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2018年10月03日
覇穹封神演義 22話感想 原作の表現を曲げた演出が気にかかる
22話 武雄封神
22話配信(Abemaビデオ)
あらすじ
聞仲は崑崙攻略を目前にして、王天君の引き合わせによりかつての親友・黄飛虎と対峙する。飛虎は聞仲を説得するが受け入れられず、王天君が展開した紅水陣の中で戦闘となる。
聞仲は向かってくる飛虎にかつての記憶を呼び覚まされ、殴られて仮面を落とす。
紅水陣の酸雨を受け続けた飛虎は、後事を太公望に託し落命、封神される。
感想
また一ヶ月空いてしまいました。特段忙しかったわけでもないのですが……やはり放映中に書いてしまわないとモチベが落ちますね。ていうかもう10月??一ヶ月過ぎるの早くない????アバンとCパートは相変わらず本編と関係がないジョカと妲己の関係を説明する描写。この構成の是非についてはさんざん書いてきたのでもう特に言うことはない。仙界大戦以降のストーリーをアバンやCパートで済ませようということだろう。
……と思ったらわりとがっつり本編にジョカエピソードが食い込んできた。本題の聞仲VS飛虎には十分に時間を割いているので尺調整の意味合いもあるのだろう。その点に不満はないのだが、この赤毛のキャラクター、燃燈道人が何の説明もなく登場しているのが気にかかる。(もはやこのアニメ恒例だが……。)原作未読の人に説明すると、普賢真人の先代にあたる崑崙十二仙の一人で作中最強クラスのキャラクターである。ちなみに竜吉公主の弟であり結構なシスコン気味。原作では聞仲との戦いの後に登場しジョカとの最終決戦に参戦する。
太公望そっくりのキャラクター、王奕登場。姿自体は既出だが喋ったのは初めてである。CVはなんと王天君と同じ岡本信彦さん……な、なんだってーッ!……と本来は驚愕するシーンのはずだが太公望=王天君=王奕という秘密はとうの昔にネタバレされているので驚く人もいないだろう。半総集編だった13話の回答編とも言えるシーンだが、これですっきりアハ体験できる新規視聴者がどれほどいることだろうか。
「天゛化゛く゛ん゛ち゛ょ゛っ゛と゛ど゛い゛て゛!゛」
原作でも笑った部分だが声がつくとさらに破壊力が高い。
禁鞭を掴んで殴りかかる飛虎。「宝貝は仙道以外が触ると身体に悪い」「スーパー宝貝は所有者以外が使おうとすると一分ともたずに死ぬ」という設定があるのだが、まあこのあたりは原作でもさらっと触れられている程度なので見た目が良ければどうでもいい部分だと思う。バトル描写としてはなかなか動いていたので満足度の高い部分。スローモーションで血の球が落ちる演出は雰囲気が出ているし、殴るシーンで現在と過去が交互に映るところもいい。
飛虎の一撃により仮面を落とす聞仲。以前も書いたがこの仮面は殷のモンスターペアレントと化した聞仲の誤謬、頑迷さの象徴として用いられている。素顔から仮面姿になったエピソードは原作でも語られていないので、特に説明がなくとも仮面といえば表層的な人格のことである、という当時の少年漫画としては比較的ハイコンテクストな表現がなされているように思う。
飛虎、封神。覇穹では出番が少なめだったのでアニメ初見では悲劇性がぬるいと思われる。まあ原作でも飛虎は味方内では5番手くらいの描写量で、仙界大戦ではこのラストしか見せ場がないのだが、太公望が人間界で最初に得た味方であり魔家四将戦・崇黒虎戦・趙公明戦など歴戦の積み重ねがある。覇穹ではそれらがことごとくカットされているのが痛いところ。聞仲をラスボスとしてクローズアップするなら聞仲特効キャラである飛虎にもスポットを当てるべきだったとは思うが、全2クールではどうしようもない部分かもしれない。
原作では紅水陣の中から魂魄が飛んだシーンだが、覇穹では地上から飛んでいる。どうも二人がいたのは禁城を模した王天君の亜空間ではなく実際の禁城ということにしたようだ。この辺の改変は意図がよく分からない。絵的にも後ろを振り向く構図が少しコミカルになってしまっているように思う。
完全に個人の好みの話になるが、「男性キャラの涙」はもう少し扱いに気を遣って欲しかった。原作では天化は表情を隠しているし、聞仲も飛虎が死んだ段階では泣いていない(目に涙を貯めているようには見える)。彼が本来落涙するのは(ネタバレになるが)黒麒麟さえも失って完全に独りになってからである。男性キャラを泣かせてはいけないというのではなく、「涙をこらえたかどうか」はキャラクターを描く意味で別の効果を持つものなので、そこを原作から曲げて欲しくなかった。
視覚的な演出としてはいいものが多かったように思うが、天祥が居ない点も含めて尺不足に起因したものではなさそうな改変部分が、原作の表現を脚本家もしくは監督のセンスで曲げたようでかなり気になった。さて、次で最終回である。
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2018年09月01日
グランクレスト戦記 23話感想 オールスターによる最終決戦が壮観
23話 城壁
あらすじ
テオ率いる皇帝軍はエーラム攻略を開始するが、魔法師協会はサイクロプスの封印を解き対抗する。
セーヴィス伯ラシックは兵の損耗を避けるため、わずかな手勢でサイクロプスに挑み、撃退する。
夜間に本格的な戦闘が行われ、マリーネやアレクシスらの援護によりペトル隊が城門に侵入、制圧する。
皇帝軍が市街へ侵攻しようとしたとき、テオたちはディミトリエの招きで常闇の森へと召喚される。
感想
ずっとちまちま書いてたんですが1ヶ月半も空いてしまいました。反省。グランクレストも封神もあと2話分なので続けて書いていきたいと思います。エーラムを攻め多数の犠牲を出すことを躊躇するテオ、その胸中に亡きプリシラの姿が駆ける。原作ではシルーカがこの戦いの正統性を説く、というテオが最終的な覚悟を決めるシーンだが、アニメでは言葉を用いず媒体に合わせた演出になっている。
ホ、ホスティオ殿ーーッ!!作中の役目を終えたからといって、連合盟主の魔法師長だった男がひどい死に様である。ちなみに原作でも死んでしまうのだがもうちょっと矜持を感じる最期が用意されている。
