなるような方法を編み出したのだ。動物園や水族館で見られるようなガラス張りの檻の中に大統領を入れるなんて、大統領の尊厳を侵害しているのではないかと思うのだが、大統領を支える側近たちにとってはどうでもいいことのようだ。SNSなどでは、ガラス越しのゼマン大統領の写真を加工して、馬鹿にするような写真が出回っていたから、見かけた人も多いかもしれない。

 内閣の任命も、あれこれ問題はあったけれども12月の20日過ぎには無事に行われた。ただし、大統領はまだ隔離期間が終わっていなかったので、ガラス越しの任命式で、最近ただでさえ大統領が車椅子に座ったままのせいで厳粛とは言いがたい式典になることが多いのが、笑える任命式になってしまった。これがフィアラ内閣の先行きを暗示していなければいいのだけど……。
 斯くの如く、2021年後半の政局は、ゼマン大統領の健康に翻弄されたのである。
2022年1月20日






2022年01月16日

2021年後半のできごと2、下院総選挙



 バビシュ政権のコロナ対策も含めて、昨年チェコで起った出来事の殆どに影響を与えていたのが、十月初めに行われた下院の総選挙である。
 バビシュ政権との対決姿勢を強める、オカムラ党以外の五つの野党は、かなり早い段階で、市民民主党・キリスト教民主同盟・TOP09と、海賊党・市長連合という二つのグループにまとまってそれぞれ共同で比例代表の候補者名簿を作成することを決めていたが、それを支援するかのように、憲法裁判所が、選挙法に違憲の疑いがあるので改正するようにという判断を下した。

 それは、所謂「一票の格差」に関するもので、地方ごとの議席数の配分とドント式での議席配分が、大政党に有利すぎるというのである。もともとは、得票率の高い政党を優遇し、ぎりぎりで議席を確保した政党を冷遇することで、安定した多数派からなる政権が成立しやすくなるようにという目的があったはずだが、政党が乱立した結果、三党以上の連立政権や、過半数を確保できない少数与党の政権になることが多く、機能しているとは言えないのも、憲法裁判所の判断に影響を与えたのかもしれない。
 また、二つ以上の党が合同で候補者名簿を作成して選挙に出る場合の、議席確保のための最低得票率が、5%×政党数、つまり二党なら10%、三党なら15%になっているのも、死票をふやす可能性があるということで、改正を求められた。憲法裁判所では、複数の政党が合同した場合も、一律で5%にすることを考えていたようだが、国会の審議で、連合する政党が一党増えるごとに、最低得票率も2,5%だったか、3%だったかずつ増えるという形に収まった。野党側の三党連合と二党連合が、それぞれ14.9%、9.9%なんてことになったら、それだけで最低でも25%もの死票が発生することになるから、妥当な判断ではあるのだろうけれども、それなら全国でという縛りを削除して、選挙区単位での議席を獲得するための最低得票率にしたほうがいいと思うんだけどなあ。

 とまれ、野党側の三党連合と二党連合は、選挙戦が開始される前から、選挙後は連立政権をクムということで合意し、バビシュ政権、つまりはANOとの対立姿勢を強め、選挙はANOと二党+三党連合の対決という構図になった。その結果、他の党、連立与党の一つでありながらバビシュ政権の提案する議案に反対の票を投じるなど、意味不明な行動を繰り返した社会民主党と、閣外協力をするという協定を結んだのに常に協力するのかしないのかはっきりしなかった共産党の左翼二党は、存在感を失っていった。ちなみに、ANOは、対立する五党のうち、海賊党に狙いを定めて、徹底的に批判するという戦略をとり、選挙結果にある程度の影響を与えることに成功したのだが、これについては後述する。

 十月の初めに行われた選挙の結果は、市民民主党・キリスト教民主同盟・TOP09が最高得票率の27.8%で勝者となった。ただし議席数では、0.8%という僅差で二位になったANOのほうが一議席多い72議席を獲得しているから、日本的にはこちらが第一党と言いたくなる。三番目は海賊党・市長連合で37議席、四番目は20議席獲得したオカムラ党だった。議席を獲得できたのはこの4つのグループの七つの政党という結果になった。
 社会民主党と共産党は、議席獲得は難しいかも知れないという選挙前の予想通り、得票率5%には届かず、議席を失うことになった。どちらも、元警察官で組織犯罪を摘発する組織の長として活躍したシュラフタ氏が設立した新政党プシーサハ(宣誓)よりも得票率が低かったのは、予想外だった。これまでの両党の迷走ぶりに愛想をつかして、左よりになりつつあるANOに鞍替えした支持者が多かったということだろうか。ANOは、右よりの支持者を失った分を、ここで補充して得票率の減少を最小限に抑えたとも考えられる。共産党の支持者はオカムラ党にもかなり流れていそうだけど。

