2021年02月18日
シャドウバース 30話感想 言外に描かれるミモリの「悪を赦し、救う覚悟」
#30「覚悟と勇気」
あらすじ
ミモリは虚ろの影に取り憑かれたセイヤとバトルするが、そこへタクマが現れ共闘する。
一方、ロイヤルの遺跡に到着したカズキは虚ろの影に取り憑かれたズオウたちと対峙する。
感想
エルフの遺跡でバトルを開始するミモリとセイヤ。バンク久しぶりだな。尺に余裕を感じる。
「ほんとに世界を救う覚悟があるのかな、なんにも知らないお嬢さん」
「……あなたは、普段のあなたじゃない」
会話が成立していないが、これから精神力を使う戦いをすることを考えれば話には乗らないのが正しいかもしれない。「この世界に救う価値はない」はヴァネッサも28話で同じことを言っていたが、二人の内心にある見解なのか、それとも災いの樹が持つ思想的性質なのかはわからない。セイヤはこれまでの闇落ちキャラと比較して、表面的な邪心があまり感じられない分不気味さがある。闇落ち組の中ではおそらく最強のプレイヤーなので、味方7人の中では強豪とは言えないミモリで大丈夫か?という緊迫感を与えてくれる。
「お前も世界を救うの手伝ってくれ!」
世界の救済を文化祭の手伝いくらいのテンションで頼むんじゃないよ。タクマはヒイロに助けてもらったがその記憶があるのかは定かでなく、もともと友人でもないのにしぶしぶ了承するところに性根の良さが見える。ここでヒイロがミモリのほうを託すのも面白い。ストーリー上の都合ではあるがまあ実力的にカズキのほうが心配だもんな。しかしここまで主人公とヒロインが絡まないアニメがあるだろうか。2話や13話のヒイミモ描写はかなり貴重だったんだな。
カズキのほうに場面が移り、ロイヤルの遺跡で待ち受けるのは虚ろの影に取り憑かれたズオウとコウ。こいつらもジュスティーヌ姉妹と同じく全く変わってないな。あまり強敵の印象がないが2対1だとさすがに不利なバトルに思える。
ミモリのバトルに戻って、エルフのレジェンド【クリスタリアプリンセス・ティア】と【クリスタリア・イヴ】登場。初期の強豪デッキ「テンポエルフ」を支えたフォロワーで、後攻4ターン目に【エルフプリンセスメイジ】を進化させ、得た0コスフェアリー2体を使用し5ターン目にイヴ進化を起動させる動きが強力だった。守護裏のティアを撃ち漏らすと回収されて再び使われたりして厄介。ちなみに「チャンピオンズバトル」発売に際してのイラストナーフでイヴの衣装の肌面積が大幅に減ったのだが、アニメの実体化バージョンではなぜか昔の露出度のままである。えっちだ。いいのかな。
これまでの闇落ち組は全て2リーダー混成デッキだったが、セイヤのデッキはなんとウィッチ単色のようだ。ズルくない。さすが強豪。まあ秘術デッキはただでさえ土の印の設置と消費のバランスが難しいので混成にするメリットが薄いと言えるが。そして虚ろの影由来のシャドウ系カードは当然入っている。【シャドウ・プレデターゴーレム】の能力はかなり多彩で、
・本体は7/0/7
・ターン終了時、土の印で相手のみ全体2点ダメージ
・さらに【シャドウアサルト】(5/5)を場に出す
・相手のフォロワーが場に出たときその攻撃力を0にする
・ラストワードで【プレデターゴーレム】(7/7)を場に出す。(詳細は9話参照)
本体の攻撃力がなく、真価を発揮するのに土の印を供給し続ける必要があるが、かなりの強力カード。
マルグリットから精神力仕様のバトルシステムを借りてモブ多数を撃破するタクマ。思えば1話で普通にミモリを倒していたわけでそれなりの実力はあるようだ。バトルを見ていたマルグリットから切り札不在を指摘され、所持しているがデッキに入っていない【グロリアス・スラッシュ】を勝手にデッキに入れられる。以前初心者向けの記事を書いたが、現状のシャドバは確かに切り札依存度が高いゲームなので納得できる指摘。しかしマルグリット自由だな。覗きが趣味の人みたいになってるし。
回想で幼き日のタクマとセイヤが描かれる。4〜5年以上前に見えるのでその頃からシャドバが存在したようだ。タクマの髪がグレー一色なのでどうやら白い部分はメッシュらしい。セイヤに対する反抗心の現れかもしれない。セイヤはルシアと同じ制服を着ているのでオブディシアン学園の卒業生ということか。セイヤもタクマのデッキにダメ出しをするのだが、実にカードゲーマーあるあるの状況。別に世界の命運をかけた状況でもないのに口出しされてはタクマが反発するのもむべなるかな。セイヤは柔和で紳士的だがあまり空気を読まないタイプかもしれない。これは二人の年齢差が生んだ確執に見えるので、歳がもっと近ければ切磋琢磨する良好な関係になっていたかもと思わせてくれる。
