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冬の紳士
定年前に会社を辞めて、仕事を探したり、面影を探したり、中途半端な老人です。 でも今が一番充実しているような気がします。日々の発見を上手に皆さんに提供できたら嬉しいなと考えています。
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2016年04月21日
第2回 歴史 第1部 3-2
第2章 生命の進化と上陸

【地球環境と生命進化】
このようにして地殻から海に飛び出して行った単細胞生物は、海底から噴出する硫化水素を分解してエネルギーに変えていたようです。その後シアノバクテリア(藍色細菌)などといわれる、光合成をおこない酸素を放出する真生細菌が誕生します。藍藻類(らんそうるい)で、藻類の仲間とされていましたが今は分けているようです。32億年前の事です。
最初深海で棲息していたのは、太陽から放射される電磁波や紫外線などの障害を避けるのに都合が良かったから。やがて、地球中心の鉄の核で何らかの変化が起きた結果、地球磁場が強くなり、太陽からの帯電粒子や宇宙からの放射線などから生物を守り、藍藻類などから発生した酸素によって地球の周囲にオゾン層が形成されると、地表に達する紫外線も弱まり、生き物は比較的浅い海水中でも生息できる環境になった。実は最初は酸素は細胞や遺伝子を傷つける有害物質だったのです(活性酸素を考えてください)。それがどうして酸素を活用できるようになったのでしょう。シアノバクテリアの様な真生細菌は自力栄養確保でしたが、やがてそれらの死骸を食べる原始真核生物が現れます。彼等は、光エネルギーを栄養分に作り替えるという能力を持った細菌を取り込んで消化するという横着な生物です。その過程でたまたまプロテオバクテリアやシアノバクテリアを飲み込み、彼らがそのまま細胞内に居座ってミトコンドリアや葉緑体になったというのが近年の仮説の一つです。当時の環境は、餌となる有機物の減少と、シアノバクテリアの繁栄に伴う大気中の酸素濃度の増加が起きていた最中と考えられています。こうした環境変化に対応を迫られていた嫌気的環境で生きていた真核生物の祖先にとって、酸素を使ってエネルギー源となるATP(22)を合成する好気性細菌との共生は一挙両得でした。唯、細胞内にみられる核DNAとミトコンドリアのDNAの長さの違いなどから、どうも単なる共生とも考えられず、ミトコンドリアのDNAの一部が、核DNAに移住・融合した可能性が考えられ、もしかしたら「乗っ取り」・「寄生」されているのかもという可能性も言われます。持ちつ持たれつなのかもしれません。どっちが主でどっちが従なんて事にこだわるのは、小さいのかもしれません。そうした観点からも親子関係のDNA鑑定など私はくだらないと思います。もともと「自分」って何ですか?全ては借り物なんです。「自分の子」なんて観念は、所有の欺瞞の上に立った幻想だと私は思うんですが如何?(23)

こうして、有害である酸素を逆利用して、嫌気性の「発酵型」から酵素を使った好気性の「呼吸型」へ、コペルニクス的転換を遂げ、飛躍的に増量したエネルギーの力で多細胞生物の祖先に辿りつく。後にこの呼吸に加え、「火」を発見した人類は、身体の外でエネルギーを利用する術を覚えたわけで、際限の無い欲望の原動力となり、リズムを持った本来の「呼吸」から、合理的・理詰めの生産・労働に囚われ、「息を殺した呼吸」で必要以上のストレスをため込む(24)ことになる。