 とまれ、選挙の結果を簡単にまとめると、政党単位での獲得議席数から言えば、ANOが市民民主党(三党連合の72議席中34議席を獲得)に倍以上の差をつけて第一党となったが、社会民主党、共産党という協力関係を築ける可能性のあった政党が議席を失ったことで、政権獲得の可能性が消えた。その意味では、この選挙で最大の敗者だったということができる。
 一方、選挙前からの公約で連立を組むことが予想された5党は、合わせて108という過半数の議席を獲得したのだが、個々の政党を見ると、海賊党が4議席の獲得に留まった。本来なら市長連合と合同で獲得した37議席が半々ぐらいになるように候補者名簿が作成されていたはずだが、市長連合の支持者の多くが、海賊党の議員が増えることを嫌ってなのか、投票の際に市長連合の候補者に特別に支持する印をつけたことで名簿の順位が変わり、海賊党の候補者の多くが落選してしまったのである。
 日本であれば選挙の後、すぐにでも国会で総理大臣選出のための選挙が行なわれ、内閣が成立するのだが、大統領議会制を取るこの国では組閣までの手続きはややこしく、ゼマン大統領の存在もあって、内閣が任命されるまで、選挙後三カ月近くかかることになる。その辺の事情についてはまた稿を改める。
2022年1月15日





タグ:選挙

2021年06月09日

大統領失格(六月五日)



 日本の参議院と同じで、しばしば不要論が登場するチェコの上院だが、下院や政府から独立して機能しているので、特に議員の構成が下院と大きく異なっている場合に、独自の活動で存在感を示すという点では、廃止しても何の問題もなさそうな参議院とは違っている。去年の夏のビストルチル上院議長を代表とする議員団の、政府の反対を押し切っての台湾訪問も、その活動の一つである。

 そんなしばしば独自の活動でチェコの政界を揺るがす上院がまたやってくれた。上院の安全保障委員会が、ミロシュ・ゼマン大統領について、大統領の職責を果たせる状態にないと言う決議を出したのである。一番の理由はロシアの特殊部隊の工作員がかかわっていたとされるブルビェティツェの弾薬倉庫爆発事件についての反応だろうが、チェコの大統領としてそれでいいのかといいたくなるような言動が増えているのは確かである。
 この上院の安全保障委員会の決定が、どれだけの法的な拘束力を持っているのかは不明だが、おそらく何の拘束力も持っていない、つまりはこの決定でゼマン大統領が辞職に追い込まれるようなことはないだろう。例によって大統領府の広報官は、選挙に向けた政治的なパフォーマンスにすぎないとか、大統領に対する個人攻撃だとか言って強く批判していた。

 実は側近たちがゼマン大統領の衰えをいいことに、自分たちの都合のいいように操っているという説もあるのだけど、最近の本来は立って望むべき儀式にも座ったままだったり、テープカットの際に右利きのはずなのに左手にハサミを持たされたりしているのを見ると、一期目と比べても衰えたという印象は否定できず、激務であるはずの大統領の職務を果たせないという上院の判断には一理ある。政治的なライバルだったクラウス元大統領は未だ矍鑠としているだけに、衰え振りが目立つという面もある。
 辞任なんかするわけのない大統領を解任する方法があるのかというと、どうなのだろう。法的な規定がないから、上院の反大統領派が大統領の立場をなくして辞任に向けて追い詰めようとしているような印象も受ける。その意味では、大統領側の政治的なパフォーマンスだという上院に対する批判もあながち的外れではない。特に前回の上院議員選挙で野党側、つまりは反ゼマンを標榜する政党の議員が増えて以降、上院は大統領との対立姿勢を強めているわけだし。いや、どちらかと言うと大統領が対立姿勢を強めているといったほうがいいかな。

 ゼマン大統領は、しばしば自分は有権者による直接選挙で選出された大統領だから、これまでの国会議員による選挙で、有権者から見れば間接選挙で選ばれた大統領よりも権限が強いのだと主張している。憲法などにそんな規定はないはずだけれども、大統領選挙の投票率の高さと、国会議員選挙、特に上院議員選挙の投票率の低さ、国会議員により投票では有権者の意向よりも党利党略が優先されたことを考えると、ゼマン大統領の選出にこれまでの大統領の選出よりも有権者の考えが大きく反映されているとは言えそうである。
 問題は、直接選挙で選出された大統領が、投票した有権者たちの支持を失った場合にどうするのかということである。二期目に入って問題を引き起こすような言動の増えたゼマン大統領は、選挙のときに比べると確実に支持者を減らしている。三期目があるなら、その支持者の減少は選挙の敗北となって現れるのだろうが、次の大統領選挙には立候補できないから、怖いものなしである。