「戦うつもりですか?!そんなの無理に決まってます!死にに行くようなものですよ!!」
「そこをなんとかするのが魔法師というものだろう?」
サイクロプス相手に文字通りのジャイアント・キリングに挑むラシックたち。”どう見ても無理めの状況で魔法師に解決策をぶん投げる君主”というシーン、テオとシルーカで何度も見た気がする。考えるのはお前、やるのは俺、という役割分担と信頼関係がテオチームと共通している。ラシックのセリフのときにBGMが無音になるのが印象的。ちなみに原作では2巻(アニメ5話の時期)でラシックチームの活躍が描かれるのだがその時の相手も巨人であり、原作においてはここは初期のリフレイン的演出として成立している。
「俺も後の世に、始祖皇帝テオと共に名を語られるような武勲が欲しいのだ」
「これまでの武勲で十分じゃないですか……」
珍しくテオへの対抗心のようなものを見せるラシック。これまではラシックが
温泉中也氏による動き重視の迫力ある戦闘シーン。(クレジットを確認する限りでは温泉氏はシスティナ編以来なので、ミルザー戦でも近い描写があったがあれは別の方のお仕事のようだ。)ぐりぐり動いてかっこいいのだが残念ながらキャプチャではあまり魅力が伝わらないように思う。
アストロンで巨人の攻撃というか癇癪を耐えきったグラック隊長。たった一人で敵の行動リソースを100%縛ったわけなので彼がMVPと言っても過言ではないだろう。普通に喋ってるところは初めてのような気がする。無事と分かって歓喜するモレーノ先輩がかわいい。
エロキア様……じゃなかったエドキア様が相変わらず魅惑的。原作によると40過ぎだそうだがこの人に誘惑されたらそりゃ「背徳もいいかな……」という気分にもなろうというものである。初登場時はサブ君主その2くらいの印象だったが最終的には非常に存在感のあるキャラクターになった。CVの行成とあさんは海外ドラマや洋画の吹き替え出演が多いが、アニメは今期では「はたらく細胞」のNK細胞役などでお名前を拝見できる。
そして近侍の男がまたパンツ一丁である。なんなの。20話では泳ぐからだろうと納得したが今回は陸戦なので、やはりそういう国是の国になってしまったようだ。いや、兵装を整える資金が回復してないだけかもしれない……。
続いてアレクシス、ペトル、セルジュ、エレット、ついでにヨアヒムと主だった武将たちの活躍が描かれる。アツい。KOEI三国志のラストはだいたいこんな感じの蹂躙になるよね。魔法師協会は原作では要所要所でたいへん脅威的な勢力として描かれる……というか、提示されるが、どうも政治的駆け引きと水面下での暗躍に特化した組織のようで実戦能力は伴っていないようだ。まあメタ的に言えばほぼモブキャラしかいない組織なのでさもありなんと言うべきか。
「わが従兄弟殿……」
その手にかけた亡き従兄弟を想うマリーネ。この派手なオールスター戦においてヴィラールやミルザー、その契約魔法師たちの姿がないのが惜しい。ちなみに原作描写では祖父ユルゲンと父マティアスへの言及のみで、ヴィラールを想う描写はアニメオリジナルなので、このときの心情は(原作に回答がなく)視聴者の想像に委ねられる。マリーネにとって父や祖父はクライシェ家という生まれながらのレールを象徴するものだが、従兄弟ヴィラールはその限りではない点が印象的。
「皇帝テオ・コルネーロさえ殺せば、君主らは分裂し戦乱の時代が続く」
そうか?ラシックが引き継ぐだけでは?と思わなくもないがまあラシックはテオのようなマリアレ原理主義者じゃないしなあ。現状こう収まっているのはテオのミクロな願望・個人的一存をかなえた結果とも言え、同盟と連合も一枚岩と言い難いのでテオが死んだら大講堂の惨劇後がまた繰り返される可能性は多いにありそうである。
やはりラスボスはディミトリエだった。まあフベルトスさんは原作でも因縁の薄いぽっと出だからね……。どうやら召喚魔法的なものでテオ一行を呼び寄せたようだ。バルギャリー殿下が影と影の間を移動できるので同じようなことは可能なのだろう。テオ一人のほうがやりやすいだろうにアーヴィンやエマルナも呼び寄せるあたり、吸血鬼の王は演出の妙を心得ておられるようだ。まあ実際は近くに居たから分断できなかっただけかもしれない。さて、ついにあと1話である。
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2018年07月11日
覇穹封神演義 21話感想 イメージ通りの映像化で満足度の高いエピソード
21話 閃光・静寂・そして…
21話配信(Abemaビデオ)
あらすじ
聞仲は普賢真人の自爆に耐えるも、太公望と楊ゼンを見失い元始天尊を倒しに向かう。元始天尊は宝貝・盤古幡により手負いの聞仲を追い詰めるが、聞仲の底力が勝り逆転される。
聞仲は元始天尊にとどめを刺そうとするが、そこへ死んだはずの王天君が黄飛虎を連れてくる。
感想
仕事が忙しいのと夏バテが重なって感想が渋滞しております。すでに最終回が放送されてから10日以上経っておりますが、あと3話分、少しずつ書いていきたいと思います。夏の新アニメの感想は難しそう……。「そう……みんなが生きて帰れるようにと……」
アバンはこれまでのように時間や場所、視点が飛んだりせず、ちゃんと前回からの地続きで好印象。上記のセリフはてっきり太公望のものかと思っていたので普賢が発言して驚いた。原作をよくよく思い返すとどちらが発したとも取れる描写になっている。しかし普賢に言わせると皮肉っぽい印象になる気もする。
「スープー族は大人しか変身できねえはずなのに……」
「何かアイテムを使ったのかな?」
原作では「また何かアイテムを使ったのかな?」というセリフだが、覇穹ではスープーが”復活の玉”を使用した趙公明編がカットされているため「また」を消すという
「分かっておる、勝算はゼロだ。だがもはや引き返せぬのだよ。わしは……わしはなんとしてもあやつを乗り越えねばならぬのだ。」
もはや引き返せぬのだよ、以降の部分はアニメオリジナルである。付け加えた意図がよくわからないが死出の特攻からほんの少しポジティブな印象を受けるようになっている。「もはや引き返せない」というのは聞仲にふさわしいフレーズなので主人公側は差をつけたということだろうか……?