オゾン層の形成(5億年前)とともに、地球表面のプレート動きや、内部のマントルの動きで起こる地殻変動(25)により大陸が出現したり、ぶつかり合ったり(この時期ではありませんが、ヒマラヤは大陸同士の衝突による褶曲が原因と言われていますね)、山脈や雨による川ができたりしました。
大部分が海で覆われていた地球上に、最初に陸地が現れたのは、19億年も前とも言われ(ヌーナ超大陸)、その後も10億年前、7億年前と出没を繰り返し、大陸移動説で有名な「超大陸」とか「パンゲア」と呼ばれる大陸が姿を現したのは2.5億年前のようです。
コケ植物やシダ植物は、他の生物に先駆けて陸地への上陸を敢行(約5億年前)し、大自然の恵みを利用し、自らのエネルギーを合成でき(海藻も葉緑素の他に、フィコビリン(紅色)やキサントフィル(黄色)といった光合成色素をもちます)、大空と大地に向かって真っすぐに身体を伸ばす植物類(緑藻類が持つ色素(クロロフィル)は広い波長の範囲の光を利用することができるため上陸に有利でした。地上が緑で覆われる(26)。
パンゲア大陸ができたころ繁栄していた動植物の大半は、2億年ごろに始まった超大陸の分裂や火山活動と海水の酸素欠乏事件(スーパーアノキシア)で滅亡し、その死骸は大陸の内海に沈み、現在の石油に姿を変えました。地球環境の変化はこの時ばかりではなく、火山活動の活発化で二酸化炭素が大量放出され高温となったり、逆に少なくなれば気温低下で氷河期となったりで、幾度も絶滅は起こりました。隕石衝突もありました。その都度環境に適応できた種が生き残れたのです。環境に適応といっても、自分で目的をもって変われたのは人類(猿人ではない、その辺りは後のネオテニーの章で詳しく検討します)だけでしょう。身体が成長・変化し、それがたまたま、生き残りの目的に合致したのが進化です。逆ではありません。

4億5千万年前には一度生物のほとんどが絶滅している。地球の近くのどこかで起きた超新星爆発によるガンマ線バーストによって引き起こされたという説もあります。
(海中では、居ながらにしては身体を養えない為、感覚に従って「えさ」を探しそれに向かって運動する動物類も枝分かれしていました。この時から彼等は泳ぎ(魚類)、のたうち(爬虫類)、上陸し(1億年もかけた大事業でした、危険も伴いました)、やがて飛び(鳥類)、歩く(哺乳類)という地球の重力に逆らった生き方を選びます。水平方向から始め、垂直方向へのシフトに向かいます。)
まず植物に次いで上陸に成功したのは甲殻類の仲間である昆虫類で、地上で繁栄し現在5000万種を擁する最も繁栄する生き者に発展した。我々の先祖である魚類に始まる脊椎動物の上陸は、3.7億年前の両生類が出現したころになります。上陸前に魚介類に革命が起きていた。それは、「旧口動物から新口動物への逆転」という突然変異です。
植物から分かれた、蠕形 (ぜんけい)動物という蠕動運動をする虫が、端と端をくっつけて、複数の体節を持った動物が発生する。「体節の形成は、進化による多様性が働いた典型的な例であり、この機構は生命の歴史の中で最も重要であったと思われる。この機構が働き始めたお陰で、驚くべき組み合わせゲームが展開し、融合・重複・抹殺その他の変化に見舞われた」「ショウジョウバエの研究者たちは、ホメオスティック遺伝子の1つに突然変異を誘発させるだけで、頭がないもの・尾が2つあるもの・怪物のようなものまで作り出すことができた」「このゲームの産物は、現存の環形動物(陸地ではミミズが知られる)に似ている(27)」。
これらから進化が続き、多くの変異体ができた後、節足動物(節のある手足を持つ動物で甲殻類や昆虫群)が生まれる。彼らは「外骨格」という選択で、乾燥にも強く、多様なデザインも可能で、大いに繁栄し、地球を「虫の惑星」と呼ばせるほど反映し、動物の4分の3を占めています。唯一の欠点を除き。それは形が最初にがっちり決められるため、外に拡大できず、決められた大きさの中に内臓を詰めこまなければならなかった失敗で、神経系と消化器の交差を容認してしまい、食べるとすぐ食道が圧迫され胸やけで少食なのだそうです。
その進化の途上では、大きな分岐が起こり軟体動物も生まれる。彼らは殻を複製して二枚貝、殻が委縮して内部の殻板に形をとどめたイカ、完全に消失したタコなどが生き残った。ここで進化が止まったら、動物の生命の系統樹はおしまいだった。しかし意外な展開が待っていた。原型の環形動物に発達中だった胚に、頭と尾の逆転が起きた。「受精卵の分割から生じる細胞は、まず球状の胞胚を形成し、開口部つまり原口ができる。これがのちに消化管になり、その後、口となり、その後開口部がもう一つでき、導管となり、こちらも後に肛門となる(27)」。それが、何を思ったか逆転する。「原口が肛門となり、後からできる開口部が口となるのだ。ホメオスティック遺伝子のいたずらとしか考えられない。ともかくこれが遠因となり、全ての脊椎動物が発生することになる(28)」。
つまりこれによって鰓の穴(鰓裂・さいれつ)ができ、食物と酸素をろ過によって同時に集められるようになった。更に背中に沿って節のある中空構造(これが動物が最初に持った器官・腸であり、いずれ脳にも進化していきます)ができたことが大きかった。傷つきやすかった神経系が背骨で保護され後の成長に繋がっていくわけです。哺乳類の仕組みにまで発展します。分節化した背骨は、霊長類が直立したことから、ぎっくり腰の原因にもなった。昆虫は残念ながら外骨格で先に外を固めてしまったお陰で、繁栄はしているが、外に拡がれず、消化系と交差した神経系が発達できず脳の発達に限界をきたしてしまった。第3の道もありました。爬虫類の中の恐竜で、羽根をはやしたものもいました。飛ぶというより、保温が目的だったようですが、後の環境の大変化から絶滅を逃れた要因でもありました。これが鳥類です。ニワトリや雀だって羽根をとれば、爬虫類。中生代の末期、白亜紀(1億年前)に始祖鳥などが誕生します。中生代の初期に誕生した単弓類(哺乳類の祖先)といわれる半分哺乳類、半分爬虫類の混合動物は、悠々と空を飛ぶ鳥類に憧れと劣等感を持ったに違いありません。単弓類としては、すぐに絶滅したとはいえ、やがて1億年もすれば、鳥類に負けない翼をもった道具(飛行機)を発明しました。