 ゼマン大統領の支持によって何とか生きながらえているバビシュ首相の政府と、与党と共産党で過半数を占める下院にゼマン大統領の首に鈴をつけるようなことができるとは思えないから、上院の存在意義が大きくなっている印象である。結局はゼマン大統領は任期を全うして引退ということになるのだろうけれども、野放しにしておくとチェコにとってはろくでもないことになりそうである。
2021年6月6日18時30分。











2021年06月07日

内閣不信任案否決(六月三日)



 すったもんだの果てに、野党の二つのグループ、海賊党と市長連合のグループと、市民民主党、TOP09、キリスト教民主同盟のグループが合意に達し、下院議員の署名を集めて提出したバビシュ内閣に対する4回目だったかの内閣不信任案の審議が今日行われた。選挙まで半年をきったこの時期に不信任決議が可決されても、大統領はゼマン大統領だし何も変わらないとは思うのだが、バビシュ氏を追い落とす姿勢を見せ続けることが大切だと考えているのだろうか。

 日本だと内閣不信任案がどの程度頻繁に出されるのかは知らないが、チェコでは日常茶飯事である。いや平均すると年に一回ぐらいの割合になるから、年中行事のようなものだといったほうがいいかもしれない。2000年以降の政権で不信任案を一回も出されなかったのは、野党の市民民主党と閣外協力協定を結んでいた社会民主党のゼマン政権ぐらいのものじゃないだろうか。
 これまでの数ある不信任決議の中で、実際に可決されたのは、トポラーネク内閣に対して出された2009年のEU議長国を務めていたときのものだけである。あのときは、EU議長国の首相として舞い上がっていたトポラーネク氏に対する嫌がらせとして、可決される可能性はないことを承知の上で提出したら、身内の市民民主党から造反者が出て可決されたのだった。野党側も予想外の結果に、可決を喜ぶよりも当惑していたような記憶がある。

 当時と同様に、今回も事前に各政党所属議員がどのように票を投じるか予想されたのだが、これまでのバビシュ政権に対する不信任決議案と同様、キャスティングボードを握るのは共産党だとされていた。ANOと社会民主党の与党側も、野党側もオカムラ党などの決議案の提出にかかわっていない党の議員の数を合わせても、可決に必要な過半数は確保できていないのである。
 これまでは、バビシュ政権と閣外協力協定を結んでいた共産党が、可決されないように協力してきたことで否決されてきたが、共産党はすでに閣外協力協定を破棄しており、賛成と反対の土地らに手を挙げるか注目されていた。珍しくメディアの注目を集めた共産党は、審議の前日の昨日の時点では方針を明かさず党員全体の意見を集めて決めるなんてことをいっていた。

 それで、今日の午前中にセズナムを見たら、「共産党は足でバビシュ支持に投じる」なんて見出しが目に飛び込んできた。最初は、この不信任決議の不毛さに抗議して、採決に際して、反対の意見を表明するのに手ではなくて、足を挙げることにしたのかと思った。それで、ちょっと共産党を見直す気になったのだけど実際は違った。
 見出しの「足」が単数ではなく、双数になっていた時点で気づけばよかったのだ。手をあげるときに普通は片手を挙げるのだから、足の場合にも片足しかあげないはずで、こちらの理解したことが正しければ、「足」は単数になるはずなのに、双数の7格が使われているということは、両足でバビシュ政権を支持する行動を取るということである。つまりは、審議採決に参加せずに、両足で歩いて会議場を出て行くということを意味していたのである。

 チェコの下院でも重要な議案に関しては、出席議員の過半数ではなく、全議員の過半数、つまり200議席あるから、101人の議員が賛成しない限り可決されないことになっている。だから共産党が退場した時点で、賛成も反対も過半数を上回らないことは明らかだった。この場合は内閣不信任案が可決されないことは明らかだったのだが、そこから延々、与野党の議員たちの演説が続き、十数時間もの時間を浪費した挙句に採決が行われ、予想、いや予定通り否決された。
 なんともまあご苦労なことである。共産党の議員たちの決定をうらやましいと思っていた他党の議員もいたに違いない。マスコミ関係者も、仕事として審議の様子を見守っていただろうけれども、いい加減に終わってくれと思っていた人が多かったはずだ。以前何かの件で、この手のマラソン審議をテレビで流しながら仕事をしていたことがあるけれども、たまに注意を向けるだけでも同じ発言の繰り返しばかりでうんざりしたのを覚えている。
2021年6月4日21時。











2021年05月30日

復帰(五月廿六日)



