2016年04月09日
第2回 歴史第1部----2
【インフレーションからビッグバンへ】
長くなってしまいましたが、その無から「ゆらぎ」(存在のバランスの崩れ)が発生して、インフレーションやビッグバンの大爆発が連続的に起こり、たった3分間(「素粒子の時代」と呼ばれます)で光から水素ができ、そしてヘリウムの原子核がつくられる。
実は、その間に、重力の誕生、強い力の誕生、弱い力と電磁力の分離(以上を4つの力(4)といいます)、が起こります。「宇宙は誕生直後からビッグバン直前までの10の34乗分の1秒(5)の間に、「インフレーション」と呼ばれる、数十桁も大きくなるような猛烈な加速膨張を起こしたのです。現在の宇宙膨張を加速させているダークエネルギーと同じ、しかしその100桁以上もの驚異的な大きさをもった「真空のエネルギー」が、生まれたばかりの宇宙空間を倍々に膨張させていったのではないかと考えられています(6)」。
(その直後のビッグバンでは、)「光子を含む大量の素粒子が生まれます。素粒子にはふたつの種類がありました。ひとつが「粒子」で、もうひとつが粒子と反応すると光を出して消滅してしまう「反粒子」です。何らかの理由で、粒子よりも反粒子の方が10億個に1個ほど少なかったために、宇宙のごく初期に反粒子は(対応する粒子と一緒になって)すべて消滅し(対称性が保存されたわけですね)、わずかに残った粒子が形成され(水素・ヘリウムの原子核が形成され←ここまで宇宙創成から3分)、それが現在の宇宙の物質のもと(その10万年後につくられる、最初の元素と言うべき水素とヘリウムの原子)となったのです。」「そしてこのインフレーションとともに、この宇宙には、時間が流れ、空間が広がり始めたのです」「ビッグバンのすさまじい高温(1000億度ともいわれます)は、その直前まで宇宙に満ちていたエネルギーが熱に変化したものでした。超高温の宇宙は、この間に急激な膨張を起こしながら冷えていきました。その中で、物質のもとである素粒子のうち「クォーク(7)」と呼ばれるものが集まり、陽子や中性子となりました。さらにはその陽子や中性子が集まって、元素の中でももっとも軽い、水素やヘリウムの「原子核」がつぎつぎと生み出されたのです(8 )。」
【宇宙の晴れ上がりと銀河の形成】
その後38万年後位に(先ほどの水素やヘリウムの原子核が電子を捉え、原子となり、解放された光子が自由になり)、光が直進できるようになりました。宇宙は透明になったのです。「宇宙の晴れ上がり」の状態です(9)。もう少し細かく言うと、最初に存在した原子は水素Hのみでした。10万年ほどたつと水素の霧でもうもうとなっていて、ぶつかりあったり、くっつきあったりで、濃度の濃いところが(密度の高い部分が)宇宙の膨張を振り切って自分の重力で収縮して星が、銀河が形成される。
元々水素原子核同士はプラスの電気で反発し合っているので、ある程度の大きさになると変身する。水素原子4個でヘリウムHe原子1個に変身する(核融合(10))。その間で光というエネルギーを放出するので、重さはその分だけ軽くなる。太陽は巨大な、水素の核融合している固まりですね。恒星の一生のうち一番長い時期で、夜空の星の大部分がこれだそうです。
それからヘリウムだらけとなると今度は同様のプロセスで内部の高重力で炭素Cとなり、窒素となり、酸素となり、つまり元素の周期表にある原子番号順に原子が生成されていき、最後に鉄Feが出来ます。(実は太陽はヘリウムの段階で、これ以上進みません。なぜならもっと質量の大きい恒星でないと進まないのです。で、ヘリウムが増えて、周りで水素が燃えている状態で、外側が膨らみ温度が低下して、赤く見える星を赤色巨星と呼びます。年老いた恒星です。太陽よりもっと大きい恒星が核融合反応を進めれば、鉄までつくり、温度を急速に下げ(鉄は熱を吸収する性質をもつ)縮み始め、逆に中心部は超高音になり大爆発を起こし、超新星となります(超新星爆発)。この時、鉄以降のコバルトCo、ニッケル、金、銀など鉄より重い元素になり、宇宙空間にばら撒かれます。鉄より重い物質が出来、星間物質の流動が起き、それぞれ運動量を持った星間物質が、大小の渦巻きを作る様になる。この過程で、太陽系が形成されたり、地球も誕生する。(地球は恒星ではなく、太陽の惑星ですが、芯が高温の鉄です。これは、他の巨大恒星の破片に依っているのでしょう。)