「貴様が武成王 黄飛虎だな?」
「なんだ親父の知り合いか?」「んなわけねーだろボケ息子」
なんと、王天君は生きていた!!!……知ってた。正確に言えば生きていたというより別の王天君が存在した。服装が違うのがポイントである。黄親子は相変わらず親子というよりは友人か兄弟のようで面白い。掛け合いも7・5・7・5でリズミカルである。
「あなたが崑崙山の教主……元始天尊ですね?」「いかにも」
「では……殷のために消えていただく!!」
敵の首魁に一礼しあなたと呼び、太公望の師だけあって潔いと称賛する。権威に一応の礼儀を払いリスペクトするが、まあそれはそれとして絶対ブッ潰すね……という聞仲の優先順位を徹底する性格が表れている、個人的に好きなシーンである。
「私なら未来永劫に渡って人間界を幸せにできる!わが子、殷の旗のもとで!」
「じゃが、わしはそれを幸福とは認めたくない!」
下手な民主主義よりも名君による独裁支配が幸せというお話。人間の場合はその名君が死んだら破綻する問題があるが、永生の仙道であればその問題も限りなく薄まるかもしれない。それを強い口調で否定する元始天尊。「幸福ではない」とは言わず「幸福とは認めたくない」であるところが感情的に見えて連載時は印象的だった。
原作ではこの時点で歴史の道標(=ジョカ)についての詳細は明かされておらず、元始天尊は聞仲がジョカと同じことをしている点に強い嫌悪を感じている、ということに読者は後になって気付く見事な伏線になっている。覇穹ではこの時点でジョカが登場しているので、カットを入れるなどして聞仲との共通点を暗示しても良かったように思う。
ボコンボコンと分裂する盤古幡の動きが実に気持ち悪い。まさしくイメージ通りで素晴らしい映像化と思う。
るろうに剣心しかり、HUNTERXHUNTERしかり、少年ジャンプのジジイの戦いは名勝負と相場が決まっている。(だいたいジジイが負けるのだが。)聞仲役、前野智昭さんの渾身の絶叫がすさまじいが、元始天尊役の津田英三さんも負けていない。御歳70歳とは思えない力強さを感じる。
元始天尊へのトドメを放つところでEDに入り、Cパートで王天君が登場。展開が転じるところにEDを挟んでいるのがうまい。アバンやCパートで変に時系列や場面をいじらずに、漫画における3話分を極めて原作通りに構成。作画も迫力があり、中の人の熱演もお見事。まさにこういう映像化を求めていたという覇穹屈指の完成度を誇るエピソードだったように思う。
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2018年06月23日
グランクレスト戦記 22話感想 主要キャラの死について考えさせられるプリシラの最期
22話 聖杯
あらすじ
エーラムへと進軍する皇帝軍の前に、聖印教団の教皇レオーネが率いる集団が立ちはだかる。
力なき信者への攻撃を避けたいテオたちは、前指導者エルネストの娘であるプリシラを交渉に送る。
聖印を示したプリシラは信者の説得に成功しかけるが、レオーネの凶刃を受け命を落とす。
プリシラの聖印は死後も混沌核に戻らず、真の聖杯として証明されたことで戦闘の回避に成功する。
テオはプリシラの聖杯を預かり、混沌の時代を終わらせることをプリシラの亡骸に誓う。
感想
いろいろ忙しくてだいぶ感想が溜まってしまいました。遅れた結果すでに最終話が放映ずみということで原作も最終巻まで購読。その前提で感想を書いてみたいと思います。OPが再び変更されて最終決戦バージョンになっている。カッコいい。
「明朝、信者らを前面に出し攻撃を仕掛けます」「御意」
信者を盾とすることを厭わない絵に描いたような外道、教皇レオーネとギュンター団長。しかしフラッグを編むところの描写はテオ以外では初めてなのでそれなりの難敵感は受ける。
「聖印教団と魔法師協会がつながっているということだろう」
「根拠はあるのですか」
テオが皇帝として上に立ったことでマリーネの口調が敬語に変わっている。
シルーカ・アーヴィン・アイシェラという最強の布陣がプリシラに同行。勝ったな。原作での同行者はなんとアニメ未登場の君主1人のみであり、大きな改変となっている。アイシェラはプリシラに2度命を救われたという関係性を消化できており、このエピソードは原作よりかなり彩られたと言っていいと思う。
「へぇ↑民出身の若造がやっていいことではなぁ↑い!!」
ワカメ頭は三下と相場が決まっている、という僕の偏見を裏付ける本作2例目。ジョセフ司教のCVは益山武明さん。アイドルマスターSideMの紅井朱雀役として勇壮な姿をライブで拝見したばかりなのでお名前を見てびっくりした。朱雀と真逆の小物キャラの演技もお見事である。
信者を説得するプリシラさんの目が怖い。神がかり的な表現なのだろうが笑顔だと邪悪に見える。結局このモードのときに自死を選択したことになるので、通常プリシラの意志がどれほど介在しているのかが気になるところである。
助けようとするアーヴィンを目で制するプリシラ。アーヴィンがプリシラの意を汲んだか気圧されたかでとっさにやめたのか、プリシラが原作にある邪紋使いを退ける力を使ったのか、どちらなのか気になるところである。力が発現したような描写はないので前者のように見えるが……。本来なら原作に回答があるところだが、展開が違うためわからない。
「これが私の……成すべきこと……なのです」
通常プリシラは聖女たる自己犠牲精神で運命を受け入れ、神プリシラは粛々とプログラムを実行したように思えるがそもそも人格が分かれているのかどうかも謎である。上記のセリフから察するに状況は把握しているようだ。映像を見ずに、CV高森奈津美さんの演技だけを聞いてみると、あえて変化させていない(=人格が分かれていない)ようにも聞こえる。プリシラの描写自体が少なかったこともありミステリアスに作用しているように思う。
邪紋がなくてもそのへんのモブには負けないアイシェラ。ただ敵に刺さった武器を引っこ抜くのに手こずっている描写はパワーダウンしているという表現だろうか。
聖女を殺したことに怯えるレオーネ。原作では教祖であるプリシラの父を心から敬愛していた心情が描かれており、テオが到着する前に自死を選択している。アニメでは脇役の性格がある程度単純化される傾向にあるが、レオーネはパンドラの手先として動きつつも信仰心は真に強い人物として描かれている。
「これが彼女の成すべきことだったと言うのか!!」
テオの感情の発露シーンはかなり希少なのだがこういう形では見たくなかった……。
「俺はそう簡単には死なんよ」
臣下モードと親友モードで敬語とタメ口を使い分けるラシックすき。