 五月の半ばに、仕事で大きな山を一つ越えたときに、気が抜けてしまってしばらく文章を書くのもサボってしまった。直接のきっかけは週末オロモウツを離れた際に予約投稿をするのを忘れていて、出先で投稿するのも面倒だと思ってしまったことなのだが、気が抜けていなかったらオロモウツに戻ってからすぐに再開していたはずである。
 毎年、この時期に仕事が一段落つくので、気が抜けがちで、最初からそんなに高いものでもないのだけど、書くものの質も落ちるような気がしているので、これを幸いとまとまったお休みをとることにした。今年は一年毎日なんてことは目標にしていないから、これまでも何度か「仮文」と称して休んだこともある。今回は当初は休む気はなかったので、事前に「仮文」は出さなかったし、お休みの間はブログの管理画面にも入らなかった。

 もちろんこのままやめてしまう気は全くなかったので、問題はどのタイミングで再開するかだった。書くことへの意欲がたまるまで待っていたら、いつになるかわからないし、意欲が全くないわけでもなかった。必要なのはきっかけである。ロシアがチェコをアメリカと並ぶ敵性国家に認定したというニュースが出たときも、ちょっと動きかけたのだが、怠け癖が発動して踏ん切りがつかなかった。それで、一週間は過ぎたし、十日も過ぎそうだから、いっそ六月からの復帰にしようかなんてことを考えていたら、衝撃の、いや笑撃のニュースが飛び込んできた。

 三月末に三月中は解任しないと発言したバビシュ首相は、その約束を守って四月に入ってからブラトニー厚生大臣を解任した。ロシア製ワクチンの導入を求めるゼマン大統領の要望に応えたもののようにも見えたし、ワクチンの接種が進んで規制緩和の動きが出始めたところで、それまでの厳しい規制の責任を負わせて切り捨てたようにも見えた。ブラトニー氏に問題がなかったとは言わないが、就任当初よりはかなりましになっていただけに、下院の総選挙まで半年ほどのこの時期に大臣を交替させることに意味があるとは思えなかった。

 後任に選ばれたのは、プラハの大学病院の院長を勤めているというアレンベルグル氏だったのだが、就任早々から、これは交替しないほうがよかったんじゃないかと言いたくなるような言動を繰り返していた。バビシュ首相がまともな、信頼を失っていない状態だったら、引き立て役としてよかったのだろうけれども、バビシュ首相が期待したと思われる規制に責任のある大臣を更迭して、支持率を取り戻すというのは完全に失敗に終わった。
 さらに、就任後しばらくして、その資産をめぐるスキャンダルが明らかになって、むしろ政権への支持率を減らす結果になっていた。まあ現在のANOの支持率はこれ以上下がらないところまで落ちているから、実害はないのかもしれない。一定数の支持者たちはどんなスキャンダルがあっても、野党やマスコミのデッチ上げだとしてバビシュ氏支持をやめないのである。現状では有権者の20パーセントぐらいだろうか。

 アレンベルグル氏のスキャンダルというのは、一つは大臣就任に際してなのか、それ以前の病院の院長としてなのかはよくわからないのだが、いずれにしても義務に基づいて公表した資産に漏れが多いというものである。特に不動産に関してはマスコミの調査が進むにつれて数が増え、最終的には百件を越えて、時価換算の総額も単に医師や病院の院長として仕事をしているだけでは、手に入れられるはずのないレベルになっていた。
 また、自らの所有する物件を、自ら院長を務める病院に貸し出して、多額の家賃を手にしていたというのも批判の対象になっていたが、この手のやり口はチェコではそれこそ日常茶飯事で、厚生大臣に就任していなかったら見逃されていた可能性は高い。チェコの野党もマスコミも、身内に似たようなことをやっている人がいるからか、政権攻撃のねたにならないかぎり、この手の瑣末事は取り上げようとはしない。

 これらの批判の高まりに耐えかねたのか、アレンベルグル氏はバビシュ首相に辞表を提出した。ここまでは、こちらの想定内だったのだが、後任の名前には驚愕するしかなかった。ほんの八か月前に感染症対策を巡る混乱の責任を取らされて辞任したアダム・ボイテフ氏が再任されるというのである。スパルタの監督と同じぐらい交代が早いなんて声も上がっていたけれども、流石のスパルタでも一月、二月で監督を代えることはない。以前の監督が再任されることはあるけど。
 いやはや、バビシュ政権のお笑い担当は、これまでは社会民主党のノミネートで身内からもクレームのついたスタニェク氏が就任した文化大臣か、テョク氏の後の大臣がカレル・ゴットの追悼式に権力をかざして割り込むぐらいしか能がなく、ハイパー大臣ことハブリーチェク氏が兼任することになった運輸大臣だったのだけど、完全に厚生大臣に取って代わられた感じである。