90億年経過(46億年前)後です。
「最初、銀河は激しい動的な状態にあるが、やがて暗黒物質(ダークマター)が力学的平衡状態を実現し、その重力場の中でガスがエネルギーを散逸しながら収縮、銀河の基本構造を形成する。回転で収縮が止まった場合、円盤状の銀河になる。回転が小さい場合は楕円銀河になる(コトバンク「銀河生成」より)」。星雲は渦巻く(11)んです。
ここで又押さえておかなければならない点があります。エントロピーの法則です。
エントロピーとは、energie(エネルギー) に trope(ギリシャ語の「変化」) を加えた造語で、熱拡散の非可逆性(逆は生じないこと)を論理化する為にクラウジウスという人が導入した熱学上の概念です。放っておけば、どんどんエネルギーは拡散しばらばらさ加減(でたらめ度)が拡大する。秩序は無秩序に向かって進行するというものです。カオス(12)に戻るという訳です。これは熱力学の第2法則に当たります(13)。
しかし生命というものは、高分子の有機体ですから(秩序・構造そのものですから)、宇宙の歴史におけるエネルギーの法則つまり第2法則に反するものです。ところが秩序や構造を維持している生物は、他の生物という高度な秩序体・エントロピーの小さいものを食して(摂取して)、秩序の壊れたもの・エントロピーの大きいものを排泄物として外に出すことで、自らのエントロピーを小さく保っている(秩序を保っている=生命を維持している)訳で、全体からすればエントロピーは大きくなり、第2法則に矛盾しません。太陽エネルギー(高温でエントロピーは低い光子)を食べて、二酸化炭素や水といったエントロピーの大きい物質を排出して、エントロピーを低く保つ植物も原理は同じです(エントロピーの大小と、生命の自由の有無については、科学の章で考えます)。
唯ここが大事なんですが、この両方のつながりを知っておくことは、「生きるとはどういうことか」の答えにもなっているということです。つまり生きる(=生命の維持)は、既に生きていて、秩序を持った(エントロピーの低い)ものを食べて、かみ砕き(殺してエントロピーの高いバラバラな状態にして)、体内に取り入れ、自分の秩序形に構成しなおして、エネルギーにして、今度はその使いカスを、死(=個の範囲でエントロピーを最大にした状態)にして、排泄していることで、死(破壊・カオス)無しには生は成り立たないという関係にあるということなんです。
敢えて回りくどい言い方をしましたが、カオスなしには生は成り立たないのです。つかの間であっても。
これって、「徒然草」の2つの大きなテーマ「欠けたるもの(ゆらぎから、はみ出された対称性の片割れを予想させる)の美」と、「生の底に流れ、それを裏側から支えている死」のうちの、後者の事でしょう。
「春暮れて後、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず。春は、やがて夏の気を催し、夏より、既に秋は通ひ、秋は則ち寒くなり、十月は、小春の天気、草も青くなり、梅も蕾みぬ。木の葉の落つるも、先ず落ちて芽ぐむにはあらず。下より萌し、つはるに堪えずして、落つるなり。・・・・・・・・・・・・死期は、序を待たず。死は、前よりしも来たらず、予て、後ろに迫れり。人皆、死ある事を知りて、待つ事、しかも急ならずに、覚えずして来たる。沖の干潟、遥かなれども、磯より潮の満つるが如し(第155段)」