混沌核に戻らない聖印、という形でプリシラの特別性が証明されたのが設定の活用として興味深い。聖杯を預かるテオの抱きしめるような動作が哀しい。別にキリスト教がある世界ではないだろうが、信者の海が割れていく様は視聴者的には「十戒」等の有名なシーンを思わせる演出となっている。
はたしてプリシラを死なせる意義とは。作中の意義としては信者7万の命を救うために死をもって真の聖杯であることを示す必要があったということだが、メタ的な、物語構造上の必要性としてはどうか。個人的にはメインキャラを死なせるには”相応の意義”と”相応の掘り下げ”が必要だと思っている。考えてみたが、混沌をすべて消す大決断への強い動機を主人公に与える、ということかもしれない。魔法師協会は単純な悪の組織ではなく彼らにも相応の信念と正当性があるわけで、それを上回る(と視聴者が感じられる)動機がテオにも必要になってくる。平和な世界を目指すという普遍的でマクロな動機に加えて、プリシラの死を無駄にしないという個人的でミクロな動機は十分に後押しになると思われる。
一方で掘り下げについてはどうか。原作は初期では一つのテーマにまるまる1巻を費やしている印象だが、プリシラの最期は10巻の1/3くらいで消化されており、急いで死なせた印象がかなり強い。それまでの出番についてもアニメは要所でヒールしたくらいだし原作も参加した戦いがあと2つほどあるくらい。ということで掘り下げに関してはかなり不足していると感じる。
ただ、掘り下げをキャラクターの性格描写とするなら今回こそがそれに相当するのかもしれない。描写しきった末に死を迎えるのではなく、死を迎えることによって描写が完成する、という特殊な性質(=聖女という個性)を持ったキャラだったと考えれば個人的に納得はできる。”初見の印象”と”考えた末の納得”が異なる場合、評価をどう結論付ければいいのか、というのは個人的な悩みではあるのだが。
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タグ:グランクレスト戦記
2018年06月22日
覇穹封神演義 20話感想 雰囲気はいいが佳境に水を差す2シーン同時進行
20話 星降る時
20話配信(Abemaビデオ)
あらすじ
聞仲との戦いで黄竜真人と慈航道人が封神される。金鰲島は動力炉が破壊された影響で周囲の星が落下し、十二仙はその隙に聞仲に攻撃を仕掛ける。
禁鞭の攻撃で十二仙が次々と封神されるが、普賢真人が接近に成功し、聞仲を巻き込んで自爆する。
一方人間界では紂王の身体に異変が起きる中、周を筆頭とした諸侯の兵が牧野に向けて進軍する。
感想
アバンは天化が傷を気にするシーン。おそらく道徳真君が最期を迎えるエピソードなので天化とのつながりを描いておこうということなのだろう。先週に続いてカットした趙公明編をあったこととして回想しているが、まあ「趙公明の召使いと戦った時――」という天化のナレーションが入っているので良し悪しはさておき新規にも理解は可能だろう。
しかしそこからが混乱を呼ぶところで、天化の回想から戻って今度は魔家四将戦のシーンへ移動。こちらも趙公明編同様カットしたエピソードなうえナレーションもなく、しかも天化視点だったはずなのに道徳真君のモノローグが入りいつのまにか道徳視点に切り替わっている。回想を経由して天化→道徳のラインから劇中現在に戻ってくるのは工夫が効いていると言えなくもないが理解の阻害を招くようならマイナス効果と思う。
仙界大戦がクライマックスにもかかわらず人間界の様子へ。しかも長い。原作が息もつかせぬ展開だっただけにここで一呼吸置くのは違和感がある。普賢の自爆で引くための尺調整と、仙界大戦後の展開のチラ見せと、聞仲の誤ちの強調と、この構成になった理由はいろいろ考えつくが個人的には仙界のほうを一気に進めて欲しかった。あと、本来は聞仲死後に殷が一気に崩壊する構図なのにこの改変により殷=紂王を放ったらかしでお空でドンパチやってる聞仲がだいぶ愚かに見える。愚直でダメな男ではあるだろうがそういうんじゃないんだよなあという思いがある。
「さらばじゃ馬鹿弟子 達者での」「師匠!」
「は…離すでちゅ!」「何言ってんのよ赤ちゃんのくせに!」
土行孫が喋った!おそらく今後出番はなさそうだしこの一言のためにCVを付けたのは評価したい。CVはなんと日野聡さん。ラシック様なにやってんの。蝉玉も道行天尊の命を救うファインプレー(?)である。ストーリーに絡むここがあるから蝉玉は出るだろうと事前に予想する声が多かった気がする。
「おっしょーさま!僕もお供します!」
んんん??本来ここは普賢の弟子である木吒の出番だが武吉に変わっている。一言のみの土行孫にきっちりCVを設定したのだから木吒もそうするべきでは?唐突なキャラ登場を気にしたのかも知れないがそれは正直今さらである。相変わらず改変方針がダブルスタンダードで論理性に欠けるように思う。
「師表たる崑崙十二仙の名にかけて!聞仲、お前を倒す!」
一言ずつ発言して最後に全員で吠える、先週のような合唱より表現としてカッコいいと思う。
道徳最期の咆哮がアツい。CVは森久保祥太郎さんでいろんな作品で拝聴するが個人的にはクリミナル・マインドのドクター・リードなど頭脳派の役がおなじみでこういう暑苦しいキャラクターは新鮮だった。天化のカットが入るのはオリジナルだがいい演出。
「みんな、一点集中だ!各個で戦っては…!」
太公望の作戦に反し各個で戦う十二仙。師表としての責任感や自己犠牲の精神が大きかったのはもちろんだが、十二仙は太公望より普賢のほうを信頼していたと見ることもできる。そう考えると大戦序盤の通天砲対処のあたりでは十二仙が太公望の指揮を疑問視するシーンもあった。それをなだめた玉鼎真人がこの場に生きていれば結果は変わったかもしれない。まあそもそも、構えた瞬間にやられるほどの実力差を見るに集中しても瞬殺されるだけのような気もするが。だとすると「聞仲をなめるでないぞ」という太公望のセリフが自身にも刺さる。
クライマックスだけあってすべてのカットが美しい。哀しげでスローな女性ボーカルのBGMが雰囲気を高めている。太上老君のカットを挟むのは関連性として強引な気もするがそれ以外は良かった。前回と今回、どちらも原作では2週連続で”引き”の名場面なのでアニメでも両方引きで使いたい気持ちはわかるのだが、漫画とアニメでは1回のスパンが違うため、今週は人間界の様子を挟むなど水を差す構成になってしまっているのが残念。
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2018年06月16日