 ボイテフ氏は、どこぞの国に大使として赴任するという話もあったのだけど、実現はしなかったのだろうか。この秋の下院の総選挙には出馬しないということだから、政界引退後のポストとして提供されたということか。ANOも既成の大政党とやり口が変わらなくなってきたなあ。とまれ、これも復帰、あれも復帰ということで、このニュースをきっかけに再開することにした。
 ボイテフ氏復帰のニュースを聞いたのが火曜日、書くのに復帰したのは水曜日なのだが、投稿復帰は土曜日ということにしよう。そうすれば休んだ期間はちょうど二週間になるし、筆の進み具合を考えると、書く日と投稿する日にずれがあったほうがいいし。
2021年5月27日24時30分。











2021年05月11日

不思議の国チェコ2021(五月八日)



 先月半ばに、6年半前のブルビィエビツェの山中に置かれた弾薬倉庫が爆発した事件に関して、ロシアの秘密工作部隊GRUの関与が明らかになったことが発表された。その前後にハマーチェク大統領が、モスクワに出かけてスプートニクVのチェコへの輸入に関して交渉してくると言い出したり、それを取りやめた後になって、カモフラージュだったのだと言ったりしていた時点で、意味不明だったのだが、その後さらに驚きの展開が待っていた。
 どこだったかは忘れたが、マスコミが衝撃の裏情報をすっぱ抜いたのである。それによると、ハマーチェク氏が、モスクワ行きを計画したのは、カモフラージュでもなんでもなく、本当にロシア製のワクチンスプートニクVを手に入れる交渉をするためだったという。ただし、ハマーチェク氏が対価としようとしたのは、お金ではなく、GRUのチェコ国内での破壊工作について秘密にすることだったという。さらに、ワクチン以外にも開催が噂されている米露首脳会談の開催地をプラハにすることも求める予定だったという。

 それは、流石にないだろうと思いたいのだけど、ここは不思議の国チェコである。特に最後の新大統領の就任後最初の米露首脳会談をプラハでというのが、いかにもチェコの政治家が好みそうな発想で、ニュース全体の信憑性を高めていた。凋落傾向の止まらない社会民主党の党首として、ワクチンをロシアに無料で提供させることで支持を集めようとしたのかとか、裏にはロシアシンパの大統領の意向があったのではないかとか、あれこれ疑えば疑える。
 野党としては攻撃どころということで、国会でも審議されることになった。その審議がテレビカメラを排除し、さらに普段は野放図にスマホ、PC使い放題で、国会内の情報を垂れ流しにしても規制されないのが、今回は審議が始まる前に全ての電子機器の電源を切ることが求められるという、完全な密室状態で行われたのも、ことの重要性、いや異常性を物語っていた。もちろん、こんな審議で何が明らかになるわけもなく、ハマーチェク内務大臣は同じようないいわけを繰り返していた。

 最初のうちの報道によると、記者会見でGRUの関与を発表する前に、ハマーチェク氏が、警察、検察なんかの関係者を、軍の情報部の責任者を排除する形で集めて、方針を決める会議を開いたらしい。その参加者が、今回の件をリークしたとか報道されていたような気がするのだが、いつの間にか、この本当であれば、大スキャンダルのネタもとは、社会民主党のパルドゥビツェ地方知事のネトリツキー氏に代わっていて、メディアで積極的に発言している。
 ハマーチェク氏は、政府レベルで話をする前に、党内の有力政治家の一人であるネトリツキー氏に相談を持ちかけたということのようだが、いわば背中から撃たれたわけである。相談を持ちかけるぐらいだから、もともとハマーチェク氏に近いと見られていたはずなのだが、現在のハマーチェク氏の迷走ぶりに愛想をつかし、泥舟と化しつつある社会民主党を捨てて地域政党を結成する考えでもあるのだろうか。この件で、発言の真偽はともかく知名度は大きく高まったはずだし。
 今回の件が、実際はどうだったのか、明らかになる事はあるまい。いや、これが事実だったんだという発言をする人や、報道は出てくるだろうけれども、疑いは残り続ける。実際にハマーチェク氏がモスクワまで出かけて、行方不明になったとかだったらスパイ映画さながらと言えそうだけど、出かける前にひよったわけだから、ストーリーは出来損ないというしかない。何をやってもうまくいかなかったソボトカ首相の在任末期のような雰囲気を今のハマーチェク氏には感じてしまう。