「君も資格を持っているのかな、そうは見えないけど」
「『君』だと……?テメェなんのつもりだ」
エルフの遺跡内に到着するタクマ。兄に対して「テメェ」もどうかと思うぞ。これまでの闇落ちキャラは元人格の執着をブーストするような変化を見せていたが、セイヤは弟の存在を忘れており真逆。虚ろの影の侵食が進んでいる描写だろうか。18話のカズキのようにバトルにタクマが乱入し、【剣豪】の進化時能力でシャドウアサルトを破壊する。なるほど、この時代のエルフは強力なフォロワーを戻したり封じたりはできるが破壊手段に乏しいのに対し、ロイヤルは剣豪や【冷酷なる暗殺者】【ツバキ】【猛襲】【ファングスレイヤー】など豊富なので噛み合ったコンビと言える。
「……バカだな、お前」
「そうかも!」
天使か?かわいい。過去のわだかまりを捨ててタクマに感謝するミモリと、それに対してバツが悪そうにするタクマの組み合わせがたいへん良い。前々回のアリス&カイ以上に意外な組み合わせで、長尺のおかげで多様なカップリングが見られて嬉しい。実に第1話からこの布石を置いていた全体構成がお見事。
虚ろの影の支配度が上がっていくセイヤは【天翼を食うもの】をプレイ。手札を全て捨てその分だけサイズが上がる、カードゲームでは定番の能力を持つ。最初期、超デメリット持ちのくせにデカいだけのこれをなんとか活用できないかと数多のデッキビルダーが頭をひねった、ノスタルジーを感じさせるカード。しかし先述したように、ロイヤルはフォロワー破壊手段に富むのでタクマ相手には絶対プレイしないほうがいいカードである。グロリアス・スラッシュをタクマに渡したことを覚えていたら絶対出さないだろう。それでもプロか!と以前のようにツッコミたくなるところだが、これもこれまで同様、闇落ちしたことで本質的に弱くなった描写なのだろう。ジュスティーヌ姉妹以外全ての闇落ちキャラに共通する描写なので意図的な演出と思われる。
案の定グロリアス・スラッシュを引くタクマ。もはやこの作品においてトップ解決は英雄の証なので感慨深いものがある。効果は相手のフォロワー1体を破壊し、相手のほうがフォロワー数で勝るなら【グロリアスパラディン】を場に出す。これは7/7で突進を持ち、ラストワードで【聖騎士の剣】を場に出す。これの効果は次回に持ち越しだが、グロリアス・スラッシュ自体が10コストなのでロングゲームを想定したカードなのは間違いない。「いつもみたいに笑ってみせろよ!それができねえんじゃあ……テメェは俺の兄貴じゃねえよ!」のセリフと表情はセイヤに対する愛憎両方が伺えて印象深い。
元人格の記憶と虚ろの影の支配が拮抗し咆哮するセイヤ。これまで正邪の状態を問わず穏やかなトーンだっただけにギャップがすさまじい。セイヤCVは近藤隆さんで特にゲームに多く出演されている実力派。ギルティギアシリーズのファウスト、ポチョムキンや近年作品でのテリー・ボガード役などが特に著名。白目の部分が黒くなる描写ははじめてなので侵食が相当深くなったことがわかる。総攻撃でミモリたちのライフが一気に1になり、邪魔だと言いつつミモリをかばおうとするタクマのツンデレが良い。
「俺はてめえの敵だったろ」
「ひどいなーって思ったよ。でも、今は味方だもん!」
聖女か?かわいい。今回のテーマは「悪人をも救うことができるか」のようだ。度々書いているが「世界を救う」という漠然とした動機に説得力を与えるには相応の描写をしておく必要がある。ミモリはルシアにおけるシオリのような守るべき存在が出てこないのでそのあたりが弱く、それを補って「心の強さ」を示すために、「悪人=かつて自身のスマホを奪ったタクマ」を赦して共闘することで「悪人をも救う」覚悟を見せた、ということだろう。非常に良いテーマだと思うが若年層向けのアニメにしてはかなり高度な言外・行間を読ませる描写に思える。対象層にちゃんと伝わったことを願うばかりである。
「私に、まかせて!」
決着とエルフ伝説のカードお披露目は次回に持ち越し。今回はミモリの作画がぬるぬる動いてひたすら可愛かった。美少女ショット集置いときますね。
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