グランクレスト戦記 21話感想 二重に隠されたアイシェラの真実が見どころ
21話 粛清
あらすじ
同盟・連合・条約が和睦し皇帝聖印の誕生が確定的となったことで、魔法師協会が動き出す。
君主派の魔法師が暗殺され協会との対決が決定的となり、戦力の三分の一がテオたちから離反する。
協会からのスパイであったアイシェラはシルーカの暗殺を命じられるが、意図的に失敗する。
アイシェラは命令違反に死を与える魔法により苦しむが、プリシラが聖杯の力で浄化する。
テオ達は各陣営で内通者が暴れだす騒動を沈め、皇帝軍として協会打倒に向けて進軍する。
感想
例によって21話視聴後に原作9巻を購読。粛清を伝達する魔法師はアニメではモブの別人になったが原作では名前のある別のキャラである。中盤から登場し、なかなか印象深い最期を遂げるので興味のある方はぜひ原作をお読みください。
自分たちの主君をのろけていく魔法師たち。多くが君主に従うことを選んだ中でアレクシスの契約魔法師であるホスティオは魔法師協会に従うことを選んだ点が印象深い。15話の感想でも書いたがこの作品は登場人物の価値観が完全に偏らないように気をつけている印象なのでホスティオはその役目を負ったと言えるだろう。筋を通して堂々と離反するところが潔い。
アイシェラの不穏なカットが多数。しかし視聴者的には単に養父に対する敵愾心に見えるところもあるのでミスリードがうまい。
このシルーカたち3者のやりとりは原作ではもう少し早め、三勢力会戦の前に使者としてヴァルドリンドを訪れたときに行われている。アニメではこの時期にずらすことによって1話まるまるアイシェラのエピソードとしてまとまりが良くなっているように思う。
バルギャリー猫殿下!お久しぶりです。あれ?もしかして7話でシルーカを救って以来のご登場では…?!原作ではちょくちょく出てきて癒やしになっているのだがアニメではそんな余裕はなかったようだ。猫呼ばわりは無礼らしい。大変失礼いたしました。
アウベストのしょぼくれたような表情がレア。原作では結構感情を出すシーンがあるが、アニメではほぼ完全な鉄仮面である。
「あんたにとって、シルーカとあたしは一体なんなの!」
この話のオチを見てから聞くと別の意味にも取れるセリフである。
いつもと少し趣の違うしるかわ・家族愛バージョン。
「……どういうことだ。」
「見ての通りよ、シルーカを殺そうとしたの。テオ・コルネーロも殺すつもりだった」
アイシェラは魔法師協会の密偵だった。14話や15話でヤーナに対して見せた意味深なカットが伏線となっている。ヤーナは言わば同僚であり、アニメでは描かれていないが境遇も似ており同情もするというものだろう。
この”ギアス”は原作ではヤーナも同質のものをかけられており、それもアイシェラ密偵の伏線となっているのだが、アニメでは描写されないので唐突と言えば唐突かもしれない。ただ原作ではシルーカを心底から愛するアイシェラの内心が描かれているため読者が正解にたどり着きづらく、その分アイシェラ密偵の説得力としてギアスのせいということを強調する必要があったとも言える。ちなみに、囚われのヤーナにアイシェラ(とおぼしき人物)が面会に来るシーンも原作にはある。アニメでやったら絵と声でバレバレになってしまうところだった。
ギアスの発動に呻くアイシェラの絶叫がすさまじい。アイシェラCVは上田麗奈さん。ちなみに富山ご出身で「北陸とらいあんぐる」のゲームの黒部りつ役としてわれわれ北陸民の一部におなじみ。
ギアスとともに邪紋もなくしてしまったアイシェラ。プリシラの力が規格外で細かい制御はできないということなのだろう。アーヴィンも苦しそうな表情をするカットがある。アニメでは描かれなかったが原作ではプリシラが戦闘に参加するシーンが何度かあり(常闇の森戦とシスティナ開放前)、敵味方問わず邪紋に痛みを与える技を使っていた。それの上位バージョンが発動した感じだろうか。
「あなたは本物の聖女よ!」
シルーカとプリシラが仲良くしてるのほっこりする。ここから「聖印教団に入りませんか?」「間に合ってます。」の流れが最終盤の深刻な雰囲気の中でくすりとしてしまう。(のに次の話では……)
「でも、娘じゃ嫌なの」
えーーー!そういうことだったのか。アニメでもこの親子の(というよりアイシェラの一方的な)反発は描かれているが原作ではさらに激しい。それも愛情の裏返しということだろうが、「シルーカへの愛情とその敵への反発」と「魔法師協会のスパイ」でアイシェラの個性の表裏両面ともスロットが埋まっていた(ように見えた)ので義父への本当の心情には全く気づかなかった。2話の感想で今作のキャラは意外性が意識されているように思うと書いたが、アイシェラ密偵の奥にさらにもう一つ意外性が隠されていて、気持ちよく騙された気分である。
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2018年06月13日
覇穹封神演義 19話感想 原作の名シーンで引くためにテンポが犠牲に
19話 聞仲
19話配信(Abemaビデオ)
あらすじ
普賢真人の危機に太公望が駆けつけ、太極符印と打神鞭の連携により聞仲に一矢報いる。残りの十二仙が到着し、宝貝で聞仲に一斉攻撃を仕掛けるが、黒麒麟の外殻に守られ凌がれる。
黄竜真人と慈航道人が接近戦を仕掛けるも、聞仲の全力を出した禁鞭の打撃により封神される。
感想
アバンで謎の病気に侵されている哪吒と天祥。いや新規視聴者にとってはほんとに謎である。天化の傷と同じ現象で、描写していない趙公明編をあったこととして回想している。アニオリ演出や構成ついて評価すべきところは評価しているつもりだが、これは本当によくない構成だと思う。新規は混乱し原作ファンは反感を持つだけで誰も得していない。
韋護渾身のオヤジギャグが書き文字に。CVの梅原裕一郎さんが病気療養に入った影響だろうか。先日SideMのLVを楽しんだ身としては鷹城恭二役としてのステージをいつかぜひ拝見したい。快復を願うばかりである。
「太公望の風のキレが以前よりも増している……器を広げてきたということか」
原作ではここは「趙公明と戦って器が広がったか」であるが趙公明編が描写されていないためちゃんと改変されている。しかしそういう配慮をするのであればなぜアバンではそのあたりがガン無視なのだろう。
Bクイック練習中の様子もオリジナル描写されるが一体いつの話なんだろう。打神鞭は封神計画の開始時にもらったはずだが…。まあここは原作でも辻褄が怪しい部分なのだが、そこを検証もなくわざわざ描写したせいで矛盾が確定的になってしまっている。
