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第299回 山川菊栄論 [2016/07/19 17:50]
文●ツルシカズヒコ
野枝は『解放』一月号(一九二〇年一月号・第二巻第一号)に「山川菊栄論」を書いた。
「新時代の新人物月旦」欄の一文で、他に黒田礼二「森戸辰男論」、新明正道「島田清次郎論」が掲載された。
野枝は前振りとしてこんなことを書いている。以下、『定本 伊藤野枝全集 第三巻』の要約。
●社会問題がやかましく議論される昨今だが、社会問題に関する婦人界の知識が隔絶されている中で、山川菊栄氏のような評論家を得たことは一般..
第295回 婦人労働者の覚醒 [2016/07/15 13:34]
文●ツルシカズヒコ
一九一九(大正八)年十一月十三日、『労働運動』(第一次)第二号が発行された。
この号から野枝は「婦人欄」を担当し、婦人労働問題に関わっていく。
「婦人欄」を担当するにあたっての「御挨拶」で、野枝は田中孝子、与謝野晶子、平塚らいてうについて触れている。
過日友愛会婦人部の演説会に臨まれた田中孝子女史が、自分もアメリカで多少の苦学らしい事をしたから、労働の生活は知つてゐるつもりだと云つて、男子側..
第275回 婦人参政権 [2016/07/04 20:21]
文●ツルシカズヒコ
一九一九(大正八)年当時の日本の衆議院議員選挙は制限選挙であった。
一八八九(明治二十二)年の衆議院議員選挙法では、満二十五歳以上の男子で直接国税15円以上を納めている者に選挙権の資格が与えられ、満三十歳以上の男子で直接国税15円以上を納めている者に被選挙権の資格が与えられていた。
一九〇〇(明治三十三)年になり、選挙権、被選挙権ともに他の条件は変わらず、直接国税納入額が十円以上に改められた。
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251回 半耄碌(もうろく)のお婆さん [2016/06/17 13:38]
文●ツルシカズヒコ
大杉は『文明批評』一九一八年二月号に「僕は精神が好きだ」を書いた。
僕は精神が好きだ。
しかしその精神が理論化されると大がいは厭やになる。
理論化という行程の間に、多くは社会的現実との調和、事大的妥協があるからだ。
精神そのままの思想は稀だ。
精神そのままの行為はなおさら稀だ。
この意味から僕は文壇諸君のぼんやりした民本主義や人道主義が好きだ。
少なくとも可..
第238回 評論家としての与謝野晶子 [2016/06/04 14:23]
文●ツルシカズヒコ
野枝は『新日本』三月号(第七巻第三号)に「評論家としての与謝野晶子氏」(『定本 伊藤野枝全集 第二巻』)を発表した。
作家としてはともかく、「評論家としての与謝野晶子」の批評であり、痛烈な批判だった。
婦人問題に関する発言において大御所的存在だっただろう晶子は当時、三十九歳。
『定本 伊藤野枝全集 第二巻』解題によれば、晶子は『太陽』一九一六年十二月号「婦人界評論」の「一人の女の手紙」で、大杉を..
第227回 宮嶋資夫の憤激 [2016/05/30 17:03]
文●ツルシカズヒコ
十一月十日の『東京朝日新聞』は、五面の半分くらいのスペースを使って、この事件を報道している。
見出しは「大杉栄情婦に刺さる 被害者は知名の社会主義者 兇行者は婦人記者神近市子 相州葉山日蔭の茶屋の惨劇」である。
内田魯庵は、こうコメントしている。
……近代の西洋にはかう云ふ思想とか云ふ恋愛の経験を持つてゐる人がいくらもある……彼が此恋愛事件に就いて或る雑誌に其所信を披瀝したのを見ると、フイ..
第155回 婦人の選挙運動 [2016/05/09 15:44]
文●ツルシカズヒコ
『青鞜』一九一五年四月号「編輯室より」に、野枝はこう書いた。
●先月は随分つまらないものを出したので大分方々からおしかりを受けました。
そのうめ合はせに今月は特別号にして少しよくしやうかと思ひましたけれど何しろちつとも準備が出来てゐませんから来月にしやうと思つてゐます。
●平塚さんは今長篇執筆中です。
いよ/\発表される日のはやく来るのを待ちます。
●かつちやんは寺島村の白(..
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