ここも大事です。繰り返しますが、人類が他の動物と違うところは、「たまたま」ではなく、「自ら適応する」ことができる能力を持つこと、即ち他の生物にみられるような、「遺伝への依存や特徴の固定化に向かうのでなく、そこから解放され、特徴を発展させる柔軟性を持つところにある。つまり、教育を受けうる・学習する・発明する・もっと言えば、一度進んできた道でも「立ち戻ることができる」能力を持つことにある(29」のです。これは、ネオテニーの特性なのです。詳しい話は次回までお待ちください。
こうして我々脊椎動物は、両生類から徐々に上陸作戦を展開していったのです。

第1部はここで終わります。
次回は、我々人類にとって最も大きな変化、直立二足歩行とネオテニー(幼形成熟・発育の「遅延」という選択)から始めます。両者は密接な関係を持ちます。いよいよ人間の歴史です。


注22)ATP
略称 ATP (分子式 C10H16N5O3P3 ) 。アデノシンのD-リボースの 5' - の位置に3個のリン酸基がつながった構造をもつ。全生物界で広くエネルギー代謝の中心的役割を果している高エネルギーリン酸化合物で「生体のエネルギー通貨」ともいわれる。(知恵蔵2015より)
と言われてもわかりにくい。私達が食事で摂取する糖質・タンパク質・脂質の3大栄養素は消化吸収され分子となり、解糖・クエン酸回路(*)・電子伝達の3段階を経てATP=アデノシン三リン酸を作る。これは筋肉内に蓄えられて、分解されるとき無機リン酸を放出しADP(アデノシン2リン酸)に変わり、その時エネルギーを放出し、このエネルギーが使われて筋肉が動きます。
(*)クエン酸回路とは、トリカルボン酸回路(TCA回路),クレブス回路ともいう。イギリスの生化学者クレブスH.Krebsが1930年代の後半に発見した回路。サイトソール(細胞質基質に相当する細胞の分画成分)でグルコースあるいはグリコーゲンから嫌気性条件下で解糖反応系で生成したピルビン酸が,酸化的脱炭酸反応によってミトコンドリアマトリックスでアセチルCoAを生成すると,次にオキサロ酢酸と縮合してクエン酸が生成するステップから,このクエン酸回路が始まる(世界大百科事典 第2版より)。またまた判りにくいですが、ここでは詳細は必要ないでしょう。

注23)
―月夜の浜辺―
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂《たもと》に入れた。

月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
月に向つてそれは抛《はふ》れず
浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。

月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁《し》み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
(中原中也)

