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2019年05月08日
諸行無常
父親の火葬後、骨壺に骨をいれたときのシーンが、未だに忘れられない。
八十二歳とはいえ、元気な頃は、毎日何キロも歩いていたせいで、骨が太く、頑丈だったのだ。
一方、病気で治療した頭蓋骨の中は、やや緑がかっていた。
ご案内のもとに、骨壺に骨を収納するするのだが、途中で入りきらなくなった。
すると、ゴリゴリと骨を潰し、骨壺内の領域を広げ、また次々と骨を入れてゆく。
焼けた骨はもろいから、結局はすべての骨が収まってしまうという訳だ。
人間は魂が抜けると、その肉体は単なる抜け殻、外見は生きていたときの姿だが、その肉体は朽ちていくものであり、日本では概ね火葬をして骨にする。個人の面影を骨に委ねるというよりも、すべて消えてしまうことへのささやかな抵抗なのだろう。
そんな出来事からほんの二週間ほどだが、同じ頃、祖父を亡くした生徒がいた。
聞けば事故だという。
ツアーで山登りに出掛けたが、トイレに行っているうちにはぐれ、そのまま行方不明になり、翌日痛いで発見されたとのこと。
どうも、足をすべらせ首の骨も折り、登山道近くであったにも関わらず、助けを求められなかったらしい。77歳であったそうだ。
こうした事故は、後々にいろいろな所に禍根を残しそうだ。
病気ではなく、突然の死には、家族も動揺を隠せまい。
人生の中で、人の死を経験することは、避けては通れないことだ。
お釈迦様に、「私の子どもを生き返らせてください」、と懇願した母親は、
「今まで身内で亡くなった人のいない、そうした家から、辛子種をもらってきなさい。それができたら助けよう。」
と、母親に諭す。
母親は、必死で家々を巡るが、身内に不幸のなかった家などないのだ。
結局、「そうした家は一軒もありませんでした」、とお釈迦様に報告するのだ。
一見、意地悪にも思えるが、興奮して冷静さを失っている母親の心を落ち着け、子どもの死を見つめさせるという効果はあったのだろう。
その後、母親は諭され、子どもの死を受け入れる。
四苦八苦の一つである、『愛別離苦』(愛する人と別れる苦しみ)は悲しい。
だが、誰もが必ずや体験しなければならない、人生の出来事だ。
「ああ、もう親父はこの世にはいないのだな…。」
あまり仲がよくなかったとはいえ、やはりいなくなるのは寂しい。
残された母親も、ぽっかり心に穴があいた感じだろう。
しかし、そうやって時は流れ、人類は連綿と生きてきた。
すべては諸行無常。
この世に永遠なるものは、何一つないのだ。
八十二歳とはいえ、元気な頃は、毎日何キロも歩いていたせいで、骨が太く、頑丈だったのだ。
一方、病気で治療した頭蓋骨の中は、やや緑がかっていた。
ご案内のもとに、骨壺に骨を収納するするのだが、途中で入りきらなくなった。
すると、ゴリゴリと骨を潰し、骨壺内の領域を広げ、また次々と骨を入れてゆく。
焼けた骨はもろいから、結局はすべての骨が収まってしまうという訳だ。
人間は魂が抜けると、その肉体は単なる抜け殻、外見は生きていたときの姿だが、その肉体は朽ちていくものであり、日本では概ね火葬をして骨にする。個人の面影を骨に委ねるというよりも、すべて消えてしまうことへのささやかな抵抗なのだろう。
そんな出来事からほんの二週間ほどだが、同じ頃、祖父を亡くした生徒がいた。
聞けば事故だという。
ツアーで山登りに出掛けたが、トイレに行っているうちにはぐれ、そのまま行方不明になり、翌日痛いで発見されたとのこと。
どうも、足をすべらせ首の骨も折り、登山道近くであったにも関わらず、助けを求められなかったらしい。77歳であったそうだ。
こうした事故は、後々にいろいろな所に禍根を残しそうだ。
病気ではなく、突然の死には、家族も動揺を隠せまい。
人生の中で、人の死を経験することは、避けては通れないことだ。
お釈迦様に、「私の子どもを生き返らせてください」、と懇願した母親は、
「今まで身内で亡くなった人のいない、そうした家から、辛子種をもらってきなさい。それができたら助けよう。」
と、母親に諭す。
母親は、必死で家々を巡るが、身内に不幸のなかった家などないのだ。
結局、「そうした家は一軒もありませんでした」、とお釈迦様に報告するのだ。
一見、意地悪にも思えるが、興奮して冷静さを失っている母親の心を落ち着け、子どもの死を見つめさせるという効果はあったのだろう。
その後、母親は諭され、子どもの死を受け入れる。
四苦八苦の一つである、『愛別離苦』(愛する人と別れる苦しみ)は悲しい。
だが、誰もが必ずや体験しなければならない、人生の出来事だ。
「ああ、もう親父はこの世にはいないのだな…。」
あまり仲がよくなかったとはいえ、やはりいなくなるのは寂しい。
残された母親も、ぽっかり心に穴があいた感じだろう。
しかし、そうやって時は流れ、人類は連綿と生きてきた。
すべては諸行無常。
この世に永遠なるものは、何一つないのだ。