2015年05月11日
土佐日記
こんな時間。。。
個人的に衝撃を受けた和歌を
ご紹介するにとどめようかと
思ったのですが、
その前に、大前提として文法の
確認をしないと、衝撃が薄れてしまう……
ということで、まずは、こちらを。土佐日記の
おそらく最も有名な部分では?
あぁでも「かきつばた」の方が有名でしょうか…
かく上る人々のなかに、京より下りしときに、みな人、子ども無かりき、いたれりし国にてぞ、子うめる者どもありあへる。人みな、船の泊るところに、子を抱きつつ降り乗りす。これを見て、昔の子の母、悲しきに耐へずして、
なかりしもありつつかへるひとのこをありしもなくてくるがかなしさ
といひてぞ泣きける
訳: このように京へ上る人々の中には、京から下った時には皆、子どもが居なかったのだが、到着した国で、子どもを生んだ者達も乗り合っている。人は皆、舟の泊まるところで、子を抱きながら乗り降りする。これを見て、(亡くなった)昔の子の母は、悲しさに耐えられず、
もともと居なかったのに、一緒に帰っている人の子がいる、その一方で、私はもともと子どもがいたというのに、亡くして帰ってくることが、本当に悲しい
と言って、泣いた
と、この部分を出したのは、過去の助動詞「き」と「けり」の
違いについて、少し言及したかったからです
「き」は直接過去、「けり」は間接過去
と、よく習いますが、私は
「き」が直接過去ということは、つまり
人が何かをした、という過去
もう少し言ってしまうと、意図的に、何かをした、という過去
「けり」は、逆に人が関われないような事情における過去
人がどうにかこうにか出来るもんじゃない事柄に
関する過去、という風に習い、ふーむ、なるほどーと。
どちらにせよ、全く同じ「過去」の意味ならば
二つもいりませんものね。。。
古の人々にとって、人が何かする、と同程度
もしくはそれ以上に、自然の力や神様の力と
いうものは生活の中で自然と意識されていたんでしょう
だから、当たり前のように
あ、これは人間の意思だな、という時には「き」
自然や神の意思もしくは力、という時には「けり」
なの…だと習って、素直に納得してここまで来ています
と、いう訳で、今回の箇所です
皆人子どもなかりき
は、「き」なので、
「皆人は、子どもがいなかった」
でもいいのですが、ちょっと不十分
京から下っていった人々は、
京より下りし
なので、
意図的に、自ら都から出て行った、という解釈になりますが
そうなると、子どもがいたら、大変。
連れて行くにも、置いて行くにも、命の危険がある
だから、危険を冒して(当時、旅というのは本当に危険なことでした)
さあ、京から出るぞ! と一大決心した人々は
子どもも、それまでは絶対につくらないぞ! と思って、
実際に、皆、子どもがいなかった、ということになります
もしも、これが、皆ひとなかりけり。
だったとしたら、偶然、皆子どもがそれまで
できなかった、という意味で、やっぱり
ニュアンスが異なりますよね
うーむ、だから、昔の子(亡くなった子)の母親も
ありしと言っているので
言ってみれば、待望の子だったのではないでしょうか?
子どもが欲しい、欲しい、と思っていてできた子どもだった訳で…
当然、可愛がって育てていたはずですが、
その子は亡くなってしまうんですね……
そして、最後は 「泣きけり」なんですね
お母さんは、自分で泣こう! と思って泣いた訳じゃない
むしろ、涙を止めようとしても、勝手に溢れ出て止まらない
そんな泣き方をしていたはず、です。
子を亡くして、仲睦まじい様子の他の親子を見ていると
あぁ、私の子も元気なら今ごろ…
と勝手に浮かんできて、悲しくってしょうがなくなる
一見、「直接経験」(お母さんが直接泣くという体験をしている)
ように見えるのに「けり」が用いられる所以だと思います
と、いう訳で、かなり乱暴かつ大胆に意訳を
してしまうならば
訳:
このようにして京へ上る人々の中には、京から下った当時は、皆足手まといにならないようにと子どもをつくらなかった人ばかりだったのだが、到着した国で、子どもを生んだ者達も今船に乗り合っている。子どもがいる人は皆、船の泊まるところで、わが子を抱きながら、降り乗りする。これを見て、亡くなった子の母は、悲しさに耐えられず
子どもなんていらんと言って、実際子どもが居なかった人さえも、今は子どもがいて、それで京へ帰っているというのに、私には最愛の子どもがいたというのに、その子が居ないで帰ってくる悲しさといったら、もうどうしようもない
と言って、人前であるが堪え切れずに泣いてしまった
うん。大胆だな……あの、頼むので
学校のテストとかの参考にはしないで下さい笑
以上「き」と「けり」の違いが
少しでも実感できた!
と思って頂けると嬉しく思うのです…
そして、本命の和歌に続きます。
タグ:新古今和歌集
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