(続く)
長くなってしまいましたが、その無から「ゆらぎ」(存在のバランスの崩れ)が発生して、インフレーションやビッグバンの大爆発が連続的に起こり、たった3分間(「素粒子の時代」と呼ばれます)で光から水素ができ、そしてヘリウムの原子核がつくられる。
実は、その間に、重力の誕生、強い力の誕生、弱い力と電磁力の分離(以上を4つの力(4)といいます)、が起こります。「宇宙は誕生直後からビッグバン直前までの10の34乗分の1秒(5)の間に、「インフレーション」と呼ばれる、数十桁も大きくなるような猛烈な加速膨張を起こしたのです。現在の宇宙膨張を加速させているダークエネルギーと同じ、しかしその100桁以上もの驚異的な大きさをもった「真空のエネルギー」が、生まれたばかりの宇宙空間を倍々に膨張させていったのではないかと考えられています(6)」。
(その直後のビッグバンでは、)「光子を含む大量の素粒子が生まれます。素粒子にはふたつの種類がありました。ひとつが「粒子」で、もうひとつが粒子と反応すると光を出して消滅してしまう「反粒子」です。何らかの理由で、粒子よりも反粒子の方が10億個に1個ほど少なかったために、宇宙のごく初期に反粒子は(対応する粒子と一緒になって)すべて消滅し(対称性が保存されたわけですね)、わずかに残った粒子が形成され(水素・ヘリウムの原子核が形成され←ここまで宇宙創成から3分)、それが現在の宇宙の物質のもと(その10万年後につくられる、最初の元素と言うべき水素とヘリウムの原子)となったのです。」「そしてこのインフレーションとともに、この宇宙には、時間が流れ、空間が広がり始めたのです」「ビッグバンのすさまじい高温(1000億度ともいわれます)は、その直前まで宇宙に満ちていたエネルギーが熱に変化したものでした。超高温の宇宙は、この間に急激な膨張を起こしながら冷えていきました。その中で、物質のもとである素粒子のうち「クォーク(7)」と呼ばれるものが集まり、陽子や中性子となりました。さらにはその陽子や中性子が集まって、元素の中でももっとも軽い、水素やヘリウムの「原子核」がつぎつぎと生み出されたのです(8 )。」
【宇宙の晴れ上がりと銀河の形成】
その後38万年後位に(先ほどの水素やヘリウムの原子核が電子を捉え、原子となり、解放された光子が自由になり)、光が直進できるようになりました。宇宙は透明になったのです。「宇宙の晴れ上がり」の状態です(9)。もう少し細かく言うと、最初に存在した原子は水素Hのみでした。10万年ほどたつと水素の霧でもうもうとなっていて、ぶつかりあったり、くっつきあったりで、濃度の濃いところが(密度の高い部分が)宇宙の膨張を振り切って自分の重力で収縮して星が、銀河が形成される。
元々水素原子核同士はプラスの電気で反発し合っているので、ある程度の大きさになると変身する。水素原子4個でヘリウムHe原子1個に変身する(核融合(10))。その間で光というエネルギーを放出するので、重さはその分だけ軽くなる。太陽は巨大な、水素の核融合している固まりですね。恒星の一生のうち一番長い時期で、夜空の星の大部分がこれだそうです。
それからヘリウムだらけとなると今度は同様のプロセスで内部の高重力で炭素Cとなり、窒素となり、酸素となり、つまり元素の周期表にある原子番号順に原子が生成されていき、最後に鉄Feが出来ます。(実は太陽はヘリウムの段階で、これ以上進みません。なぜならもっと質量の大きい恒星でないと進まないのです。で、ヘリウムが増えて、周りで水素が燃えている状態で、外側が膨らみ温度が低下して、赤く見える星を赤色巨星と呼びます。年老いた恒星です。太陽よりもっと大きい恒星が核融合反応を進めれば、鉄までつくり、温度を急速に下げ(鉄は熱を吸収する性質をもつ)縮み始め、逆に中心部は超高音になり大爆発を起こし、超新星となります(超新星爆発)。この時、鉄以降のコバルトCo、ニッケル、金、銀など鉄より重い元素になり、宇宙空間にばら撒かれます。鉄より重い物質が出来、星間物質の流動が起き、それぞれ運動量を持った星間物質が、大小の渦巻きを作る様になる。この過程で、太陽系が形成されたり、地球も誕生する。(地球は恒星ではなく、太陽の惑星ですが、芯が高温の鉄です。これは、他の巨大恒星の破片に依っているのでしょう。)