 社会民主党とハマーチェク氏の迷走ぶりは、党の色にも現れている。ウクライナのオレンジ革命ブームに便乗して成功して以来、社会民主党はオレンジ色を党のシンボルカラーとして使用してきたのだが、最近になってその色が濃く、赤に近い色になっているのである。それは、共産党の赤と区別がつかないほどで、共産党と協力体制を築く伏線じゃないかと疑ってしまう。
 一応社会民主党にはボフミーン宣言というのがあって共産党とは共闘しないというのが党是に成っているのだが、地方政界などではすでに有名無実になっているし、今後は党の生き残りをかけて党内右派を排除して共産党に近づく可能性もある。チェコの左派はバビシュ氏のANOの草狩場になって壊滅状態で、今秋の下院の総選挙ではどちらも議席の獲得が危ぶまれているし、生き残りに必死なのである。ただ、そうなるともう社会民主党である意味もなくなると思うのだけど。
2021年5月9日24時30分。









2021年04月28日

ゼマン大統領予想通り(四月廿五日)



 2014年のズリーン地方で起こった弾薬倉庫の爆発事件に関して、ロシア軍の情報機関であるGRUの関与が明らかにされて以来、沈黙を保っていたゼマン大統領だが、民放のプリマが毎週日曜日に放送している政治番組で自ら見解を発表しインタビューに応じた。以前は、大統領選挙で協力したソウクプ氏の率いるバランドフテレビに、「大統領との一週間」という番組があって、そこであれこれ物議を醸す発言をすることが多かったのだが、どうもこの二人の関係が悪化したようで、最近大統領のお気に入りのテレビ局はプリマになっている。
 今回も、例によってあれこれ問題になることを発言したのだが、一番問題にされているのは、ブルビェティツェの爆発事件に関して、二つの方向で捜査が続いていると発言したことである。一つは当然ロシアのGRUが関与したというもので、もう一つは倉庫の従業員が爆発物の取り扱いに失敗したというものである。ただ、この二つ目は、警察関係者によれば、すでに2015年の時点で、ありえないとして捜査の対象からはずされたという。

 ゼマン大統領が改めて、この除外された可能性をことさらに取り上げて発言したのは、ロシアを擁護する意図があると見て問題あるまい。党内のゼマン派の支持によって党首の座を維持したハマーチェク氏ですら、この見解には賛同していないが、オカムラ党と共産党は、もろ手を挙げて賛成の声を上げている。オカムラ党が、選挙のスローガンにしていた「チェコはチェコ人の手に」のチェコ人の中にはロシア人も入りそうである。
 全体的な評価としては、政府与党側は、穏当なもので、政府の方針と大きく外れてはいなかったと、本当かよといいたくなるようなコメントをしている人がいた。野党の中でも反ゼマンの海賊党や市民民主党などは、大統領が自国の防諜機関の報告を信用せずに、ロシアよりの発言をするのはどういうことだと批判している。実際、ロシアの政府系のネット上の情報サイトなどでは、チェコの大統領がロシアの主張を認めたというニュースになっていたようだ。

 ゼマン大統領は、この件について、決定的な物証はなく、全てが状況証拠でしかない状態でロシアを批判するのはよくないなんてことも言ったのかな。スパイやら秘密工作員やらの仕事に物証が残っているなんて期待できないだろう。あるとすれば、ロシア国内のエージェントに対する命令の文書だろうけど、軍事機密で閲覧できるわけがないし、すでに廃棄処分になっている可能性も高い。そもそも文書化されたかどうかも怪しいか。
 流石は、ゼマン大統領、期待を裏ぎらないと言うとことである。裏切らないといえば、大統領の職権についても憲法に記されていることを否定するような発言を繰り返したらしい。あちこちからこのままでは立憲国家としての本質が崩れてしまうなんて声も上がっているのだが、現時点では大統領の罷免のためのリコール運動をするなんてところまではきていない。大統領をリコールできるのかというのもよくわからないけどさ。

 それで、バビシュ政権を退陣に追い込みたがっている海賊党は、市民民主党が主張する下院で政府の信任決議をするのではなく、国会の解散を議決で決めようと言い出した。信任案の否決で内閣総辞職に追い込んだ場合、大統領の存在が大きくなりすぎるというのである。つまり、信任なしでバビシュ内閣に選挙まで政府を運営させるのも、暫定内閣を組織させるのも、ゼマン大統領の決断一つになってしまうのが問題だという。下院の解散が決まってもゼマン大統領が臨時選挙はやらないといえば、結果は同じになるような気もするんだけど。
 どうも。同じ反バビシュ、反ゼマンでも、海賊党と市民民主党は同属嫌悪でお互いにいがみ合っているらしい。それで、協力するよりも、少しでも相手とは違うアイデアを出して出し抜こうというすることのほうが多く、これもまたバビシュ政権が何とか生き延びてきた原因の一つになっている。秋の総選挙で、ANOが負けてバビシュ首相が退陣したとしても、将来はばら色というわけには行かないのである。