「聞太師ごめんねー!これも愛のためなのー!」
蝉玉が!蝉玉が喋った!……いや喋るんかーい!!それならなぜ化血陣戦で存在を消したのか。彼女の部分を省いたところで短縮できる尺など知れているし、謎のネタバレアバンを削れば十分まかなえるように思う。てっきり声が決まってないとかそういう理由だと思っていた。
セリフ内容も新規には意味不明ではないだろうか。金鰲出身の道士で聞仲配下のスパイだったが、土行孫というキャラに惚れて太公望側に寝返った経緯が(原作では)あるので上記のセリフになっている。
ちなみにCVは朝井彩加さん。シンデレラガールズP的には早坂美玲役としておなじみである。
「「「覚悟を決めろ聞仲!この崑崙十二仙がお相手するぜ!!」」」
この合唱は正直ダサい。漫画的表現を映像に落とし込む工夫がもうちょっとほしい。
十二仙に囲まれながらも微笑を浮かべる聞仲。細かいところだがここは原作通りの不機嫌そうな表情にして欲しかった。聞仲の表情がネガティブであれば「お、さすがにつらそう」という印象になり、それをひっくり返す聞仲の強さに驚愕するのだが、はなから笑っていてはその効果が得られない。
アイキャッチは大変カッコいい。
十二仙による宝貝ラッシュは原作再現度が非常に高く見応えのあるシーンだった。ちなみに陰陽鏡の赤精子は武内駿輔さん、番天印の広成子は熊谷健太郎さんによるCVで武内Pとテオ様ということで個人的におなじみ。両者とも普段演られるキャラとはちょっと違うタイプの演技なのが印象的。
黒麒麟とのつながりを示す映像もオリジナルで追加されたが特に深いものではなく、単に間をもたせるためだけのカットという印象。
慈航道人と黄竜真人の構えるカットは原作にないもので結構動いており、太公望の風のエフェクトもカッコいい。禁鞭に撃破されたところは地面に落ちた音がバラバラと多数あり、肉体が破壊されたことを感じさせてなかなかエグい。この二人が一瞬で封神されるところが聞仲無双の幕開けであり、BGMの不穏さもあってここは非常に雰囲気が出ている。
「だが私が本気を出した以上……仙人界は今日滅亡する!」
原作屈指の名シーンでありここ自体はさすがの迫力と言えるが、おそらくここで引くためにオリジナルシーン増し増しで間をもたせた構成になっており、テンポがかなり悪くなってしまっている。ここで引く事を最優先するにしても直近3話を2話にまとめることは可能だったのでは?という思いが強い。
よそのアニメは山場ではOPやEDを削ったりして尺を稼ぎつつ特別感を出すという工夫をしているが、覇穹は謎のアバンとCパートを毎回なんとかの一つ覚えで行使している点が低評価。
言ってるそばからまた謎のCパートである。まあ、仙界大戦以降の核心部分を描いている時間がないのでアバンやCパートで散りばめておこう、という狙いなのかもしれないが……。このシーンが保持するメッセージは単体で完結している気もするが、映っている青年(太上老君。一応何度か姿は登場している)が謎なので新規の人には伏線に見えるだろう。解決されない(であろう)伏線を張ってみたり、逆に天化の傷など張っていない伏線を回収してみたり、とにかく物語の正しい構造というものを無視した構成が気になる。
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2018年06月08日
グランクレスト戦記 20話感想 マリーネの本音が吐露される瞬間に強いカタルシス
20話 三勢力会戦
あらすじ
ノルドの大敗により同盟・連合・条約の戦力が拮抗するが、マリーネは和睦を拒絶する。
三勢力は一堂に会する決戦に臨むが、連合の到着の遅れにより同盟と条約が先んじて総力戦となる。
条約軍は単体でヴァルドリンド、ナユタ、シャーンなどの攻撃を凌ぎきり、連合軍が到着する。
盟主の交渉の席でテオは聖印の統合、そして大講堂の惨劇の黒幕である魔法師協会の打倒を提案する。
マリーネはアレクシスを危険に晒したくない一心を吐露するが、テオたちの説得をついに受け入れる。
アレクシスたちの再びの婚姻により皇帝聖印が誕生しようとする中、魔法師協会が牙を剥き始める。
感想
仕事とダンジョンメーカーを周回するのが忙しくて遅れました、すいません。ストーリーも後半となると情報量が累積されることもあり、書くことが多くなって長くなってしまうのが難点ですね。今、序盤の感想記事を見るとめっちゃ短くてびっくりします。
ナユタ候、シャーン候など同盟の主だった戦力が集結。同盟が東側にあるからかどの国も現実世界のアジア系の装いである。マリーネが戦争に強行的な理由の一つに「まだ全然同盟のほうが強いから」というのがあるのだが、ネームドキャラが少なかったせいかあまり伝わっていないように思う。彼らのようなキャラがもう少し早く出ていればマリーネの合理性を補強できていたかもしれない。
前回壮絶に散ったノルド王の息子も参戦。とてもあのバーサーカーの遺伝子を継いでいるように見えないが、ウルリカと同じく母親似なのだろう。
エドキア様はソロン様が死んだ時は同じように散る要員かと思ったがすっかり準レギュとして定着。ラウラさんとの主従がおなじみで嬉しい。今回はちゃんとすてきな服をお召しである……と思ったら近侍の男がパンイチである。なんなの。
あ、泳ぐためにその格好なんすね、なるほど。てっきりそういう国是の国になったのかと思った。
ラウラさんの制動魔法によって燃える船をぶつける火計。魔法のある世界なので本来ノルド側としては想像してしかるべき戦術のはずだが、それが出来なかったということは、船を複数動かすようなラウラほどの使い手がかなり希少であることが伺える。
ここの「逃さないわ」の声色が凛としてかっこいい。ラウラさんのCVは安済知佳さん。シャドウバース勢は破魂の少女やベルフェゴール役でおそらく毎日声を聞いているのでは。さらには福井ご出身で「北陸とらいあんぐる」のゲームの越前和花役としてわれわれ北陸民の一部におなじみ。
両陣営とも盟主の登場により士気向上する描写がアツい。テオ様は一騎打ちはしない、と約束していたがそんなに前線に出ていたら危険度は大差ないのではないだろうか。シルーカさん、心中お察しします。
ヴァルドリンド騎士団の聖印弾がすさまじい迫力。盾に当たる金属音が衝撃の強さを感じさせる。
ヘルガさんのお姿を発見。原作ではテオたちはシスティナ解放後一度エーラムに行っており、そこで再会してテオと契約したことになっている。ちなみにシルーカに次ぐナンバー2魔法師らしい。……ところでコリーンさんはどうなったんですかね……?