90億年経過(46億年前)後です。
「最初、銀河は激しい動的な状態にあるが、やがて暗黒物質(ダークマター)が力学的平衡状態を実現し、その重力場の中でガスがエネルギーを散逸しながら収縮、銀河の基本構造を形成する。回転で収縮が止まった場合、円盤状の銀河になる。回転が小さい場合は楕円銀河になる(コトバンク「銀河生成」より)」。星雲は渦巻く(11)んです。
ここで又押さえておかなければならない点があります。エントロピーの法則です。
エントロピーとは、energie(エネルギー) に trope(ギリシャ語の「変化」) を加えた造語で、熱拡散の非可逆性(逆は生じないこと)を論理化する為にクラウジウスという人が導入した熱学上の概念です。放っておけば、どんどんエネルギーは拡散しばらばらさ加減(でたらめ度)が拡大する。秩序は無秩序に向かって進行するというものです。カオス(12)に戻るという訳です。これは熱力学の第2法則に当たります(13)。
しかし生命というものは、高分子の有機体ですから(秩序・構造そのものですから)、宇宙の歴史におけるエネルギーの法則つまり第2法則に反するものです。ところが秩序や構造を維持している生物は、他の生物という高度な秩序体・エントロピーの小さいものを食して(摂取して)、秩序の壊れたもの・エントロピーの大きいものを排泄物として外に出すことで、自らのエントロピーを小さく保っている(秩序を保っている=生命を維持している)訳で、全体からすればエントロピーは大きくなり、第2法則に矛盾しません。太陽エネルギー(高温でエントロピーは低い光子)を食べて、二酸化炭素や水といったエントロピーの大きい物質を排出して、エントロピーを低く保つ植物も原理は同じです(エントロピーの大小と、生命の自由の有無については、科学の章で考えます)。
唯ここが大事なんですが、この両方のつながりを知っておくことは、「生きるとはどういうことか」の答えにもなっているということです。つまり生きる(=生命の維持)は、既に生きていて、秩序を持った(エントロピーの低い)ものを食べて、かみ砕き(殺してエントロピーの高いバラバラな状態にして)、体内に取り入れ、自分の秩序形に構成しなおして、エネルギーにして、今度はその使いカスを、死(=個の範囲でエントロピーを最大にした状態)にして、排泄していることで、死(破壊・カオス)無しには生は成り立たないという関係にあるということなんです。
敢えて回りくどい言い方をしましたが、カオスなしには生は成り立たないのです。つかの間であっても。
これって、「徒然草」の2つの大きなテーマ「欠けたるもの(ゆらぎから、はみ出された対称性の片割れを予想させる)の美」と、「生の底に流れ、それを裏側から支えている死」のうちの、後者の事でしょう。
「春暮れて後、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず。春は、やがて夏の気を催し、夏より、既に秋は通ひ、秋は則ち寒くなり、十月は、小春の天気、草も青くなり、梅も蕾みぬ。木の葉の落つるも、先ず落ちて芽ぐむにはあらず。下より萌し、つはるに堪えずして、落つるなり。・・・・・・・・・・・・死期は、序を待たず。死は、前よりしも来たらず、予て、後ろに迫れり。人皆、死ある事を知りて、待つ事、しかも急ならずに、覚えずして来たる。沖の干潟、遥かなれども、磯より潮の満つるが如し(第155段)」
(続く)