 考えてみれば、チェコスロバキア独立以前の時代から、スラブの旗頭としてロシアを担ごうとする汎ロシア主義と、オーストリア=ハンガリー帝国内でチェコの地位を上げようという考え方とで割れていたチェコ民族だから、一世紀以上の年月を経ても変わらないと考えるのがいいのかもしれない。ソ連にあれだけの目に遭わされていながら、なおロシアを信じる人たちがいるのは意外ではあるけどさ。
2021年4月26日22時










2021年04月21日

嘘か真か(四月十八日)



 ペトシーチェク外務大臣を解任して、ザオラーレク氏に大臣就任を拒絶されたハマーチェク内務大臣兼暫定外務大臣は、後任の外務大臣としてクルハーネク氏を選出して、バビシュ首相を通じてゼマン大統領に任命するように依頼した後、ロシアのワクチン、スプートニクVの輸入に関する交渉のために来週の月曜日にモスクワに行くと発表した。それが、あちこちから批判をあびるようになると、当初は消極的な反対をしていたバビシュ首相が、批判に回り、最終的には内閣の重要な会議が月曜日に行われることを理由に、モスクワ行きを中止した。

 そんな状況で、昨夜のロシアのGRUによる破壊工作が明らかになって、チェコにあるロシア大使館勤務の情報部の将校を国外退去処分にするという記者会見が行われたわけである。ロシアに対する処罰として大使館職員を追放するという決定には賛同を示した野党だが、改めてハマーチェク氏がモスクワ行きを計画していたことを批判し始めた。このように重大な事実が、軍の情報部から政府に挙がってきてすぐに発表されたとは、考えられないことから、政府内でロシアに対してどのように対処するか検討している最中にロシア行きを計画したのはおかしいのではないかというのである。
 これに対してハマーチェク氏は、最初はそんなことは言っていなかったのだが、チェコがこのGRUの破壊工作を突き止めたことをロシア側に知らせないためのカモフラージュだったのだと言い出した。ロシアに知られると国外退去処分を科す前に対策を打たれると考えると一理あるような気もするけど、どこまで信用できるのかは疑問である。少なくともバビシュ首相は、このハマーチェク氏の主張を否定も肯定もしていない。

 ゼマン大統領は、オフチャーチェク広報官を通じて、現時点ではコメントせず一週間後にコメントすると発表した。その間にプーチン大統領と極秘に対応を相談するんじゃないかと思ってしまうぐらいには、ロシアと中国の代弁者と化したゼマン大統領は国民の信頼を失いつつある。チェコは大統領が直接政策を決めるわけではないから、ロシアよりの発言をしても実害はないのだが、国の一体感と言うものは損なわれる。いや、そもそもそんなものはないから問題ないか。

 チェコが18人の大使館職員を国外退去処分にしたのに対して、ロシアは報復として、20人のチェコ大使館の職員を国外追放することを通達してきたらしい。この手の追放合戦では、追放される人の数を同じ数に揃えるという配慮がなされるのが慣例となっているはずだが、今回ロシアが数を増やしてきたのは、チェコに対する怒りを示しているのか、チェコをかつての属国扱いして侮っているのか、どちらも当てはまりそうな気がする。

 チェコの情報部の調査によると、GRUの工作員二人は、ロシアだけではなく、モルドバとタジキスタンのパスポートも所持していて、いくつかの名前を使い分けているという。そして、チェコ国内では、2014年の十月の前半、一回目の爆発が起こる前日まで、プラハとズリーン地方でその存在が確認されているという。この時期にチェコにいたことは、工作員本人のフェイスブックに掲載された写真からも裏付けられるという。
 工作員が自分の所在を明かすような写真を公表するなんて、世も末である。それでは偽名のパスポートをいくつも駆使して活動する意味がなくなるじゃないか。凄腕のスパイすらも堕落させてしまう、SNSにおける自己顕示欲の罠ということか。しばしば、民主化によって全てがよくなったのではなく、かつてのソ連時代のほうが質が高かったものがあるなんてことがいわれるのだが、スパイやら非合法工作員やらもその中に入るのかもしれない。それは、世界が当時に比べれば平和になったことを意味するのだろうか。

 ただ、二回目の十二月の爆発については発表されなかったが、この二人が十月の時点で、別の少し離れたところに建っていた倉庫にも時限式の爆発装置を仕掛けていったのか、他に協力者がいたのか気になるところである。この手の事件の例に漏れず、全貌が明らかにされることはないだろうが、今のチェコは出来損ないのスパイ映画の終わった後みたいな状況である。
2021年4月19日25時。










2021年04月20日

GRU健在(四月十七日)