黒幕が魔法師協会であることが明確な言葉としてはおそらく初めて明かされる。アレクシスの魔法師の驚愕の顔が印象的。なるほど、シルーカやアウベストは既知なので驚き役ということか。
「知らしめてどうなると言うのです」
「いつか誰かが志を受け継いでくれる」
ここ、原作ではマリーネは序盤から自分個人が死んでもスムーズに次のリーダーが決まって理念が受け継がれるように、選帝侯制度を同盟に導入しているので、ある意味散るための万全を期しているのだが、アニメではそのくだりがカットされているのでかなり行き当たりばったりに見えてしまう。このあたりも前回のアレクシスの戦旗と同じく想像で補うのは難しい部分である。愛ゆえに暴走する姿も彼女の確かな側面ではあるが、「合理的なクライシェ家の現当主」という側面は尺不足の打撃を最も受けてしまった部分かもしれない。
「アレクシスを!……巻き込まないでくれ……!」
ついに吐露されるマリーネの心情。8話や19話の描写で十分推察できるが、当人の口から誰かに対して本音が出ることにカタルシスがある。マリーネが覇道を選ぶことは惨劇直後であれば合理性があった(父親の死で同盟内をまとめられない・世界全体の協力が得られない・アレクシスが頼りない等)のだが、今はテオの立身とアレクシスの覚醒によりハードルがクリアされ、当時の合理性が失われている。もはやアレクシスを巻き込みたくない・もう後には退けないというマリーネの感情的動機しか残っていないということが示されるシーンである。この悲壮な誤ちをかたくなに続行しようとする様は封神演義の聞仲と似ていて個人的に好ましい。彼女にはこれから救いが訪れる点が違うところだが。
8話のリフレインだが今度はアレクシスから求婚する点が対比的。ここのアレクシスはとにかく精神的にカッコいいのだが、まあ彼の頼りなさからマリーネが覇道を選んだ部分もあるのでこれくらいは頑張ってもらわないといけないだろう。主君のキスを囃し立てる兵士たちからアレクシスへの愛情が感じられる。侍従のみなさんもさぞかし思うところがありそうなのが1カットから想像できる。
娘の結婚発覚に完全に無反応なパパに笑う。目すら動かない。この作品は細かい感情の動きを表情で描写してくるので(17話のテリウスや、今見返すと1話のサトゥルスなども)、本当に何も感じていないという表現なのだろう。恋仲なのは知っていたので想定内ということだろうか。その後の目を閉じる動きにちょっとだけ感情が見える。
1話では騎士未満だったテオがついに皇帝に。毎週感想を書くほどにじっくり見ていると感慨もひとしおである。
ついに最後の敵が動き出す。この初登場のおじいちゃん個人がラスボスというわけではないようだが、協会を象徴する存在としてもうちょい早めに出しておいたほうがよかった気はする。まあそういう因縁的な存在はディミトリエ様が担っているとも言えるが。お久しぶりですね。顔だけの姿がちょっとシュールである。
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2018年06月02日
覇穹封神演義 18話感想 スローテンポだが聞仲をとりまく描写は丁寧で効果的
18話 死闘
18話配信(Abemaビデオ)
あらすじ
大戦の行方を眺める申公豹は聞仲から聞いた彼の過去を思い出す。聞仲は殷王妃となった友人・朱氏の子孫が治める殷を300年以上守ってきたのだった。
説得に失敗した普賢真人は太極符印で聞仲を攻撃するが通用せず、禁鞭の一撃が迫る。
危機一髪のところでスープーに乗った太公望が到着し、聞仲と戦いとなる。
一方人間界では殷が周からの侵攻を受け、紂王も倒れて滅亡の危機に瀕していた。
感想
「やっぱり俺たちも仙人界に行って聞仲様を助けたほうがいいんじゃ……」
アバンは人間界の様子。相変わらず時系列がよくわからない。原作においてはここは仙界大戦より後の話なのだが、李興覇のこのセリフから察するにどうも大戦中〜直後の出来事らしい。仙界大戦は数十日くらいだが、周と殷の戦いは行軍の時間を考えると数ヶ月くらいになるはずなので、同時進行するには時間のスケールが合わないように思う。
細かい部分だが妲己の登場にワンクッション置くカットがないので瞬間的に現れたように見える。まあ物語上唐突に帰還したところなのでそういう演出かもしれない。
聞仲の過去エピソードがついに描写。これは嬉しい。何度も書いてきたが聞仲ラスボスでこれをやらない選択肢はないだろう。やらないかもしれないと思ったことを反省したい。「歴史の道標が聞仲を向いていないとしたら〜」の申公豹の述懐にリンクさせるとはなかなかにくい演出である。結果として「回想の中で回想」というよくない(と言われる)手法になっているが、わかりにくくならなければ別にいいのではと個人的に思う。
このカットに現れる聞仲と申公豹の関係性が興味深い。友誼や信頼ではないが永い命を持つ強者同士のシンパシーのようなものを感じる。
若聞仲の声がちゃんと若い。CVは前野智昭さんだが通常聞仲の声がかなり低くて太いのでこっちのほうが地声に近いのかもしれない。
惚れた女(自称ライバルなので一概にそうとは言えないが)の遺児と子孫が治める国を自分の子供とみなす、という男の心理は客観的に見てけっこう気持ち悪いと思うのだが僕は皮肉や冗談を抜きに聞仲のそういうところが好きである。300年以上に渡って個人が国を治めるという現実にはありえないことと、親子や男女の心情という現実的なものをうまくミックスさせている、ファンタジーものの醍醐味とも言えるエピソード。
殷の守護者としての素顔と、仙界の破壊者としての仮面の両側面を連続で映す演出が効果的。彼の仮面が殷へ執着する頑迷さを象徴しているのは原作でもある演出である。
マッサージに興じる妲己。御尊顔が崩れているように見えるが原作でもここはこんな感じだったような。しかしまだ蓬莱島にいるのか朝歌に帰ったのかどちらなのだろう。まあ王天君が配下にいるなら長距離を瞬間移動できることに不思議はないのだが。
謎のシルエット。いったい王誰君なんだ……声でバレバレである。加工なりしてちょっとは隠す気がほしかったところだがどのみち覇穹では生存がわかりきっているし、原作でもバレバレだったような気がする。
