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2016年08月18日

敗北宣言(二)(八月十五日)



 我らがチェコ代表は、複数のメダルが期待されたカヌーのスラローム競技とボート競技で、それぞれ銅メダルを一つしか取れないという期待はずれに終わったのだが、その分をテニスで取り返した。ベルディフとプリーシュコバーが出場を辞退し、シングルスのロソルとダブルスのシュテパーネク・ロソル組が初戦で敗退し、調子がよさそうだったシャファージョバーが女子シングルスの試合を体調不良で棄権したとき、今回はテニスでメダルを取るのは無理かなと思ったのだけど、最終的には女子シングルスのクビトバー、女子ダブルスのシャファージョバー・ストリーツォバー組、混合ダブルスのフラデツカー・シュテパーネク組が三位決定戦に勝って、銅メダルを獲得してしまった。

 女子ダブルスの三位決定戦はチェコ人対決だったのだが、実は負けたフラバーチコバー・フラデツカー組は、決勝まで後一歩だったのだ。準決勝のスイスチームとの試合の第二セットでマッチポイントを取ったところで、スイスチームのヒンギソバー(チェコスロバキア出身だからこれでいいよね)が、フラバーチコバーの右目にボールをぶち当てやがったのだ。簡単な治療は受けたようだが、十五分以上は右目が何も見えず、片目でプレーしているような状態だったという。これではまともにプレーできるわけもなく、精神的なショックから立ち直る前にポイントを重ねられて、結局逆転負けを喫してしまった。
 ダブルスではよくあることだという話だけど、もう少し中断の時間を長く取って目が見えるようになるまで待つぐらいの配慮があってもよかっただろうに。三位決定戦後の診察で、骨折までしていることが判明し、手術を受けることになったようだ。スポーツ新聞には試合後のボクサーのように目の下が腫れ上がった写真が掲載されていた。踏んだり蹴ったりとはこのことである。

 チェコがメダルを取ったのはいいのだけど、テニスの運営はひどかった。普通はボールボーイはテニスをプレーしている子供たちが務めることが多いのだが、この大会では、最初はテニスを見たこともないんじゃないかという子供たちが右往左往して選手の邪魔になっていた。途中で大人に変わってからも、タオルを渡すのに手間取ったり、ボールを拾えなかったり、求められてもいないに選手にボールを投げたり、事前の教育をしたとは思えないありさまだった。ネットの両脇のボールボーイは、方膝をついてしゃがんでいるものだが、ネットの両側に立っているのを見たときには目を疑った。最後には多少改善はされたけど、主審の脇にいたボールボーイは最後まで突っ立ったままだった。
 混合ダブルスの試合が午前一時過ぎまでかかったりした時間の問題は、フラデツカーが女子ダブルスにでていてそれが終わるまでは始められなかったという事情があるから、仕方がない面もあるけれども、もう少し時間に余裕を持った試合の予定を立てることはできたはずである。
 さらにひどかったのは観客で、うるさいのはデビスカップなどでもあることだから許そう。でも観客が少なく空席が多かったせいか、プレー中にもかかわらず、よりいい席を求めて動き回る観客が最後の最後までいなくならなかったのは許されるべきではない。審判が何度注意をしても効果があったようには見えず、ブラジルでこんな大きなテニスの大会を開催したのは大間違いだったのだと言わざるをえない。

 そもそも、テニスやサッカー(男)のような、プロの興行が世界中で行われ、オリンピックよりも権威のある世界大会が存在するスポーツはわざわざオリンピックの種目にする必要はないのだ。その意味でゴルフが採用されたのも愚行だとしか言えない。ラグビーや自転車のロードレースも要らない。IOCには、最初から人気のスポーツを集めてオリンピックの価値を上げて金儲けにつなげる努力よりも、マイナーなスポーツの振興に力を入れてほしいものである。それがオリンピックの存在意義というものではなかったのか。

 今回のテニスのチェコ代表は、全部で七人出場したうち、五人が銅メダルを獲得した。予想以上の活躍に、ついつい深夜までテレビに見入ってしまったのは仕方がないのだ。日本選手の活躍よりもチェコ選手の活躍に目が行ってしまうのも、チェコに住んでチェコテレビを見ているから仕方がないのだ。ということで、今回はチェコのテニス代表に負けてしまったことにする。

 最近昔の草創期の近代オリンピックでは芸術種目というものが行なわれていたことを知った。詩、作曲、彫刻なんて部門で、作品の優劣を競っていたらしい。チェコスロバキア代表は芸術種目でメダルを取ったことがあるそうである。日本はどうなのかな。 
8月16日17時。




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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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