中也がわが子を亡くした悲しみを詠ったといわれていますが、これこそ、「ご縁」でしょう。誰の子かなんてこだわって生きることに何の意味があるんでしょうか。一期一会です。せっかくの「ご縁」をDNA鑑定なぞで、自らぶち壊して、何が愛ですか。現代人の科学にとり憑かれた(私はそれを「真実バカ」と言っています)「裸の王様)」ですね。本当のことを言って何が悪い!裸だといった子どものように得意がりたいんですね。黙っていられない。そうしてせっかく芽生えた愛情という、つかの間の秩序を、自ら壊して得意顔!
「条件」ばっかりですね。いい条件、いい年収、いい顔、真実という最高の条件、いったい何ですかね。悲劇ですね。

注24)
2015.9.24 拙稿 「そこに山があるから」【仕事と呼気】 参照
注25)
日本列島の下でも、フィリッピン海プレートが、ユーラシアプレートの下に沈み込み、東南海地震が心配されていますが、その沈み込んだプレートはどうなるのか。それはスラブと呼ばれ、ある時マントルの底に落ちるといわれます。大量のスラブが落下すると、それは上昇流(プルームといいます)となってプレートを引き裂き、海嶺(海底火山)となります。今、巨大なスーパープルームと言われるものは、南太平洋とアフリカにあるようです。あと5000万年もすれば、太平洋はなくなり(大きな湖と化し)超大陸(アメイジア)が出現するようです。それは大陸移動で、海嶺のせいではありませんが、(ヒマラヤが、南極大陸から切り離されたインド大陸が、猛烈な力でユーラシア大陸にぶつかった際の褶曲(盛り上がり)で出来上がったように)オーストラリア大陸はアジアに衝突し、2億年後には追って北米大陸もそれを囲むように衝突し、日本列島は押し上げられて、ヒマラヤのような巨大山脈の一部になると予想されています。

注26)
全てがメスとして誕生した植物、というよりは、雌雄の区別の無い形での無性生殖をしたとする生物は、恐らくは地球環境の変動(大陸移動などの地殻変動でもたらされる環境の大変化・砂漠化など)にも生き残れるよう胞子から種子を「選択」(選択といっても種子という方法が残ったということです、「適応」と言ったほうがいいのかもしれませんが、個々のではなく、植物全体或いは生物界全体をオーガニックに見立てて、選択という表現を今後使います)します。これにより、環境変化に対する乾燥対策となったり、精子が身体の外を泳ぐ必要が無くなり危険から回避されやすくなったりします。又環境が生存に適切な時期となるまで地中で待つこともできます。有名な大賀一郎が弥生時代の遺跡から見つけたハスの種子は2000年もの眠りを経て発芽・開花しましたね。
  動物も同様に、環境の変化に対応する為、性質の異なる二種類の細胞(雌雄)の組合せで、分業で、より安全で効率よい生命の伝達を図りました。更に動物は植物と違って、自ら栄養をつくりだす光合成のようなことができませんから餌を求めて動き回らねばならず、そちらに多くの時間と労力を費やしてしまいますから分業も必要です(充分な栄養と、長く生き延びる能力が高く適当な相手を待てる雌と、栄養は少なく短命でも迅速で身軽な相手である雄という多様性も生み出します)し、雌雄それぞれについてみても、温度や降水量といった物理的環境対策、捕食者達の変化、新しいウイルスや病原菌登場への対策、体内の寄生虫の変化などなど、周りが変われば自分も変わらないと耐性は維持できません。環境変化が仮に無かったとしても、マラーのラチェット(一方向にしか回らない歯車)と呼ばれる説のように、無性生殖ばかり続くと、放射線で遺伝子は傷ついたりして突然変異したり、そこで変化した有害遺伝子は世代とともに溜まっていきます。近種交配でも、繰り返せば劣勢の有害遺伝子達がホモ(同じ者同士で一組を構成している接合体)となり、形質として現れやすく、不健全な個体が生じやすくなります。有性生殖であれば例え片方の親が有害遺伝子をヘテロ(対立関係にある遺伝子が対になっている接合体)で持っていて、もう片方も同様としても、両方から有害遺伝子をもらった子は、有害遺伝子の数の限界値を超えてしまって育つことはないそうです(本川達雄著「生物多様性」中公新書参照P190〜 )。過酷ですが生き延びるための進化能力なのでしょう。

注27) クリスチャン・ド・デュープ「生命の塵」翔泳選書P303
注28) クリスチャン・ド・デュープ「生命の塵」翔泳選書P 306〜307
注29) A・モンターギュ「ネオテニー」どうぶつ社 P92〜94

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