「彼の心の一番柔らかいところを突くのよん」の直後に飛虎の様子を描くところも演出として効果的。
黄巾力士のエネルギー切れで落下するところと、太極符印の核融合を遠目に目撃する太公望。両者とも原作にはなかった描写のはず。原作では黄巾力士から(いつの間にか)スープーに乗り換えて間に合うのだが、そこを描写してないので補完した形だろうか。普賢の危機に間に合うのかという緊張感を煽るものにもなっている。
「力の差とは無慈悲なものだな。憐れみをもって一つだけ教えてやろう」
次回わかるが黒麒麟に隠れただけなのに偉そうなことである。まあ実際黒麒麟に乗らなくてもクソ強いし戦いにハッタリは大事ですよね太師。
ここの「どうした普賢真人……そうか。」というセリフも原作にはなかったものである。普賢にとどめを刺すことにほんの少しの抵抗を感じているような描写になっている。原作ではここの聞仲は完全に覚悟完了していて不動不惑の状態なのだが、覇穹では先週の「あるとも!」の表現といい精神に若干のゆらぎを感じる。
衰弱して地に伏す紂王=殷王朝。原作ではずっと先のシーンだが覇穹では仙界大戦で聞仲が殷への執着を現すシーンと重ねることによって、聞仲の信念の悲哀と誤謬を強調する演出になっている。先述したように時間のスケールが合わないとか、先週に続く貯め回で死闘というタイトルに合わないスローテンポとか、人によっては聞仲の性格の解釈違いとか、いろいろ別の問題は生じているが、聞仲ファンとしてはこれはこれで評価したいエピソードでもあった。
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2018年05月27日
グランクレスト戦記 19話感想 迫力はあるが若干癖のある作画と演出
19話 公子覚醒
あらすじ
ドーソン侯・ベルナールは連合に再帰順を申し出るがアレクシスに拒絶され、戦闘となる。
アレクシスは芸才を発揮させた指揮により圧倒、ドーソン侯は聖印と領地を差し出し降伏する。
続いてハルーシア軍は北の海域においてノルド候エーリクとの海戦に臨む。
アレクシスは連結させた鉄甲船を運用した戦術により、エーリクとの海戦を制する。
戦旗で狂戦士と化したノルド兵たちに苦戦するも、激闘の末エーリクを討ち取り聖印を獲得する。
感想
「卿も同盟の君主になったのだから武勇を示されよ」
みんな大好きドーソン侯の破滅回。ミルザーはなんとしても助けようとしたのに扱いの差がひどい。まあ地理的に難しいのも事実だろうがルクレール伯を倒すのに利用しただけというのがよく分かる。
このおっちゃん魔法師の緊張感皆無な声が印象的。CVの小林直人さんはこの作品のモブ役でかなりの回数を演じられている方なのでもちろんそういう演技なのだろう。裏切ってルクレール伯を死なせておいて帰順できると思っているドーソン侯の面の皮をこの魔法師の声色で表現しているように思う。小林さんは30歳とお若いのに自然な壮年声でお見事である。
ドーソン侯の動きがやたらコミカル。なんなの、あんなにイラつくキャラだったのになんか憎めなくなってきたぞ。
極めつけはこれである。もう笑うしかない。9話のパーヴェルあたりと比較して、やったことの悪辣さのわりに末路がぬるい気もするが、私は許そう。アレクシスが優しくてよかったね。
アレクシスの戦旗テルシオは指揮官と兵が意識を共有するものらしい。このアニメはだいたいのことは推察できるように描写されていて心情描写に関しては不満はないのだが、戦旗は心情という普遍的なものと違いオリジナリティがあるため想像力で補うのは難しいのでもうちょっと説明が欲しいところ。一言あるだけで「指揮官と意識共有が出来るならそりゃつえーわ」という納得が生まれるのだが。
ただアレクシスの芸才が指揮にも活かされるというのは納得できた。8話の感想で触れたが一晩であのバラの花を描くのは相当な全体把握能力が必要というのが絵描きとしての感想である。その能力は戦場全体を見渡して采配を振る指揮官にも必要になりそうというのはなんとなく想像がつく。
アレクシスがドーソン侯を破ったと聞いて動揺するマリーネ。原作ではここで一瞬笑顔になりアウベストに指摘されるという描写がある。アレクシスが巻き込まれる不安の中に元恋人の活躍に対する歓喜が混ざったという描写だが、カットされたのは地の文のないアニメでやるには誤解を招く表現ということかも知れない。
ノルド候エーリク登場。16話でハマーン全裸作戦に敗北したウルリカの父である。原作では奴隷の遇しかたについて娘を諭すなど理性的で王の気質にあふれる人物として描かれている。アニメでも連環状態の鉄甲船の特性に気づくなど思慮深い面も見られるが、アレクシスへの障壁として狂戦士の部分が特にクローズアップされている。ごつい見た目のわりに目はキラキラしていてギャップを感じる。
このへんの戦術はよく分からないが、鉄甲船を連結させた中型船で囲うことによって擬似的な城とし、エーリクの得意な海戦ではなく実質的な攻城戦とし自分の土俵に持ち込んだことが勝因ということだろうか。
どこかで見たような演出。今回は全面的にシリアスな局面のはずだが、絵画的ドーソン侯や随所の早回しなどどこか演出にコミカルさを感じてしまう。
エーリクの戦旗ベルセルクは兵を狂戦士にするというもの。自身にもかかるっぽい。アレクシスのテルシオと比べてこれは見るからに分かりやすい。説明をするべきラインをどこに設けるのが妥当かという創作のセオリーについて考えさせられるエピソードでもあった。
ところどころ作画があやしい。戦闘で大人数描くの大変なんだろうなあ。ただ動き自体はどこも激しく迫力があったのでバイキングの恐ろしさは十分に伝わった。
ノエリアさんかっこいい。邪紋使いのはずだが邪紋はどこに刻んでいるのだろう。後ろのぽっちゃり魔法師さんもちゃんと名前がありノエリアさんより上にクレジットされているので今後に見せ場がありそう。
「マリーネ、もうすぐ君の元へ行くよ」
狂気と暴力の末に凄惨な死を遂げるエーリクの赤と黒、敵への憐れみで涙するようなアレクシスの白と青、両者のコントラストが強烈である。白き公子が臣下たちの敷いた庇護を越え、血の海に一歩踏み出すという描写が象徴的。
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