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2016年08月21日
チェキアいづこ――aneb kde je Czechia nemoje?(八月十八日)
リオ・オリンピックの喧騒の影で、ひっそりとチェキアという略称の国連への登録が認められたというニュースが流れた。数か月前にあれだけ熱心に議論が繰り広げられていたので、その議論の結果を受けて、登録するしないを国会で審議するのかと思っていたら、こっそり申請していたらしい。いや、申請したというニュースで、議論が巻き起こったのだっただろうか。
当時Czechiaの採用を主張する理由の一つとして、挙げられたのが、オリンピックなどのスポーツイベントに使うには、Czech republicは長すぎるというものだった。だから、オリンピックのチェコ代表のウェアにCzech republicと大きく記され、胸の部分のエンブレムにCzech teamと書かれているのを見たとき、Czechiaは採用されなかったんだなと安心したのだけど、そういうわけではなかったようだ。
結局、英語での略称としてCzechiaを導入したい人たちがいて、スポーツはそのだしに使われてしまっただけなのだろう。だから、その手の人たちにとって、実際にスポーツの世界で使われるかどうかはどうでもよく、議論を重ねた(少なくともふりはした)というアリバイもあるので、チェコ人全体がどのように考えているかも、些末事に過ぎないのだ。
オリンピックのチェコ代表の公式Tシャツ(そんなものがあるのかどうかは不明だが、関係者がよく着ている)の白地に一文字づつ色を変えてCzech republicと書かれているのも、なかなか見栄えが良くて、評判も悪くないようだから、スポーツ選手にとっても、デザイナーにとってもCzechiaという略称は必須のものではなかったらしい。そういえばあの時も、スポーツ選手で声高にCzechiaの採用を叫んでいる人はいなかったかな。
しかし、そもそもスポーツの世界で英語の略称を使う必要があるのだろうか。日本も何の疑問もなく選手たちのウェアにはJapanの文字が入れられているけれども、英語である必要はあるのだろうか。なんてことを考えながら、ハンドボールを見ていたら、スウェーデンの選手たちのユニフォームには、Swedenなどとは書かれておらず、Sverigeとか何とか書かれていた。どうもスウェーデン語のスウェーデンらしい。
自転車競技で活躍したポーランドの選手たちのユニフォーム(?)にも、Polslaとか何とか書かれていて、同じ西スラブでも、Poloskoというチェコ語の表記とは違うんだという感想を抱いたが、よく考えたらこれも英語ではなく、ポーランド語である。冬のスポーツだと、フィンランドのアイスホッケー代表もフィンランド語の国名を使っていたような気がする。
独立したての新しい国で存在を世界に知らしめるとか、国名を変更したばかりで周知の必要があるとか、そんな理由でもない限り、英語を使う必要はないのだ。だからこそ、新しく決めた英語の略称を周知するために、今回チェコはCzechiaを使うべきたっだはずなのだけど、結局、政治家たちの話題作り、もしくは、重要なテーマから国民の関心をそらすための手だったのかね。
それはともかく、せっかく世界中から、さまざまな言葉を使う人々が集まっているのだから、選手たちのユニフォームが言葉のささやかな展示会であってもおかしくはないように思う。スウェーデンのユニフォームの胸のところにSWEと入れてあったように、国を識別するためのコードがあれば、間違えられることはないだろうし、本当に異文化に対する寛容性を子供の頃から育てたいのであれば、オリンピックは最高の機会である。言葉は文化であり、その国の自称を知ろうとすることは、その第一歩となるだろう。IOCもあれだけあこぎな方法で集金しているのだから、それをオリンピック参加国の自国語での名称の一覧を作って、世界中の小学生に配布するぐらいのことはしても罰は当たらないだろうに。
日本だって、「にほん」なのか「にっぽん」なのかという問題はあるとはいえ、スポーツの応援のときには、みんな「にっぽん、にっぽん」と叫んでいるのだから、Japanじゃなくて、Nipponを使ってもいいんじゃないのかねえ。日本の存在を知らない人がオリンピックを見ているとは思えないし、外国人の日本初心者は「にっぽん」と言い、上級者になると「にほん」も仕えるなんてのの入り口にはなりそうだしさ。
それから、日本代表を、何とかジャパン、かんとかジャパンと呼ぶのもやめてもらいたいものだ。あの手の気恥ずかしくなるような愛称をつけたところで、実力が上がったり人気が出たりするものでもあるまいに。チェコにいるから耳で聞く機会はないのだけど、ネット上の記事などで目にするとなんともいたたまれない気分になってしまう。選手たちが満足しているのならいいのだけれども、マスコミに踊らされているんじゃないかと思われてしまう。
誰か、大和言葉でよさそうなの考えてくれないかな。大和言葉だと柔らかすぎて、命の取り合いはしないスポーツだとは言え、戦いには向かないか。それに戦前の復活だとか言い出す連中が出そうだなあ。
ちなみにチェコのサッカー代表は、「チェコのライオン」と呼ばれることがあるらしいのけれども、同じ名称の映画の賞と重なるためか滅多に使われず、U21代表が、「ルビーチャタ」(ライオンの子供たち)と呼ばれている。
8月20日23時。
迷走した挙句に、とってつけたような終り方。うーん。8月20日追記。