 1980年代のエンターテイメント小説で、悪のスパイ組織として登場してくるのは大抵旧ソ連のKGBだった。その実態をわかった上で小説に使っていた作家もいたけど、安直な使い方だなあという印象を持つ作品もあった。そして、もう少し謀略の世界に詳しい作家だと、情報機関であるKGBだけではなく、破壊工作の実行部隊を抱えるGRUを登場させることもあった。GRUと、その特殊部隊スペツナズの存在を知ったのは、森雅裕の『漂泊戦士』だっただろうか。90年代に入ってから読んだ『パイナップルARMY』でもスペツナズが登場したのは覚えているけどけど、GRUは出てこなかったかな。

 とまれ、旧ソ連の裏の部分をになっていたGRUは、すでに存在しない、いや存在するとしてもKGBと同じように名称の変更が行われているだろうと思い込んでいた。そうしたら、午後8時から行われたバビシュ首相とハマーチェク内務大臣の緊急記者会見で、チェコの情報部の長期にわたる調査の結果、GRUのメンバーがチェコ国内で破壊工作を行った事実が確認されたとして、ロシア大使館に勤務する外交官のうち、諜報活動に携わっていることが明らかな18人を国外追放処分にすることを発表した。
 GRUが関与したとされる事件は、今から6年半ほど前の2014年10月と12月に、ズリーン地方の小村ブルビェティツェで起こった弾薬倉庫の爆発事件である。倉庫は、幸い村の集落からは離れた森の中に分散して置かれていたため、犠牲者は最初の爆発の際の二人の従業員だけで済んだが、大量の弾薬の置かれた場所での爆発だっただけに、長時間、一回目は七時間、二回目は何日かにわたって爆発が続いたようだ。ブルビェティツェだけではなく周囲のいくつかの村の人たちも避難所生活を余儀なくされた。

 この事件は、発生したときから不明なことが多かった。そもそも、本来軍の施設である弾薬倉庫を民間企業が借り受けて弾薬を収蔵していたというのがよくわからなかったし、会社の関係者が武器密輸の疑いで起訴されたというのに契約が継続され、危険な弾薬が置かれている倉庫だということが、管轄のズリーン地方に報告されていなかったとか、企業の側に問題がありそうだという報道が多かったと記憶する。
 今回、チェコテレビのレポーターが、この事件に関しては、亡くなった二人の情報も含めて、警察から発表させることが以上に少なかったと回想していたが、警察と軍の情報部では、情報規制が敷かれていたのはロシアの破壊工作の疑いがあったからだと認めていた。捜査に六年以上かかったと考えるべきなのか、六年以上経って新たな情報が出てきたとか、情報を公開できる状態になったとか考えるべきなのだろうか。

 さらに、驚くべきことは、公開された実行犯とみなされる二人組の写真が、2018年にイギリスで起こったロシアからの亡命者暗殺未遂の容疑者とされている二人組の写真だったことだ。このときはノビチョクという毒物が使用されたことが明らかになっており、それに関してゼマン大統領がチェコでも作ったことがあるとか発言して物議を醸していた。爆破工作と同時にノビチョクの入手も命じられていたなんて話になれば、お話としてはできすぎなのだが、公式発表によればイギリスで使われたものとチェコで作られたものは、同じノビチョクではあっても微妙に違うらしい。
 ロシアが弾薬庫の爆破を行った理由としては、チェコからブルガリアに輸出されることになってた弾薬が反ロシア勢力の手に渡るのを防ぐためだったという説明がなされている。このブルガリアへの輸出というのが、正規の輸出だったのか、密輸だったのかはわからないけれども、チェコは武器産業が盛んで、各地に輸出しているのである。だから北朝鮮もチェコ国内であれこれ入手しようと活動を続けているのだし。

 それで、この事件への報復として、外交官のふりをしたロシアの諜報部員を十八人国外退去処分にしたことについて、ほとんどの政党は賛意を示していて原子力発電所の新たなブロックの建設など巨額の公共事業からロシア企業を排除することを求めているが、共産党とオカムラ党だけが反対の意を示している。事件の全貌が完全に明らかになったわけではないのだから慎重にとか、話し合いで解決するべきだとか主張している。日本で同じような事件が発覚したら、日本の防諜機関にこのような事件を公式発表できるところまで解明できるかはともかくとして、リベラルを自称する人たちが、同じようなことを主張するんだろうなあなんてことを考えてしまった。

 チェコ国内の親露派の筆頭であるゼマン大統領は、現在のところ何もコメントしてない。これまで散々チェコの諜報機関の活動について批判を続けてきたのだけど、どんな言葉が出てくるか注目である。まさかデッチ上げだとしてロシアを弁護するようなことは言わないと思うけど。
2021年4月18日24時30分。











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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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